JPH05230536A - 鋳物歯車の火炎焼入方法、及びその装置 - Google Patents

鋳物歯車の火炎焼入方法、及びその装置

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JPH05230536A
JPH05230536A JP7260792A JP7260792A JPH05230536A JP H05230536 A JPH05230536 A JP H05230536A JP 7260792 A JP7260792 A JP 7260792A JP 7260792 A JP7260792 A JP 7260792A JP H05230536 A JPH05230536 A JP H05230536A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】鋳物歯車を火炎焼入れによって自動的に、しか
も焼割れを生ずることなく焼入れることである。 【構成】鋳物歯車Wの一歯分の歯部Tを火炎加熱装置に
より加熱した直後に、この歯車Wを垂直面内において一
歯分だけ回転させて、火炎加熱装置のノズル8の直下に
おいて加熱された歯部Tnに冷却水噴射装置により冷却
水を噴射させて急冷させる。この操作を、歯数分だけ繰
り返す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鋳物歯車を火炎焼入れ
する際に、これを人手を介することなく自動的に行っ
て、焼入効率を高めると同時に、焼入品質の安定と向上
とを図った鋳物歯車の火炎焼入方法、及びその装置に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】鋳物歯車は、鋳造により原形を形成し
て、その歯部を歯切盤で加工し、その後に使用強度を高
めるために歯部を焼入れして硬化させている。従来の鋳
物歯車の歯部の焼入れの殆どは、高周波焼入れであっ
た。即ち、チャック装置などを使用して歯車を所定位置
にセットして、その全ての歯部を高周波により同時に誘
導加熱した後に、加熱された歯車をチャック装置から取
り外して、油槽まで移動させて歯車全体を回転させなが
ら油冷して、焼入れを行う方法である。この方法である
と、全ての歯部が均一に焼入れされる利点はあるが、加
熱を終えてから油冷するまでに時間を要して、この間に
歯車の加熱部(歯部)が冷却してしまう。このため、加
熱を終えた後から油冷するまでの間に歯車の必要加熱部
が冷却するのを防止するため、その加熱温度を、本来焼
入れに必要な温度よりも高くしていると共に、本来は必
要でない歯の根元の部分まで加熱しており、この状態で
歯車全体を油冷すると、歯先部、或いは歯の根元部に焼
割れが発生し易くなる。
【0003】高周波焼入れに対する焼入方法として火炎
焼入れがあり、この方法で鋳物歯車を焼入れすることは
可能である。しかし、この火炎焼入れは、作業者の技量
に依存する割合が高いので、複雑な形状のものに対して
はその利点が発揮されるが、一般的には歯車のような量
産品に対しては非能率で不適とされていた。また、この
火炎焼入れにおいても、加熱した後から冷却までの間に
時間がかかると、上記した高周波焼入れと同様な問題が
発生する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記したよ
うな事情に鑑み、鋳物歯車に対しては不適とされていた
火炎焼入れを利用して、鋳物歯車を自動的に、しかも歯
部の必要部のみを集中的に焼入れすることにより、焼割
れが発生することなく、一定品質でもって高能率で焼入
れることを主たる課題としてなされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】この課題を解決するため
に本発明の採用した基本的な手段は、鋳物歯車を火炎焼
入れするに際して、鋳物歯車の一歯分の歯部を火炎によ
り加熱した直後に、該歯車を垂直面内において一歯分だ
け回転させて、火炎のノズル部の直下において加熱され
た前記歯部に冷却水を噴射させて急冷する操作を歯数分
だけ繰り返すことである。また、各歯部の焼入温度を一
定にするために、各歯部に対する加熱時間を焼入開始か
ら漸次短くしている。
【0006】
【発明の作用】歯車の一歯分の歯部を火炎により加熱し
た直後に、加熱された当該歯部が冷却水の噴射により急
冷されるので、加熱を終えてから水冷されるまでに要す
る時間が極めて短くなる。このため、従来の焼入方法の
ように、加熱されてから水冷又は油冷までの間に歯車の
加熱部(歯部)が冷却されなくなるので、歯部の必要部
のみを集中的に加熱すれば足り、水冷後においても加熱
部(歯部)の歪みがなくなる。よって、焼割れを生ずる
ことなく、高精度で歯車の焼入れを行える。また、歯車
回転装置によって歯車を一歯分ずつ回転させて、歯車の
各歯部が一歯ずつ自動的に焼入れされるので、焼入能率
が高まると同時に、焼入品質の向上と安定が図られる。
【0007】
【実施例】以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に
説明する。図1は、本発明に係る火炎焼入装置の一部を
破断した平面図であり、図2は、同じく拡大正面図であ
り、図3は、同じく歯車Wを一歯分だけ回転させた後の
拡大正面図である。本発明に係る火炎焼入装置は、鋳物
歯車Wをチャッキングして該歯車Wを垂直面内において
一歯ずつ間欠的に回転させるための歯車回転装置Aと、
この歯車回転装置Aでチャッキングされている歯車Wの
側方にノズルが配置されていて、歯車Wの一歯に集中的
に火炎をあてて加熱させるための火炎加熱装置Bと、こ
の火炎加熱装置Bのノズルの直下に噴射ノズルが配置さ
れていて、加熱された歯車の歯部に冷却水を集中的に噴
射させるための冷却水噴射装置Cとで構成される。
【0008】歯車回転装置Aは、ブレーキ付のモータ1
の回転をクラッチ2を介して減速器3に伝達して、この
減速器3の出力軸4にチャック5が取付けられ、モータ
1とクラッチ2と減速器3とが一体となっていて、これ
が垂直に支持された支持板6に取付けられて、減速器3
の出力軸4が支持板6から突出した構成である。図示の
歯車Wは、円筒状のボス7を有する平歯車であって、こ
のボス7の部分が前記チャック5でチャッキングされ
る。モータ1の回転は、減速器3で減速されてその出力
軸4に出力され、この出力軸4が歯車Wの一歯分ずつ間
欠回転し、しかも出力軸4の回転停止時間(換言すれ
ば、火炎加熱装置Bによる火炎加熱時間)が予め設定さ
れた時間となるように、前記モータ1が制御されてい
る。焼入れを行う各歯部の加熱温度をほぼ一定にするた
めに、火炎加熱装置Bによる各歯部に対する加熱時間
(出力軸4の回転停止時間)は、焼入開始の歯部から5
番目位の歯部までに対しては漸次短くし、それ以降はほ
ぼ一定にしている。
【0009】火炎加熱装置Bのノズル8の先端部8a
は、前記チャック5でチャッキングされた歯車Wの歯部
Tの側方に水平で、しかもボス7を水平にしてチャッキ
ングされた歯車Wとほぼ同一垂直面に位置するようにし
て配置されている。この火炎加熱装置Bは、アセチレ
ン、プロパン、都市ガスなどを過剰空気、又は酸素と共
に燃焼させ、これにより生ずる火炎を前記ノズル8の先
端部8aから吹き出させて、被焼入物である歯車Wの特
定の一つの歯部Tに集中的にあてて加熱させるための装
置である。
【0010】冷却水噴射装置Cは、前記火炎加熱装置B
により火炎加熱された歯車Wの一つの歯部Tに温度管理
された冷却水を集中的に噴射させて、当該歯部を冷却さ
せるための水冷装置である。この冷却水噴射装置Cのノ
ズル9の先端部9aは、前記火炎加熱装置Bのノズル8
の先端部8aの直下に配置されている。このノズル9
は、歯車Wの加熱された歯部Tに冷却水を噴射させて冷
却させるものであるので、図1に示されるように、その
先端部9aは、垂直に支持された歯車Wの歯面に対して
傾斜して配置されており、これにより歯面に当たった冷
却水の噴流が歯面に衝突した後に、スムーズに流れるよ
うにしてある。この冷却水噴射装置Cからは、冷却水が
断続的に噴射される。
【0011】また、チャック5により垂直にチャッキン
グされた歯車Wにおける前記火炎加熱装置B及び冷却水
噴射装置Cが配置されている側と対向する側には、ロッ
ク装置Dが設けられている。このロック装置Dは、火炎
加熱装置Bにより歯車Wの一歯分の歯部Tを火炎加熱す
る際に、この歯車Wの歯部Tの位置を定めてロックし、
これにより歯車Wの歯部Tの加熱位置を常時一定に保持
して、加熱のバラツキを防止するための装置である。実
施例のものは、本体11に内蔵されたソレノイド(図示
せず)の作用により、該本体11に対して係合ピン12
が出入りして、突出時においてこの係合ピン12が歯車
Wの相隣接する歯部Tの間に入り込んで係合し、これに
より歯車Wをロックする構成である。
【0012】そして、上記した火炎焼入装置を使用し
て、歯車Wの歯部Tの焼入れを行うには、歯車Wのボス
7をチャック5でチャッキングして、この歯車Wを垂直
に配置すると同時に、ロック装置Dの係合ピン12を突
出させて相隣接する歯部Tの間に挿入して係合させる
と、歯車Wは、その歯部Tが常に定位置となってロック
される。図2に示されるように、火炎加熱装置Bのノズ
ル8からは、常時火炎が出ており、基準歯から起算して
(n)個目の歯Tnに火炎があてられて設定時間だけ加
熱される。設定時間を経過すると、図3に示されるよう
に、ロック装置Dと冷却水噴射装置Cとが作動して、ロ
ック装置Dの係合ピン12が引っ込んで、歯車Wのロッ
クが解除されると共に、冷却水噴射装置Cのノズル9か
ら冷却水が噴射され、ロック装置Dの作動後にモータ1
が起動して、歯車Wを一歯分だけ回転させる。歯車Wの
一歯分の回転により、火炎により加熱された歯車Wの歯
部Tnに対して冷却水が所定時間噴射されて急冷され
る。このため、歯車Wの歯部Tnは、加熱直後において
冷却水噴射により急冷されることになる。歯車Wの一歯
分の回転後においては、上記のようにして加熱直後の歯
部Tnが急冷されると同時に、再度ロック装置Dが作動
して、その係合ピン12により歯車Wがロックされて、
加熱された歯部Tnの冷却中において、基準歯から起算
して(n+1)番目の歯T(n+1)の加熱が開始される。
加熱された歯部Tnに対する冷却水の噴射は、設定時間
経過後に停止される。以後、同様の操作が歯数分だけ繰
り返されて、歯車Wの全ての歯部Tの焼入れが完了す
る。
【0013】ここで、既述のように、火炎加熱装置Bに
よる各歯部に対する加熱時間(出力軸4の回転停止時
間)は、焼入開始の歯部から5番目位の歯部までに対し
ては漸次短くして、それ以降はほぼ一定にし、これによ
り各歯部の加熱温度をほぼ一定に保持して焼入状態を均
一化している。また、加熱された歯部に噴射させる冷却
水は温度管理されていて、歯部の加熱温度との差をほぼ
一定に保持している。具体的に実施した例では、歯車の
歯部をほぼ850゜Cまで加熱した直後に、25〜30
゜Cの冷却水を加熱された歯部に噴射し、加熱温度と冷
却水の温度差を830゜C前後で行った。
【0014】このようにして、歯車Wの一歯分の歯部T
を設定された時間だけ火炎加熱装置Bにより加熱した直
後に、歯車Wを一歯分だけ回転させて、加熱直後の歯部
Tに冷却水が設定時間だけ噴射して急冷する操作が反復
されて、歯車Wの全ての歯部Tが自動的に火炎焼入れさ
れる。火炎による歯部の加熱時間、加熱部位、或いは加
熱された歯部に対する冷却水噴射の時間、噴射部位は、
いずれも一定しているために、焼入品質が安定化する。
また、歯車の材質などに応じて、上記したような各焼入
条件を適宜変更して、一定品質で火炎焼入れすることが
できる。
【0015】このように、本発明の火炎焼入方法によれ
ば、図4でハッチングで示されるように、本来焼入れの
必要のない歯部の根元の部分まで加熱することなく、歯
部の必要部のみを必要温度でもって効果的に加熱した直
後に、当該加熱部に冷却水を噴射して冷却するので、歯
車として最も必要であるピッチ円の部分を有効に焼入れ
できると同時に、歯先部、或いは歯元部に焼割れが生ず
ることもなくなる。
【0016】また、上記実施例は、平歯車の焼入れにつ
いて説明したが、ウォーム歯車、はすば歯車などを焼入
れする場合には、火炎加熱装置B、及び冷却水噴射装置
Cの各ノズル8,9の先端部の形状を各歯の形状に対応
させて、一歯のみが集中的に加熱されたり、冷却された
りする構造にすればよい。
【0017】
【発明の効果】本発明に係る鋳物歯車の火炎焼入方法
は、鋳物歯車の一歯分の歯部を火炎により加熱した直後
に、該歯車を垂直面内において一歯分だけ回転させて、
火炎のノズル部の直下において加熱された前記歯部に冷
却水を噴射させて急冷する操作を歯数分だけ繰り返す構
成であるので、以下のような諸効果が奏される。(1)
従来困難視されていた鋳物歯車に対する火炎焼入れの自
動化が可能となる。(2)鋳物歯車に対する火炎焼入れ
の自動化が可能となるため、火炎焼入れによる焼入効率
が一挙に高められると同時に、個々の作業者の技量差が
全て排除されて、焼入品質の安定と向上とが図られる。
(3)歯車の一歯分の歯部を加熱した直後に、当該歯部
に冷却水を噴射させて急冷するので、加熱を終えてから
水冷するまでの時間が極めて短くなって、加熱を終えて
から冷却するまでの間において加熱された歯部は殆ど冷
却されない。この結果、歯車の歯部の必要部のみを集中
的に加熱すれば足り、水冷後においても加熱部(歯部)
に歪みが生じなくなって、焼割れが生ずることなく、高
精度で歯車の火炎焼入れを行える。(4)火炎による歯
部の加熱時間、加熱部位、或いは加熱された歯部に対す
る冷却水噴射の時間、噴射部位などの各焼入条件を適宜
変更することにより、鋳物歯車の材質などに応じて最適
な焼入れを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る火炎焼入装置の一部を破断した平
面図である。
【図2】同じく拡大正面図である。
【図3】同じく歯車Wを一歯分だけ回転させた後におけ
る拡大正面図である。
【図4】本発明の焼入方法による歯部の加熱される部分
を示す図である。
【符号の説明】
A:歯車回転装置 B:火炎加熱装置 C:冷却水噴射装置 D:ロック装置 T:歯車の歯(歯部) W:歯車 8:火炎加熱装置のノズル 9:冷却水噴射装置のノズル

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋳物歯車の一歯分の歯部を火炎により加
    熱した直後に、該歯車を垂直面内において一歯分だけ回
    転させて、火炎のノズル部の直下において加熱された前
    記歯部に冷却水を噴射させて急冷する操作を歯数分だけ
    繰り返すことを特徴とする鋳物歯車の火炎焼入方法。
  2. 【請求項2】 各歯部に対する加熱時間を焼入開始から
    漸次短くして、各歯部の加熱温度を一定にすることを特
    徴とする請求項1に記載の鋳物歯車の火炎焼入方法。
  3. 【請求項3】 鋳物歯車をチャッキングして該歯車を垂
    直面内において一歯ずつ間欠的に回転させるための歯車
    回転装置と、該歯車回転装置でチャッキングされた歯車
    の側方にノズルが配置されている火炎加熱装置と、該火
    炎加熱装置のノズルの直下に噴射ノズルが配置されてい
    る冷却水噴射装置とから成り、前記火炎加熱装置により
    歯車の一歯分の歯部を加熱した直後に、前記歯車回転装
    置により一歯分だけ歯車を回転させて、前記冷却水噴射
    装置により加熱された前記歯部に冷却水を噴射させて急
    冷するように構成されていることを特徴とする鋳物歯車
    の火炎焼入装置。
  4. 【請求項4】 火炎加熱装置による歯車の一歯分の歯部
    の加熱時において、該歯車の歯部の位置を定めてロック
    するためのロック装置を備えていることを特徴とする請
    求項3に記載の鋳物歯車の火炎焼入装置。
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