JPH05163044A - フッ素含有炭素被膜の形成方法 - Google Patents

フッ素含有炭素被膜の形成方法

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JPH05163044A
JPH05163044A JP33176991A JP33176991A JPH05163044A JP H05163044 A JPH05163044 A JP H05163044A JP 33176991 A JP33176991 A JP 33176991A JP 33176991 A JP33176991 A JP 33176991A JP H05163044 A JPH05163044 A JP H05163044A
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carbon coating
fluorine
intermediate layer
water
glass
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JP33176991A
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English (en)
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Masaji Nakanishi
正次 中西
Ichiro Tajima
一郎 田嶋
Masahiko Ishii
昌彦 石井
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Toyota Motor Corp
Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Toyota Central R&D Labs Inc
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Abstract

(57)【要約】 【目的】長時間を要することなく、多量のFを含有する
F含有炭素被膜を形成する。 【構成】表面処理用ガス又はスパッタガスとしてCの結
合に二重結合をもつ炭素フッ素含有化合物(C3 6
2 4 等)を採用する。Cの二重結合により付加重合
反応的にC、Si等と強固に結合しやすくなり、従来の
ようにCF4 ガスを用いた場合と比較してFの導入効率
が高く、長時間を要することなく多量のFを含有するF
含有炭素被膜を形成することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、炭素からなる炭素被膜
中にフッ素も含有されたフッ素含有炭素被膜の形成方法
に関する。フッ素含有炭素被膜は撥水性を有するため、
本発明のフッ素含有炭素被膜の形成方法により撥水ガラ
スを製造することができる。
【0002】
【従来の技術】従来、炭素被膜をもつガラス、つまり炭
素被膜付ガラスとして、石英ガラスと、この石英ガラス
の表面に形成された炭素被膜とからなるものが知られて
いる(特開平2−188447号公報)。かかる炭素被
膜付ガラスは、水素ガスで還元処理した石英ガラスの表
面に炭素被膜形成原料を含むキャリアガスを供給する方
法により製造される。この炭素被膜付ガラスは反応管と
して利用される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の炭素被
膜付ガラスは、炭素被膜とガラスとの密着性が充分でな
く、炭素被膜の剥離を生じやすくて耐久性に欠けるとい
う欠点があった。また、従来の炭素被膜付ガラスを撥水
ガラスに利用せんとする場合、この炭素被膜付ガラスで
は撥水性が不十分な場合があった。
【0004】そこで、本出願人は、特願平3−1722
12号において、充分な撥水性を確保しつつ、炭素被膜
の剥離を生じにくいフッ素含有炭素被膜付ガラスを提案
した。このフッ素含有炭素被膜付ガラスは、(1)ガラ
ス基材の表面に金属酸化物を含有する中間層を形成した
後、この中間層の表面に炭素被膜を形成し、さらにCF
4 ガスを表面処理用ガスに採用して炭素被膜中にフッ素
が含まれたフッ素含有炭素被膜を形成する方法によって
製造される。また、このフッ素含有炭素被膜付ガラス
は、(2)ガラス基材の表面に金属酸化物を含有する中
間層を形成した後、CF4 ガスをスパッタガスに採用し
て中間層の少なくとも表面にフッ素が化合されたフッ素
含有炭素被膜を形成する方法によっても製造される。こ
うして得られるフッ素含有炭素被膜付ガラスでは、従来
のように反応管として利用されうる他、表面に付着した
フッ素含有炭素粒子の微細な凹凸により表面に存在する
水をはじき、その水を表面張力で水滴にして撥水するた
め、自動車用窓ガラス等に利用されうる撥水ガラスとさ
れる。
【0005】しかしながら、上記提案における(1)及
び(2)の製造方法では、表面処理用ガス又はスパッタ
ガスとしてCF4 ガスを採用していたためフッ素の導入
効率が低く、例えば撥水ガラスに利用する場合により充
分な撥水性を発揮させるべく、フッ素含有炭素被膜中に
多量のフッ素を含有させようとすると、長時間を要して
いた。
【0006】本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされ
たものであって、長時間を要することなく、多量のフッ
素を含有するフッ素含有炭素被膜を形成できるフッ素含
有炭素被膜の形成方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
(1)本第1発明のフッ素含有炭素被膜の形成方法は、
基材上に炭素被膜を形成する炭素被膜形成工程と、炭素
の結合に二重結合をもつ炭素フッ素含有化合物を表面処
理用ガスとして採用し、該炭素被膜中にフッ素を含有さ
せてフッ素含有炭素被膜を形成する表面フッ素化処理工
程と、を有することを特徴とするものである。 (2)本第2発明のフッ素含有炭素被膜の形成方法は、
炭素の結合に二重結合をもつ炭素フッ素含有化合物をス
パッタガスとして採用し、基材上にフッ素含有炭素被膜
を形成することを特徴とするものである。 (1)第1発明のフッ素(F)含有炭素被膜の形成方法
について 炭素被膜形成工程では、基材上に炭素被膜を形成する。
【0008】基材としては、ケイ酸塩ガラス、ホウケイ
酸塩ガラス、ソーダライムガラス等からなるガラス基材
やセラミック基材等を採用することができる。この基材
としては、板状、管状等種々の形状のものを採用するこ
とができる。第1発明のF含有炭素被膜の形成方法によ
り撥水ガラスを製造する場合には、基材上に金属酸化物
を含有する中間層を形成する中間層形成工程を実行する
ことができる。中間層は、F含有炭素被膜において、基
材とF含有炭素被膜との間でバインダとして作用し、F
含有炭素被膜の剥離を防止する。中間層の金属酸化物と
しては、SiO2 、TiO2 、ZrO2 、Y23 、A
2 3 、PbO、CaO、MgO、B2 3 、Fe2
3 、Na2 O、K2 O、Li2 O等の一種又は二種以
上を採用することができる。この中間層は金属酸化物を
モル分率5%以上含有することが好ましい。金属酸化物
がモル分率5%未満であれば、基材と中間層との密着
性、中間層と炭素被膜又はF含有炭素被膜との密着性が
充分でない。なお、モル分率は物質系の組成を表わす量
で、1成分のモル数と全成分のモル数との比をその1成
分のモル分率という。各成分のモル分率の総和は1(1
00%)に等しい。このモル分率は、全成分たる炭素被
膜若しくはF含有炭素被膜又は中間層中において、1成
分が炭素(C)又は金属酸化物であれば、C又は金属酸
化物の原子濃度(at%)より求められる。中間層とし
ては、1成分たる金属酸化物と、残部Cとからなるも
の、又は1成分たる金属酸化物と、他の1成分たるF
と、残部Cとからなるものを採用することができる。中
間層として、表面に近づくに従い金属酸化物に対してC
の濃度を濃くつまりCのモル分率を高くしたものを採用
すれば、炭素被膜又はF含有炭素被膜の密着性向上の点
で好ましい。この中間層は基材の表面に厚さが50Å以
上形成されることが好ましい。中間層の厚さが50Å未
満であれば、基材と中間層との密着性、中間層と炭素被
膜又はF含有炭素被膜との密着性が充分でなく、撥水性
に悪影響を及ぼす。この中間層は、金属酸化物のターゲ
ットを用いたスパッタリング法等のPVD法により実行
することができる。PVD法において、金属酸化物とC
とをターゲット又は蒸発源とし、スパッタ電力等を経時
的変化させることにより、中間層と炭素被膜又はF含有
炭素被膜とを連続的に形成することもできる。
【0009】炭素被膜形成工程は、Cのターゲットを用
いたスパッタリング法等のPVD法により実行すること
ができる。炭素被膜は、厚さが10Å以上形成されるこ
とが好ましい。炭素被膜の厚さが10Å未満であれば、
炭素被膜のCによる機能を発揮しにくい。炭素被膜は基
材上に形成するが、上記のように中間層を形成する場合
には、中間層の少なくとも表面に炭素被膜を形成する。
炭素被膜を中間層の内部まで形成することもできる。
【0010】表面フッ素化処理工程では、Cの結合に二
重結合をもつ炭素フッ素含有化合物を表面処理用ガスと
して採用し、炭素被膜中にFを含有させてF含有炭素被
膜を形成する。F含有炭素被膜は少なくとも表面にFが
化合されている。Cの結合に二重結合をもつ炭素フッ素
含有化合物としては、C3 6 、C2 4 等を採用する
ことができる。この表面フッ素化処理工程は、上記炭素
フッ素含有化合物を所定の流量に調製しつつ行なうスパ
ッタリング法等のPVD法により実行することができ
る。
【0011】こうして、基材上にF含有炭素被膜が形成
される。中間層形成工程を実行する場合には、基材上に
形成された中間層と、この中間層の少なくとも表面に形
成されたF含有炭素被膜とからなるフッ素含有炭素被膜
が形成される。 (2)第2発明のF含有炭素被膜の形成方法について 中間層形成工程については第1発明と同様である。
【0012】第2発明のF含有炭素被膜の形成方法にお
いても、Cの結合に二重結合をもつ炭素フッ素含有化合
物をスパッタガスとして採用し、基板上にF含有炭素被
膜を形成する。中間層形成工程を実行する場合には、F
含有炭素被膜を中間層の内部まで形成することもでき
る。F含有炭素被膜は少なくとも表面にFが化合されて
いる。Cの結合に二重結合をもつ炭素フッ素含有化合物
としては、第1発明と同種のものを採用することができ
る。F含有炭素被膜は、厚さが10Å以上形成されるこ
とが好ましい。F含有炭素被膜の厚さが10Å未満であ
れば、F含有炭素被膜のCによる機能を発揮しにくい。
このF含有炭素被膜の形成方法は、Cのターゲットを用
いるとともに、上記炭素フッ素含有化合物を所定の流量
に調製しつつ行なうスパッタリング法等のPVD法によ
り実行することができる。
【0013】こうして、基材上にF含有炭素被膜が形成
される。中間層形成工程を実行する場合には、基材上に
形成された中間層と、この中間層の少なくとも表面に形
成されたF含有炭素被膜とからなるフッ素含有炭素被膜
が形成される。
【0014】
【作用】本第1及び第2発明のフッ素含有炭素被膜の形
成方法では、基板上に形成された炭素被膜中にFを含有
させてF含有炭素被膜を形成するに際し、又は基板上に
F含有炭素被膜を形成するに際し、表面処理用ガスやス
パッタガスとしてCの結合に二重結合をもつ炭素フッ素
含有化合物を用いている。かかる炭素フッ素含有化合物
では、Cの二重結合により付加重合反応的にC、Si等
と強固に結合しやすくなる。このため、表面処理ガスや
スパッタガスとしてCF4 ガスを用いた場合と比較して
Fの導入効率が高く、長時間を要することなく多量のF
を含有するF含有炭素被膜を形成することができる。
【0015】
【実施例】
(1)以下、本第1発明のF含有炭素被膜の形成方法を
撥水ガラスの製造方法に具体化した実施例1、2を比較
例1、2とともに図面を参照しつつ説明する。 (実施例1)実施例1では、中間層形成工程と炭素被膜
形成工程とを連続的に実行し、しかる後に表面フッ素化
処理工程を実行した。
【0016】{中間層形成工程・炭素被膜形成工程}二
元RFマグネトロンスパッタリング装置の真空槽にSi
2 とCとの二つのターゲットを備えた。また、ソーダ
ライムガラスからなるガラス基材をそのスパッタリング
装置の真空槽に装備した。そして、その真空槽を2×1
-3Pa以下まで真空引きし、ガラス基材を300℃に
加熱した。次いで、Arガスを真空槽内の圧力が0.1
Paになるまで導入し、各SiO2 ターゲット及びCタ
ーゲットに印加するRF電力(W)を図1に示すように
経時的に変化させ、スパッタリング成膜を行った。こう
して、ガラス基材上に中間層を形成し、中間層上に密着
性のよい炭素被膜を形成した。
【0017】{表面フッ素化処理工程}ここで、Arガ
ス中に表面処理用ガスとして10vol%のC3 6
スを混合させ、真空槽内の圧力が0.1Paになるよう
に流量を調製し、金属製基板ホルダに200WのRF電
力を印加し、中間層と炭素被膜とをもつガラス基材近傍
にプラズマを発生させ、10分間の表面フッ素化処理を
行った。
【0018】こうして、ガラス基材と、このガラス基材
上に形成された中間層と、この中間層上に良好な密着性
の下で形成されたF含有炭素被膜とからなる撥水ガラス
を得た。この撥水ガラスの表面から深さ方向のC、S
i、O、FをAES(オージェ電子分光分析装置)によ
り定量分析したところ、図2に示す結果を得た。図2で
は、厚さ(Å)の換算として撥水ガラスの表面からC、
Si、O、Fをエッチングするに際して要した時間と、
各原子の原子濃度(at%)との関係を示す。図2か
ら、ガラス基材上に約400Åの中間層が形成されてい
ることがわかる。ここで、中間層は、ガラス基材上にS
iO2 のみからなるSiO2 層が約100Åの厚さで形
成され、SiO2 層上にSiO2 とCとからなり表面へ
近づくほどCの濃度が濃くつまりCのモル分率が高くな
る混合層が約300Åの厚さで形成されていた。また、
中間層上に約100Åの炭素被膜が形成され、その表面
部分はF化されていた。
【0019】この撥水ガラスに水滴を落とし、撥水ガラ
スと水滴との接触角を調べたところ、約130°の接触
角であった。したがって、この撥水ガラスは、極めて良
好な撥水性を示すことがわかる。また、この撥水ガラス
の耐候性をサンシャインウェザオメータ(63℃水有
り)にて観測したところ、2000時間後においても約
120°の接触角を有し、非常に良好な耐候性を有する
ことがわかった。
【0020】さらに、この撥水ガラスの表面を荷重;3
00g/cm2 、3000往復の摩擦条件で乾燥したネ
ル布により擦ったところ、なんらF含有炭素被膜に変化
はみられなかった。したがって、この撥水ガラスは、F
含有炭素被膜の密着性に優れ、耐久性に優れていること
がわかる。 (実施例2)実施例2では、中間層形成工程を実行しな
いで、実施例1と同様に炭素被膜形成工程と表面フッ素
化処理工程とを実行して撥水ガラスを得た。
【0021】この撥水ガラスの当初の接触角は、実施例
1と同様、約130°の接触角であった。しかし、この
撥水ガラスの耐久性を実施例1と同一条件で擦ったとこ
ろ、F含有炭素被膜が比較的容易に剥離してしまった。
したがって、中間層形成工程を実行しない実施例2の形
成方法では、中間層によりF含有炭素被膜の剥離を防止
できないため、撥水ガラスの製造方法へは適用できず、
反応管等の製造方法へ適用すべきことがわかる。 (比較例1)比較例1では、表面処理用ガスとしてC3
6 ガスの代わりにCF4 ガスを採用した。他の条件は
実施例1と同一にして、撥水ガラスを得た。
【0022】この撥水ガラスの表面から深さ方向のC、
Si、O、FをAESにより定量分析したところ、中間
層の表面部分のF化が実施例1のものより少なかった点
を除いて実施例1のものと同一であった。この撥水ガラ
スの当初の接触角は約120°であったが、2000時
間後においては約100°となってしまった。
【0023】したがって、実施例1の撥水ガラスは、比
較例1と同一時間の表面フッ素化処理にもかかわらず耐
候性のある撥水性を示し、長時間を要することなく多量
のFを含有するF含有炭素被膜を形成することができ、
ひいてはより充分な撥水性を発揮できることがわかる。 (比較例2)比較例2では、実施例1と同様に中間層形
成工程と炭素被膜形成工程とを実行し、表面フッ素化処
理工程を実行しないで撥水ガラスを得た。
【0024】この撥水ガラスの耐候性を観測したとこ
ろ、当初約90°の接触角が1000時間で約60°に
低下してしまった。したがって、実施例1の撥水ガラス
は、炭素被膜中にFを含有させてF含有炭素被膜を形成
することにより、充分な撥水性を示すことがわかる。 (2)次に、本第2発明のF含有炭素被膜の形成方法を
撥水ガラスの製造方法に具体化した実施例3〜6を比較
例3とともに図面を参照しつつ説明する。 (実施例3)実施例3では、中間層形成工程とフッ素含
有炭素被膜形成工程とを連続的に実行した。
【0025】{中間層形成工程・フッ素含有炭素被膜形
成工程}二元RFマグネトロンスパッタリング装置の真
空槽にSiO2 とCとの二つのターゲットを備えた。ま
た、ソーダライムガラスからなるガラス基材をそのスパ
ッタリング装置の真空槽に装備した。そして、その真空
槽を2×10-3Pa以下まで真空引きし、ガラス基材を
300℃に加熱した。次いで、Arガス中にスパッタガ
スとしてC3 6 ガスを20vol%混合させた混合ガ
スにより、真空槽内の圧力が0.1Paになるまで導入
し、各SiO2 ターゲット及びCターゲットに印加する
RF電力(W)を図3に示すように経時的に変化させ、
スパッタリング成膜を行った。
【0026】こうして、ガラス基材と、このガラス基材
上に形成されたF含有中間層と、このF含有中間層上に
良好な密着性の下で形成されたF含有炭素被膜とからな
る撥水ガラスを得た。この撥水ガラスの表面から深さ方
向のC、Si、O、FをAESにより定量分析したとこ
ろ、図4に示すように、ガラス基材上に約400ÅのF
含有中間層が形成されていた。ここで、F含有中間層
は、ガラス基材上にSiO2 とFとからなるF含有Si
2 層が約100Åの厚さで形成され、F含有SiO2
層上にSiO2 とCとFからなり表面へ近づくほどCの
濃度が濃くつまりCのモル分率が高くなる混合層が約3
00Åの厚さで形成されていた。また、このF含有中間
層上に約100ÅのF含有炭素被膜が形成され、その表
面部分はF化されていた。
【0027】この撥水ガラスの当初の接触角は、実施例
1と同様、約130°の接触角であった。また、この撥
水ガラスの耐候性も、実施例1と同様、2000時間後
においても約120°の接触角を有した。さらに、この
撥水ガラスの表面を実施例1と同一摩擦条件で擦ったと
ころ、さほどF含有炭素被膜に変化はみられなかった。
より過酷な条件下で擦ったところ、この撥水ガラスは、
F含有中間層がFを含有しているため、表面のF含有炭
素被膜が摩耗等により消滅してもF含有中間層により好
適な撥水性を発揮することができた。したがって、この
撥水ガラスは極めて高い耐久性のある撥水性を発揮でき
ることがわかる。 (比較例3)比較例3では、表面処理用ガスとしてC3
6 ガスの代わりにCF4 ガスを採用した。他の条件は
実施例3と同一にして、撥水ガラスを得た。
【0028】この撥水ガラスの表面から深さ方向のC、
Si、O、FをAESにより定量分析したところ、F含
有中間層と、このF含有中間層の表面部分のF化とが実
施例3のものより少なかった点を除いて実施例3のもの
と同一であった。この撥水ガラスの当初の接触角は約1
20°であったが、2000時間後においては約100
°となってしまった。
【0029】したがって、実施例3の撥水ガラスは、比
較例3と同一時間のフッ素含有炭素被膜形成にもかかわ
らず耐候性のある撥水性を示し、長時間を要することな
く、より充分な撥水性を発揮できることがわかる。 (実施例4)実施例4では、実施例3のSiO2 ターゲ
ットの代わりにAl2 3 ターゲットを採用した。
【0030】{中間層形成工程・フッ素含有炭素被膜形
成工程}各Al2 3 ターゲット及びCターゲットに印
加するRF電力(W)を図5に示すように経時的に変化
させ、スパッタリング成膜を行った。他の条件は実施例
3と同一である。こうして、ガラス基材と、このガラス
基材上に形成されたF含有中間層と、このF含有中間層
上に良好な密着性の下で形成されたF含有炭素被膜とか
らなる撥水ガラスを得た。
【0031】この撥水ガラスの表面から深さ方向のC、
Al、O、FをAESにより定量分析したところ、図6
に示すように、ガラス基材上に約400ÅのF含有中間
層が形成されていた。ここで、F含有中間層は、ガラス
基材上にAl2 3 とFとからなるF含有Al2 3
が約100Åの厚さで形成され、F含有Al2 3 層上
にAl2 3 とCとFからなり表面へ近づくほどCの濃
度が濃くつまりCのモル分率が高くなる混合層が約30
0Åの厚さで形成されていた。また、このF含有中間層
上に約100ÅのF含有炭素被膜が形成され、その表面
部分はF化されていた。
【0032】この撥水ガラスの当初の接触角は約120
°の接触角であった。また、この撥水ガラスの耐候性
は、2000時間後においても約120°の接触角を有
した。さらに、この撥水ガラスの表面を実施例1と同一
摩擦条件で擦ったところ、実施例3と同様、さほどF含
有炭素被膜に変化はみられず、より過酷な条件下で擦っ
てもF含有中間層により好適な撥水性を発揮することが
できた。 (実施例5)実施例5では、実施例3と同様にSiO2
ターゲットとCターゲットとを採用し、RF電力(W)
を実施例3とは異ならせた。
【0033】{中間層形成工程・フッ素含有炭素被膜形
成工程}各SiO2ターゲット及びCターゲットに印加
するRF電力(W)を図7に示すように経時的に変化さ
せ、スパッタリング成膜を行った。他の条件は実施例3
と同一である。こうして、ガラス基材と、このガラス基
材上に形成されたF・Si・O含有炭素被膜とからなる
撥水ガラスを得た。すなわち、この撥水ガラスは、中間
層の内部までF含有炭素被膜が形成され、中間層とF含
有炭素被膜とが一体となったF、Si、O含有炭素被膜
をもつ。
【0034】この撥水ガラスの表面から深さ方向のC、
Si、O、FをAESにより定量分析したところ、図8
に示すように、ガラス基材上に約200ÅのF・Si・
O含有炭素被膜が形成されていた。この撥水ガラスの当
初の接触角は約120°の接触角であった。また、この
撥水ガラスの耐候性は、2000時間後においても約1
00°の接触角を有した。
【0035】さらに、この撥水ガラスの表面を実施例1
と同一摩擦条件で擦ったところ、実施例3と同様、さほ
どF・Si・O含有炭素被膜に変化はみられず、より過
酷な条件下で擦ってもF・Si・O含有炭素被膜により
好適な撥水性を発揮することができた。 (実施例6)実施例6では、実施例3と同様にSiO2
ターゲットとCターゲットとを採用し、Cの結合に二重
結合をもつ炭素フッ素含有化合物としてC2 4 を採用
した。
【0036】{中間層形成工程・フッ素含有炭素被膜形
成工程}Arガス中にC2 4 ガスを20vol%混合
させた混合ガスにより、真空槽内の圧力が0.1Paに
なるまで導入し、各SiO2 ターゲット及びCターゲッ
トに印加するRF電力(W)を図3に示すように経時的
に変化させ、スパッタリング成膜を行った。他の条件は
実施例3と同一である。
【0037】こうして、ガラス基材と、このガラス基材
上に形成されたF含有中間層と、このF含有中間層上に
良好な密着性の下で形成されたF含有炭素被膜とからな
る撥水ガラスを得た。この撥水ガラスの表面から深さ方
向のC、Si、O、FをAESにより定量分析したとこ
ろ、図9に示すように、ガラス基材上に約400ÅのF
含有中間層が形成されていた。ここで、F含有中間層
は、ガラス基材上にSiO2 とFとからなるF含有Si
2 層が約100Åの厚さで形成され、F含有SiO2
層上にSiO2 とCとFからなり表面へ近づくほどCの
濃度が濃くつまりCのモル分率が高くなる混合層が約3
00Åの厚さで形成されていた。また、このF含有中間
層上に約100ÅのF含有炭素被膜が形成され、その表
面部分はF化されていた。
【0038】この撥水ガラスの当初の接触角は約130
°の接触角であった。また、この撥水ガラスの耐候性
は、2000時間後においても約120°の接触角を有
した。さらに、この撥水ガラスの表面を実施例1と同一
摩擦条件で擦ったところ、さほどF含有炭素被膜に変化
はみられなかった。より過酷な条件下で擦ってもF含有
中間層により好適な撥水性を発揮することができた。
【0039】なお、上記実施例1〜6では、F含有炭素
被膜を撥水膜として採用した撥水ガラスの製造方法に本
第1及び第2発明を具体化したが、本第1及び第2発明
を反応管の製造方法に具体化することもできる。この場
合等において、F含有炭素被膜に耐摩耗性が不要であれ
ば、上記中間層形成工程を実行する必要はない。
【0040】
【発明の効果】以上詳述したように、本第1、2発明の
フッ素含有炭素被膜の形成方法では、表面処理用ガス又
はスパッタガスとしてCの結合に二重結合をもつ炭素フ
ッ素含有化合物を採用しているため、長時間を要するこ
となく多量のFをF含有炭素被膜中に含有させることが
できる。
【0041】そして、この形成方法を実施するとともに
中間層形成工程を実行することにより撥水ガラスを製造
すれば、長時間を要することなく、優れた撥水性、耐候
性及び耐久性の撥水ガラスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1に係る成膜時間とRF電力との関係を
示すグラフである。
【図2】実施例1に係るエッチング時間と原子濃度との
関係を示すグラフである。
【図3】実施例3、6に係る成膜時間とRF電力との関
係を示すグラフである。
【図4】実施例3に係るエッチング時間と原子濃度との
関係を示すグラフである。
【図5】実施例4に係る成膜時間とRF電力との関係を
示すグラフである。
【図6】実施例4に係るエッチング時間と原子濃度との
関係を示すグラフである。
【図7】実施例5に係る成膜時間とRF電力との関係を
示すグラフである。
【図8】実施例5に係るエッチング時間と原子濃度との
関係を示すグラフである。
【図9】実施例6に係るエッチング時間と原子濃度との
関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田嶋 一郎 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 石井 昌彦 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基材上に炭素被膜を形成する炭素被膜形成
    工程と、 炭素の結合に二重結合をもつ炭素フッ素含有化合物を表
    面処理用ガスとして採用し、該炭素被膜中にフッ素を含
    有させてフッ素含有炭素被膜を形成する表面フッ素化処
    理工程と、を有することを特徴とするフッ素含有炭素被
    膜の形成方法。
  2. 【請求項2】炭素の結合に二重結合をもつ炭素フッ素含
    有化合物をスパッタガスとして採用し、基材上にフッ素
    含有炭素被膜を形成することを特徴とするフッ素含有炭
    素被膜の形成方法。
JP33176991A 1991-12-16 1991-12-16 フッ素含有炭素被膜の形成方法 Pending JPH05163044A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013100601A (ja) * 2011-10-14 2013-05-23 I'msep Co Ltd フッ化処理による表面改質方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2013100601A (ja) * 2011-10-14 2013-05-23 I'msep Co Ltd フッ化処理による表面改質方法

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