JPH05195199A - 耐摩耗性、耐食性に優れた硼化物系超硬質コーティン グ薄膜の製造方法 - Google Patents
耐摩耗性、耐食性に優れた硼化物系超硬質コーティン グ薄膜の製造方法Info
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- JPH05195199A JPH05195199A JP4283649A JP28364992A JPH05195199A JP H05195199 A JPH05195199 A JP H05195199A JP 4283649 A JP4283649 A JP 4283649A JP 28364992 A JP28364992 A JP 28364992A JP H05195199 A JPH05195199 A JP H05195199A
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Abstract
(57)【要約】
[目的] 機械部品や切削工具などの表面に、耐食性、
耐摩耗性および耐凝着性に優れ、密着性の良い硼化物系
超硬質コーティング薄膜の製造方法を提供する。 [構成] TiB2 などの2元系硼化物粉末にMo2N
iB2などの3元系複硼化物粉末を添加し、または、そ
の混合粉末にさらにTiC,TiN,TiCN粉末など
を添加し、湿式混合粉砕して焼結することにより硼化物
系超硬質合金ソースを作成し、これを用いて、スパッタ
リング、イオンビームスパッタリング、電子サイクロト
ロンスパッタリング、真空蒸着あるいはイオンプレーテ
ィングなど主としてPVD法により薄膜を形成する。
耐摩耗性および耐凝着性に優れ、密着性の良い硼化物系
超硬質コーティング薄膜の製造方法を提供する。 [構成] TiB2 などの2元系硼化物粉末にMo2N
iB2などの3元系複硼化物粉末を添加し、または、そ
の混合粉末にさらにTiC,TiN,TiCN粉末など
を添加し、湿式混合粉砕して焼結することにより硼化物
系超硬質合金ソースを作成し、これを用いて、スパッタ
リング、イオンビームスパッタリング、電子サイクロト
ロンスパッタリング、真空蒸着あるいはイオンプレーテ
ィングなど主としてPVD法により薄膜を形成する。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、硼化物系超硬質合金ソ
ースを出発原料としてスパッタリング、イオンビームス
パッタリング、電子サイクロトロンスパッタリング、真
空蒸着あるいはイオンプレーティングすることを特徴と
する耐摩耗性、耐食性に優れた硼化物系超硬質コーティ
ング薄膜の製造方法に関する。
ースを出発原料としてスパッタリング、イオンビームス
パッタリング、電子サイクロトロンスパッタリング、真
空蒸着あるいはイオンプレーティングすることを特徴と
する耐摩耗性、耐食性に優れた硼化物系超硬質コーティ
ング薄膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】産業機械の自動化、高速化やメンテナン
スフリー化などの高性能化、あるいは製品の高品質化に
伴い、そこで用いられる機械部品や切削工具などは一段
と厳しい耐摩耗性、耐食性、耐熱性が求められるように
なってきた。例えば、機械の高速化は部品に従来以上の
摩耗損傷を与えることになり、高速化を達成するために
は各部品が耐摩耗性および耐熱性に優れることが必須の
条件となっている。
スフリー化などの高性能化、あるいは製品の高品質化に
伴い、そこで用いられる機械部品や切削工具などは一段
と厳しい耐摩耗性、耐食性、耐熱性が求められるように
なってきた。例えば、機械の高速化は部品に従来以上の
摩耗損傷を与えることになり、高速化を達成するために
は各部品が耐摩耗性および耐熱性に優れることが必須の
条件となっている。
【0003】現在、構造用材料として最も多く使用され
ている材料は、工具鋼や高速度鋼などの鉄鋼材料であ
る。これは鉄鋼材料が、加工し易く材料費が安価である
割に強度や破壊靱性値が高く、組成や熱処理により特性
を変化させて、さまざまな用途に対応させることができ
るなどの利点を有するためであり、古くから研究が進
み、信頼性の点からも他の材料の追随を許さない地位を
占めている。しかし、前述したような、最近の機械の高
性能化、高機能化に伴う耐摩耗性、耐熱性あるいは耐食
性に対する要求には対応できず、新しい材料の開発が望
まれている。
ている材料は、工具鋼や高速度鋼などの鉄鋼材料であ
る。これは鉄鋼材料が、加工し易く材料費が安価である
割に強度や破壊靱性値が高く、組成や熱処理により特性
を変化させて、さまざまな用途に対応させることができ
るなどの利点を有するためであり、古くから研究が進
み、信頼性の点からも他の材料の追随を許さない地位を
占めている。しかし、前述したような、最近の機械の高
性能化、高機能化に伴う耐摩耗性、耐熱性あるいは耐食
性に対する要求には対応できず、新しい材料の開発が望
まれている。
【0004】このような要求に対し、さまざまなセラミ
ックスやその複合材料が開発されているが、信頼性やコ
ストパフォーマンスという点でまだ問題を多く残してい
る。また、最近TiB2,ZrB2などの硼化物を主成分
とした高耐摩耗性超硬質合金が提案されている(例えば
特公昭61−19593、特公昭61−50909な
ど)。TiB2,ZrB2などの硼化物は、TiCなどの
炭化物の持つ耐摩耗性とTiNなどの窒化物の持つ耐熱
性の両方を兼ね備えており、さらにアルミニウム、亜鉛
などの溶融金属に侵食されないなど多くの利点を有して
いる。高耐摩耗性超硬質合金はこのような利点を持つと
ともに、ち密で構造用材料として充分に高い強度を有す
るため、非常に優れた耐摩耗性、耐熱性、耐食性を示
し、熱間ダイス、プレス金型や切削工具などに広く使用
されている。この高耐摩耗性超硬質合金は特公昭61−
19593などに提案されているように、原料粉末を粉
砕、混合し、成形したのち焼結する、いわゆる粉末冶金
法で製造されるもので、通常は焼結体で使用されてい
る。各種装置、機械に用いられる耐摩耗部材や部品の多
くは、その一部分のみに耐摩耗性や耐熱性などの特性が
必要である場合が多く、また、複雑で大型形状の部材で
は、機械加工の困難さもあって、全体をこの合金で構成
することは経済的に有利ではない。
ックスやその複合材料が開発されているが、信頼性やコ
ストパフォーマンスという点でまだ問題を多く残してい
る。また、最近TiB2,ZrB2などの硼化物を主成分
とした高耐摩耗性超硬質合金が提案されている(例えば
特公昭61−19593、特公昭61−50909な
ど)。TiB2,ZrB2などの硼化物は、TiCなどの
炭化物の持つ耐摩耗性とTiNなどの窒化物の持つ耐熱
性の両方を兼ね備えており、さらにアルミニウム、亜鉛
などの溶融金属に侵食されないなど多くの利点を有して
いる。高耐摩耗性超硬質合金はこのような利点を持つと
ともに、ち密で構造用材料として充分に高い強度を有す
るため、非常に優れた耐摩耗性、耐熱性、耐食性を示
し、熱間ダイス、プレス金型や切削工具などに広く使用
されている。この高耐摩耗性超硬質合金は特公昭61−
19593などに提案されているように、原料粉末を粉
砕、混合し、成形したのち焼結する、いわゆる粉末冶金
法で製造されるもので、通常は焼結体で使用されてい
る。各種装置、機械に用いられる耐摩耗部材や部品の多
くは、その一部分のみに耐摩耗性や耐熱性などの特性が
必要である場合が多く、また、複雑で大型形状の部材で
は、機械加工の困難さもあって、全体をこの合金で構成
することは経済的に有利ではない。
【0005】一部分に耐摩耗性や耐熱性を必要とする場
合、母材を信頼性が高く安価な鉄鋼材料とし、必要とさ
れる部分だけに高硬度を有するTiCなどの炭化物、T
iNなどの窒化物、Al2O3などの酸化物の薄膜をイオ
ンプレーティング法、蒸着法、あるいはスパッタリング
法などのPVD法、およびCVD法で表面に硬質のコー
ティング層を形成することが行われている。特にTiC
やTiNなどの炭化物や窒化物はイオンプレーティング
法により密着性の良いコーティング薄膜が得られてい
る。炭化物、窒化物、酸化物と同様、高硬度で優れた耐
摩耗性、耐食性、耐熱性を有する物質として硼化物があ
る。硼化物の中にはTiB2やZrB2などアルミニウ
ム、マグネシウム、亜鉛、鉛、ナトリウムなどの溶融金
属に対してきわめて優れた耐食性を示すと共に耐摩耗性
や耐熱性に優れる材料もあり、炭化物、窒化物および酸
化物コーティング薄膜によっては十分対応しきれない分
野への適用も期待されている。
合、母材を信頼性が高く安価な鉄鋼材料とし、必要とさ
れる部分だけに高硬度を有するTiCなどの炭化物、T
iNなどの窒化物、Al2O3などの酸化物の薄膜をイオ
ンプレーティング法、蒸着法、あるいはスパッタリング
法などのPVD法、およびCVD法で表面に硬質のコー
ティング層を形成することが行われている。特にTiC
やTiNなどの炭化物や窒化物はイオンプレーティング
法により密着性の良いコーティング薄膜が得られてい
る。炭化物、窒化物、酸化物と同様、高硬度で優れた耐
摩耗性、耐食性、耐熱性を有する物質として硼化物があ
る。硼化物の中にはTiB2やZrB2などアルミニウ
ム、マグネシウム、亜鉛、鉛、ナトリウムなどの溶融金
属に対してきわめて優れた耐食性を示すと共に耐摩耗性
や耐熱性に優れる材料もあり、炭化物、窒化物および酸
化物コーティング薄膜によっては十分対応しきれない分
野への適用も期待されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】硼化物は難焼結性であ
るため、硼化物のコーティングは固体のソースを必要と
しないCVD法や、IVa〜VIa属金属と硼素を別々
の容器に入れたものを蒸発源としたイオンプレーティン
グ法および蒸着法によって行われている。前者は通常、
基板温度を750℃以上の高温とするため、基板の変質
や熱変形が起こり易く、耐熱性の乏しい基板にはコーテ
ィングできないという欠点がある。後者は純粋な硼素が
高価であり、またIVa〜VIa属金属と硼素の沸点差
が大きいため、各々の蒸発速度を厳密にコントロールし
なければ安定したコーティング薄膜は得られず、工業化
されるには至っていない。
るため、硼化物のコーティングは固体のソースを必要と
しないCVD法や、IVa〜VIa属金属と硼素を別々
の容器に入れたものを蒸発源としたイオンプレーティン
グ法および蒸着法によって行われている。前者は通常、
基板温度を750℃以上の高温とするため、基板の変質
や熱変形が起こり易く、耐熱性の乏しい基板にはコーテ
ィングできないという欠点がある。後者は純粋な硼素が
高価であり、またIVa〜VIa属金属と硼素の沸点差
が大きいため、各々の蒸発速度を厳密にコントロールし
なければ安定したコーティング薄膜は得られず、工業化
されるには至っていない。
【0007】固体のソースを用いる方法として、TiB
2やZrB2をホットプレスによって作成することが試み
られているが、ホットプレスによってもち密な焼結体を
得ることは難しく、気孔の多い焼結体では安定したソー
スとはならないし、またソースとして適した形状に加工
することも困難である。また、TiB2やZrB2に微量
のFe,Ni,Coを添加してち密化させたソースも提
案されている。しかし、TiやZrとBとは融解、蒸発
速度が異なるために、所定の組成のコーティング薄膜を
得るためにTiやZrとBの割合を調節することが必要
であるが、このソースには組成的な自由度がないために
その調節ができないという問題がある。
2やZrB2をホットプレスによって作成することが試み
られているが、ホットプレスによってもち密な焼結体を
得ることは難しく、気孔の多い焼結体では安定したソー
スとはならないし、またソースとして適した形状に加工
することも困難である。また、TiB2やZrB2に微量
のFe,Ni,Coを添加してち密化させたソースも提
案されている。しかし、TiやZrとBとは融解、蒸発
速度が異なるために、所定の組成のコーティング薄膜を
得るためにTiやZrとBの割合を調節することが必要
であるが、このソースには組成的な自由度がないために
その調節ができないという問題がある。
【0008】本発明は主としてPVD法により安定して
形成することが可能であり、密着性が高く、耐摩耗性、
耐熱性および耐食性に優れた硼化物系超硬質コーティン
グ薄膜の製造方法を提供することを目的とする。
形成することが可能であり、密着性が高く、耐摩耗性、
耐熱性および耐食性に優れた硼化物系超硬質コーティン
グ薄膜の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めには、MxBy(ただしMはTi,Zr,Ta,N
b,Cr,Vを表し、x=1〜2、y=1〜4である)
で表せる2元系硼化物の中から選ばれた少なくとも1種
以上を40〜98重量%(以下%は重量%)とMo2F
eB2,Mo2CoB2,Mo2NiB2,W2FeB2,W2
CoB2,W2NiB2,MoCoB,WFeB,WCo
Bの中から選ばれた1種以上の3元系複硼化物を2〜6
0%と、これらの合金中に含まれる不可避的不純物から
なる硼化物系超硬質合金ソース(以下合金ソースAとす
る)を出発材料とするか、あるいは、MxByで表せる
2元系硼化物の中から選ばれた少なくとも1種以上を3
0〜78%、Mo2FeB2,Mo2CoB2,Mo2Ni
B2,W2FeB2,W2CoB2,W2NiB2,MoCo
B,WFeB,WCoBの中から選ばれた1種以上の3
元系複硼化物を2〜30%、TiC,TiNおよびC/
Nの原子比が0.25〜4.0であるTiCNの中から
選ばれた少なくとも1種以上を10〜55%と、これら
の合金中に含まれる不可避的不純物からなる硼化物系超
硬質合金ソース(以下合金ソースBとする)を出発材料
としてとして、基板上にスパッタリング、イオンビーム
スパッタリング、電子サイクロトロンスパッタリング、
真空蒸着あるいはイオンプレーティングにより薄膜を形
成することにより可能である。これらの薄膜は、いずれ
も耐摩耗性、耐食性、耐熱性に優れているが、合金ソー
スAを用いて製造した薄膜は、特にアルミニウムや亜鉛
などの非鉄金属との耐摩耗性やそれらの溶融金属に対す
る耐食性に優れており、合金ソースBを用いて製造した
薄膜は、特に工具鋼などの鉄系材料との耐摩耗性に優れ
ている。
めには、MxBy(ただしMはTi,Zr,Ta,N
b,Cr,Vを表し、x=1〜2、y=1〜4である)
で表せる2元系硼化物の中から選ばれた少なくとも1種
以上を40〜98重量%(以下%は重量%)とMo2F
eB2,Mo2CoB2,Mo2NiB2,W2FeB2,W2
CoB2,W2NiB2,MoCoB,WFeB,WCo
Bの中から選ばれた1種以上の3元系複硼化物を2〜6
0%と、これらの合金中に含まれる不可避的不純物から
なる硼化物系超硬質合金ソース(以下合金ソースAとす
る)を出発材料とするか、あるいは、MxByで表せる
2元系硼化物の中から選ばれた少なくとも1種以上を3
0〜78%、Mo2FeB2,Mo2CoB2,Mo2Ni
B2,W2FeB2,W2CoB2,W2NiB2,MoCo
B,WFeB,WCoBの中から選ばれた1種以上の3
元系複硼化物を2〜30%、TiC,TiNおよびC/
Nの原子比が0.25〜4.0であるTiCNの中から
選ばれた少なくとも1種以上を10〜55%と、これら
の合金中に含まれる不可避的不純物からなる硼化物系超
硬質合金ソース(以下合金ソースBとする)を出発材料
としてとして、基板上にスパッタリング、イオンビーム
スパッタリング、電子サイクロトロンスパッタリング、
真空蒸着あるいはイオンプレーティングにより薄膜を形
成することにより可能である。これらの薄膜は、いずれ
も耐摩耗性、耐食性、耐熱性に優れているが、合金ソー
スAを用いて製造した薄膜は、特にアルミニウムや亜鉛
などの非鉄金属との耐摩耗性やそれらの溶融金属に対す
る耐食性に優れており、合金ソースBを用いて製造した
薄膜は、特に工具鋼などの鉄系材料との耐摩耗性に優れ
ている。
【0010】次に、本発明の硼化物系超硬質コーティン
グ薄膜の製造方法についてさらに詳細に説明する。
グ薄膜の製造方法についてさらに詳細に説明する。
【0011】まず、合金ソースA,Bの組成の限定理由
について説明する。合金ソースAでは、焼結中3元系複
硼化物が液相となることによってち密化を促進する、い
わゆる液相焼結によって高い機械的強度を得ることがで
きる。ここで、3元系複硼化物が2%未満では液相量が
少ないために焼結体を充分ち密化することができない。
このような気孔の多い状態では安定した薄膜を形成する
ためのソースとはなり得ない。また60%を越えると液
相量が多くなり過ぎ、焼結体の形が崩れるためにソース
としての形状が保てなくなる。従って3元系複硼化物は
2〜60%であることが望ましい。合金ソースBの3元
系複硼化物の役割は、合金ソースAと同様、液相焼結に
よる焼結の促進である。ここで3元系複硼化物が2%未
満では液相量が少ないために焼結体を充分ち密化するこ
とができない。また、合金ソースBを用いて製造した薄
膜は鉄系材料との耐摩耗性に優れているという特徴があ
るが、3元系複硼化物は鉄系材料とはやや凝着性に劣
り、30%を越えるとこの凝着のために鉄系材料に対す
る耐摩耗性が若干低下する。従って3元系複硼化物は2
〜30%の範囲が適当である。次に、TiC,TiNお
よびC/Nの原子比が0.25〜4.0であるTiCN
は10%未満では添加した効果がなく、また、これらの
硬度は2元系硼化物に比べると低いために、55%を越
えると合金の硬度低下が大きくなり、特に高速度摩擦に
おける摩耗が大きくなる。従ってTiC,TiNおよび
C/Nの原子比が0.25〜4.0であるTiCNは1
0〜55%の範囲が適当である。TiCは耐摩耗性、T
iNは耐熱性に優れ、TiCNはそれぞれに優れるとい
う特徴を持っており、その比率は用途によって変化させ
ることが必要である。その際、TiCNのC/Nの原子
比が0.25未満、すなわち、N量がC量の4倍を越え
るとTiCNとTiNの差がなくなり、また4.0を越
えるとTiCとの差がなくなるために、TiCNの特徴
を引き出すためにはC/Nの原子比を0.25〜4.0
としなければならない。
について説明する。合金ソースAでは、焼結中3元系複
硼化物が液相となることによってち密化を促進する、い
わゆる液相焼結によって高い機械的強度を得ることがで
きる。ここで、3元系複硼化物が2%未満では液相量が
少ないために焼結体を充分ち密化することができない。
このような気孔の多い状態では安定した薄膜を形成する
ためのソースとはなり得ない。また60%を越えると液
相量が多くなり過ぎ、焼結体の形が崩れるためにソース
としての形状が保てなくなる。従って3元系複硼化物は
2〜60%であることが望ましい。合金ソースBの3元
系複硼化物の役割は、合金ソースAと同様、液相焼結に
よる焼結の促進である。ここで3元系複硼化物が2%未
満では液相量が少ないために焼結体を充分ち密化するこ
とができない。また、合金ソースBを用いて製造した薄
膜は鉄系材料との耐摩耗性に優れているという特徴があ
るが、3元系複硼化物は鉄系材料とはやや凝着性に劣
り、30%を越えるとこの凝着のために鉄系材料に対す
る耐摩耗性が若干低下する。従って3元系複硼化物は2
〜30%の範囲が適当である。次に、TiC,TiNお
よびC/Nの原子比が0.25〜4.0であるTiCN
は10%未満では添加した効果がなく、また、これらの
硬度は2元系硼化物に比べると低いために、55%を越
えると合金の硬度低下が大きくなり、特に高速度摩擦に
おける摩耗が大きくなる。従ってTiC,TiNおよび
C/Nの原子比が0.25〜4.0であるTiCNは1
0〜55%の範囲が適当である。TiCは耐摩耗性、T
iNは耐熱性に優れ、TiCNはそれぞれに優れるとい
う特徴を持っており、その比率は用途によって変化させ
ることが必要である。その際、TiCNのC/Nの原子
比が0.25未満、すなわち、N量がC量の4倍を越え
るとTiCNとTiNの差がなくなり、また4.0を越
えるとTiCとの差がなくなるために、TiCNの特徴
を引き出すためにはC/Nの原子比を0.25〜4.0
としなければならない。
【0012】本発明の合金ソースは特公昭61−195
93あるいは特公昭61−50909に開示されている
粉末冶金法によって製造することができる。合金ソース
Aでは、例えば、2元系硼化物TiB2 粉末に3元系複
硼化物Mo2NiB2粉末を所定の組成となるように添加
し、合金ソースBでは、例えば2元系硼化物ZrB2お
よびTiCN粉末に3元系複硼化物Mo2FeB2粉末を
所定の組成となるように添加して、アトライターあるい
は振動ボールミルで湿式混合と粉砕を十分に行った後、
窒素ガス中で乾燥造粒する。この混合粉末を黒鉛型に充
填し、真空中またはアルゴンガス、窒素ガスおよび水素
ガスのような中性または還元性雰囲気中、100kg/
cm2 以上の圧力下において1400℃〜1900℃の
温度で加熱するホットプレスによるか、あるいは、前記
の混合粉末を油圧プレスによってあらかじめ圧粉成形し
た圧粉体とし、真空中またはアルゴンガス、窒素ガスお
よび水素ガスのような中性または還元性雰囲気中、ある
いは雰囲気加圧中1500℃〜2000℃の温度で加熱
する普通焼結することによって製造することができる。
なお、ホットプレスや普通焼結によって得られた焼結体
は、さらに熱間静水圧プレスを行っても良い。また、圧
粉成形は油圧プレスを用いず、冷間静水圧プレスを行っ
ても良く、また混合粉末をキャンニングし直接熱間静水
圧プレスを行って焼結体を得ることもできる。
93あるいは特公昭61−50909に開示されている
粉末冶金法によって製造することができる。合金ソース
Aでは、例えば、2元系硼化物TiB2 粉末に3元系複
硼化物Mo2NiB2粉末を所定の組成となるように添加
し、合金ソースBでは、例えば2元系硼化物ZrB2お
よびTiCN粉末に3元系複硼化物Mo2FeB2粉末を
所定の組成となるように添加して、アトライターあるい
は振動ボールミルで湿式混合と粉砕を十分に行った後、
窒素ガス中で乾燥造粒する。この混合粉末を黒鉛型に充
填し、真空中またはアルゴンガス、窒素ガスおよび水素
ガスのような中性または還元性雰囲気中、100kg/
cm2 以上の圧力下において1400℃〜1900℃の
温度で加熱するホットプレスによるか、あるいは、前記
の混合粉末を油圧プレスによってあらかじめ圧粉成形し
た圧粉体とし、真空中またはアルゴンガス、窒素ガスお
よび水素ガスのような中性または還元性雰囲気中、ある
いは雰囲気加圧中1500℃〜2000℃の温度で加熱
する普通焼結することによって製造することができる。
なお、ホットプレスや普通焼結によって得られた焼結体
は、さらに熱間静水圧プレスを行っても良い。また、圧
粉成形は油圧プレスを用いず、冷間静水圧プレスを行っ
ても良く、また混合粉末をキャンニングし直接熱間静水
圧プレスを行って焼結体を得ることもできる。
【0013】ここで、3元系複硼化物は必ずしも化合物
の形で用いる必要はなく、例えば、Mo2FeB2を例に
とると、Mo2FeB2の代わりにMo粉末とFe粉末と
B粉末、あるいはMo粉末とフェロボロン系のFe−B
粉末、あるいはMoB粉末とFe粉末などの混合粉末
が、焼結後にMo2FeB2を形成するように配合した混
合粉末を用いても良い。
の形で用いる必要はなく、例えば、Mo2FeB2を例に
とると、Mo2FeB2の代わりにMo粉末とFe粉末と
B粉末、あるいはMo粉末とフェロボロン系のFe−B
粉末、あるいはMoB粉末とFe粉末などの混合粉末
が、焼結後にMo2FeB2を形成するように配合した混
合粉末を用いても良い。
【0014】この合金ソースA,Bを出発材料として、
任意の基板上にスパッタリング、イオンビームスパッタ
リング、電子サイクロトロンスパッタリング、真空蒸着
あるいはイオンプレーティングにより、0.02〜10
0μmの薄膜を形成する。
任意の基板上にスパッタリング、イオンビームスパッタ
リング、電子サイクロトロンスパッタリング、真空蒸着
あるいはイオンプレーティングにより、0.02〜10
0μmの薄膜を形成する。
【0015】スパッタリングにおいては、出発材料をカ
ソードターゲットとして、10-2〜10-4Torrの真
空下で基板に膜形成を行う。放電ガスとしてAr等の不
活性ガスを用い、放電エネルギーとしては、直流および
高周波のどちらも用いることができる。スパッタリング
においては、現在主流はマグネトロンスパッタリングで
あり、ターゲット上の磁場を強化することによりスパッ
タリング効率を上げることができる。さらに基板上にバ
イアス電圧を付加することにより膜の組成制御を容易に
することができる。スパッタリングのエネルギー源とし
てイオンビーム、電子サイクロトロン共鳴を用いること
もできる。イオンビームスパッタリングではプラズマフ
リー下、10-4〜10-6Torrの高真空下で膜形成が
でき、放電ガスの混入のない良質の膜が形成できる。こ
れらは、併用して膜形成を行うことも可能である。
ソードターゲットとして、10-2〜10-4Torrの真
空下で基板に膜形成を行う。放電ガスとしてAr等の不
活性ガスを用い、放電エネルギーとしては、直流および
高周波のどちらも用いることができる。スパッタリング
においては、現在主流はマグネトロンスパッタリングで
あり、ターゲット上の磁場を強化することによりスパッ
タリング効率を上げることができる。さらに基板上にバ
イアス電圧を付加することにより膜の組成制御を容易に
することができる。スパッタリングのエネルギー源とし
てイオンビーム、電子サイクロトロン共鳴を用いること
もできる。イオンビームスパッタリングではプラズマフ
リー下、10-4〜10-6Torrの高真空下で膜形成が
でき、放電ガスの混入のない良質の膜が形成できる。こ
れらは、併用して膜形成を行うことも可能である。
【0016】真空蒸着、イオンプレーティングにおける
蒸着原料の蒸発手段として抵抗加熱、誘導加熱、電子線
加熱、分子線加熱およびイオンビーム加熱等を用いるこ
とができ、イオンプレーティングのプラズマ源として直
流、高周波、アーク、マイクロ波等が適用でき、また基
板にバイアス電圧を印加する方法も適用できる。
蒸着原料の蒸発手段として抵抗加熱、誘導加熱、電子線
加熱、分子線加熱およびイオンビーム加熱等を用いるこ
とができ、イオンプレーティングのプラズマ源として直
流、高周波、アーク、マイクロ波等が適用でき、また基
板にバイアス電圧を印加する方法も適用できる。
【0017】例えば、イオンプレーテイングにおいて
は、10-2〜10-3Torrの真空下で、Arなどの不
活性ガスを放電ガスとし、本発明の合金ソースをカソー
ドとし、アノードとの間に放電を起こさせ、被コーテイ
ング物にバイアス電圧を印可して被覆薄膜を形成するこ
とができる。
は、10-2〜10-3Torrの真空下で、Arなどの不
活性ガスを放電ガスとし、本発明の合金ソースをカソー
ドとし、アノードとの間に放電を起こさせ、被コーテイ
ング物にバイアス電圧を印可して被覆薄膜を形成するこ
とができる。
【0018】蒸着材料としては、多成分合金の各元素成
分を個々に蒸発させるよりも、焼結あるいは粉末成分を
固化し成形体として出発原料とする方が、より安定した
膜組成が得られ、本願の目的が達成される。さらに、合
金ソースの各成分間には蒸発速度に差があるため、合金
ソースの成分と薄膜の成分が異なるということがある
が、このような場合、得ようとする薄膜成分になるよう
に合金ソースの成分を調整すれば良く、本合金ソースは
幅広い組成的自由度を持つために、このような成分調整
を容易に行うことができるという優れた特徴がある。こ
れらの薄膜形成法においては、基板を加熱することもで
きるし、また、低温での成膜も可能であるが、基板の変
質や熱変形が起こる場合、あるいは耐熱性の乏しい基板
の場合は低温での成膜が有利である。
分を個々に蒸発させるよりも、焼結あるいは粉末成分を
固化し成形体として出発原料とする方が、より安定した
膜組成が得られ、本願の目的が達成される。さらに、合
金ソースの各成分間には蒸発速度に差があるため、合金
ソースの成分と薄膜の成分が異なるということがある
が、このような場合、得ようとする薄膜成分になるよう
に合金ソースの成分を調整すれば良く、本合金ソースは
幅広い組成的自由度を持つために、このような成分調整
を容易に行うことができるという優れた特徴がある。こ
れらの薄膜形成法においては、基板を加熱することもで
きるし、また、低温での成膜も可能であるが、基板の変
質や熱変形が起こる場合、あるいは耐熱性の乏しい基板
の場合は低温での成膜が有利である。
【0019】膜厚は使用目的によって変えることが望ま
しいが、0.02〜100μmが適当である。膜厚が
0.02μmより薄いと耐摩耗性および耐食性が向上せ
ず、また100μmより厚くても目的の効果はあまり上
がらず、成膜に長時間を要するだけであり、経済的に不
利である。しかし、使用目的が通常の機械部品や工具の
場合、膜厚は0.1〜100μmが適している。これ
は、0.1μmより薄いと、無潤滑下での摩耗およびシ
ビア摩耗を防止できないためである。
しいが、0.02〜100μmが適当である。膜厚が
0.02μmより薄いと耐摩耗性および耐食性が向上せ
ず、また100μmより厚くても目的の効果はあまり上
がらず、成膜に長時間を要するだけであり、経済的に不
利である。しかし、使用目的が通常の機械部品や工具の
場合、膜厚は0.1〜100μmが適している。これ
は、0.1μmより薄いと、無潤滑下での摩耗およびシ
ビア摩耗を防止できないためである。
【0020】
【実施例】以下実施例により本発明をさらに詳細に説明
する。
する。
【0021】実施例1 TiB2粉末85%とMo2NiB2粉末15%を振動ボ
ールミルにより、アセトン中で52時間、混合粉砕を行
った後、窒素雰囲気中で乾燥造粒した。次にこの混合粉
末を黒鉛型に充填し、アルゴン雰囲気(大気圧)におい
て、200kg/cm2 の圧力で上下の1軸方向に加圧
しながら1550℃の温度で20分間加熱することによ
り、相対密度99.0%、抗折力120kg/mm2、
硬度(ビッカース硬度)2400の合金ソースAを作成
した。この合金ソースAをφ80mm×8mmに加工
し、これをターゲットとして、φ10mm×50mmの
円筒状のSKD61(鋼材)の上にインラインスパッタ
リング装置を用いて薄膜を形成させた。成膜方式は直流
マグネトロンスパッタリングで、電圧400V,電流
0.36A,アルゴンガス圧力1×10-1Torr,基
板温度250℃で60分間スパッタリングを行い、2μ
mの硼化物系超硬質コーティング薄膜を形成した。この
薄膜の溶融アルミニウムに対する耐食性を調べるため
に、本発明の硼化物系超硬質コーティング薄膜を形成さ
せたSKD61と、薄膜を形成させていないSKD61
(窒化処理材)の溶融アルミニウム侵食試験を行った。
なお、窒化処理はSKD61の耐食性を高める効果があ
り、広く用いられている方法である。溶融アルミニウム
侵食試験は、溶融アルミニウム(ADC10,750
℃)の中に一定時間浸漬したときの、浸漬時間と侵食深
さの関係を調べる試験であり、試験結果を図1に示す。
図から明らかなように8時間浸漬後、薄膜を形成させた
SKD61は全く侵食されていないのに対し、薄膜を形
成させていないSKD61窒化処理材は600μmと大
きく侵食されており、本硼化物系超硬質コーティング薄
膜が溶融アルミニウムに対して非常に優れた耐食性を示
すことがわかる。
ールミルにより、アセトン中で52時間、混合粉砕を行
った後、窒素雰囲気中で乾燥造粒した。次にこの混合粉
末を黒鉛型に充填し、アルゴン雰囲気(大気圧)におい
て、200kg/cm2 の圧力で上下の1軸方向に加圧
しながら1550℃の温度で20分間加熱することによ
り、相対密度99.0%、抗折力120kg/mm2、
硬度(ビッカース硬度)2400の合金ソースAを作成
した。この合金ソースAをφ80mm×8mmに加工
し、これをターゲットとして、φ10mm×50mmの
円筒状のSKD61(鋼材)の上にインラインスパッタ
リング装置を用いて薄膜を形成させた。成膜方式は直流
マグネトロンスパッタリングで、電圧400V,電流
0.36A,アルゴンガス圧力1×10-1Torr,基
板温度250℃で60分間スパッタリングを行い、2μ
mの硼化物系超硬質コーティング薄膜を形成した。この
薄膜の溶融アルミニウムに対する耐食性を調べるため
に、本発明の硼化物系超硬質コーティング薄膜を形成さ
せたSKD61と、薄膜を形成させていないSKD61
(窒化処理材)の溶融アルミニウム侵食試験を行った。
なお、窒化処理はSKD61の耐食性を高める効果があ
り、広く用いられている方法である。溶融アルミニウム
侵食試験は、溶融アルミニウム(ADC10,750
℃)の中に一定時間浸漬したときの、浸漬時間と侵食深
さの関係を調べる試験であり、試験結果を図1に示す。
図から明らかなように8時間浸漬後、薄膜を形成させた
SKD61は全く侵食されていないのに対し、薄膜を形
成させていないSKD61窒化処理材は600μmと大
きく侵食されており、本硼化物系超硬質コーティング薄
膜が溶融アルミニウムに対して非常に優れた耐食性を示
すことがわかる。
【0022】
【図1】
【0023】実施例2 実施例1と同じ組成の合金ソースAを普通焼結法で作成
し、φ80mmx10mmに加工した。これをカソード
にして、25mmx50mmx5mmの鋼材(SKD6
1)の表面にアークイオンプレーテイングを行った。イ
オンプレーテイング条件は、Ar雰囲気中(2×10-2
Torr)で、アーク放電電流100A、バイアス電圧
−20Vとした。約60分の処理で、SKD61の表面
に厚さ15μmの薄膜が形成された。この皮膜の硬さ
は、マイクロビッカース硬さで、2,250であった。
この薄膜を形成させたSKD61を実施例1と同じ溶融
アルミニウム浸食試験を行った結果、8時間浸漬後も侵
食は全く見られず、溶融アルミニウムに対する耐食性に
優れていることがわかった。
し、φ80mmx10mmに加工した。これをカソード
にして、25mmx50mmx5mmの鋼材(SKD6
1)の表面にアークイオンプレーテイングを行った。イ
オンプレーテイング条件は、Ar雰囲気中(2×10-2
Torr)で、アーク放電電流100A、バイアス電圧
−20Vとした。約60分の処理で、SKD61の表面
に厚さ15μmの薄膜が形成された。この皮膜の硬さ
は、マイクロビッカース硬さで、2,250であった。
この薄膜を形成させたSKD61を実施例1と同じ溶融
アルミニウム浸食試験を行った結果、8時間浸漬後も侵
食は全く見られず、溶融アルミニウムに対する耐食性に
優れていることがわかった。
【0024】実施例3 TiB2粉末50%、TiC粉末45%、Mo2CoB2
粉末5%をアトライターによりアセトン中で8時間混合
粉砕を行った後、窒素雰囲気中で乾燥造粒した。次にこ
の混合粉末を金型に充填し、上下一軸方向の油圧プレス
により、1.5Ton/cm2 の圧力でプレスを行い圧
粉体とした。この圧粉体をアルゴン雰囲気加圧(ガス圧
9.8kg/cm2 )中、1700℃の温度で30分間
加熱した。さらに2000℃、2000気圧で熱間静水
圧プレスすることによって相対密度99%、抗折力96
kg/mm2 および硬度がHv2200であるφ80m
m×5mmの合金ソースBが得られた。この合金ソース
Bをターゲットとして、6mm×27mm×50mmの
SKD61のプレートに、イオンプレーティングにより
10μm厚みの薄膜を形成し耐摩耗特性を調べた。成膜
方式は直流励起イオンプレーティングであり、Arガス
圧力1×10-3Torr、蒸発源の加熱源は電子線とし
た。耐摩耗特性は大越式摩耗試験により調べた。大越式
摩耗試験はプレートを回転するリングに押しつけて摩擦
をおこさせ、リングで削られたプレート上の摩耗痕の体
積を測定し、これを摩擦距離と最終荷重で割った比摩耗
量で判断する方法である。従って比摩耗量が小さいほど
耐摩耗性に優れていることになる。プレートには薄膜を
形成させたSKD61を用い、比較材として薄膜を形成
させていないSKD61(窒化処理材)を用いた。リン
グの材質はSS41、試験条件は摩擦距離200m、最
終荷重18.9kg、摩擦速度4.39m/秒とした。
その結果、薄膜を形成させていないSKD61(窒化処
理材)の比摩耗量は30.0×10-8mm2 /kgであ
ったのに対して、薄膜を形成させたSKD61の比摩耗
量は0.3×10-8mm2/kg と極めて小さい値を示
し、本硼化物系超硬質コーティング薄膜の耐摩耗性は非
常に優れていた。
粉末5%をアトライターによりアセトン中で8時間混合
粉砕を行った後、窒素雰囲気中で乾燥造粒した。次にこ
の混合粉末を金型に充填し、上下一軸方向の油圧プレス
により、1.5Ton/cm2 の圧力でプレスを行い圧
粉体とした。この圧粉体をアルゴン雰囲気加圧(ガス圧
9.8kg/cm2 )中、1700℃の温度で30分間
加熱した。さらに2000℃、2000気圧で熱間静水
圧プレスすることによって相対密度99%、抗折力96
kg/mm2 および硬度がHv2200であるφ80m
m×5mmの合金ソースBが得られた。この合金ソース
Bをターゲットとして、6mm×27mm×50mmの
SKD61のプレートに、イオンプレーティングにより
10μm厚みの薄膜を形成し耐摩耗特性を調べた。成膜
方式は直流励起イオンプレーティングであり、Arガス
圧力1×10-3Torr、蒸発源の加熱源は電子線とし
た。耐摩耗特性は大越式摩耗試験により調べた。大越式
摩耗試験はプレートを回転するリングに押しつけて摩擦
をおこさせ、リングで削られたプレート上の摩耗痕の体
積を測定し、これを摩擦距離と最終荷重で割った比摩耗
量で判断する方法である。従って比摩耗量が小さいほど
耐摩耗性に優れていることになる。プレートには薄膜を
形成させたSKD61を用い、比較材として薄膜を形成
させていないSKD61(窒化処理材)を用いた。リン
グの材質はSS41、試験条件は摩擦距離200m、最
終荷重18.9kg、摩擦速度4.39m/秒とした。
その結果、薄膜を形成させていないSKD61(窒化処
理材)の比摩耗量は30.0×10-8mm2 /kgであ
ったのに対して、薄膜を形成させたSKD61の比摩耗
量は0.3×10-8mm2/kg と極めて小さい値を示
し、本硼化物系超硬質コーティング薄膜の耐摩耗性は非
常に優れていた。
【0025】
【発明の効果】本発明の耐摩耗性、耐食性に優れた硼化
物系超硬質コーティング薄膜の製造方法は、硼化物系超
硬質合金ソースを焼結により作成し、これを用いてイオ
ンプレーティング法、蒸着法、スパッタリング法などの
PVD法により薄膜を形成させる方法を提供するもので
あり、耐摩耗性、耐食性、耐凝着性に優れ、密着性の良
い硼化物系超硬質コーティング薄膜を形成することがで
き、アルミダイカスト金型、熱間ダイス、プレス金型、
切削工具など幅広い工業分野に適用できる。
物系超硬質コーティング薄膜の製造方法は、硼化物系超
硬質合金ソースを焼結により作成し、これを用いてイオ
ンプレーティング法、蒸着法、スパッタリング法などの
PVD法により薄膜を形成させる方法を提供するもので
あり、耐摩耗性、耐食性、耐凝着性に優れ、密着性の良
い硼化物系超硬質コーティング薄膜を形成することがで
き、アルミダイカスト金型、熱間ダイス、プレス金型、
切削工具など幅広い工業分野に適用できる。
【図1】本発明の溶融アルミニウムに対する耐食性の効
果を示した説明図である。
果を示した説明図である。
Claims (4)
- 【請求項1】 MxBy(ただしMはTi,Zr,T
a,Nb,Cr,Vを表し、x=1〜2、y=1〜4で
ある)で表せる2元系硼化物の中から選ばれた少なくと
も1種以上を40〜98重量%(以下%は重量%)と、
Mo2FeB2,Mo2CoB2,Mo2NiB2,W2Fe
B2,W2CoB2,W2NiB2,MoCoB,WFe
B,WCoBの中から選ばれた1種以上の3元系複硼化
物を2〜60%と、これらの合金中に含まれる不可避的
不純物からなる硼化物系超硬質合金ソース(蒸着源およ
びターゲット)を出発原料として基板上にスパッタリン
グ、イオンビームスパッタリング、電子サイクロトロン
スパッタリング、真空蒸着あるいはイオンプレーティン
グにより薄膜を形成することを特徴とする耐摩耗性、耐
食性に優れた硼化物系超硬質コーティング薄膜の製造方
法。 - 【請求項2】 MxByがTiB2,ZrB2,Ta
B2,CrB2の中から選ばれた少なくとも1種以上の2
元系硼化物であることを特徴とする請求項1の耐摩耗
性、耐食性に優れた硼化物系超硬質コーティング薄膜の
製造方法。 - 【請求項3】 MxByで表せる2元系硼化物の中から
選ばれた少なくとも1種以上を30〜78%、Mo2F
eB2,Mo2CoB2,Mo2NiB2,W2FeB2,W2
CoB2,W2NiB2,MoCoB,WFeB,WCo
Bの中から選ばれた1種以上の3元系複硼化物を2〜3
0%、TiC,TiNおよびC/Nの原子比が0.25
〜4.0であるTiCNの中から選ばれた少なくとも1
種以上を10〜55%と、これらの合金中に含まれる不
可避的不純物からなる硼化物系超硬質合金ソース(蒸着
源およびターゲット)を出発原料として基板上にスパッ
タリング、イオンビームスパッタリング、電子サイクロ
トロンスパッタリング、真空蒸着あるいはイオンプレー
ティングにより薄膜を形成することを特徴とする耐摩耗
性、耐食性に優れた硼化物系超硬質コーティング薄膜の
製造方法。 - 【請求項4】 MxByがTiB2,ZrB2,Ta
B2,CrB2の中から選ばれた少なくとも1種以上の2
元系硼化物であることを特徴とする請求項3の耐摩耗
性、耐食性に優れた硼化物系超硬質コーティング薄膜の
製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP4283649A JPH05195199A (ja) | 1991-10-04 | 1992-09-30 | 耐摩耗性、耐食性に優れた硼化物系超硬質コーティン グ薄膜の製造方法 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP28423591 | 1991-10-04 | ||
JP3-284235 | 1991-10-04 | ||
JP4283649A JPH05195199A (ja) | 1991-10-04 | 1992-09-30 | 耐摩耗性、耐食性に優れた硼化物系超硬質コーティン グ薄膜の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH05195199A true JPH05195199A (ja) | 1993-08-03 |
Family
ID=26555126
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP4283649A Pending JPH05195199A (ja) | 1991-10-04 | 1992-09-30 | 耐摩耗性、耐食性に優れた硼化物系超硬質コーティン グ薄膜の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH05195199A (ja) |
Cited By (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH091988A (ja) * | 1995-06-20 | 1997-01-07 | Showa Kiyouzai Kk | 彫刻刀の製造方法 |
WO2005123312A1 (ja) * | 2004-06-18 | 2005-12-29 | Mitsubishi Materials Corporation | 表面被覆切削工具、及びその製造方法 |
US7799438B2 (en) | 2004-06-18 | 2010-09-21 | Mitsubishi Materials Corporation | Surface-coated cutting tool and method for producing same |
JP2013528704A (ja) * | 2010-05-04 | 2013-07-11 | プランゼー エスエー | 二ホウ化チタンターゲット |
JP2020536167A (ja) * | 2017-10-06 | 2020-12-10 | エリコン サーフェス ソリューションズ アーゲー、 プフェフィコン | 三元tm二ホウ化物コーティングフィルム |
CN112236541A (zh) * | 2018-04-20 | 2021-01-15 | 普兰西复合材料有限公司 | 靶及靶的生产方法 |
CN115786758A (zh) * | 2022-11-25 | 2023-03-14 | 西安近代化学研究所 | 一种Mo2FeB2-TiN基复合材料的制备方法 |
CN115976358A (zh) * | 2022-11-25 | 2023-04-18 | 西安近代化学研究所 | 一种高硬度Mo2NiB2-TiC基复合材料的制备方法 |
-
1992
- 1992-09-30 JP JP4283649A patent/JPH05195199A/ja active Pending
Cited By (10)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH091988A (ja) * | 1995-06-20 | 1997-01-07 | Showa Kiyouzai Kk | 彫刻刀の製造方法 |
WO2005123312A1 (ja) * | 2004-06-18 | 2005-12-29 | Mitsubishi Materials Corporation | 表面被覆切削工具、及びその製造方法 |
US7799438B2 (en) | 2004-06-18 | 2010-09-21 | Mitsubishi Materials Corporation | Surface-coated cutting tool and method for producing same |
JP2013528704A (ja) * | 2010-05-04 | 2013-07-11 | プランゼー エスエー | 二ホウ化チタンターゲット |
US9481925B2 (en) | 2010-05-04 | 2016-11-01 | Plansee Se | Titanium diboride target |
JP2020536167A (ja) * | 2017-10-06 | 2020-12-10 | エリコン サーフェス ソリューションズ アーゲー、 プフェフィコン | 三元tm二ホウ化物コーティングフィルム |
CN112236541A (zh) * | 2018-04-20 | 2021-01-15 | 普兰西复合材料有限公司 | 靶及靶的生产方法 |
CN115786758A (zh) * | 2022-11-25 | 2023-03-14 | 西安近代化学研究所 | 一种Mo2FeB2-TiN基复合材料的制备方法 |
CN115976358A (zh) * | 2022-11-25 | 2023-04-18 | 西安近代化学研究所 | 一种高硬度Mo2NiB2-TiC基复合材料的制备方法 |
CN115786758B (zh) * | 2022-11-25 | 2024-05-10 | 西安近代化学研究所 | 一种Mo2FeB2-TiN基复合材料的制备方法 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20000919 |