JP2013100601A - フッ化処理による表面改質方法 - Google Patents

フッ化処理による表面改質方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2013100601A
JP2013100601A JP2012227601A JP2012227601A JP2013100601A JP 2013100601 A JP2013100601 A JP 2013100601A JP 2012227601 A JP2012227601 A JP 2012227601A JP 2012227601 A JP2012227601 A JP 2012227601A JP 2013100601 A JP2013100601 A JP 2013100601A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
anode
carbon
ion source
molten salt
potential
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2012227601A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6091150B2 (ja
Inventor
Yasuhiko Ito
靖彦 伊藤
Tokujiro Nishigori
徳二郎 錦織
Hiroyuki Tsujimura
浩行 辻村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
IMSEP Co Ltd
Original Assignee
IMSEP Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by IMSEP Co Ltd filed Critical IMSEP Co Ltd
Priority to JP2012227601A priority Critical patent/JP6091150B2/ja
Publication of JP2013100601A publication Critical patent/JP2013100601A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6091150B2 publication Critical patent/JP6091150B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Abstract

【課題】簡便な製法及び装置を用いた効率のよいフッ化処理による表面改質方法を提供する。
【解決手段】溶融塩を用いた電気化学プロセスによるフッ化処理による表面改質方法において、(a)フッ化物イオン源を含有する溶融塩を保持した電解槽1を準備し、(b)フッ化処理を施すための炭素あるいは金属などの基材表面を炭素膜で被覆した陽極4と陰極5とを電解浴中に配置し、(c)フッ化物イオン源が酸化される電位で炭素陽極4を通電することにより炭素陽極4の表面をフッ化処理するステップを含む。また、別の方法として、フッ化物イオン源とカーバイドイオン源を含む溶融塩を用いて、約2.5V(カソード限界の電位基準)よりも貴な電位で陽極を通電することにより陽極の表面にフッ素と炭素とを共析させたフッ化炭素膜を生成させても良い。
【選択図】図1

Description

本発明は、電気化学反応を利用した表面改質方法に関し、特に、電解浴に溶融塩を用い、反応種としてフッ化物イオン源を用いて、さらに被処理基材を陽極として用いて、陽極表面でフッ化物イオン源を電気化学的に酸化させることにより、陽極表面をフッ化処理する方法に関する。
金属構造材等の表面に耐食性、撥水性、撥液性、高硬度、防汚性等の機能を付与するため、フッ化処理による表面改質技術の開発が精力的に行われている。従来からのフッ化処理による表面改質技術としては、例えば、特開平5−163044号公報(特許文献1)の「炭素膜とその製造方法」や特開2004−27309号公報(特許文献2)の「フッ素含有炭素被膜の形成方法」の中に開示されているプラズマCVD(化学気相成長法)やPVD(物理気相成長法)などの気相法を挙げることができる。
また、一般に生産性に優れた表面改質方法としては、水溶液系の電解質を用いた電気めっき法が知られており、特に金属皮膜の形成に関するものであれば、簡便な処理装置を用いて付き回り性良く皮膜を形成させることができる。
なお、特許第4756132号公報(特許文献3)、特開2009−120860号公報(特許文献4)には、電解質として溶融塩を用いて、被処理基板へ炭素を電気化学的にめっきすることが記載されている。
特開平5−163044号公報 特開2004−27309号公報 特許第4756132号公報 特開2009−120860号公報
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の従来の方法は、いずれも大型の真空チャンバーを使用しなければならないために、装置コストが高くなるだけでなく、チャンバー内での厳密な製造条件の制御が複雑かつ困難であり、また、バッチ式生産のために量産化に不向きである、さらには、複雑形状の基材に対する付き回り性に欠けるなど様々な問題点があった。
一方、従来の水溶液系の電解質を用いためっき法では、フッ化処理による表面改質を行うことはできなかった。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、簡便な製法及び装置を用いて効率よいフッ化処理による表面改質方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、電気化学的な反応を利用したフッ化処理による表面改質方法について鋭意研究を重ねた結果、電解浴に溶融塩を用い、反応種としてフッ化物イオン源を用いて、さらに被処理炭素基板を陽極として用いて、炭素陽極表面でフッ化物イオン源を電気化学的に酸化させることにより炭素陽極をフッ化処理により表面改質する処理方法(以下、処理方法1という)を見出した。
図1は、本発明における、フッ化処理により表面改質する処理方法1の原理を示した概念図である。図1に示すように、フッ化物イオン源3を含有する溶融塩2を保持した電解槽1を準備し、電解槽1中に、炭素陽極4(被処理炭素基板)と陰極5とを配置し、そして、電源10によって、炭素陽極4を、フッ化物イオン源3が酸化される電位で通電することにより、フッ化物イオン源がFである場合、炭素陽極4では次の反応が起きて、陽極表面がフッ化処理される。
C+F→C-F+e
その際、陰極5ではアルカリ金属などが析出する。例えば溶融塩2中にLiが含まれ、析出するアルカリ金属がリチウムの場合、陰極反応は次のようになる。
Li+e→Li
そこで、この発明の一つの局面に従ったフッ化処理による表面改質方法は、溶融塩を用いた電気化学プロセスによるフッ化処理による表面改質方法において、(a)フッ化物イオン源を含有する溶融塩を保持した電解槽を準備するステップと、(b)電解槽中に、フッ化処理を施すための炭素陽極と陰極とを配置するステップと、そして(c)炭素陽極を、フッ化物イオン源が酸化される電位で通電することにより炭素陽極の表面をフッ化処理するステップとを含んでいる。
フッ化物イオン源とは、フッ化物イオン(F)あるいはフッ素を含む錯イオンのことをいうものとする。また、炭素陽極の表面フッ化処理とは、陽極の炭素原子とフッ素原子とを結合させることをいうものとする。
被処理炭素基板としては、グラファイトやグラッシーカーボンなどバルクの炭素材料を用いてもよいが、金属などの基材表面を炭素膜で被覆した炭素被覆部材を被処理炭素基板として用いることもできる。
炭素膜被覆の手法としては、従来プラズマCVD(化学気相成長法)やPVD(物理気相成長法)などの気相法が用いられているが、フッ化処理の場合と同様に、コストや生産性の問題から、以下に示す電気化学的な反応により炭素膜を被覆する方法を選択することがより望ましい。
電解質として溶融塩を用いることで、被処理基板へ炭素を電気化学的にめっきすることができる(特許文献3,4)。この技術は、電解浴として炭酸イオン(CO 2−)を含む溶融塩を用い、被処理基板を陰極として用いて、この陰極表面でCO 2−を電気化学的に還元させることにより陰極上に炭素を析出させるもの、あるいは、電解浴としてカーバイドイオン(C 2−)を含む溶融塩を用い、被処理基板を陽極として用いて、この陽極表面でC 2−を電気化学的に酸化させることにより陽極上に炭素を析出させるものである。
本発明者らはさらに、電解浴に溶融塩を用い、反応種としてフッ化物イオン源に加えてカーバイドイオン源を用い、被処理基板を陽極として用いて、陽極表面でフッ化物イオン源とカーバイドイオン源とを電気化学的に酸化させることにより陽極表面を表面改質する方法(以下、処理方法2という)を見出した。
図2は、本発明における、フッ化処理により表面改質する処理方法2の原理を示した概念図である。図2に示すように、フッ化物イオン源3とカーバイドイオン源6とを含有する溶融塩2を保持した電解槽1を準備し、電解槽1中に、陽極7(被処理基板)と陰極5とを配置し、そして、電源10によって、陽極7を、フッ化物イオン源3とカーバイドイオン源6とが酸化される電位で通電することにより、フッ化物イオン源がF、カーバイドイオン源がC 2−である場合、陽極7では次の反応が起きて、陽極表面にはフッ化処理された炭素膜が生成される。
2−→2C+2e
C+F→C-F+e
その際、陰極5ではアルカリ金属などが析出する。例えば溶融塩2中にLiが含まれ、析出するアルカリ金属がリチウムの場合、陰極反応は次のようになる。
Li+e→Li
そこで、この発明の別の局面に従ったフッ化処理による表面改質方法は、溶融塩を用いた電気化学プロセスによるフッ化処理による表面改質方法において、(a)フッ化物イオン源とカーバイドイオン源を含む溶融塩を保持した電解槽を準備するステップと、(b)電解槽中に、表面改質を施すための陽極と陰極とを配置するステップと、そして(c)陽極を、フッ化物イオン源とカーバイドイオンが酸化される電位で通電することにより陽極の表面にフッ素と炭素とを共析させたフッ化炭素膜を生成させるステップとを含む。ステップ(c)においては、陽極は約2.5V(カソード限界の電位基準)よりも貴な電位で通電される。
フッ素と炭素とを共析させたフッ化炭素膜とは、炭素膜中にフッ素を含有させたフッ素含有炭素被膜をいうものとする。
カーバイドイオン(C 2−)源は、CaCであることが好ましい。
以上のように、この発明によれば、簡便な製法及び装置を用いた効率のよいフッ化処理による表面改質方法を提供することができる。
本発明における、フッ化処理により表面改質する処理方法1の原理を示した概念図である。 本発明における、フッ化処理により表面改質する処理方法2の原理を示した概念図である。 グラッシーカーボン基板を陽極に用いて陽分極させた際の電流変化を示した図である(一部拡大)。 グラッシーカーボン基板を陽極に用いて陽分極させた際の電流変化を示した図である。 グラッシーカーボン基板を陽極に用いて測定したサイクリックボルタモグラムである。 グラファイト板を陽極に用いて陽分極させた際の電流変化を示す図である。 3.2V(カソード限界の電位基準)で電解した後のグラファイト板のXPS分析結果を示す図である。 6.7V(カソード限界の電位基準)で電解した後のグラファイト板のXPS分析結果を示す図である。 9.0V(カソード限界の電位基準)で電解した後のグラファイト板のXPS分析結果を示す図である。 6.7V(カソード限界の電位基準)で電解した後のグラファイト板と電解をしていないグラファイト板の濡れ性を、水滴の接触角により評価した写真である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下に示される実施形態と実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
(電解浴)
処理方法1で電解浴として使用する溶融塩としては、溶融塩中でフッ化物イオン源が安定に存在し得るものであれば、特に制限されることなく使用することができる。
フッ化物イオン源がFである場合、F源としては、溶融塩中でFが安定に存在し得るものであれば、特に制限なく使用することができる。例えば各種の金属フッ化物に加え、HFやNHFなども使用することができる。
本発明において使用される溶融塩は、適当な組成で混合・溶融させたLiF−NaF−KF、又はLiCl−KCl−KFを例示することができる。
処理方法2で電解浴として使用する溶融塩としては、溶融塩中でフッ化物イオン源とカーバイドイオン源が安定に存在し得るものであれば、特に制限されることなく使用することができる。
フッ化物イオン源がFである場合、F源としては、溶融塩中でFが安定に存在し得るものであれば、特に制限なく使用することができる。例えば各種の金属フッ化物に加え、HFやNHFなども使用することができる。
カーバイドイオン源の原料としては、上記の溶融塩中においてC 2−を生成するような物質であれば、特に制限されることなく使用することができ、特にCaCを使用することが好ましい。
本発明において使用される溶融塩は、適当な組成で混合・溶融させたLiF−NaF−KF、又はLiCl−KCl−KFに、CaCを添加したものを例示することができる。
また、溶融塩を保持した電解槽は、生成される被処理炭素基板の高温での表面酸化・消耗を防ぐ等の理由により、必要があれば不活性ガスによるパージ、もしくは気流中に保持するのが好ましい。さらに、フッ化処理によるより有効な表面改質を実現する目的で、溶融塩を攪拌したり振動を与えたりしながら電解することもできる。
(処理温度)
処理温度(溶融塩を保持した電解槽の浴温)について特に制限はないが、選択した溶融塩の浴組成に応じて適宜選択することができる。
(陽極)
本発明の処理方法1において、フッ化処理による表面改質を施す陽極には、グラファイトやグラッシーカーボンなどバルクの炭素材料、あるいは、炭素膜で被覆された基板が用いられる。この炭素膜被覆基板については、本発明の処理温度において、表面の炭素膜が剥離や損耗することなく、電極として使用できる導電性を維持するものであれば、特に制限されない。一方、本発明の処理方法2において表面改質を施す陽極には、本発明の処理温度において、電極として使用できる導電性と形態を維持するものであれば、金属に限らず全ての種類の材料の使用が可能である。また、電解浴である溶融塩中に浸漬させるのみで反応したり又は成分が溶出したりするような材料であっても、フッ化処理が開始されて以降はそのような反応が進行せず、かつ該材料の形態が損なわれることがないものであれば、基板として使用することができる。
(陰極)
陽極においてフッ化処理による表面改質を行う際の陰極では、電解浴である溶融塩成分のアルカリ金属やアルカリ土類金属等のカチオンが還元される反応が生じる。例えば、代表的な電解浴である溶融LiCl−KCl−KFの場合、溶融塩中のLiが還元されて金属Liが析出する。本発明の場合、LiCl−KCl−KFが使用される浴温では金属Liは液相にあるので、金属霧となって陽極−陰極間の短絡を引き起こす可能性がある。そのため、陰極に金属Alを用いることでAl−Li合金を形成させたり、或いは、液体金属Snを用いることによりSn−Li液相合金を生成させるなどして金属Liの固定化及び回収を容易にさせ、金属Liによる陽極−陰極間の短絡を防止する必要がある。
(電解条件)
本発明の処理方法1における電解時の電極電位については、溶融塩中のフッ化物イオン源が電気化学的に酸化されてフッ化処理による表面改質が進行するような電位領域にあるように、電極電位若しくは電解電流を制御すればよい。例えば、浴温が400℃程度の溶融LiCl−KCl−KFを電解浴に用いる場合、約2.5V(Li/Li基準)よりも貴な電位で電解を行うことが好ましい。
本発明の処理方法2における電解時の電極電位については、溶融塩中のフッ化物イオン源とカーバイドイオン源とが電気化学的に酸化される電位領域にあるように、約2.5V(カソード限界基準)よりも貴な電位で電極電位若しくは電解電流を制御すればよい。例えば、浴温が400℃程度の溶融LiCl−KCl−KFにCaCを添加したものを電解浴に用いる場合、約2.5V(Li/Li基準)よりも貴な電位で電解を行う。
例えば溶融塩としてLiCl−KCl−KFを用いる場合には、電解を行う電位は、約3.6V(Li/Li基準)よりも卑な電位であることが好ましい。このようにすることにより、塩素ガスが大量に発生することを防ぐことができる。
(回収、後処理)
付着塩の洗浄には、溶融塩電解など他の溶融塩を取り扱う場合の一般的な洗浄方法を利用することができる。例えば、脱酸素処理をした温水を使用すれば、付着塩は容易に除去することができる。また、洗浄中の酸化を防ぐために、洗浄時の雰囲気は、不活性ガスや水素などにより非酸化雰囲気下又は還元雰囲気下に保持してもよい。
以上の検討結果をまとめると、本発明の特徴は以下のように整理される。
すなわち、本発明の処理方法1によれば、まず、溶融塩を用いた電気化学プロセスによるフッ化処理による表面改質方法において、(a)フッ化物イオン源を含む溶融塩を保持した電解槽を準備するステップと、(b)電解槽中に、フッ化処理を施すためのバルク炭素陽極あるいは炭素膜で被覆された陽極と陰極とを配置するステップと、そして(c)陽極を、フッ化物イオンが酸化される電位で通電することにより、陽極の表面をフッ化処理するステップとを含んでいるフッ化処理による表面改質方法が提供される。
炭素膜で被覆された陽極は、溶融塩中でのカーバイドイオン(C 2−)の陽極酸化反応、あるいは炭酸イオン(CO 2−)の陰極還元反応を用いる、炭素めっきによって準備してもよいし、CVDやPVDなどの気相法によって準備してもよい。
また、本発明の処理方法2によれば、溶融塩を用いた電気化学プロセスによるフッ化処理による表面改質方法において、(a)フッ化物イオン源とカーバイドイオン源を含む溶融塩を保持した電解槽を準備するステップと、(b)電解槽中に、表面改質を施すための陽極と陰極とを配置するステップと、そして(c)陽極を、フッ化物イオン源とC 2−とが同時に酸化される電位で通電することにより、陽極上にフッ化処理された炭素膜を生成させるステップとを含んでいる表面改質方法が提供される。
また、本発明においてフッ化物イオン源としてはフッ化物イオン(F)が例示でき、F源としては、各種金属フッ化物に加え、HFやNHF等も使用することができる。
カーバイドイオン源の原料としては、使用する溶融塩中においてカーバイドイオン源を生成するような物質であれば、特に制限されることなく使用することができ、特にCaCを使用することが好ましい。
以上のように、本発明の処理方法1によれば、電解浴に溶融塩を用い、反応種としてフッ化物イオン源を用いて、さらに被処理炭素基板を陽極として用いて、炭素陽極表面でフッ化物イオン源を電気化学的に酸化させることにより炭素陽極表面をフッ化処理することが可能な表面改質方法を提供することができる。すなわち、本発明によれば、簡便な手段及び装置を用いた効率のよいフッ化処理による表面改質方法を提供することができる。
また、本発明の処理方法2によれば、電解浴に溶融塩を用い、反応種としてフッ化物イオン源とカーバイドイオン源を用いて、さらに被処理基板を陽極として用いて、陽極表面でフッ化物イオン源とカーバイドイオン源を電気化学的に酸化させることにより陽極上にフッ化処理された炭素膜を生成することが可能な表面改質方法を提供することができる。すなわち、本発明によれば、簡便な手段及び装置を用いた効率のよいフッ化処理による表面改質方法を提供することができる。
400℃の溶融LiCl−KCl(59:41mol%)中に、F源として5mol%のKFを添加したものを電解浴として用い、グラッシーカーボン基板を陽極に用いて陽分極させ、電流変化を測定した。比較として、KFを添加していない400℃の溶融LiCl−KCl中で、グラッシーカーボン基板を陽極に用いて同様の測定を行ったものを併せて示す(図3、図4)。
図3においてKFの添加前後を比較すると、2.5V〜3.5V(Li/Li基準)あたりの電位領域において、KFを添加した浴中の方が、明らかに大きな酸化電流が流れている。この酸化電流が、Fの酸化反応に起因するものであり、グラッシーカーボン電極の表面がフッ化されていると考えられる。
さらに貴な方向に電位を走査させていくと、KF添加の有無に関わらず、およそ3.6V付近から塩素ガス発生による電流が立ち上がるが、図4をみると、3.6Vよりも貴な同一の電位において、KFを添加した浴中では酸化電流が明らかに小さなことが分かる。これは、グラッシーカーボン電極表面のフッ化処理によって表面の濡れ性が変化し、発生した塩素ガスがグラッシーカーボン電極を覆う部分が増えた結果、反応面積が小さくなったためと考えられる。
図5に、同じ電解浴中で測定したサイクリックボルタモグラムを示す。貴な方向への電位走査によって塩素ガスが発生させられた後、電位を卑な方向に折り返して走査すると、KFを添加していない浴中では、ほとんど還元電流が流れないのに対し、KFを添加した浴中では、大きな還元電流が流れた。KFを添加していない場合、発生した塩素ガスは速やかにグラッシーカーボン電極から脱離するので還元電流はほとんど測定されない。これに対し、KFを添加した場合、フッ化処理によって電極表面の濡れ性が変化した結果、発生した塩素ガスが脱離せずに電極上に留まるようになり、電位走査方向の折り返し後に還元反応を受けて大きな還元電流が流れたものと考えられる。
このように、KFを添加した溶融塩中において、グラッシーカーボン電極の電気化学的なフッ化処理による表面改質が確認された。
次に、炭素陽極(被処理炭素電極)としてグラファイト板を用いて、F源を含む溶融塩中において、炭素陽極がフッ化処理されることを確認した。
図1に模式的に示す装置を用いた。電解浴として、LiFとNaFとKFとを、LiF:NaF:KF=46.5(mol%):11.5(mol%):42.0(mol%)の比率で含む溶融塩を準備した。電解浴中にグラファイト板とアルミニウム板とを配置した。電解浴の温度は500℃に保った。アルミニウム板を陰極として用い、グラファイト板を陽極として用いて、陽分極させ、電流変化を測定した。
図6に示すように、2.0V(カソード限界基準)付近から酸化電流が流れていることが観察された。この酸化電流はFの酸化反応に起因するものと考えられ、グラファイト電極の表面がフッ化されていると考えられる。
そこで、同浴中でグラファイトを炭素陽極として用い、3.2V、6.7V、9.0V(カソード限界の電位基準)の各電位で1時間の定電位電解を行い、その後、各電位で電解されたそれぞれのグラファイト電極についてXPSによる分析を行った。
図7〜9に示すように、3.2V、6.7V、9.0Vのいずれの電位で電解されたグラファイト板についても、C1s、F1sともにC−F結合を示すスペクトルが確認されており(C1sにおいては、グラファイトに起因するC−C結合の高エネルギー側に、明らかにショルダーが見られる)、グラファイト板がフッ化処理されたことがわかる。
また、図7〜9に示すスペクトルに表れているピーク面積から、フッ素と炭素の原子比(C/F)を算出した。算出された値を表1に示す。
表1に示すように、電解電位によってフッ素と炭素の原子比が異なっており、卑な電位であるほどフッ素濃度が高いことがわかる。貴な電位で電解を行った場合、炭素とフッ素の反応は促進されると考えられるが、CFガスが生成して電極表面から脱離するために炭素表面のフッ素の割合が比較的小さくなった可能性が考えられた。
さらに、図10に示すように、6.7Vで電解したグラファイト板において、電解を行っていないグラファイト板と比較して、水滴の接触角が増加しており、グラファイト板表面の濡れ性が変化して撥水性が発現していることがわかる。
以上の結果から、本発明の方法により、陽極の表面にフッ化処理された炭素膜が生成されることが確認された。
以上に開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変形を含むものである。
1:電解槽、2:溶融塩、3:フッ化物イオン源、4:炭素陽極、5:陰極、6:カーバイドイオン、7:陽極。

Claims (4)

  1. 溶融塩を用いた電気化学プロセスによるフッ化処理による表面改質方法において、
    (a)フッ化物イオン源を含有する溶融塩を保持した電解槽を準備するステップと、
    (b)前記電解槽中に、フッ化処理を施すための炭素陽極と陰極とを配置するステップと、そして
    (c)前記炭素陽極を、前記フッ化物イオン源が酸化される電位で通電することにより前記炭素陽極の表面をフッ化処理するステップと
    を含んでいる、フッ化処理による表面改質方法。
  2. 前記炭素陽極は炭素が被覆された陽極である、請求項1に記載のフッ化処理による表面改質方法。
  3. 溶融塩を用いた電気化学プロセスによるフッ化処理による表面改質方法において、
    (a)フッ化物イオン源とカーバイドイオン源を含む溶融塩を保持した電解槽を準備するステップと、
    (b)前記電解槽中に、表面改質を施すための陽極と陰極とを配置するステップと、そして
    (c)前記陽極を、前記フッ化物イオン源とカーバイドイオン源が酸化される電位で通電することにより前記陽極の表面にフッ素と炭素とを共析させたフッ化炭素膜を生成させるステップと
    を含み、
    前記ステップ(c)においては、前記陽極は約2.5V(カソード限界の電位基準)よりも貴な電位で通電される、フッ化処理による表面改質方法。
  4. 前記カーバイドイオン源の原料は、CaCである、請求項3に記載のフッ化処理による表面改質方法。
JP2012227601A 2011-10-14 2012-10-15 フッ化処理による表面改質方法 Active JP6091150B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012227601A JP6091150B2 (ja) 2011-10-14 2012-10-15 フッ化処理による表面改質方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011226915 2011-10-14
JP2011226915 2011-10-14
JP2012227601A JP6091150B2 (ja) 2011-10-14 2012-10-15 フッ化処理による表面改質方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013100601A true JP2013100601A (ja) 2013-05-23
JP6091150B2 JP6091150B2 (ja) 2017-03-08

Family

ID=48621444

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012227601A Active JP6091150B2 (ja) 2011-10-14 2012-10-15 フッ化処理による表面改質方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6091150B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105755499A (zh) * 2016-03-31 2016-07-13 张玲 一种电解制取六氟化硫的方法

Citations (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS63231721A (ja) * 1987-03-20 1988-09-27 Fuji Electric Co Ltd 磁気記録媒体
JPH0570982A (ja) * 1991-05-16 1993-03-23 Nobuatsu Watanabe 三弗化窒素ガスの製造方法
JPH05163044A (ja) * 1991-12-16 1993-06-29 Toyota Motor Corp フッ素含有炭素被膜の形成方法
JPH08127881A (ja) * 1994-10-28 1996-05-21 Mitsubishi Alum Co Ltd フロロカーボン膜が形成された金属材料、その製造方法並びにその材料を用いた装置
JPH08248203A (ja) * 1995-03-06 1996-09-27 Ricoh Co Ltd 部材表面を超撥水性にする方法および超撥水性透明板
JPH11106979A (ja) * 1997-10-03 1999-04-20 Toyo Tanso Kk 電解装置、及び電解槽の防食方法
JP2004027309A (ja) * 2002-06-27 2004-01-29 Mitsubishi Heavy Ind Ltd 炭素膜とその製造方法
JP2009052095A (ja) * 2007-08-28 2009-03-12 Permelec Electrode Ltd 導電性ダイヤモンド電極の賦活化方法及び賦活化された電極を使用する電解方法
JP2009120860A (ja) * 2007-11-12 2009-06-04 Doshisha 炭素膜の製造方法
JP2012193415A (ja) * 2011-03-17 2012-10-11 Central Glass Co Ltd フッ素化合物の電解合成用電極

Patent Citations (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS63231721A (ja) * 1987-03-20 1988-09-27 Fuji Electric Co Ltd 磁気記録媒体
JPH0570982A (ja) * 1991-05-16 1993-03-23 Nobuatsu Watanabe 三弗化窒素ガスの製造方法
JPH05163044A (ja) * 1991-12-16 1993-06-29 Toyota Motor Corp フッ素含有炭素被膜の形成方法
JPH08127881A (ja) * 1994-10-28 1996-05-21 Mitsubishi Alum Co Ltd フロロカーボン膜が形成された金属材料、その製造方法並びにその材料を用いた装置
JPH08248203A (ja) * 1995-03-06 1996-09-27 Ricoh Co Ltd 部材表面を超撥水性にする方法および超撥水性透明板
JPH11106979A (ja) * 1997-10-03 1999-04-20 Toyo Tanso Kk 電解装置、及び電解槽の防食方法
JP2004027309A (ja) * 2002-06-27 2004-01-29 Mitsubishi Heavy Ind Ltd 炭素膜とその製造方法
JP2009052095A (ja) * 2007-08-28 2009-03-12 Permelec Electrode Ltd 導電性ダイヤモンド電極の賦活化方法及び賦活化された電極を使用する電解方法
JP2009120860A (ja) * 2007-11-12 2009-06-04 Doshisha 炭素膜の製造方法
JP2012193415A (ja) * 2011-03-17 2012-10-11 Central Glass Co Ltd フッ素化合物の電解合成用電極

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105755499A (zh) * 2016-03-31 2016-07-13 张玲 一种电解制取六氟化硫的方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP6091150B2 (ja) 2017-03-08

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8951401B2 (en) Method for electrochemically depositing carbon film on a substrate
JP5772102B2 (ja) フッ素化合物の電解合成用電極
KR20170007268A (ko) 움직이는 금속 스트립을 도금하는 방법 및 이에 의해 생산된 코팅된 금속 스트립
JP5112010B2 (ja) 炭素膜の製造方法
RU2463390C1 (ru) Способ металлизации и устройство для его осуществления
Ett et al. Pulse current plating of TiB2 in molten fluoride
JP2011202206A (ja) 不溶性電極及びその製造方法
CN107119296A (zh) 一种阳极活化钛合金电镀铜的方法
JPWO2018216319A1 (ja) チタンめっき部材の製造方法
US3554881A (en) Electrochemical process for the surface treatment of titanium,alloys thereof and other analogous metals
CN103806044B (zh) 氯铱酸铯-氯化物熔盐体系中电解制备铱涂层的方法
JP6091150B2 (ja) フッ化処理による表面改質方法
EP3059335B1 (en) Surface modifiers for ionic liquid aluminum electroplating solutions, processes for electroplating aluminum therefrom, and methods for producing an aluminum coating using the same
Jiang et al. Effect of pulse current parameters on microstructure of tungsten coating electroplated from Na2WO4–WO3–NaPO3
CN108441912B (zh) 铝合金表面Al3C4-Al2O3-ZrO2耐磨复合涂层的制备方法
WO2019171744A1 (ja) チタンめっき部材の製造方法及びチタンめっき部材
US20150197870A1 (en) Method for Plating Fine Grain Copper Deposit on Metal Substrate
JP6500683B2 (ja) チタン基材の表面改質方法
CN110582594A (zh) 熔融盐钛镀液组合物以及镀钛部件的制造方法
CN102002743B (zh) 在纯铜或铜合金基体上熔盐电镀厚钨涂层的制备方法
JP4632966B2 (ja) 電解金属粉の製造方法
JP2007231301A (ja) 溶融塩電解による基体への多元系合金の作製方法
US3880730A (en) Electro-galvanic gold plating process
US4483752A (en) Valve metal electrodeposition onto graphite
TWI726640B (zh) 表面處理鋼板之製造方法及表面處理鋼板

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150716

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160426

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160524

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20160720

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160921

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170131

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170207

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6091150

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250