JPH0523918A - 放電加工装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 放電加工装置の加工槽内に、安価で信頼性の
高い循環用加工液供給部の上下移動機構を備える。 【構成】 加工槽１内の加工液中に被加工物３を浸漬さ
せて放電加工を行う放電加工装置において、加工槽内
に、該加工槽内の加工液面にしたがって上下動するフロ
ート４４と、該加工槽内の加工液中に加工液を噴出する
加工液噴出管４０とを近接して配置し、フロートの上下
動に加工液噴出管を連動させたことを特徴とする。 【効果】 加工槽内の液面高さを設定するだけで、ワー
クの板厚にかかわらずワーク表面に加工液の流路を形成
することができ、その構成も簡単である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、加工液中に被加工物を
浸漬させて加工を行う放電加工装置に関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】図４は従来の水中浸漬仕様の加工槽を備
えたワイヤ放電加工機の加工槽及びその周辺装置を示す
正面断面図、図５はその外観を表す斜視図である。

【０００３】１は加工槽、２は加工槽１内のテーブル、
３はテーブル２の上面に取り付けられたワーク（被加工
物）、４はワイヤ電極、５は制御装置であり、ワイヤ電
極４は電気的に印加されつつ、制御装置５の指令に基づ
いて、ワーク３を貫通走行しながら加工していく。すな
わち、制御装置５はオペレータのデータ入力により、
Ｘ，Ｙ軸の駆動モータ及び駆動軸（図示せず）に指令を
送り、加工槽１を移動させることにより、ワーク３を希
望の形状に加工していくことができる。６、７はそれぞ
れワイヤ電極４の位置を規制する上下のワイヤガイド部
であり、それぞれワイヤ電極４の出入口部には、加工液
を噴射するノズルも備えている。なお、下部ワイヤガイ
ド７は機械本体に結合したアーム（図示せず）に支持さ
れているが、ワイヤ電極４をワイヤ回収部分へ走路変更
する役目も備えている。８はＺ軸装置で、上部ワイヤガ
イド６を取り付けており、ワーク３の板厚に基づく高さ
設定値が制御装置５より指令されることにより（高さ設
定のデータはオペレータが入力する）、上部ワイヤガイ
ド６の位置を規制する。

【０００４】１５は水中浸漬仕様の放電加工機の代表的
な液面保持設定機構であり、加工槽１に隣接して組み込
まれている。１６は加工槽１内の液面高さを決定する液
面設定ツマミ、１７は液面高さを表示するスケールであ
る。液面設定ツマミ１６を緩めると上下に移動可能で、
加工槽１内の加工液面高さを、スケール１７を指針とし
て設定することができる。１８は加工液遮蔽扉、１９は
液面設定保持機構１５の一部に設けられた加工液排出口
であり、加工液遮蔽扉１８が排出口１９をふさぐことに
より、加工液を加工槽１内に溜めることができる。な
お、加工液遮蔽扉１８は箱型形状で、中の空間は通液路
の役割を成している。

【０００５】２０はそれぞれの端が液面設定ツマミ１６
の取付け部と加工液遮蔽扉１８に取り付けられたジャバ
ラである。ジャバラ２０は液面設定ツマミ１６の移動に
連動して上下方向に伸縮可能である。ジャバラ２０はま
た防水構造で、その外側に溜められた加工液が内側に進
入しないように遮断されているが、その内側も加工液の
通路の役割を成している。すなわち、加工槽１内に液面
設定レベル以上に供給された加工液（オーバーフロー
液）は、その片端が設定レベルに位置するジャバラ２０
の内部に流れ込み、加工液遮蔽扉１８内部の通液路を通
り、排出口１９より排出される。２１は加工液遮蔽扉１
８を上下に移動させるアクチュエータ（図は直進シリン
ダーの例）であり、制御装置５からの指令により、加工
液遮蔽扉１８を上昇、又は下降させる。すなわち、加工
液を加工槽１に溜めている状態の時は、加工液遮蔽扉１
８が下降し排出口１９をふさいでいる。一方、加工槽１
内の加工液を排出する時には、加工液遮蔽扉１８を上昇
させることにより排出口１９を開ける。

【０００６】３０は加工槽１内へ加工液を供給する加工
液タンクである。図示した加工液タンク３０は一般的な
２槽式の例であり、３１は加工槽１の加工液排出口１９
から排出された加工液を溜める汚液槽で、３２は加工槽
１内を絶えず洗浄するための加工液を溜めておく清液槽
である。３３はポンプであり清液槽３２に溜められた加
工液を加工槽１に供給する。また、図示はされていない
が、ポンプ３３は加工中において、上下のワイヤガイド
部６、７からワイヤ軸に沿って噴射する加工液を供給す
る役目も備えている。加工中においては、このように絶
えず清液を加工槽１内に供給しているわけであるが、そ
の時の液面の保持設定は、前述したように加工液のオー
パーフロー分が排出されることにより、常に所定のレベ
ルを保っている。３４は汚液を濾過するフィルターで、
３５は汚液槽３１に溜められた加工液をフィルター３４
を通し、清液槽３２に送り込むためのフィルターポンプ
である。これにより、加工時に汚れた加工液は再び清液
に再生されるしくみとなっている。

【０００７】このような機構を備えた水中浸漬仕様のワ
イヤ放電加工機においては、加工部周辺に加工液が存在
することにより、充分な冷却効果を持つとともに、ワー
ク３端面加工時において、加工投入電力を下げて加工す
る必要もなく、加工中のワイヤ電極４の断線を回避する
とともに、高能率加工を実施することができる。しかし
その一方、ワーク３を加工液中に浸漬滞留させることに
より、加工部以外への漏れ電流、ワーク３表面上に滞留
したスラッジを介した二次放電等が発生し、ワーク３表
面上に電蝕、チッピング孔蝕、錆等の製品上好ましくな
い事象が発生する欠点があった。

【０００８】そこで、その対策として、加工槽内で加工
液を循環供給する機構を設け、ワーク表面で加工液を循
環させる方法が一般的に採用されてきたが、その目的と
するところは、表面に滞留したスラッジを排除すること
により二次放電を防止したり、あるいは、加工液中に存
在し、電蝕や錆等の原因となるＣｌ^- イオンの滞留を防
止することにある。図６は水中浸漬仕様のワイヤ放電加
工機において、ワークの電蝕、チッピング孔蝕、錆等を
防止するために、加工槽内で加工液を循環させる機構を
備えたワイヤ放電加工機の加工槽及びその周辺装置を示
す正面断面図であり、図７はその外観を表す斜視図であ
る。なお、図４〜図５と同一符号は同一又は相当部分を
示すものとする。

【０００９】４０は加工槽１の一端に設置された加工槽
１内の加工液循環用の加工液噴出パイプである。４１は
加工液タンク３０に設置された加工液循環用ポンプであ
り、清液槽３２に貯留された加工液を加工液噴出パイプ
４０へ供給している。なお、加工液噴出パイプ４０に
は、複数の噴出孔がテーブル２方向に向けて設けられ、
加工槽１内で加工液がテーブル２に取り付けられたワー
ク３に向かって噴流するようになっている。加工液噴出
パイプ４０は、加工槽１内の操作時におけるワーク３等
の落下物に対する保護として、保護ボックス４２で保護
されている。また、保護ボックス４２の加工液の噴出口
には、網メッシュ４３が取り付けられ、加工液噴出パイ
プ４０からの加工液の流れをスムーズにしている。これ
らの機構を備えることにより、加工中に、加工液噴出パ
イプ４０からワーク３方向へ加工液を流し、その流れの
作用によって、ワーク３表面あるいは近辺に滞留したス
ラッジを排除したり、ワーク３近辺にＣｌ^- イオンが滞
留するのを防止して、ワークの電蝕、チッピング孔蝕、
錆等の発生を抑制できる。そして、これら電蝕、チッピ
ング孔蝕、錆等は、スラッジが残留しやすいワーク３上
面に主として発生するため、ワークの板厚によって、加
工液噴出パイプ４０から加工液が供給される高さを調整
すれば、ワーク３の上部表面に沿った加工液の適正な流
れを作ることができ、特に顕著な効果を発揮させること
ができる。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
加工液の循環機構においては、その加工槽内の循環用の
加工液供給部（前述の従来例においては、加工液噴出パ
イプ４０）の位置が固定されており、ワークの板厚によ
っては、その利点を充分生かしきれない場合が多かっ
た。すなわち、循環用の加工液供給部の高さが固定設置
されている為に、一定範囲内の板厚ワーク以外は、その
効果が十分に発揮できない。たとえば、図８は加工槽１
内で加工液が、効果的にワーク３表面上を流れている例
であるが、これは循環用の加工液噴出パイプ４０の高さ
位置が、テーブル２に取り付けられたワーク３ａの上面
付近に設定されていることによる。ところが、この装置
において、例えば図９に示すような板厚の大きいワーク
３ｂを加工する場合、固定設置された加工液噴出パイプ
４０から供給される加工液の循環流は、ワーク３ｂの側
面に遮蔽される状態となり、ワーク３ｂの上面は加工液
が滞留状態となって、ワーク３ｂ上面には前述したよう
な理由により、ワークの電蝕、チッピング孔蝕、錆等が
発生しやすくなる。

【００１１】また、種々の板厚ワークに対応させよう
と、循環用の加工液供給部を複数以上の高さに取り付け
ると、加工液の噴出孔が分散され、一か所から供給され
る加工液量が少なくなり、各々に設定されるワーク表面
において、スラッジの排除能力等が劣り、電蝕、錆等の
防止効果が半減する。また、加工液の循環量をアップさ
せようとすると、加工槽からのオーバーフロー能力を大
きくする必要があり、加工液の液面設定機構を大型化
し、かつ加工液を循環させるためのポンプの能力もアッ
プしなければならず、装置全体が高価になってしまう。

【００１２】本発明はこれらの課題を解決するためにな
されたもので、放電加工装置の加工槽内に、簡易な構成
で高信頼性を有し、しかも安価な、加工液供給部の上下
移動機構を備えて、ワークの上部表面に、常に加工液の
適正な流れを作ることを目的とする。

【００１３】

【課題を解決するための手段】本発明は、加工槽内の加
工液中に被加工物を浸漬させて放電加工を行う放電加工
装置において、加工槽内の加工液面にしたがって上下動
するフロートと、加工槽内の加工液中に加工液を噴出す
る加工液噴出管とを加工槽内に近接して配置し、フロー
トの上下動に加工液噴出管を連動させたものである。

【００１４】

【作用】液中浸漬仕様の放電加工では、被加工物の上面
から加工槽内の加工液面までの距離はほぼ一定に定まっ
ているため、本発明の放電加工加工装置においては、被
加工物に応じて加工槽内の加工液面高さを設定すると、
フロートに連動する加工液噴出管は被加工物の上面に対
して常に所定の位置に来ることになり、従って加工液噴
出管から加工液が噴出されると、被加工物のほぼ上面付
近を通る加工液の流れが形成される。

【００１５】

【実施例】図１は本発明の実施例におけるワイヤ放電加
工機の加工槽及びその周辺装置を示す正面断面図、図２
はその外観を表す斜視図である。また、図３は加工槽内
の加工液循環機構の加工液供給部を拡大した図である。
これらの図において、図６〜図７と同一符号は同一又は
相当部分を示すものとする。４４は加工液噴出パイプ４
０に近接して、加工槽１内の一端に設置されたフロート
であり、加工槽１内に入れられる加工液の液面設定高さ
に応じて、上下方向に浮上、浮沈する。４５はフロート
４４と加工液噴出パイプ４０をそれぞれの両端で結合す
る走り台である。４６は走り台４５を上下方向に移動さ
せるためのガイドであり、その摺動部は走り台４５の厚
みに、わずかのクリアランスを加えた分の溝巾を有し、
走り台４５が滑らかに移動できるようにしている。

【００１６】ここで、フロート４４は例えば樹脂等の素
材で構成され、中には空気が充満している状態のものが
利用できる。また、加工液噴出パイプ４０、走り台４５
も樹脂等の比重の軽い素材で製作すれば、フロート４４
と共に移動する場合も、加工液に対して浮力として作用
する。

【００１７】ところで、加工液を加工槽１内に充満する
際、その液面高さはワーク３上面を充分に覆う高さが必
要となるが、その設定を必要以上に高くするとＺ軸装置
８にまで加工液が浸入する可能性があり、装置の錆発生
等による劣化原因となる。したがって、その液面高さの
設定は加工するワーク３の板厚の僅かに上面（通常は１
０〜２０ｍｍ）に合わせて調整し、Ｚ軸の高さ指令をワ
ーク３の板厚に応じた設定数値を入力してＺ軸位置を決
定する。一方、加工槽１内の循環用の加工液噴出パイプ
４０の高さは、設定する液面高さに応じ、フロート４４
に働く浮力によりフロート４４と連動して液面付近（す
なわち、ワーク上部表面付近）に、自動的に設定される
ことになる。

【００１８】このワイヤ放電加工機では、板厚が異なる
ワークであっても、加工液噴出パイプ４０から噴出され
る加工液が、常にワーク上部の表面に加工液の循環流を
生じさせる。従って、加工中、ワーク上部表面でのスラ
ッジの残留、あるいはＣｌ^- イオンの滞留をなくすこと
ができ、ワークの電蝕、チッピング孔蝕、錆の発生等を
効果的に抑制できる。尚、上記実施例は、ワイヤ放電加
工機の例を上げて説明したが、型彫放電加工機の場合に
も、同様の加工液循環機構を採用することで、同様の効
果がえられる。

【００１９】

【発明の効果】以上のように、この発明によれば、放電
加工装置の加工槽内に、加工槽内の加工液面に従って上
下動するフロートと、このフロートの上下動に連動して
上下移動する加工液循環用の加工液噴出管を備えたの
で、加工槽内の加工液の液面高さを設定するだけで、ワ
ークの板厚にかかわらずワーク表面に加工液の流路を作
ることができ、従って、スラッジやＣｌ^- イオンの残留
が防止され、ワークの電蝕、チッピング孔蝕、錆等を効
果的に抑制することができるようになった。しかも本発
明における加工液噴出管の高さ自動設定機構は、信号に
よる制御、アクチュエータ等の利用がなく、装置が安価
にできると共に、簡易的な機構を利用しているため、故
障も少なく信頼性も高いという効果を有している。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例に係るワイヤ放電加工機の加工
槽及びその周辺装置を示す正面断面図である。

【図２】本発明の実施例に係るワイヤ放電加工機の加工
槽の外観を表す斜視図である。

【図３】加工液循環機構の加工液供給部の拡大図であ
る。

【図４】従来のワイヤ放電加工機の加工槽及びその周辺
装置を示す正面断面図である。

【図５】従来のワイヤ放電加工機の加工槽の外観を表す
斜視図である。

【図６】加工槽内の加工液循環機構を示す正面断面図で
ある。

【図７】加工槽内の加工液循環機構の外観図である。

【図８】加工槽内のワークに対する加工液の流れの説明
図である。

【図９】加工槽内のワークに対する加工液の流れの説明
図である。

【符号の説明】

１ 加工槽 ２ テーブル ３ ワーク ４ ワイヤ電極 ４０ 加工液噴出パイプ ４１ 加工液循環用ポンプ ４２ 保護ボックス ４３ 網メッシュ ４４ フロート ４５ 走り台 ４６ ガイド

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 【請求項１】 加工槽内の加工液中に被加工物を浸漬さ
   せて放電加工を行う放電加工装置において、 前記加工槽内に、該加工槽内の加工液面にしたがって上
   下動するフロートと、該加工槽内の加工液中に加工液を
   噴出する加工液噴出管とを近接して配置し、 前記フロートの上下動に前記加工液噴出管を連動させた
   ことを特徴とする放電加工装置。