JP5610429B2 - 加熱処理方法及び加熱処理装置 - Google Patents

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Description

本発明は、各種用途に用いられる長尺状のワークに対して、高強度化のための焼き入れ処理を行う加熱処理方法及び加熱処理装置に関する。
工作機械や建設機械などの部品は、小型化及び軽量化を図るために、高強度化することが望まれている。特に、工作機械や建設機械に用いられるシャフトは、高速動作時における負荷に対応するための高強度化が求められている。
シャフト材として用いられる鋼材の高強度化を図るための方法としては、いくつかの手法があり、その1つの方法が、合金元素を添加する手法である。このような合金元素を添加する方法は、部品成型時の加工性の悪化、コストアップなどの問題があり、その添加量には制約があるという問題がある。特に、合金元素として添加する金属材料の高騰に伴って、コストの低減を考慮すると、合金元素を添加する方法を採用することが困難である。
合金元素の添加に頼ることなく、安価な鋼材であっても高強度化を実現するためには、高周波誘導過熱などの方法を用いて焼き入れを行い、結晶粒の細結晶化を行うことが考えられる。
特許文献1及び非特許文献1などに記載されているように、一度焼き入れを行った鋼材に対して再度過熱焼き入れすることにより、結晶の組織を微細化して高強度化を図り、高耐久性を実現することが知られている。
たとえば、特許文献1における方法では、第1温度を超える温度まで高周波過熱して第2温度以下に冷却する工程と、さらに第1温度を超える高周波加熱して第1温度を超える温度域に所定時間以上保持し、そのまま第2温度まで冷却する工程とを含む方法が示されている。
このような特許文献1に記載の方法では、ミクロ組織を微細化して表層高度を高くし、超寿命化を図ることができるとしている。
また、非特許文献1に記載の方法は、予め浸炭した鋼材に再過熱焼き入れを繰り返すことによって、旧オーステナイト粒の微細化を図ることを提案している。
特開2009−35822号公報
西川元裕、平岡和彦,浸炭焼き入れ後、再加熱焼き入れした肌焼鋼の機械的性質に及ぼす旧γ粒径の影響,Sanyo Technical Report Vol.14(2007) No.1
各種用途に用いられるシャフトに焼き入れを行う装置としては、たとえば、高周波誘導コイルで構成される加熱部と冷却液噴射用ノズルを備える冷却部とを環状に構成し、シャフトの両端を支持して加熱部と冷却部の内部を相対的に移動することにより、加熱及び冷却を行う加熱処理装置が提案されている。
このような加熱処理装置では、一度焼き入れを行ったシャフトに対して再度焼き入れを行うためには、焼き入れ開始位置にシャフトを再度設置し直して、加熱部及び冷却部に対するシャフトの相対的移動を行う必要がある。
このような熱処理技術においても、高強度化、高耐久化、省エネルギー化の他に、効率性の向上、短納期開発、生産性の向上などが求められており、前述したような複数回の焼き入れ処理を短時間で行うことが望まれている。
本発明では、1つのワークに対して複数回の焼き入れ処理を迅速に行うことが可能であり、高強度化したシャフトの製造を短時間で容易になし得る加熱処理方法及び加熱処理装置を提供することを目的とする。
本発明に係る加熱処理方法は、環状の高周波加熱コイルで構成される加熱部と、加熱部により加熱されたワークの表面に冷却液を供給するノズルを備えており加熱部の下方に位置し加熱部で加熱されたワークを冷却するための冷却部とを複数対配列し、長尺状のワークの長さ方向に相対的に上下動させながら加熱部及び冷却部による加熱及び冷却を連続的に行って、ワーク表面を冷却した後の冷却液が下方に位置する加熱部に当接しないように、一対の加熱部及び冷却部と、他の一対の加熱部及び冷却部と、の間において、冷却液の下方に円錐状の外表面を有する仕切部材及びエアーを供給するエアーノズルを設け、仕切部材により冷却液を外周側に案内し、エアーノズルにより冷却液が仕切部材の表面を外周側に向けて移動することを促進する、ワークに対する焼き入れを行う。
また、本発明に係る焼き入れ装置は、長尺状のワークを長さ方向に相対的に上下移動させながら加熱及び冷却を行って、ワークに対する焼き入れ処理を行う焼き入れ装置であって、環状の高周波加熱コイルで構成される加熱部と、加熱部により加熱されたワークの表面に冷却液を供給するノズルを備えており加熱部の下方に位置し加熱部で加熱されたワークを冷却する冷却部とを複数対配列した加熱冷却部と、ワークの両端部を支持し、支持したワークを焼き入れ部に対して相対的に上下動させる移動部と、ワーク表面を冷却した後の冷却液が下方に位置する加熱部に当接しないように、一対の加熱部及び冷却部と、他の一対の加熱部及び冷却部と、の間において、冷却液の下方に設けられており、冷却液を外周側に案内する冷却液案内部と、を備え、冷却液案内部は、冷却液を外周側に案内する円錐状の外表面を有する仕切部材と、冷却液が仕切部材の表面を外周側に向けて移動することを促進するためのエアーを供給するエアーノズルとを備える。
本発明によれば、長尺状のワークを1回移動させるだけで、複数の加熱部及び冷却部により、複数回の焼き入れ処理を行うことが可能となる。したがって、工作機械部品や建設機械部品などとして用いられるシャフトに対して、複数回の焼き入れ処理を行って高強度化を図ることが可能となり、この作業工程を短縮することが可能となる。
図1は、加熱処理装置の正面図である。 図2は、加熱処理装置の側面図である。 図3は、第1実施形態に用いられる焼き入れ部の斜視図である。 図4は、加熱冷却部の底面図である。 図5は、加熱処理装置の機能構成を示すブロック図である 図6は、第2実施形態に用いられる焼き入れ部の斜視図である。 図7は、加熱部による加熱温度の例を示す説明図である。 図8は、X線回折装置を用いたX線回折処理において、反射角2θにおける検出強度を表すグラフである。 図9は、第4サンプルIH1の結晶構造の顕微鏡写真である。 図10は、第5サンプルIH2の結晶構造の顕微鏡写真である。 図11は、第6サンプルIH3の結晶構造の顕微鏡写真である。 図12は、回転曲げ疲労試験機の説明図である。 図13は、回転曲げ疲労試験の結果を示すS-N線図である。
〈第1実施形態〉
本発明の第1実施形態における加熱処理装置について、図に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態における加熱処理装置の正面図であり、図2はその側面図である。
加熱処理装置10は、装置本体20と、装置本体20に対して相対的に上下動可能なスライダ30とを備えている。
装置本体11には、支持部21,22により支持された第1レール24が固定されている。また、装置本体11には、上部中央及び下部中央に位置してそれぞれ軸受部26、27が設けられており、この軸受部26,27により第1ボールネジ軸24が回転可能に支持されている。
装置本体11の上部には、第1ボールネジ軸24を駆動するための第1昇降モータ25が設けられている。第1ボールネジ軸24の上端には、プーリ27が取り付けられており、第1昇降モータ25の回転軸とプーリ27の間に取り付けられたベルトにより、第1昇降モータ25の回転力が第1ボールネジ軸24に伝達される。第1昇降モータ25の回転力を第1ボールネジ軸24に伝達するための構成は、ギアを用いることも可能であり、また第1昇降モータ25の回転軸を直接第1ボールネジ軸24に接続することもできる。
スライダ30の背面には案内部31,32が設けられている。この案内部31,32は、レール23が挿通される貫通孔が設けられており、案内部31,32がレール23を摺動することにより、スライダ30を装置本体20に対して上下に案内することが可能となっている。
スライダ30の背面には、第1ボールネジ軸24と係合するボールネジ(図示せず)が取り付けられている。これにより、第1ボールネジ軸を第1昇降モータ25により回転駆動すると、スライダ30はレール23に沿って装置本体20に対して相対的に上下動する。
スライダ30には、上下に位置して軸受部33、34が設けられており、この軸受け部33,34によって回転可能に第2ボールネジ軸35が支持されている。
スライダ30の上部には、第2ボールネジ軸35を駆動するための第2昇降モータ36が取り付けられており、第2昇降モータ36の回転軸が第2ボールネジ軸35に直接接続されている。第2昇降モータ36の回転力を第2ボールネジ軸35に伝達するための構成は、ギアを用いることも可能であり、回転軸に取り付けたプーリに係合するベルトを用いることも可能である。
スライダ30の下部には、前方に突出する下部支持フレーム37を備えており、下部支持フレーム37の上面には、ワークWの下端部を支持するための下部センタ38が設けられている。
スライダ30には、上下を支持された第2レール42が固定されており、この第2レール42によりスライダ30に対し相対的に上下動可能な上部支持フレーム40が取り付けられている。
上部支持フレーム40は、第2レール42に係合する貫通孔を有し、第2レール42に案内されてスライダ30に対して上下動可能にとなっている。
上部支持フレーム40の背面にはボールネジを内部に有する係合部41を有しており、係合部41内部のボールネジと第2ボールネジ軸35とが係合している。
第2ボールネジ軸を第2昇降モータ36により回転駆動すると、上部支持フレーム40はレール42に沿ってスライダ30に対して相対的に上下動する。
上部支持フレーム40には、ワークWの上端部を支持するための上部センタ43が設けられている。
下部支持フレーム37の下部センタ38と、上部支持フレーム40の上部センタ43とによって、ワークWの上下端部を支持するものであって、ワークWの長さに応じて第2昇降モータ36を駆動して上部支持フレーム40の位置を調整する。
スライダ30の上部には、ワーク回転用モータ50が設けられている。このワーク回転用モータ50の回転軸は、スライダ30に対して回転可能に支持された軸部材51に接続されている。
下部支持フレーム37に取り付けられた下部センタ38は、下部支持フレーム37に対して回転可能となっており、下部支持フレーム37の内部でギアなどを介して軸部材51の回転力が伝達可能に係合している。
焼き入れ工程を実行する際に、下部センタ38と上部センタ43との間に挟持されたワークWは、加熱されることから変形を起こしやすい。このため、焼き入れ工程において、ワーク回転用モータ50の回転力を下部センタ38に伝達して、ワークWを回転させ、ワークWの変形を防止するようにしている。
加熱処理装置10は、ワークWに対して加熱及び冷却を行う焼き入れ部60を備えている。この焼き入れ部60は、装置本体20に固定されており、スライダ30が装置本体20に対して上下動することによって、加熱・冷却を行うワークWの長さ方向位置が変化する。
加熱処理装置10の構成は、このような構成に限定されるものではなく、スライダ20の移動機構や上部支持フレーム40の移動機構、ワークWの回転駆動方式などについては、種々の方法を採用することができる。
〈焼き入れ部〉
図3は、焼き入れ部60の構成を概念的に表した斜視図である。
焼き入れ部60は、加熱部と冷却部とが1対となった加熱冷却部が複数設けられている。図示した例は、焼き入れ部60に2つの加熱冷却部71、72を備える場合を例示している。
第1加熱冷却部71は、銅などの電気伝導度の高い金属で構成されており、その内周面がワークWの外周面に近接するように環状に形成された高周波誘導コイル部81を備えている。高周波誘導コイル部81は、電源供給部(図示せず)からの電源電圧が供給される第1電極部82、第2電極部83と一体的に構成されている。第1電極部82及び第2電極部83は、ベーク板などの電気絶縁性の材料で構成される絶縁部84によって電気的に絶縁されており、電源供給部から電源電圧を高周波誘導コイル部81に伝達する。
高周波誘導コイル部81は、コイル冷却部85を備えている。高周波誘導コイル部81は、供給される高周波により非接触式でワークWを加熱するとともに、自身も発熱する。したがって、内部に中空を有する熱伝導性の高い物質で構成されたコイル冷却部85を高周波誘導コイル部81と一体的に形成する。このコイル冷却部85は、高周波コイル部81と同一の材料で一体的に形成することが可能であり、内部中空部には外部から冷却液が供給されて循環するように構成される。
高周波誘導コイル部81は、内部中空を有しており、下面には内部中空に連通する複数の噴出孔を備えている。
図4は、高周波誘導コイル部81の底面図である。
図4に示すように、高周波誘導コイル部81の底面88には、複数の噴出孔89が設けられており、それぞれ高周波コイル部81の内部中空に供給された冷却液を噴出するように構成されている。噴出孔89は、高周波誘導コイル部81の底面88の下方であって、高周波誘導コイル部81の内周方向に向けて冷却液を噴出するように、ノズル部分が傾斜した構成となっている。
高周波誘導コイル部81の内部中空は、冷却液供給部86、87に接続されている。加熱冷却部71では、高周波誘導コイル部81に供給される高周波電圧により非接触式でワークWを加熱するとともに、冷却液供給部86,87を介して外部から供給される冷却液を高周波誘導コイル部81の下部に設けられた噴出孔89からワークWに向けて放出することにより、急速に冷却している。
第2加熱冷却部72は、第1加熱冷却部71と同様の構成であり、銅などの電気伝導度の高い金属で構成されており、その内周面がワークWの外周面に近接するように環状に形成された高周波誘導コイル部91を備えている。高周波誘導コイル部91は、電源供給部(図示せず)からの電源電圧が供給される第1電極部92、第2電極部93と一体的に構成されている。第1電極部92及び第2電極部93は、ベーク板などの電気絶縁性の材料で構成される絶縁部94によって電気的に絶縁されており、電源供給部から電源電圧を高周波誘導コイル部91に伝達する。
高周波誘導コイル部91は、コイル冷却部95を備えている。このコイル冷却部95は、内部に中空を有する熱伝導性の高い物質で構成され、高周波誘導コイル部91と一体的に形成されている。このコイル冷却部95は、高周波コイル部91と同一の材料で一体的に形成することが可能であり、内部中空部には外部から冷却液が供給されて循環するように構成される。
高周波誘導コイル部91は、内部中空を有しており、下面には内部中空に連通する複数の噴出孔を備えている。
この高周波誘導コイル部91の底面に設けられた噴出孔は、高周波誘導コイル部81の底面に設けられた噴出孔89と同様の構成であり、高周波コイル部91の内部中空に供給された冷却液を、高周波誘導コイル部91の底面の下方であって、高周波誘導コイル部91の内周方向に向けて冷却液を噴出するように、ノズル部分が傾斜した構成となっている。
高周波誘導コイル部91の内部中空は、冷却液供給部96、97に接続されており、冷却液供給部96,97を介して外部から供給される冷却液を高周波誘導コイル部91の下部に設けられた噴出孔からワークWに向けて放出するように構成される。
第1加熱冷却部71と第2加熱冷却部72との間には、第1加熱冷却部71でワークWの表面に噴射された冷却液を外周方向に案内するための第1冷却液案内部101が設けられている。
第1冷却液案内部101は、円錐状の外表面を有する第1仕切部材102と、冷却液が第1仕切部材102の表面を外周側に向けて移動することを促進するためのエアーカーテンを生成する第1エアー吹き出し口103とを備えている。
第1仕切部材102は、耐熱性、耐腐食性を有する電気絶縁性の合成樹脂で構成されており、たとえば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂などを使用することが可能である。
また、第1仕切部材102は、中央部にワークWが上下に貫通する貫通孔を備えるとともに、上部中心部から下方周方向に向けて広がる円錐状の外表面を有している。
第1加熱冷却部71で噴射された冷却液は、この第1仕切部材102上を下方に向けて案内されてワークWの表面から離れた外周方向に落下する。
また、第1仕切部材102は内部中空を備えており、この内部中空と連通するように第1エアー吹き出し口103が形成されている。第1仕切部材102には、外部に連通するエアー導入口(図示せず)を備えており、このエアー導入口を介して供給されるエアーが第1エアー吹き出し口103を介して、第1仕切部材102の外周方向に噴出される。
このことにより、第1エアー吹き出し口103から吹き出されるエアーは、ワークWが貫通する貫通孔から冷却液が遠ざかるようにエアーカーテンを生成する。
このようにした第1冷却液案内部101は、第1加熱冷却部71からワークWの表面に向けて噴射された冷却液を、第1仕切部材102の表面を案内して外周方向に落下させるものであって、第1エアー吹き出し部103から噴射されるエアーにより、ワークWの表面から遠ざけるようにして外周側に落下させる。したがって、第1加熱冷却部71から噴射された冷却液が、第2加熱冷却部72に案内されて加熱処理を阻害することを防止できる。
〈機能構成〉
図5は、加熱処理装置の機能構成を示すブロック図である。
加熱処理装置10は、加熱冷却部71,72、高周波駆動部110、冷却液供給源111、センサ112、第1昇降モータ25、第2昇降モータ36、ワーク回転用モータ50、制御部113を備えている。
加熱冷却部71,72は、前述したようにそれぞれ高周波誘導コイル81,91で構成され、高周波電流が印加されることによって非接触式でワークWの加熱を行うとともに、冷却液の噴射によりワークWの急速な冷却を行う。
高周波駆動部110は、高周波誘導コイル部81,91に高周波の交流電流を供給するものである。高周波駆動部110から高周波電流を供給することにより、高周波誘導コイル部81,91の周辺に磁界が発生し、ワークWの表面に流れる交流の誘導電流でワークWを加熱することができる。
冷却液供給源111は、冷却液供給部86、87を介して高周波誘導コイル部81,91の内部中空に冷却液を供給することによりワークWを冷却する。加熱処理装置10による加熱処理が開始されると、冷却液供給源111は、高周波誘導コイル部81,91への冷却液供給を開始する。冷却液供給源111から供給される冷却液は、水またはソリブル液などが用いられる。
また、冷却液供給源111が、高周波誘導コイル部81,91の内部中空に冷却液を供給するとともに、高周波誘導コイル部81,91のコイル冷却部85,95に対する冷却液を供給するように構成することも可能である。
センサ112は、ワークWの表面温度を測定する温度センサで構成され、測定された表面温度は電気的信号に変換されて制御部113に送信される。センサ112を用いることなく、高周波駆動部110の駆動状態とワークWの温度との関係が正確に特定できる場合には、このセンサ112を省略することも可能である。
第1昇降モータ25は、ワークWを支持するスライダ30をワークWの軸方向に移動するためのモータであり、装置本体20側に支持された焼き入れ部60に対してスライダ30が相対的に上下動するように駆動される。
第2昇降モータ36は、下部センタ38と上部センタ43との間でワークWが挟持されるように、上部支持フレーム40の位置を調整するものであり、ワークWの長さに応じて上部センタ43が適切な位置になるように上部支持フレーム40の位置決めを行う。
ワーク回転用モータ50は、加熱することによりスライダ30に支持されたワークWに変形や歪みが生じることを防止するために、ワークWを軸線周りに回転駆動するものである。
制御部113は、加熱処理装置10の各部を制御するものであって、特に、ワークWの表面温度を計測するセンサ112からの信号に基づいて、高周波駆動部110から供給する高周波電流を制御するとともに、第1昇降モータ25によるワークWの移動速度を制御する。
また、制御部113は、加熱処理装置10の処理が開始されると、冷却液供給源111からの冷却液供給を開始する。
さらに、制御部113は、加熱処理装置10の処理が開始されると、ワークWを軸線周りに回転駆動するための回転用モータ50の駆動を開始させる。
第1実施形態による加熱処理装置10は、下部支持フレーム37に設けられた下部センタ38と上部支持フレーム40に設けられた上部センタ43により、ワークWの両端部を支持する。この時、上部支持フレーム40を第2昇降モータ36により移動させて、ワークWが下部センタ38と上部センタ43に挟持されるように、上部支持フレーム40の位置を調節する。
この状態で、高周波駆動部110から高周波の交流電流を加熱冷却部71,72に印加してワークWを加熱するとともに、冷却液供給源111から冷却液を供給する。
同時に、ワーク回転用モータ50により、ワークWを軸線周りに所定速度で回転駆動するとともに、第1昇降モータ25を駆動してワークWが所定の速度で焼き入れ部60に対して相対的に下降するように制御を行う。
第1加熱冷却部71において加熱されたワークWは、その直下で噴射される冷却液により急速に冷却されて、焼き入れ処理がなされる。ワークWは、第1昇降モータ25の駆動に伴って、スライダ30とともに下方に移動しており、第1加熱冷却部71において焼き入れ処理がなされた箇所が、第2加熱冷却部82に到達すると、再度加熱され、その直下で噴射される冷却液により再度急速に冷却される。
第1加熱冷却部71と第2加熱冷却部72との間には第1冷却液案内部101が設けられており、第1加熱冷却部71においてワークWの表面に噴射された冷却液は、第1冷却液案内部101の第1エアー吹き出し部103から供給されるエアーにより、第1仕切部材102の外表面を案内されてワークWから遠ざかる方向に落下する。このことにより、第2加熱冷却部72に対する冷却液を遮断し、冷却液の第2加熱冷却部72への影響を排除することができる。
〈第2実施形態〉
前述した第1実施形態では、焼き入れ部60に2つの加熱冷却部71,72を設けたものを例示している。焼き入れ部60の加熱冷却部の数は、3つ以上設けることも可能であり、第2実施形態として、3つの加熱冷却部を設けたものを例示する。
なお、第2実施形態における加熱処理装置の全体構成としては、図1、図2及び図5の構成に基づくものであり、詳細な説明は省略する。
図6は、本発明の第2実施形態の加熱処理装置に用いられる焼き入れ部60の構成を概念的に表した斜視図である。
この第2実施形態では、第1実施形態の焼き入れ部60において、第3加熱冷却部73及び第2冷却液案内部131が追加されたものであり、第1加熱冷却部71、第2加熱冷却部72及び第1冷却液案内部101は、第1実施形態と同様の構成である。
第3加熱冷却部73は、第1加熱冷却部71と同様の構成であり、銅などの電気伝導度の高い金属で構成されており、その内周面がワークWの外周面に近接するように環状に形成された高周波誘導コイル部121を備えている。高周波誘導コイル部121は、電源供給部(図示せず)からの電源電圧が供給される第1電極部122、第2電極部123と一体的に構成されている。第1電極部122及び第2電極部123は、ベーク板などの電気絶縁性の材料で構成される絶縁部124によって電気的に絶縁されており、電源供給部から電源電圧を高周波誘導コイル部121に伝達する。
高周波誘導コイル部121は、コイル冷却部125を備えており、内部に中空を有する熱伝導性の高い物質で構成されたコイル冷却部125を高周波誘導コイル部121と一体的に形成している。このコイル冷却部125は、高周波コイル部121と同一の材料で一体的に形成することが可能であり、内部中空部には外部から冷却液が供給されて循環するように構成される。
高周波誘導コイル部121は、内部中空を有しており、下面には内部中空に連通する複数の噴出孔を備えており、この噴出孔は、高周波コイル部121の内部中空に供給された冷却液を、高周波誘導コイル部121の底面下方であって、高周波誘導コイル部121の内周方向に向けて冷却液を噴出するように、ノズル部分が傾斜した構成となっている。
高周波誘導コイル部121の内部中空は、冷却液供給部126、127に接続されている。加熱冷却部73では、高周波誘導コイル部121に供給される高周波電圧により非接触式でワークWを加熱するとともに、冷却液供給部126,127を介して外部から供給される冷却液を高周波誘導コイル部121の下部に設けられた噴出孔からワークWに向けて放出することにより、急速に冷却している。
第2加熱冷却部72と第3加熱冷却部73との間には、第2加熱冷却部72でワークWの表面に噴射された冷却液を外周方向に案内するための第2冷却液案内部131が設けられている。
第2冷却液案内部131は、第1冷却液案内部101と同様の構成であり、円錐状の外表面を有する第2仕切部材132と、冷却液が第2仕切部材132の表面を外周側に向けて移動することを促進するためのエアーカーテンを生成する第2エアー吹き出し口133とを備えている。
第2仕切部材132は、第1仕切部材101と同一の材質で構成することができ、耐熱性、耐腐食性を有する電気絶縁性の合成樹脂、たとえば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂などを使用することが可能である。
また、第2仕切部材132は、中央部にワークWが上下に貫通する貫通孔を備えるとともに、上部中心部から下方周方向に向けて広がる円錐状の外表面を有している。
第2加熱冷却部72で噴射された冷却液は、この第2仕切部材132上を下方に向けて案内されてワークWの表面から離れた外周方向に落下する。
また、第2仕切部材132は内部中空を備えており、この内部中空と連通するように第2エアー吹き出し口133が形成されている。第2仕切部材132には、外部に連通するエアー導入口(図示せず)を備えており、このエアー導入口を介して供給されるエアーが第2エアー吹き出し口133を介して、第2仕切部材132の外周方向に噴出される。
このことにより、第2エアー吹き出し口133から吹き出されるエアーは、ワークWが貫通する貫通孔から冷却液が遠ざかるようにエアーカーテンを生成する。
このようにした第2冷却液案内部131は、第2加熱冷却部72からワークWの表面に向けて噴射された冷却液を、第2仕切部材132の表面を案内して外周方向に落下させるものであって、第2エアー吹き出し部133から噴射されるエアーにより、ワークWの表面から遠ざけるようにして外周側に落下させる。したがって、第2加熱冷却部72から噴射された冷却液が、第3加熱冷却部73に案内されて加熱処理を阻害することを防止できる。
この第2実施形態においても、図5に示すような機能構成とすることができ、下部支持フレーム37の下部センタ38と上部支持フレーム40の上部センタ43により、ワークWの両端部を支持し、ワーク回転用モータ50により、ワークWを軸線周りに所定速度で回転駆動するとともに、第1昇降モータ25を駆動してワークWが所定の速度で焼き入れ部60に対して相対的に下降するように制御を行う。
加熱冷却部71〜73に高周波駆動部110から高周波の交流電流を印加してワークWを加熱するとともに、冷却液供給源111から冷却液を加熱冷却部71〜73に供給することにより、加熱されたワークWは冷却液により急速に冷却されて、焼き入れ処理がなされる。第1加熱冷却部71〜第3加熱冷却部73による焼き入れ処理は、ワークWの軸線方向の移動に伴って連続的に実行されて、短時間での焼き入れ処理が繰り返し行われる。
第1加熱冷却部71と第2加熱冷却部72との間には第1冷却液案内部101が設けられており、第1加熱冷却部71においてワークWの表面に噴射された冷却液は、第1冷却液案内部101の第1エアー吹き出し部103から噴出するエアーにより、第1仕切部材102の外表面を案内されてワークWから遠ざかる方向に落下する。このことにより、第2加熱冷却部72への冷却液を遮断することができる。
同様に、第2加熱冷却部72と第3加熱冷却部73との間に設けられた第2冷却液案内部131により、第2加熱冷却部72においてワークWの表面に噴射された冷却液は、第2冷却液案内部131の第2エアー吹き出し部133から噴出するエアーにより、第2仕切部材132の外表面を案内されてワークWから遠ざかる方向に落下する。このことにより、第3加熱冷却部73への冷却液を遮断することができる。
〈加熱処理方法〉
炭素綱をワークとして高周波加熱による焼き入れ処理を行う際に、焼き入れ工程の前に少なくとも1回、A3変態点を超えて高周波加熱し、A1変態点まで冷却する工程を追加することが、特許文献1に提案されている。
この方法では、焼き入れ工程の前に、A3変態点を超える加熱を行うことにより、加熱されたワークをオーステナイト単相にし、炭化物を固溶させて炭素を素地に溶け込ませる。
冷却工程において、A1変態点を下回る温度まで冷却して、残留オーステナイトを除いてパーライト変態が終了する温度まで冷却する。
再び、ワークをA3変態点まで加熱して、A1変態点まで冷却することによって、焼き入れ温度に加熱した際に生じるオーステナイト粒度を微細にすることができるとしている。
本発明では、前述したような本発明の加熱処理装置10を用いて、工作機械、建設機械などに用いられるシャフトのような長尺状のワークに焼き入れ処理を行う。
ワークの材質としては、たとえば、0.9%〜1%程度のカーボンを含有する高炭素綱を用いることができる。このような高炭素綱としては、ベアリングシャフト、スライドシャフトなどに用いられるSUJ2軸受け綱を一例として挙げることができる。
本発明では、このような高炭素綱であるワークWに対して、加熱冷却部の加熱部によりオーステナイト(γ−鉄)+セメンタイト(Fe3C)の状態になる温度(725℃〜950℃)まで加熱し、冷却部により急速に冷却してマルテンサイト(α固溶体)とすることを連続して繰り返し行う。
第2実施形態の場合を例に説明すると、ワーク回転用モータ50による回転駆動によりワークWを回転させながら第1昇降用モータ25によりスライダ30を下降させる。焼き入れ部60に設けられた第1加熱冷却部71に所定の高周波電流を印加し、ワークWが第1温度P1になるように制御する。第1加熱冷却部71による加熱温度は、フェライト(α−鉄)における炭素の溶解度が最大になる725℃以上の温度であり、フェライト(α−鉄)がオーステナイト単相となる950℃以下の温度であることが好ましく、さらには820℃〜950℃の範囲であることが好ましい。
第1加熱冷却部71により、第1温度P1に加熱されたワークWは、第1加熱冷却部71により噴射される冷却液により急速に冷却される。このとき、ワークWは第1温度P1からマルテンサイト変態が生起する温度まで急速に冷却される。このとき、加熱されてオーステナイト(γ−鉄)とセメンタイト(Fe3C)の相を有する状態から急速に冷却された炭素綱は、マルテンサイト、フェライトなどの結晶と、冷却される前の旧オーステナイトの結晶とを含む多結晶体となっている。この冷却された炭素綱に含まれる旧オーステナイト結晶粒及びその他のマルテンサイト及びフェライトなどの結晶粒は微細化される。このような炭素綱は、結晶粒が微細化されるほど疲労強度が向上する。
このように結晶構造が微細化されたワークWを、さらに第2加熱部61により第2温度P2に加熱する。第2加熱冷却部72による加熱温度は、第1温度P1と同様に、フェライト(α−鉄)における炭素の溶解度が最大になる725℃以上の温度であり、フェライト(α−鉄)がオーステナイト単相となる950℃以下の温度であることが好ましく、さらには820℃〜950℃の範囲であることが好ましい。また、第2温度P2は、第1温度P1と同一または第1温度P1より低く設定することが可能である。
第2加熱冷却部72により、第2温度P2に加熱されたワークWは、噴射される冷却液により急速に冷却される。このとき、ワークWは第2温度P2からマルテンサイト変態が生起する温度まで急速に冷却される。第1加熱冷却部71における加熱冷却処理と同様に、加熱されてオーステナイト(γ−鉄)とセメンタイト(Fe3C)の相を有する状態から急速に冷却された炭素綱は、微細化された旧オーステナイト、残留オーステナイト、マルテンサイト、フェライトなどの結晶を含むものであり、第1加熱冷却部71を通過した直後の結晶粒よりもさらに微細化される。
ワークWは、さらに第3加熱冷却部73により第3温度P3に加熱される。第3加熱冷却部73による加熱温度は、第1温度P1及び第2温度P2と同様に、フェライト(α−鉄)における炭素の溶解度が最大になる725℃以上の温度であり、フェライト(α−鉄)がオーステナイト単相となる950℃以下の温度であることが好ましく、さらには820℃〜950℃の範囲であることが好ましい。また、第3温度P3は、第1温度P1及び第2温度P2と同一または第2温度P2より低く設定することが可能である。
第3加熱部73により、第3温度P3に加熱されたワークWは、噴射される冷却液により急速に冷却される。このとき、ワークWは第3温度P3からマルテンサイト変態が生起する温度まで急速に冷却される。第1加熱冷却部71及び第2加熱冷却部72における加熱冷却処理と同様に、加熱されてオーステナイト(γ−鉄)とセメンタイト(Fe3C)の相を有する状態から急速に冷却された炭素綱は、微細化された旧オーステナイト、残留オーステナイト、マルテンサイト、フェライトなどの結晶を含むものであり、第2加熱冷却部72を通過した直後の結晶粒よりもさらに微細化される。
図7は、第2実施形態による加熱処理装置10を用いて、ワークWへの加熱処理を実施する際の各加熱部における加熱温度の例を示す。
第1加熱冷却部71による加熱温度は第1温度P1に設定されており、第1時間T1だけ加熱される。
第1時間T1経過後のワークWは、第1加熱冷却部72によりマルテンサイト変態する温度まで急速に冷却される、
ワークWは、続けて第2加熱冷却部72により、第2温度P2で第2時間T2だけ加熱される。
第2時間T2経過後のワークWは、第2加熱冷却部72によりマルテンサイト変態する温度まで急速に冷却される、
ワークWは、続けて第3加熱冷却部73により、第3温度P3で第3時間T3だけ加熱される。
第3時間T3経過後のワークWは、第3加熱冷却部73によりマルテンサイト変態する温度まで急速に冷却される、
ここで、第1加熱冷却部71〜第3加熱冷却部73による加熱温度である第1温度P1〜P3は、それぞれ同一の温度することも可能であり、P1>P2>P3となるように設定することも可能である。
〈X線回折装置による結晶構造解析〉
前述したような加熱処理装置10を用いて焼き入れ処理を行ったワークに対して、X線回折装置を用いた結晶構造解析を行った。
X線照射の条件は、X線源:Cr−K α、電圧:35kV、電流:40mA、コリメータ:300μm(ダブルピンホール)、検出器距離:15cm、回折面:αFe211、被ばく時間:8時間とし、試料水平方向に対して角度θでX線を入射し、入射角度θに対して2θの角度で反射するX線を検出して、強度変化を調べる2θ法を用いた。
試料としては、直径16mmのワークWを120mm/secで移動させながら、160Wの高周波出力で、1〜3回の焼き入れを行った第1サンプルIL1〜第3サンプルIL3、直径12mmのワークWを130mm/secで移動させながら、170Wの高周波出力で、1〜3回の焼き入れを行った第4サンプルIH1〜第6サンプルIH3を用いた。各サンプルは、最後の焼き入れ処理後に、1時間の間180度で焼きなました。
図8は、X線回折装置を用いたX線回折処理において、反射角2θにおける検出強度を表すグラフである。
図8では、2θ法により各サンプルに対するX線回折を実行し、αFe211回折面に対する検出ピークを特定するものであって、第1サンプルIL1及び第3サンプルIL3による検出結果を例として示している。
図8によれば、X線回折による分析結果、分析ピークとして反射角2θ=156度を得た。
第1サンプル〜第6サンプルに関して、前述したような方法でX線回折による結晶構造解析を行い、以下のような結果を得ることができた。
このように、第1サンプルIL1〜第3サンプルIL3では、2回の焼き入れ処理を行った第2サンプルIL2のマルテンサイト深度が最も深くなり、1回の焼き入れを行った第1サンプルIL1よりも硬度が高くなった。
また、第4サンプルIH1〜第6サンプルIH3では、3回の焼き入れ処理を行った第6サンプルIH6のマルテンサイト深度が最も深くなり、1回の焼き入れ処理を行った第4サンプルIH4よりも硬度が高くなった。
図9は、第4サンプルIH1の結晶構造の顕微鏡写真である。
図10は、第5サンプルIH2の結晶構造の顕微鏡写真である。
図11は、第6サンプルIH3の結晶構造の顕微鏡写真である。
図9〜図11に示すように、1回の焼き入れ処理を行った第4サンプルIH1に比して、2回の焼き入れ処理を行った第5サンプルIH2がより結晶構造が微細になっており、さらに、3回の焼き入れ処理を行った第6サンプルIH3の結晶構造が最も微細になっていることがわかる。
したがって、第4サンプルIH1〜第6サンプルIH3のような条件で焼き入れ処理を行った場合は、3回の焼き入れ処理を行った場合にマルテンサイトが多く形成されて、より硬度を増加することが可能となる。
このような第4サンプルIH1〜第6サンプルIH3に対して、回転曲げ疲労検査を行った結果を以下に示す。
図12は、回転曲げ疲労試験機の説明図である。
回転曲げ疲労試験機1200は、サンプル1220を軸周りに回転駆動するための回転モータ1201と、回転モータ1201の回転軸に取り付けられサンプル1220の一端を保持するチャック1202と、サンプル1220の他端側を回転可能に保持するベアリング1203と、ベアリング1203を介してサンプル1220の他端側に荷重をかけるためのウェイト1204とを備えている。
図13は、回転曲げ疲労試験の結果を示すS-N線図である。
図13のS-N線図は、前述の回転曲げ疲労試験機1200を用いて、ウェイト1204の荷重によりサンプル1220に所定の繰り返し応力を付与し、サンプル1220が破壊するために必要な繰り返し回数として、回転モータ1201の回転数とをプロットしたものである。
図13によれば、1回の焼き入れ処理を行った第4サンプルIH1の場合には、1.1kg程度の荷重では106回以上の繰り返し応力の付与に耐えるものの、1.7kg程度の負荷では103回の繰り返し応力の付与で破壊した。
また、2回の焼き入れ処理を行った第5サンプルIH2の場合には、1.2kg程度の荷重では106回以上の繰り返し応力の付与に耐えるものの、1.2kg〜2kgの荷重による繰り返し応力の付与に対しては、106回未満で破壊が生じた。
さらに、3回の焼き入れ処理を行った第6サンプルIH3の場合には、1.6kg超の荷重では、4×105回未満の繰り返し応力の付与で破壊が生じるものの、1.6kg程度の荷重で2×106回程度まで強度を維持した。
このようにして、回転曲げ疲労試験の結果によれば、第4サンプルIH1〜第6サンプルIH3のうち、3回の焼き入れ処理を行った第6サンプルIH3が、疲労寿命が長いことがわかった。
〈他の実施形態〉
(A)加熱処理装置10の細部については、記載した実施例のものに限定されるものではなく、たとえば、ワーク回転用モータ50を下部支持フレーム37側に設けることが可能である。また、スライド30の上下動は、ボールネジ軸機構を用いたものに代えて、ラックとピニオンの機構、その他種々のものを採用することが可能である。
また、装置本体20やスライド30の形状・構成などについても、特に限定するものではなく、種々の構成を採用することが可能である。
(B)焼き入れ部60における加熱冷却部の数は、実施例のものに限定されるものではなく、4つ以上設けることも可能である。本発明では、複数の加熱冷却部を設けることで、ワークWに対する加熱冷却処理を連続して実行し、ワークW内部の結晶粒をより微細化するための加熱処理を短時間で実行可能としている。このため、ワークWを複数の加熱冷却部に連続して通過させるとともに、冷却液が次の段の加熱部に影響を及ぼさないように冷却液案内部を設けている。したがって、本発明のような構成とすることに複数の加熱冷却部を設置して、焼き入れ工程を連続して行うことが可能となる。
(C)焼き入れ部60の各加熱冷却部による加熱温度は、ワークWの材質やサイズ、焼き入れを行う深さ、製品の用途などに応じて設定することができる。
耐摩耗性を必要とする工作機械部品、建設機械部品、自動車部品、その他の用途に用いられるシャフトであって、耐久性が高く、高品質なシャフトの製作に利用できる。
60:焼き入れ部
71、72、73:加熱冷却部
101、131:冷却液案内部

Claims (4)

  1. 環状の高周波加熱コイルで構成される加熱部と、前記加熱部により加熱されたワークの表面に冷却液を供給するノズルを備えており前記加熱部の下方に位置し前記加熱部で加熱されたワークを冷却するための冷却部とを複数対配列し、長尺状のワークの長さ方向に相対的に上下動させながら前記加熱部及び冷却部による加熱及び冷却を連続的に行って、前記ワーク表面を冷却した後の冷却液が下方に位置する加熱部に当接しないように、一対の加熱部及び冷却部と、他の一対の加熱部及び冷却部と、の間において、前記冷却液の下方に円錐状の外表面を有する仕切部材及びエアーを供給するエアーノズルを設け、前記仕切部材により前記冷却液を外周側に案内し、前記エアーノズルにより前記冷却液が前記仕切部材の表面を外周側に向けて移動することを促進する、前記ワークに対する焼き入れを行う焼き入れ方法。
  2. 長尺状のワークを長さ方向に相対的に上下移動させながら加熱及び冷却を行って、ワークに対する焼き入れ処理を行う焼き入れ装置であって、
    環状の高周波加熱コイルで構成される加熱部と、前記加熱部により加熱されたワークの表面に冷却液を供給するノズルを備えており前記加熱部の下方に位置し前記加熱部で加熱されたワークを冷却する冷却部とを複数対配列した加熱冷却部と、
    前記ワークの両端部を支持し、前記支持したワークを前記焼き入れ部に対して相対的に上下動させる移動部と、
    前記ワーク表面を冷却した後の冷却液が下方に位置する加熱部に当接しないように、一対の加熱部及び冷却部と、他の一対の加熱部及び冷却部と、の間において、前記冷却液の下方に設けられており、前記冷却液を外周側に案内する冷却液案内部と、
    を備え
    前記冷却液案内部は、前記冷却液を外周側に案内する円錐状の外表面を有する仕切部材と、前記冷却液が前記仕切部材の表面を外周側に向けて移動することを促進するためのエアーを供給するエアーノズルとを備える焼き入れ装置。
  3. 環状の高周波加熱コイルで構成される加熱部と、前記加熱部により加熱されたワークの表面に冷却液を供給するノズルを備えており前記加熱部の下方に位置し前記加熱部で加熱されたワークを冷却するための冷却部とを複数対配列し、長尺状のワークの長さ方向に相対的に上下動させながら前記加熱部及び冷却部による加熱及び冷却を連続的に行って、前記ワーク表面を冷却した後の冷却液が下方に位置する加熱部に当接しないように、一対の加熱部及び冷却部と、他の一対の加熱部及び冷却部と、の間において、前記冷却液の下方に前記ワークに近接する側から離れる方向に沿って下方に傾斜を有する円錐状の外表面を有する仕切部材を設け、前記仕切部材により前記冷却液を外周側に案内する、前記ワークに対する焼き入れを行う焼き入れ方法。
  4. 長尺状のワークを長さ方向に相対的に上下移動させながら加熱及び冷却を行って、ワークに対する焼き入れ処理を行う焼き入れ装置であって、
    環状の高周波加熱コイルで構成される加熱部と、前記加熱部により加熱されたワークの表面に冷却液を供給するノズルを備えており前記加熱部の下方に位置し前記加熱部で加熱されたワークを冷却する冷却部とを複数対配列した加熱冷却部と、
    前記ワークの両端部を支持し、前記支持したワークを前記焼き入れ部に対して相対的に上下動させる移動部と、
    前記ワーク表面を冷却した後の冷却液が下方に位置する加熱部に当接しないように、一対の加熱部及び冷却部と、他の一対の加熱部及び冷却部と、の間において、前記冷却液の下方に設けられており、前記冷却液を外周側に案内する冷却液案内部と、
    を備え
    前記冷却液案内部は、前記ワークに近接する側から離れる方向に沿って下方に傾斜を有する円錐状の外表面を有し、前記冷却液を外周側に案内する仕切部材を備える焼き入れ装置。
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