JP2000282145A - 歯車部材の焼入れ焼戻し方法及びその装置 - Google Patents

歯車部材の焼入れ焼戻し方法及びその装置

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JP2000282145A
JP2000282145A JP11089627A JP8962799A JP2000282145A JP 2000282145 A JP2000282145 A JP 2000282145A JP 11089627 A JP11089627 A JP 11089627A JP 8962799 A JP8962799 A JP 8962799A JP 2000282145 A JP2000282145 A JP 2000282145A
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tempering
quenching
tooth
gear member
frequency inductor
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JP11089627A
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English (en)
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Shoji Yamaguchi
祥司 山口
Shohei Ishizawa
昌平 石沢
Yohei Saito
洋平 斉藤
Misao Saito
操 斉藤
Masao Shinozaki
征男 篠崎
Akihiro Tanaka
章弘 田中
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Hitachi Construction Machinery Co Ltd
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Hitachi Construction Machinery Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 焼入れ処理と焼戻し処理を同一の高周波誘導
子を用いて行い、処理工程全体を効率化し、作業時間を
短縮できようにする。 【解決手段】 位置決め装置3の回転テーブル3A上に
内歯車1を取付けた状態で、内歯車1の歯部2に対して
高周波誘導子10と冷却器11とを送り装置13により
進退させる。そして、焼入れ工程では高周波誘導子10
と冷却器11とを歯部2の歯面に沿って下側から上側へ
と歯筋方向に移動させつつ、例えば900〜1000℃
程度まで歯部2を加熱して冷却水により急冷させる。そ
の後の焼戻し工程では、例えば200〜250℃程度ま
で高周波誘導子10の加熱温度を下げた状態で、高周波
誘導子10を歯部2の歯面に沿って下向きに移動させ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば動力伝達用
の歯車等のように耐摩耗性や耐衝撃性が要求される歯車
部材に熱処理を施すのに好適に用いられる歯車部材の焼
入れ焼戻し方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、建設機械等の機械部品に使用さ
れる歯車部材は、例えば鍛造、切削等の手段を用いて所
定の歯車形状に成形した後に、複数の歯部に対して通常
は焼入れ、焼戻し等の熱処理を施し、各歯部に所定の硬
度や剛性を与えることにより完成品とされる。
【0003】特に、歯車部材は、各歯部の表面(歯面)
側において耐衝撃性、耐ピッチング性、耐摩耗性が要求
され、高周波焼入れという表面処理を施すことが知られ
ている。
【0004】この場合、歯車部材の高周波焼入れ方法と
しては、高周波電源からの給電により駆動される高周波
誘導子を歯車部材の歯筋方向に沿って移動させ、1本の
歯部または複数本の歯部に対して同時に焼入れを行う移
動焼入れと、歯車部材に対向するようにリング状あるい
は円板状の高周波誘導子を配置して歯車部材全体を同時
に加熱、冷却する全周焼入れとがある。
【0005】そして、歯車部材に対する焼入れ処理を行
った後には、歯車部材全体を焼戻し用の炉内に移し、例
えば180℃程度の温度下で3〜5時間程度に亘って焼
戻し処理を行うことにより、歯車部材の内部応力を緩和
させる。
【0006】即ち、焼入れ処理後の歯車部材は硬度や剛
性は高いが、急冷による組織変態のために残留応力が生
じ、靭性に劣るという欠点を持っている。そこで、焼入
れ後の歯車部材に対して焼戻し処理を行うことにより内
部応力を緩和させ、靭性を与えるようにしている。
【0007】このため、歯車部材の製造工場等では、焼
入れ装置と焼戻し装置とを別々に装備し、焼入れ装置に
より各歯車部材毎に焼入れ処理を行った後に、焼入れが
終了した歯車部材を複数個まとめて焼戻し専用の炉に投
入することにより、歯車部材に対する焼入れ、焼戻し作
業の工数を低減させ、これらを一連の熱処理作業として
行い得るようにしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した従
来技術では、焼入れ装置と焼戻し装置とを別々に構成し
ているため、焼入れ装置と焼戻し装置との間に搬送ライ
ン等を別途に設ける必要があり、焼入れ工程から焼戻し
工程に亘る熱処理工程全体の設備が大型化し、製造スペ
ースにも負担がかかる上に、焼入れから焼戻しに亘る全
体の工程を必ずしも効率的に行うことができないという
問題がある。
【0009】また、焼戻し装置の炉内では、歯車部材を
全体的に加熱して焼戻し処理を行うために、処理時間が
長くなり、焼戻しのための加熱、温度保持または冷却等
に多大の労力と時間を費やすという問題がある。
【0010】本発明は上述した従来技術の問題に鑑みな
されたもので、本発明は焼入れ処理と焼戻し処理を同一
の高周波誘導子を用いて行うことにより、処理工程全体
を効率的に行うことができ、作業時間を大幅に短縮でき
ると共に、全体の設備を簡略化でき、作業性を向上でき
るようにした歯車部材の焼入れ焼戻し方法及びその装置
を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決する
ために、請求項1の発明が採用する歯車部材の焼入れ焼
戻し方法は、複数の歯部が形成された歯車部材を位置決
め治具に取付ける取付け工程と、前記位置決め治具に取
付けられた歯車部材の歯部に対して焼入れを行うため前
記歯部の歯筋に沿って加熱用の高周波誘導子と冷却器と
を一方向に相対移動させる焼入れ工程と、焼入れされた
前記歯車部材の歯部に対して焼戻しを行うため前記歯部
の歯筋に沿って前記加熱用の高周波誘導子を他方向に相
対移動させる焼戻し工程とからなる。
【0012】上記の焼入れ焼戻し方法によれば、焼入れ
工程では歯部の歯筋に沿って加熱用の高周波誘導子と冷
却器とを一方向に相対移動させ、高周波誘導子により加
熱した歯部を冷却器により急速冷却する。そして、次な
る焼戻し工程では前記高周波誘導子を歯部の歯筋に沿っ
て他方向に相対移動させ、歯部に対する焼戻しを実行す
る。これにより、焼入れに用いた高周波誘導子での一方
向における移動焼入れが終了した後に、高周波誘導子を
逆向きに戻すときに同じ高周波誘導子を用いて焼戻しを
行うことができる。
【0013】また、請求項2の発明では、焼入れ工程で
は加熱用の高周波誘導子を一定の高周波で駆動して焼入
れし、焼戻し工程では前記高周波誘導子を前記焼入れ工
程よりも低い周波数で駆動し、歯部の表面温度を前記焼
入れ工程よりも低い200〜250℃の範囲内に設定す
るようにしている。
【0014】高周波加熱温度の調節は電力調節によって
行うのが一般的であるが、焼戻しのように表面温度を極
端に低くする場合、周波数が一定のまま、即ち焼入れと
同じ周波数だと温度上昇が小さい上に、表面近傍しか加
熱されないため、焼入れされた深さ全体に亘って加熱す
ることは難しい。そこで、焼戻し時には周波数を下げる
ことによって内部に亘って温度上昇させることができ
る。
【0015】また、請求項3の発明は、焼入れ工程によ
って生じる歯部の残熱を約100℃に残したまま、焼戻
し工程では高周波誘導子を焼入れ工程よりも低い周波数
によって駆動し、歯部の表面温度を前記焼入れ工程より
も低い200〜250℃の範囲内に設定するようにして
いる。
【0016】即ち、焼入れ後の冷却時間によっては歯部
に残熱が生じる。例えば、冷却時間が10秒以内である
と、約100℃の残熱が歯部に残る。この残熱が残った
状態で高周波誘導子の電力と周波数を下げて加熱するこ
とによって、歯部の焼戻し温度を200〜250℃に設
定することができる。
【0017】さらに、請求項4の発明では、焼入れ工程
で歯車部材の歯部に対し歯筋の全長に亘って焼入れを行
い、焼戻し工程では前記歯車部材の歯部に対し少なくと
も歯筋の途中部位を焼戻し、残余の部位は焼戻しを中止
するようにしている。
【0018】これにより、歯車部材の実際の使用条件等
にあわせて、焼戻し処理が必要な部位と必要でない部位
とを選択でき、焼戻しを行わない部位では焼入れによる
圧縮方向での残留応力を利用して疲労特性を向上でき
る。
【0019】一方、請求項5による歯車部材の焼入れ焼
戻し装置の発明は、歯車部材が位置決めされる回転テー
ブルを有した位置決め治具と、前記歯車部材の歯部に係
脱可能に係合し、前記回転テーブル上の歯車部材を間欠
的に回転駆動するアクチュエータと、前記歯車部材の歯
部に対して径方向に進退され、高周波電源から給電され
ることにより前記歯部を加熱する加熱用の高周波誘導子
と、前記高周波誘導子と一緒に歯車部材の径方向に進退
され、外部から供給される冷却媒体により前記歯部を冷
却する冷却器と、前記高周波誘導子を冷却器と一緒に前
記歯部の歯筋に沿って一方向と他方向とに相対移動させ
る相対移動手段とからなる構成を採用している。
【0020】このように構成することにより、歯車部材
の歯部に対し高周波誘導子と冷却器とを歯筋に沿って一
方向に移動させる間は、高周波誘導子によって加熱した
歯部を冷却器からの冷却媒体で急速に冷却でき、歯部の
歯幅全体に亘って均一な焼入れを実施できる。そして、
焼戻しを行うときには前記高周波誘導子を歯部の歯筋に
沿って他方向に相対移動させ、焼入れに用いた高周波誘
導子を逆向きに戻すときに同じ高周波誘導子によって焼
戻しを行うことができる。
【0021】そして、前記歯部に対する焼入れ焼戻しが
完了した後には、回転テーブル上の歯車部材をアクチュ
エータにより間欠回転させ、次の歯部に対する焼入れ焼
戻し処理を前の歯部と同様に行うことができ、これを繰
返すことにより歯車部材の全ての歯部に対して焼入れ焼
戻し作業を順次行うことができる。
【0022】また、請求項6の発明では、相対移動手段
は、高周波誘導子を冷却器と一緒に歯車部材の歯筋に沿
って上下方向に相対移動させる構成としている。これに
より、高周波誘導子の移動に伴って冷却器からの冷却媒
体が歯車部材に垂れるように流れても、焼入れ結果に問
題がないように、高周波誘導子の下側に冷却器を配置で
き、高周波誘導子と冷却器を同時に上向きに移動させて
移動焼入れを行うことができる。そして、焼戻し時には
冷却器の作動を停止させた状態で、高周波誘導子を下向
きに移動させることにより、歯車部材の歯部に対する焼
戻し処理を行うことができる。
【0023】さらに、請求項7の発明では、高周波誘導
子を、歯部の歯底から両側の歯面に沿って略U字状に延
びる構成としている。これにより、歯車部材の歯部に対
して焼入れ処理と焼戻し処理を行うときに、歯部の歯底
から両側の歯面に亘る領域全体を高周波誘導子によって
良好に加熱することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態による
歯車部材の焼入れ焼戻し方法及びその装置を添付図面に
従って詳細に説明する。
【0025】ここで、図1ないし図8は本発明の第1の
実施の形態を示し、図中、1は歯車部材としての内歯車
で、この内歯車1はリング状の平歯車として形成され、
その内周側には多数の歯部2,2,…が全周に亘って一
体成形されている。そして、内歯車1の各歯部2は、図
2に示す如く歯先2Aと歯底2Bとの間が歯面2C,2
Cとなり、図4に示すように一定の歯幅W(歯筋方向の
厚み)をもって形成されている。
【0026】3は内歯車1が位置決めされる位置決め治
具としての位置決め装置で、位置決め装置3はリング状
をなす回転テーブル3Aを有し、この回転テーブル3A
は位置決め装置3の基台上に軸受(いずれも図示せず)
等を用いて回転可能に設けられている。そして、回転テ
ーブル3Aは内歯車1よりも大なる外径寸法を有し、そ
の内径寸法は内歯車1の内径(例えば歯底円)よりも大
きく、内歯車1の外径寸法よりも小さく形成されてい
る。
【0027】また、内歯車1は回転テーブル3A上にボ
ルト(図示せず)等の固定手段を用いて同軸に位置決め
され、その回転中心には支軸4が前記基台に一体化した
状態で取付けられている。そして、内歯車1は回転テー
ブル3Aと共に支軸4を中心にして後述のアクチュエー
タ5により、例えば図1中の矢示C方向へと回転駆動さ
れるものである。
【0028】5は位置決め装置3の基台上に設けられた
アクチュエータで、アクチュエータ5は、前記基台上に
支軸4を介して回動可能に連結された駆動アーム6と、
支軸4を中心として駆動アーム6を矢示A,B方向に回
動するシリンダ7と、駆動アーム6の回動範囲を規制す
るリミッタ8等により構成されている。そして、駆動ア
ーム6の先端側には内歯車1の歯部2に係脱可能に係合
する爪部6Aが設けられている。
【0029】また、駆動アーム6にはリミッタ8に接触
する突起6Bが設けられ、シリンダ7のロッド7Aを縮
小させたときには、突起6Bがリミッタ8に当接する位
置まで駆動アーム6は矢示A方向に回動され、これによ
り駆動アーム6の爪部6Aは歯部2に対する係合が解除
される。次に、シリンダ7のロッド7Aを伸長させると
きには、駆動アーム6の爪部6Aが次なる歯部2に係合
するようになり、この状態で駆動アーム6を矢示B方向
に回動することによって、内歯車1は各歯部2の1ピッ
チ分に相当する回転角をもって矢示C方向に間欠回転さ
れる。
【0030】9は内歯車1の回転を停止させる可動スト
ッパで、可動ストッパ9は位置決め装置3の基台上に配
設され、内歯車1の径方向(図1中の矢印方向)に進退
する構成となっている。そして、可動ストッパ9は内歯
車1の径方向に進出したときに、図1に示す如く歯部2
に係合することにより、内歯車1の回転を規制して停止
状態に保持する。また、アクチュエータ5により内歯車
1を回転駆動するときに、可動ストッパ9は内歯車1の
径方向内側へと後退され、歯部2に対する係合が解除さ
れるものである。
【0031】10は内歯車1の歯部2を加熱する加熱用
の高周波誘導子で、高周波誘導子10は図3に示す高周
波コイル等によって構成され、その平面形状は図2に示
す如く歯部2の歯面2Cを左,右両側から挟むように略
V字形状をなしている。そして、高周波誘導子10は後
述の高周波発生装置14から高周波電力が給電されるこ
とにより、内歯車1の歯部2を誘導加熱するものであ
る。
【0032】また、高周波誘導子10は後述の送り装置
13により図2中の矢示D,E方向に駆動され、内歯車
1の歯部2から径方向に進退されると共に、図5中の矢
示F,G方向へと歯部2の歯筋に沿って上,下に昇降さ
れる。そして、高周波誘導子10は歯部2の歯筋に沿っ
て上下動される間に、対向する歯部2を各歯面2C側か
ら加熱する。
【0033】11は高周波誘導子10の下側に配設され
た冷却器で、冷却器11は高周波誘導子10に対応して
略V字形状をなし、歯部2の各歯面2Cと対向する面側
には多数のノズル部11A,11A,…が設けられてい
る。そして、冷却器11は導管12を通じて供給される
冷却媒体としての冷却水を、各ノズル部11Aから歯部
2の各歯面2Cに向けて噴出させ、高周波誘導子10に
より加熱された歯部2を冷却水で急速冷却する。これに
より、歯部2の各歯面2Cは図2中に二点鎖線で示す如
く焼入れ処理されるものである。
【0034】13は高周波誘導子10と冷却器11を内
歯車1の歯部2に対して相対移動させる相対移動手段と
しての送り装置で、送り装置13は内歯車1の径方向内
側に位置して位置決め装置3の基台等に設けられ、その
可動部側には高周波誘導子10と冷却器11とが上,下
に間隔をもって取付けられている。そして、送り装置1
3は、高周波誘導子10を冷却器11と一緒に図2中の
矢示D,E方向(内歯車1の径方向)へと進退させる進
退機構と、高周波誘導子10を冷却器11と一緒に図5
中の矢示F,G方向(歯部2の歯筋に沿って上,下)へ
とに昇降させる昇降機構とを兼用したものである。
【0035】14は位置決め装置3の基台側に設けられ
た高周波発生装置で、高周波発生装置14は高周波電源
等を内蔵し、この高周波電源から高周波誘導子10に高
周波電力を給電するものである。また、高周波発生装置
14には制御手段として制御部15が設けられ、この制
御部15は高周波発生装置14から高周波誘導子10に
給電する電力、周波数を、内歯車1に対する焼入れ時と
焼戻し時とで可変に制御する構成となっている。
【0036】即ち、例えば重量200kg程度の内歯車
1を焼入れする場合に、高周波誘導子10に給電する電
力は80kw程度で、その周波数は約3kHz となり、
これによって内歯車1の歯部2は900〜1000℃程
度まで加熱される。また、この内歯車1を焼戻しする場
合には、高周波誘導子10に給電する電力を約25〜3
5kw程度まで低下させ、その周波数を焼入れ時の約1
/3(1kHz )程度まで下げる。これにより、内歯車
1の歯部2は200〜250℃程度まで加熱される。
【0037】本実施の形態による内歯車1の焼入れ焼戻
し装置は上述の如き構成を有するもので、次に、その焼
入れ焼戻し方法について説明する。
【0038】まず、最初の取付け工程では、位置決め装
置3の回転テーブル3A上に内歯車1を固定し、内歯車
1が支軸4を中心として回転テーブル3Aと一体に回転
可能な状態にセットする。このとき、送り装置13によ
り高周波誘導子10と冷却器11とを図2中の矢示E方
向に予め後退させ、内歯車1の歯部2(歯先2A)等に
接触または干渉することのない状態に置く。
【0039】次に、この状態で最初に熱処理すべき歯部
2を選択し、この歯部2に向けて図2に示す如く高周波
誘導子10と冷却器11とを送り装置13により進出さ
せると共に、図1に示す如く可動ストッパ9を内歯車1
の歯部2に係合させ、内歯車1の回転を規制しておく。
そして、この状態で図4に示す如く歯部2の下端側に高
周波誘導子10を接近させて対向配置し、焼入れ処理を
開始する。
【0040】即ち、焼入れ工程では、例えば周波数が約
3kHz で、80kw程度の高周波電力を高周波発生装
置14から高周波誘導子10に給電しつつ、送り装置1
3により高周波誘導子10を上向き(図4中の矢示F方
向)に約6mm/sec程度の速度で移動させる。これ
により、内歯車1の歯部2を両側の歯面2C,2C側か
ら、例えば900〜1000℃程度まで加熱する。
【0041】また、このときに高周波誘導子10と一緒
にその下側から冷却器11を矢示F方向に移動させつ
つ、冷却器11の各ノズル部11Aから歯部2の各歯面
2Cに向けて冷却水を噴出させる。これにより、高周波
誘導子10で加熱された歯部2を冷却水によって急速冷
却し、この歯部2に対する焼入れ処理を行う。
【0042】この場合、高周波誘導子10の上方移動に
伴って冷却器11からの冷却水が歯部2側に垂れるよう
に流れても、この冷却水が高周波誘導子10に付着する
ことはないので、焼入れ結果に悪影響を与えることはな
い。そして、高周波誘導子10と冷却器11とを図5中
の矢示F方向に移動させ、冷却器11が歯部2の上端側
に達した段階で焼入れ処理を終了させる。
【0043】次に、前述の如く焼入れ工程を完了した状
態で、例えば10秒以上の待機時間が経過した後に焼戻
し工程を行うため、高周波誘導子10に給電する電力を
25〜35kw程度まで低下させ、その周波数を焼入れ
時の約1/3(1kHz )程度まで下げる。
【0044】そして、この状態で高周波誘導子10を図
5中の矢示G方向へと下向きに、例えば5〜20mm/
sec程度の速度で移動させることにより歯部2に対す
る焼戻し処理を行う。この間、内歯車1の歯部2は歯面
2Cの表面温度が200〜250℃程度まで加熱され
る。そして、図6に示す如く高周波誘導子10を歯部2
の下端側に対向する位置まで矢示G方向に移動させた状
態で焼戻し処理を終了させる。
【0045】次に、焼戻し工程の完了後には送り装置1
3によって高周波誘導子10と冷却器11とを歯部2か
ら図2中の矢示E方向に後退させると共に、可動ストッ
パ9を内歯車1の径方向に後退させ、内歯車1の歯部2
に対する可動ストッパ9の係合を解除する。そして、こ
の状態でアクチュエータ5のシリンダ7で駆動アーム6
を図1中の矢示A,B方向に回動し、次なる歯部2が高
周波誘導子10と対向する位置まで内歯車1を矢示C方
向に間欠回転させる。
【0046】また、矢示C方向への間欠回転後は可動ス
トッパ9を内歯車1の歯部2に係合させ、内歯車1の回
転を規制すると共に、送り装置13により高周波誘導子
10と冷却器11とを歯部2に接近させて対向配置し、
前回と同様に焼入れ工程と焼戻し工程とを繰返し実行さ
せる。
【0047】そして、内歯車1の全ての歯部2に対する
焼入れ、焼戻し処理が完了した状態では、位置決め装置
3の回転テーブル3Aから内歯車1を取外し、次なる内
歯車1を回転テーブル3A上にセットして、前回の内歯
車1と同様に焼入れ、焼戻し作業を実施するものであ
る。
【0048】かくして、本実施の形態では、位置決め装
置3の回転テーブル3A上に内歯車1を取付けた状態
で、内歯車1の歯部2に対して高周波誘導子10と冷却
器11とを送り装置13により進退させると共に、焼入
れ工程では高周波誘導子10と冷却器11とを歯部2の
歯面2Cに沿って下側から上側へと歯筋方向に移動させ
つつ、例えば900〜1000℃程度まで歯部2を加熱
して冷却水により急冷させる。そして、その後の焼戻し
工程では、例えば200〜250℃程度まで高周波誘導
子10の加熱温度を下げた状態で、高周波誘導子10を
歯部2の歯面2Cに沿って下向きに移動させる構成とし
ている。
【0049】これにより、焼入れ処理と焼戻し処理とを
同一の高周波誘導子10を用いて行うことが可能とな
り、焼入れ処理から焼戻し処理に亘る熱処理工程全体を
効率的に行うことができると共に、作業時間を大幅に短
縮でき、全体の設備を簡略化することができる。
【0050】即ち、高周波誘導子10と冷却器11を図
4に示すように歯部2の下端側に配置し、歯部2の下方
から移動を開始して焼き入れる場合に、高周波誘導子1
0を上方に向かって移動させ、該当する歯部2の焼入れ
が終了した時点でこの誘導子10は歯部2の上端側に配
置されることになる。そして、次の手順として焼入れ処
理だけを行うのであれば、このときにアクチュエータ5
により内歯車1を回転させて、再び高周波誘導子10を
次なる歯部2の下端側に配置させるべく誘導子10の下
方移動という手順が必要となる。
【0051】しかし、本実施の形態にあっては、歯部2
の焼入れ処理が終了した時点で、次なる歯部2に対する
焼入れのために内歯車1の回転を行わず、焼入れが終了
した高周波誘導子10を歯部2の上端側から下方へと移
動させるときに焼戻し処理を行うものである。このと
き、高周波発生装置14による高周波エネルギーの設定
は、電力を約25〜35kw程度まで低下させ、その周
波数を焼入れ時の約1/3(1kHz )程度まで低下さ
せることにより、短時間で焼戻し処理を行うことができ
る。
【0052】そして、内歯車1の歯部2に対する焼入れ
処理と焼戻し処理とが完了した状態で歯部2の歯面2C
に対する硬さ試験を行った結果、図7に実線で示す特性
線16の如く、表面から1mm前,後の深さ部位までは
800(Hv)程度のビッカーズ硬さを有し、3mm以
上の深さ部位では250〜270(Hv)程度のビッカ
ーズ硬さを有することが確認された。なお、従来技術の
熱処理による硬さ試験では図7中に一点鎖線で示す特性
線17の如き結果が得られており、本実施の形態による
熱処理でも従来技術とほぼ同様の試験結果が得られるも
のである。
【0053】また、本実施の形態では、高周波誘導子1
0を用いて焼戻し処理を行うために歯部2の表面側で図
8に示す特性線18の如く焼戻し温度(表面加熱温度)
が変化し、例えば200〜250℃程度の焼戻し温度ま
で短時間で歯部2を昇温させ加熱できることが確認され
た。
【0054】また、焼入れ後の残熱も利用して焼戻しを
行うことが可能である。即ち、焼入れ後の冷却時間によ
っては歯部2に残熱が生じる。例えば、冷却時間が10
秒以内であると、約100℃の残熱が歯部2に残る。そ
こで、この残熱が残った状態で高周波誘導子10の電力
と周波数を下げて加熱することによって、歯部2の焼戻
し温度200〜250℃を達成でき、前記焼戻しと同じ
効果を出すことが可能である。
【0055】一方、従来技術の場合には、焼入れ後の歯
車部材を焼戻し専用の炉内に入れ、この炉内で焼戻し処
理を行うために、図8に一点鎖線で示す特性線19の如
く炉内温度を焼戻しに必要な温度まで上昇させるのに時
間を費やし、その後にこの温度を維持して徐々に温度を
下げるためにも時間を要している。
【0056】また、焼戻しに必要な温度と時間は一定の
関係があり、短時間で焼戻しを行う場合には温度を上げ
る必要があるとされている。しかし、高周波誘導子10
による焼戻し処理では、従来の炉内での焼戻し温度程度
でも短時間で焼戻しを行うことができ、このときの歯部
2の硬度を図7に示す如く従来技術の場合と同程度にで
きることが分かった。図7に示す特性線16は高周波焼
戻しを行った場合、特性線17は従来技術による炉内で
焼戻し行った場合の歯面2Cの硬度分布を示しており、
最終的に得られる硬度は同等であることが確認された。
【0057】例えば、従来技術による炉内での焼戻し処
理では、5個の内歯車1を5時間かけて焼戻しを行って
いたのに対し、本実施の形態にあっては、焼戻しに1個
当たり約150秒を費やすとしても、5個分で750秒
程度となり、大幅な時間短縮が実現できる。そして、焼
戻しによる硬度、応力値の変化は、従来の炉内での焼戻
しによる歯車と比べて変わらないため、疲労特性も同等
の強度をもつ歯車を製作できる。
【0058】従って、本実施の形態によれば、焼入れ処
理と焼戻し処理を同一の高周波誘導子10を用いて行う
ことにより、処理工程全体を効率的に行うことができ、
作業時間を大幅に短縮できると共に、全体の設備を簡略
化でき、作業性を向上させることができる。
【0059】なお、前記第1の実施の形態では、内歯車
1の各歯部2に対して高周波誘導子10を上,下に往復
動させる間に焼入れと焼戻しをに行うものとして述べた
が、これに替えて、例えば内歯車1の各歯部2に一旦全
周に亘って焼入れ処理のみを行った後に、同じ高周波誘
導子10を用いて各歯部2に対して順次焼戻し処理を行
うようにすることも可能である。そして、この場合に
は、焼入れによる残熱の影響はなくなっているが、焼戻
しによる効果は同じである。
【0060】次に、図9ないし図11は本発明の第2の
実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、歯車部材の
歯部に対し歯筋方向の全長に亘って焼入れを行った後
に、焼戻し工程では歯車部材の歯部に対し歯筋の途中部
位まで焼戻しを行い、残余の部位では焼戻しを中止させ
ることにより、その歯面を焼入れ状態に保つ構成とした
ことにある。なお、本実施の形態では前記第1の実施の
形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を
省略するものとする。
【0061】図中、21は油圧ショベル等の下部走行体
と上部旋回体との間に設けられる旋回輪で、この旋回輪
21は、歯車部材としての内輪22と、内輪22の外周
側に複数のボール23を介して回転可能に設けられた外
輪24とから構成され、外輪24は上部旋回体の旋回フ
レーム25にボルト26等により固着されている。ま
た、内輪22は下部走行体側のトラックフレーム27に
ボルト28等を用いて固着されている。
【0062】ここで、内輪22は前記第1の実施の形態
で述べた内歯車1と同様に複数の歯部2を有し、その外
周側には旋回輪21のボール23が収容される略半円形
状のボール収容溝22Aが形成されている。また、内輪
22には図10に示すように上,下両側の端面22B,
22Cのうち、トラックフレーム27上に衝合される端
面22B側に前記ボルト28が螺合される有底のねじ穴
22Dが形成されている。
【0063】29は旋回フレーム25上に設けられた旋
回用の減速機で、この減速機は旋回用の油圧モータ(図
示せず)によって回転駆動され、その回転出力をピニオ
ン30に伝達する。そして、ピニオン30は内輪22の
歯部2に噛合し、減速機29側からの回転を内輪22に
伝える。これにより、上部旋回体の旋回フレーム25は
下部走行体のトラックフレーム27上で旋回輪21を通
じて旋回駆動されるものである。
【0064】かくして、このように構成される本実施の
形態でも、内輪22の歯部2に熱処理を施すときに、前
記第1の実施の形態とほぼ同様に焼入れ、焼戻し処理を
行うことにより、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効
果を得ることができる。しかし、本実施の形態では、内
輪22の歯部2に矢示F方向で焼入れ処理を行った後
に、矢示G方向での焼戻し処理は歯部2の一定範囲とな
る領域Wa でのみ行い、残余の領域Wb では焼戻しを行
わずに焼入れ状態に保つ構成としている。
【0065】即ち、旋回輪21の内輪22は、図9に示
す如く端面22C側がボルト28による固定端(図10
中の端面22B)側から離れているために、ピニオン3
0に噛合する内輪22の歯部2は、端面22C側で負荷
に対する応力値が高くなり、この端面22C側が摩耗、
損傷等に起点になることが多い。
【0066】そこで、本実施の形態では、例えば図1に
示した位置決め装置3の回転テーブル3A上に、端面2
2Bが上側となるように内輪22を位置決めした状態
で、内輪22の歯部2に対し歯幅Wの全長に亘って矢示
F方向での焼入れを行い、その後の焼戻し工程では内輪
22の歯部2に対し領域Wa でのみ焼戻しを行い、残余
の領域Wb では焼戻しを行わずに、焼入れ状態を保つよ
うにしている。
【0067】これにより、歯部2の歯面硬度は図11に
示す如く焼戻し領域Wa に比較して非焼戻し領域Wb で
大きくなり、歯部2の疲労強度を高くすることができ、
部品としての寿命を延ばすことができる。
【0068】従って、本実施の形態では、内輪22等の
歯車部材を実際の使用条件等にあわせて、焼戻し処理が
必要な部位(領域Wa )と必要でない部位(領域Wb )
とを弁別することができ、負荷の小さい部位では焼戻し
を省略することができる。
【0069】なお、前記第2の実施の形態では、旋回輪
21の内輪22に対して焼入れ、焼戻し処理を行う場合
を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例え
ば一方の端面側が固定端となる種々の歯車部材にも適用
できるものである。
【0070】次に、図12は本発明の第3の実施の形態
を示し、本実施の形態では前記第1の実施の形態と同一
の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するも
のとする。しかし、本実施の形態の特徴は、高周波誘導
子41を内歯車1の隣り合う2本の歯部2,2の形状に
合わせるように、歯底2Bから両側の歯面2C,2Cに
沿って略U字状に延びる形状とし、その歯底2Bから両
側の歯面2C,2Cに亘る領域全体に対して二点鎖線で
示す如く高周波焼入れを同時に行う構成としたことにあ
る。
【0071】ここで、高周波誘導子41は前記第1の実
施の形態で述べた高周波誘導子10とほぼ同様に構成さ
れているものの、歯部2の歯底2Bから両側の歯面2
C,2Cに沿って略U字状に湾曲させて形成した点で異
なるものである。また、冷却器42についても、第1の
実施の形態で述べた冷却器11とほぼ同様に構成されて
いるものの、この冷却器42も歯部2の歯底2Bから両
側の歯面2C,2Cに沿って略U字状に湾曲している点
で異なるものである。
【0072】かくして、このように構成される本実施の
形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果
を得ることができるものの、特に本実施の形態では、高
周波誘導子41と冷却器42とを歯底2Bから両側の歯
面2Cに沿って略U字状に延びる形状としたから、内歯
車1の歯部2に対して焼入れ処理と焼戻し処理を行うと
きに、歯部2の歯底2Bから両側の歯面2Cに亘る領域
全体を高周波誘導子41によって良好に加熱でき、図1
2中に二点鎖線で示す領域の熱処理を効率的に行うこと
ができる。
【0073】なお、前記各実施の形態では、高周波誘導
子10(41)と冷却器11(42)とを用いて1本の
歯部2毎に焼入れ、焼戻し処理を行うものとして述べた
が、本発明はこれに限らず、例えば高周波誘導子を隣り
合う3本以上の歯部2に対応する形状に形成し、これら
の歯部2に対して同時に漸進焼入れ、焼戻し処理を行う
構成としてもよい。また、漸進焼入れに限らず、全周焼
入れ等を行う構成としてもよい。
【0074】また、前記各実施の形態では、内周側に複
数本の歯部2が設けられた内歯車1または内輪22を例
に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば外
周側に複数本の歯部が形成された外歯車に適用してもよ
いことは勿論である。
【0075】
【発明の効果】以上詳述した如く、請求項1に記載の焼
入れ焼戻し方法によれば、位置決め治具に取付けられた
歯車部材の歯部に対して、焼入れ工程では歯部の歯筋に
沿って加熱用の高周波誘導子と冷却器とを一方向に相対
移動させ、高周波誘導子により加熱した歯部を冷却器に
より急速冷却すると共に、次なる焼戻し工程では前記高
周波誘導子を歯部の歯筋に沿って他方向に相対移動さ
せ、歯部に対する焼戻しを実行するようにしたから、焼
入れに用いた高周波誘導子での一方向における移動焼入
れが終了した後に、高周波誘導子を逆向きに戻すときに
同じ高周波誘導子を用いて焼戻しを行うことができる。
従って、焼入れ処理から焼戻し処理に亘る熱処理工程全
体を効率的に行うことができ、作業時間を大幅に短縮で
きると共に、全体の設備を簡略化でき、作業性を向上さ
せることができる。
【0076】また、請求項2に記載の発明では、焼戻し
工程で加熱用の高周波誘導子を焼入れ工程よりも低い周
波数で駆動し、歯部の表面温度を焼入れ工程よりも低い
200〜250℃の範囲内に設定するようにしているか
ら、焼入れ工程と同一の高周波誘導子を用いて、高周波
誘導による加熱温度を焼戻しに必要な温度に容易に調節
して焼戻しを実行できる。
【0077】また、請求項3に記載の発明では、焼入れ
工程により生じる歯部の残熱を約100℃に残したま
ま、焼戻し工程において高周波誘導子を焼入れ工程より
も低い周波数によって駆動し、歯部の表面温度を前記焼
入れ工程よりも低い200〜250℃の範囲内に設定す
るようにしているため、焼入れ後の残熱が残った状態で
高周波誘導子の周波数を下げて加熱することにより、歯
部の焼戻し温度を200〜250℃に設定でき、前記請
求項2の発明とほぼ同様の効果を出すことが可能であ
る。
【0078】さらに、請求項4に記載の発明では、焼入
れ工程で歯車部材の歯部に対し歯筋の全長に亘って焼入
れを行い、焼戻し工程では前記歯車部材の歯部に対して
少なくとも歯筋の途中部位を焼戻し、残余の部位では焼
戻しを中止するようにしているから、歯車部材の実際の
使用条件等にあわせて、焼戻し処理が必要な部位と必要
でない部位とを弁別して焼戻し処理を選択的に実施で
き、焼戻しを行わない部位では焼入れによる圧縮方向で
の残留応力を利用して疲労特性を向上できる。従って、
歯部に対して引張り方向の繰返し荷重が作用した場合で
も、前記圧縮方向の残留応力を活用して歯部の疲労強度
を高くすることができ、長寿命化を実現できる。
【0079】一方、請求項5に記載の発明では、歯車部
材の焼入れ焼戻し装置を、回転テーブルを有した位置決
め治具、前記回転テーブル上の歯車部材を間欠的に回転
駆動するアクチュエータ、加熱用の高周波誘導子、冷却
器及び相対移動手段によって構成しているから、歯車部
材の歯部に対し高周波誘導子と冷却器とを歯筋に沿って
一方向に移動させる間は、高周波誘導子によって加熱し
た歯部を冷却器からの冷却媒体で急速に冷却でき、焼戻
しを行うときには前記高周波誘導子を歯部の歯筋に沿っ
て他方向に相対移動させることによって焼戻しを行うこ
とができる。
【0080】従って、同一の高周波誘導子を用いて電
力、周波数等の条件を変えるだけで焼入れと焼戻し処理
を行うことができ、作業時間を大幅に短縮できると共
に、全体の設備を小型化して簡素化を図ることができ
る。また、焼戻しによる硬度、応力値の変化は、従来技
術の炉内での焼戻しによる歯車と比べて変わらないた
め、疲労特性も同等の強度をもつ歯車を製作することが
できる。そして、前記歯部に対する焼入れ焼戻しが完了
した後には、回転テーブル上の歯車部材をアクチュエー
タにより間欠回転させ、次の歯部に対する焼入れ焼戻し
処理を前の歯部と同様に行うことができ、これを繰返す
ことにより歯車部材の全ての歯部に対して焼入れ焼戻し
作業を順次行うことができる。
【0081】また、請求項6に記載の発明では、高周波
誘導子を冷却器と一緒に歯車部材の歯筋に沿って上下方
向に相対移動させる構成としているから、高周波誘導子
の移動に伴って冷却器からの冷却媒体が歯車部材に垂れ
るように流れても、焼入れ結果に問題がないように、高
周波誘導子の下側に冷却器を配置でき、高周波誘導子と
冷却器を同時に上向きに移動させて移動焼入れを行うこ
とができる。そして、焼戻し時には冷却器の作動を停止
させた状態で、高周波誘導子を下向きに移動させること
により、歯車部材の歯部に対する焼戻し処理を行うこと
ができる。
【0082】さらに、請求項7に記載の発明では、高周
波誘導子を歯部の歯底から両側の歯面に沿って略U字状
に延びる構成としているから、歯車部材の歯部に対して
焼入れ処理と焼戻し処理を行うときに、歯部の歯底から
両側の歯面に亘る領域全体を高周波誘導子によって良好
に加熱でき、歯底を含めた熱処理を効率的に行うことが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態による内歯車の焼入
れ焼戻し装置を示す平面図である。
【図2】内歯車の歯部、高周波誘導子等を示す図1中の
要部拡大図である。
【図3】高周波誘導子を拡大して示す斜視図である。
【図4】内歯車の歯部、高周波誘導子及び冷却器等を示
す図2中の矢示IV−IV方向からみた断面図である。
【図5】焼入れ工程から焼戻し工程に移る途中の状態を
示す図4と同様の断面図である。
【図6】焼戻し工程の終了時を示す図4と同様の断面図
である。
【図7】歯面の表面深さと硬度との関係を示す特性線図
である。
【図8】焼戻し工程での時間と温度との関係を示す特性
線図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態による焼入れ焼戻し
処理が適用される旋回輪の内輪等を示す縦断面図であ
る。
【図10】図9に示す内輪の要部拡大図である。
【図11】内輪の歯幅寸法と残留応力、歯面硬度との関
係を示す特性線図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態による焼入れ焼戻
し装置の高周波誘導子を内歯車の歯部に接近させた状態
を示す図2と同様位置での平面図である。
【符号の説明】 1 内歯車(歯車部材) 2 歯部 2A 歯先 2B 歯底 2C 歯面 3 位置決め装置(位置決め治具) 3A 回転テーブル 4 支軸 5 アクチュエータ 6 駆動アーム 7 シリンダ 8 リミッタ 10,41 高周波誘導子 11,42 冷却器 13 送り装置(相対移動手段) 14 高周波発生装置(高周波電源) 15 制御部(制御手段) 21 旋回輪 22 内輪(歯車部材)
フロントページの続き (72)発明者 斉藤 洋平 茨城県土浦市神立町650番地 日立建機株 式会社土浦工場内 (72)発明者 斉藤 操 茨城県土浦市神立町650番地 日立建機株 式会社土浦工場内 (72)発明者 篠崎 征男 茨城県土浦市神立町650番地 日立建機株 式会社土浦工場内 (72)発明者 田中 章弘 茨城県土浦市神立町650番地 日立建機株 式会社土浦工場内 Fターム(参考) 4K042 AA18 BA03 DA01 DA02 DB01 DC02 DD06 DE06 DE07 DF01 EA02

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の歯部が形成された歯車部材を位置
    決め治具に取付ける取付け工程と、 前記位置決め治具に取付けられた歯車部材の歯部に対し
    て焼入れを行うため前記歯部の歯筋に沿って加熱用の高
    周波誘導子と冷却器とを一方向に相対移動させる焼入れ
    工程と、 焼入れされた前記歯車部材の歯部に対して焼戻しを行う
    ため前記歯部の歯筋に沿って前記加熱用の高周波誘導子
    を他方向に相対移動させる焼戻し工程とからなる歯車部
    材の焼入れ焼戻し方法。
  2. 【請求項2】 前記焼入れ工程では加熱用の高周波誘導
    子を一定の高周波で駆動して焼入れし、前記焼戻し工程
    では前記高周波誘導子を前記焼入れ工程よりも低い周波
    数で駆動し、前記歯部の表面温度を前記焼入れ工程より
    も低い200〜250℃の範囲内に設定してなる請求項
    1に記載の歯車部材の焼入れ焼戻し方法。
  3. 【請求項3】 前記焼入れ工程によって生じる歯部の残
    熱を約100℃に残したまま、前記焼戻し工程では前記
    高周波誘導子を前記焼入れ工程よりも低い周波数によっ
    て駆動し、前記歯部の表面温度を前記焼入れ工程よりも
    低い200〜250℃の範囲内に設定してなる請求項1
    に記載の歯車部材の焼入れ焼戻し方法。
  4. 【請求項4】 前記焼入れ工程では前記歯車部材の歯部
    に対し歯筋の全長に亘って焼入れを行い、前記焼戻し工
    程では前記歯車部材の歯部に対し少なくとも歯筋の途中
    部位を焼戻し、残余の部位は焼戻しを中止してなる請求
    項1,2または3に記載の歯車部材の焼入れ焼戻し方
    法。
  5. 【請求項5】 歯車部材が位置決めされる回転テーブル
    を有した位置決め治具と、 前記歯車部材の歯部に係脱可能に係合し、前記回転テー
    ブル上の歯車部材を間欠的に回転駆動するアクチュエー
    タと、 前記歯車部材の歯部に対して径方向に進退され、高周波
    電源から給電されることにより前記歯部を加熱する加熱
    用の高周波誘導子と、 前記高周波誘導子と一緒に歯車部材の径方向に進退さ
    れ、外部から供給される冷却媒体により前記歯部を冷却
    する冷却器と、 前記高周波誘導子を冷却器と一緒に前記歯部の歯筋に沿
    って一方向と他方向とに相対移動させる相対移動手段と
    から構成してなる歯車部材の焼入れ焼戻し装置。
  6. 【請求項6】 前記相対移動手段は、前記高周波誘導子
    を冷却器と一緒に前記歯車部材の歯筋に沿って上下方向
    に相対移動させる構成としてなる請求項5に記載の歯車
    部材の焼入れ焼戻し装置。
  7. 【請求項7】 前記高周波誘導子は、前記歯部の歯底か
    ら両側の歯面に沿って略U字状に延びる構成としてなる
    請求項5または6に記載の歯車部材の焼入れ焼戻し装
    置。
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