JPH05163527A - 溶接性に優れた高張力鋼の製造方法 - Google Patents

溶接性に優れた高張力鋼の製造方法

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JPH05163527A
JPH05163527A JP3351211A JP35121191A JPH05163527A JP H05163527 A JPH05163527 A JP H05163527A JP 3351211 A JP3351211 A JP 3351211A JP 35121191 A JP35121191 A JP 35121191A JP H05163527 A JPH05163527 A JP H05163527A
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尚志 井上
Koji Tanabe
康児 田辺
Kazunari Tokuno
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、低降伏比・高溶接性、さらにエレ
クトロスラグ溶接のような大入熱溶接時の靱性を向上し
た極厚の780MPa級高張力鋼を提供するものであ
る。 【構成】 Cuの析出硬化を利用して、炭素当量を低く
して溶接性を向上させる。また低C、低Siとし、T
i,N,Bを添加してHAZの細粒化、粒界フェライト
の抑制、マルテンサイトを抑制して継手靱性を向上。上
記成分の鋼をDQ処理した後、800℃近傍でL処理
後、時効熱処理を行って、強度上昇と降伏比低減を達成
した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、溶接性に優れた建築用
高張力鋼の製造方法に係り、降伏比を低下し、さらにエ
レクトロスラグ溶接などの大入熱溶接時の溶接熱影響部
(以下HAZ)靱性に優れた780MPa級高張力鋼
(以下HT−80)の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】建築構造物は高層化されており、580
MPa級高張力鋼はすでに実用化されているが、近い将
来さらに高強度の極厚材が使用されることは必至と考え
られる。しかし現状のHT−80では降伏比が高いこ
と、仮付けなどの小入熱溶接時に予熱が必要なこと、
エレクトロスラグ溶接などの大入熱溶接時のHAZ靱
性が劣ることなどの問題がある。また、本発明者等は、
特開昭62−142723号公報に示すように高張力鋼
の製造手段を検討し、低Cにして且つ、焼入れ性の指標
となる成分による焼入臨界直径Diを35〜65とした
成分系で、冷間曲げ加工を行った時に生じる加工硬化
と、その後の時効熱処理によって生じる時効硬化とを利
用して780MPa以上の強度確保を行うことを可能と
し、これによって溶接ボンド部靱性を従来のHT−80
に比べて格段に改善した。しかし、上記発明は冷間加
工を伴ってHT−80としていること、降伏比が高い
こと、HAZ靱性に対してもエレクトロスラグ溶接の
ような大入熱まで考えられていないことなどからさらに
改良が必要である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明はHT−80に
おいて、低降伏比でしかも溶接性及びエレクトロスラグ
溶接時のHAZ靱性に優れた新規な高張力鋼の製造方法
を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、先ず高張
力鋼の溶接性を580MPa級の溶接材料を用いた炭酸
ガス溶接で斜めy型溶接割れ試験で検討した結果、P=
C+(Mn+Cr+Mo+V)/20を0.20%以下
にしておけば、常温で割れが発生しないことをつきとめ
た。この結果Cu,Nbの析出硬化を利用した高張力鋼
は低P値で強度を得ることができ、溶接性に優れたHT
−80を得ることができる。次にエレクトロスラグ溶接
時のHAZ靱性について検討した。従来のHT−80で
はHAZの組織が旧γ粒界に大きな初析フェライトを、
また粒内には島状マルテンサイトを伴った粗粒のアッパ
ーベイナイトとなって靱性が低下していることをつきと
めた。これに対し粒界フェライト抑制のためBを添加
する。Ti及びNを微量添加して旧γ粒を小さくす
る。さらに島状マルテンサイト組織を抑制するためC
及びSi量を規制することによって改善することを見い
だした。また強度と低降伏比を両立するため鋼片の加熱
温度をTiNが溶解しない範囲で高温にし、圧延後水冷
した後、再度780〜830℃に加熱水冷し、さらに5
00〜550℃に加熱して時効熱処理を行えば、両立が
可能なことをつきとめたことにある。
【0005】この結果上記3者を同時に満足できる新規
な高張力鋼の製造方法を確立した。すなわち、重量
(%)でC:0.06〜0.10%,Si:0.1%以
下,Mn:0.8〜1.5%,Ni:0.5〜1.2
%,Cu:1.0〜2.0%,Cr:0.6%以下,M
o:0.2〜0.5%,Al:0.01〜0.05%,
Nb:0.02%以下,V:0.1%以下,Ti:0.
03%以下,B:0.002%以下,N:0.004〜
0.007%を含有し、しかもC,Mn,Cr,Mo,
Vによる溶接性パラメーターPが0.20%以下を満足
し、その他不可避不純物からなる鋼片を1000℃〜1
150℃に加熱し、圧延後水冷し、さらに780〜83
0℃の温度に加熱してのち水冷し、さらに加熱温度50
0〜550℃で時効熱処理を施すことを特徴とした溶接
性の優れた高張力鋼の製造方法である。 但し、P=C+(Mn+Cr+Mo+V)/20
【0006】
【作用】以下に本発明を詳細に説明する。先ず、溶接性
及びエレクトロスラグ溶接時のHAZ靱性が優れている
ように、鋼材成分組成としてC:0.06〜0.10
%,Si:0.1%以下,Mn:0.8〜1.5%,N
i:0.5〜1.2%,Cu:1.0〜2.0%,C
r:0.6%以下,Mo:0.2〜0.5%,Al:
0.01〜0.05%,Nb:0.02%以下,V:
0.1%以下,Ti:0.03%以下,B:0.002
%以下,N:0.004〜0.007%を含有し、しか
もC,Mn,Cr,Mo,Vによる溶接性パラメーター
Pが0.20%以下を満足し、残部がFeからなる鋼を
対象とするものである。 但し、P=C+(Mn+Cr+Mo+V)/20
【0007】本発明においてこのように化学成分を限定
したのは次の理由による。まずCは0.06%未満では
強度が得られない。また0.10%超では溶接HAZ靱
性が低下するため、0.06〜0.10%とした。Si
は製鋼時の脱酸元素として必要であるが、0.1%を超
えるとHAZ靱性が低下するので0.1%以下とした。
Mnは焼入れ性確保に有効な元素で、Cuの時効硬化時
間を短時間に移行する特性も有しているため、時効硬化
を利用した鋼に有効であり、0.8%以上の添加が効果
的である。しかし、1.5%超の添加は溶接性及びHA
Z靱性が劣化するので0.8〜1.5%とした。
【0008】Niは母材及び溶接ボンド部靱性を向上さ
せるのに有効であるが、0.5%未満ではその効果は小
さく、一方、1.2%超含有しても、効果が飽和するこ
とからその上限を1.2%とした。Cuは時効硬化の顕
著な元素で時効硬化を利用する鋼に有効であり、1.0
〜2.0%添加が最も効果的である。1.0%未満では
時効硬化が小さく、2.0%超では圧延時に割れを発生
することからその量を1.0〜2.0%とした。また、
Moは焼戻し軟化抵抗を高め強度の増大に有効であり、
0.2%未満では十分な強度が得られない。また0.5
%超の添加は溶接性及びHAZ靱性を低下させる。従っ
てその量を0.2〜0.5%とした。
【0009】さらに、Alは脱酸に有効であるのみでな
く、Nを固定してAlNとなって結晶粒細粒化の役目も
果たす有効な合金元素であるため下限を0.01%と
し、一方、0.05%を超えて含有してもその効果が飽
和することから上限を0.05%とした。NbはCuと
同様時効硬化の顕著な元素であるが、0.02%を超え
るとHAZ靱性を低下させるので、0.02%以下とし
た。VもNbと同様時効硬化の顕著な元素であるが、
0.1%を超えると溶接性及びHAZ靱性を低下させる
ので0.1%以下とした。TiはNを固定する有効な元
素であり、TiNが溶接HAZ部においてγ粒微細化に
寄与してHAZ部靱性を改善する。その量は0.03%
で十分なため、上限を0.03%とした。Bはごく微量
で鋼材の焼入性を向上し、またHAZの旧γ粒界の粗大
フェライト生成を抑制してHAZ靱性を向上させる。そ
の量は0.002%で十分なので、上限を0.002%
とした。さらに、Nは先に述べたTiと結合してTiN
となり、HAZ靱性向上に必須である。そのため0.0
04%以上必要であるが、多いとBと結合してBの効果
を低減するので上限を0.007%とした。
【0010】以上が本発明の対象とする鋼の基本成分で
あるが、さらに本発明において溶接性を向上させるた
め、C,Mn,Cr,Mo,Vによる溶接性パラメータ
ーPが0.20%以下を満たすことを骨子の一つとして
いる。先にも述べたように580MPa級の溶接材料を
用いた炭酸ガス溶接で斜めy型溶接割れ試験で検討した
結果、P=C+(Mn+Cr+Mo+V)/20を0.
20%以下にしておけば、常温で割れが発生しないこと
から、P値の上限を0.20%とした。
【0011】次に本発明による製造条件について述べる
と、前記成分の鋼片を1000℃〜1150℃に加熱
し、圧延後水冷し、さらに780〜830℃の温度に加
熱してのち水冷し、さらに加熱温度500〜550℃で
時効熱処理を施すものである。まず熱間圧延時の加熱温
度を1150℃以下とするのは1150℃を超えると、
鋳造時に生成したTiNが粗大化するためである。また
下限を1000℃としたのは、Cu,Nbなどの析出元
素の溶体化を目的としたためであって1000℃未満で
は溶体化が不十分となり、後の時効処理による強度の上
昇が十分望めなくなる。
【0012】次に圧延後水冷するのは、圧延後水冷しな
いと粒の大きいフェライトとアッパーベイナイトの混合
組織となり、強度が低下するためである。その後780
〜830℃に加熱して水冷するのは、この温度に加熱す
ることによってミクロ偏析部が部分的にオーステナイト
化し、その部分は拡散によってCが濃化し、その後の水
冷によってさらに硬いマルテンサイト組織となる。一方
オーステナイト化しない部分は高温の焼戻しされた組織
となるため軟化する。これによって降伏比の著しい低下
が図れる。この温度が780℃以下ではオーステナイト
化が不十分であり、また830℃を超えるとオーステナ
イト化する領域が過多となり初期の目的を達成できない
ので、780〜830℃とした。さらに、時効熱処理は
Cu,Nb,Vの析出硬化による強度上昇と、先の熱処
理で生成した硬いマルテンサイト組織の焼戻し処理を兼
ねたもので、加熱温度500℃未満では十分な析出が得
られず、また550℃超では過時効となって強度が低下
するため、その温度を500〜550℃とした。
【0013】以下、本発明の効果を実施例によりさらに
具体的に示す。
【実施例】表1に示すA,B,C,D,Eの化学成分の
鋼を100ton転炉で溶製し、連続鋳造で厚さ300
mmのスラブを作り、これ等の各スラブを各々1〜3に
製造条件を変えて板厚100mmの鋼板とした。これら
の鋼板について1/4tからJIS4号引張試験片を採
取して引張特性を調査し、また580MPa級の溶接材
料による炭酸ガス溶接の斜めy型割れ試験を行った。さ
らにエレクトロスラグ溶接のHAZ靱性についてJIS
4号フルサイズシャルピー試験片により0℃の吸収エネ
ルギーを求めた。
【0014】A−1、B−1及びC−1は本発明法で引
張強度(TS)780MPa以上、降伏比85%以下、
y型割れ試験の割れ停止予熱温度20℃以下を満足し、
さらにエレクトロスラグ溶接のHAZ靱性20J以上で
あった。A−2では加熱温度が高いこと及び再熱処理温
度が低いため降伏比が85%を超え、またHAZ部靱性
が低下した。A−3では加熱温度が低く、圧延後空冷し
たためTSが650MPaと低かった。B−2では再加
熱温度が高いためTSは900MPaと高い値が得られ
たが、降伏比が96%と非常に高い値となった。B−3
では再加熱温度及び時効熱処理温度が低いためTSが6
80MPaと低く、降伏比も92%と高かった。
【0015】C−2では再加熱を省き、さらに時効熱処
理温度が高いため降伏比が97%と異常に高かった。C
−3では圧延後空冷し、後の熱処理を省いたのでTSが
580MPaにしか達しなかった。D鋼はC,Si,A
lが高く、Cuが低く、Nb,Tiが添加されていな
い。またP値が高く溶接性が劣る。またC,Siが高く
Tiも添加されてないのでHAZ靱性も低い。さらにD
−1に示すようにこの材料を圧延後空冷して890℃で
再熱処理した場合は降伏比が高く、またD−2に示すよ
うに圧延後水冷して再熱処理を省いても同様の結果であ
った。さらにD−3に示すように水冷して、770℃で
再熱処理した場合、降伏比は低下したがTSが750M
Paにしか達さなかった。E鋼はC,Nが低く、Si,
Cr,Nbが高く、V,Ti,Bが添加されていない。
このため溶接性は非常に優れているが、E−1,E−
2,E−3共TSが低くまたHAZ部靱性が悪い。
【0016】
【表1A】
【0017】
【表1B】
【0018】
【発明の効果】上記実施例からも明らかなごとく本発明
によれば、強度、低降伏比、さらに溶接性、エレクトロ
スラグ溶接HAZ部靱性を従来材に比べ格段に改善した
高張力鋼を提供することが可能となるものであり、産業
上その効果は極めて顕著である。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量(%)で C :0.06〜0.10% Si:0.1%以下 Mn:0.8〜1.5% Ni:0.5〜1.2% Cu:1.0〜2.0% Cr:0.6%以下 Mo:0.2〜0.5% Al:0.01〜0.05% Nb:0.02%以下 V :0.1%以下 Ti:0.03%以下 B :0.002%以下 N :0.004〜0.007% を含有し、しかもC,Mn,Cr,Mo,Vによる溶接
    性パラメーターPが0.20%以下を満足し、その他不
    可避不純物からなる鋼片を1000℃〜1150℃に加
    熱し、圧延後水冷し、さらに780〜830℃の温度に
    加熱してのち水冷し、さらに加熱温度500〜550℃
    で時効熱処理を施すことを特徴とした溶接性に優れた高
    張力鋼の製造方法。 但し、P=C+(Mn+Cr+Mo+V)/20
JP35121191A 1991-12-13 1991-12-13 溶接性に優れた高張力鋼の製造方法 Expired - Lifetime JP2898455B2 (ja)

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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6558483B2 (en) 2000-06-12 2003-05-06 Sumitomo Metal Industries, Ltd. Cu precipitation strengthened steel
KR100435465B1 (ko) * 1999-12-20 2004-06-10 주식회사 포스코 극저온인성이 우수한 항복강도 63kgf/㎟급 후강판의제조방법
JP2008255458A (ja) * 2007-04-09 2008-10-23 Kobe Steel Ltd Haz靭性および母材靭性に優れた厚鋼板
JP2008261009A (ja) * 2007-04-12 2008-10-30 Kobe Steel Ltd 材質異方性が少なくhaz靭性および低温母材靭性に優れた厚鋼板

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JP2008255458A (ja) * 2007-04-09 2008-10-23 Kobe Steel Ltd Haz靭性および母材靭性に優れた厚鋼板
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