JP2004027309A - 炭素膜とその製造方法 - Google Patents

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Nobuki Yamashita
山下 信樹
Toshiya Watanabe
渡辺 俊哉
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Abstract

【課題】硬度が高く、撥水性に優れた炭素膜及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ガス導入口6からメタンガスと四フッ化炭素ガスとを含有する混合ガスを一定の真空度とした真空容器1に導入し、イオン源5においてイオン化、発生したイオンを一定の電圧で加速することにより、イオンビーム7として基材2に照射しフッ素原子を含有する炭素膜とする。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は炭素膜及びその製造方法に関し、前記炭素膜は例えば、各種回転機械の軸受やスライド等の摺動部材や情報記憶装置等の耐摩耗性を要求される部材へ利用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
硬質炭素膜とは、1970年代後半から研究が開始され始めたi−カーボン膜と呼ばれる硬質の炭素膜である。硬質炭素膜の製造方法としては、たとえば特開昭64−31974号公報に開示されているようなプラズマ化学気相成長法等が知られている。これらの方法で製造される硬質炭素膜は、炭素原子の結合状態について短周期の結晶性を有する一方、マクロ的にはアモルファス状の結合状態を示す物質となる。このため、硬質炭素膜はビッカース硬度でおよそ25GPaと高い硬度を有し、その優れた耐摩耗性、潤滑性、絶縁性および耐薬品性等の物性から、各種機械の摺動部品や電子部品へのコーティング等に応用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一方、食品製造機器の摺動部のように、水分との接触が多く、また衛生上、メンテナンスの頻度が高い摺動部には、撥水性が求められており、「テフロン(商品名)」材料や「テフロン」コーティングされた材料が一般的に使われている。しかしながら、「テフロン」の硬度は比較的小さいため、「テフロン」を使用した摺動部は摩耗しやすく、寿命が短い。このため、高い硬度を有し、耐摩耗性や潤滑性に優れる等、摺動部材として最適な硬質炭素膜に、更に撥水性を付与する技術が求められている。
【0004】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、従来の硬質炭素膜と同様に高い硬度を示し、かつ優れた撥水性を有する炭素膜およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する第1の発明に係る炭素膜は、フッ素原子を含有することを特徴とする炭素膜である。
【0006】
また、第2の発明に係る炭素膜は、フッ素原子を含有するアモルファス構造の炭素膜であって、フッ素含有量が4〜30原子%であることを特徴とする炭素膜である。
【0007】
また、第3の発明に係る炭素膜の製造方法は、少なくとも炭化水素化合物のガスとフッ化炭素化合物のガスとを含有する混合ガスをイオン化させた後、発生したイオンを一定の電圧で加速し基材に照射することにより、前記基材の表面に炭素膜を成膜することを特徴とする炭素膜の製造方法である。
【0008】
また、第4の発明に係る炭素膜の製造方法は、第3の発明に記載の炭素膜の製造方法であって、前記イオンを加速する電圧が50Vから2000Vであることを特徴とする炭素膜の製造方法である。
【0009】
また、第5の発明に係る炭素膜の製造方法は、少なくとも炭化水素化合物のガスとフッ化炭素化合物のガスとを含有する混合ガスのプラズマを発生させ、当該プラズマ中に浸漬した基材に負のパルス電圧を印加することにより、前記基材の表面に炭素膜を成膜することを特徴とする炭素膜の製造方法である。
【0010】
また、第6の発明に係る炭素膜の製造方法は、第5の発明に記載の炭素膜の製造方法であって、前記基材に印加するパルス電圧が−0.2kVから−10kVであることを特徴とする炭素膜の製造方法である。
【0011】
また、第7の発明に係る炭素膜の製造方法は、少なくとも希ガスとフッ化炭素化合物のガスとを含有する混合ガスの存在下における炭素ターゲットに電圧を印加することにより、混合ガスを放電させ、当該放電により生じた希ガスイオンが前記炭素ターゲットに衝突することにより発生した炭素のスパッタ粒子と当該放電により生じたフッ素とにより、炭素膜を成膜することを特徴とする炭素膜の製造方法である。
【0012】
第3から第7の発明において、前記フッ化炭素化合物としては例えば、四フッ化炭素、六フッ化二炭素、八フッ化四炭素等を使用することができる。また、第3から第6の発明において、前記炭化水素化合物としては例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、アセチレン、ベンゼン等を使用することができる。また、第7の発明において、前記希ガスとしては例えば、アルゴン、ネオン、クリプトン、キセノン等を使用することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る炭素膜及びその製造方法の好適な実施例を説明するが、本発明は以下の実施例になんら限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明の実施例1に係る硬質炭素膜の製造装置の概略図である。同図に示すように、硬質炭素膜の製造装置は真空容器1と、当該真空容器1の内部に設置されたホルダー3と、当該ホルダー3の対向位置に設置されたイオン源5とからなる。
【0015】
真空容器1は、図示していない真空排気装置によって真空排気されるようになっている。ホルダー3は、硬質炭素膜8が成膜される基材2を真空容器1内に保持するための台であり、その内部には図示していない電源、温調器に接続された加熱ヒーター4が設置されている。ホルダー3は固定タイプであるが、硬質炭素膜8を均一に成膜するために回転機構を備えても良い。イオン源5にはガス導入口6が設置されており、当該ガス導入口6から導入されたガスはイオン源5の内部でイオン化、及び加速されることによりイオンビーム7として基材2に照射される。イオン源5としては、基材2の表面に生成した膜質の均一性、生産性の観点からカウフマン型イオン源を用いており、他にはバケット型イオン源等を適用することができる。
【0016】
次に、図1に示した硬質炭素膜の製造装置を用いた炭素膜の製造例を説明する。まず、基材2として高速度工具鋼(JIS:SKH55)をホルダー3に設置し、真空容器1を1.5×10−3Pa以下に真空排気した。次に、ガス導入口6より、主に炭素源としての炭化水素化合物ガスと主にフッ素源としてのフッ化炭素化合物ガスとからなる原料ガスを供給した。ここで、炭化水素化合物ガスとしてはメタン(CH4 )、フッ化炭素化合物ガスとしては四フッ化炭素(CF4 )を用い、これらのガスを図示していない流量制御装置により設定した流量比で混合した後、ガス導入口6から供給した。また、硬質炭素膜8に含有されるフッ素量は前記流量比で制御した。
【0017】
次に、メタン及び四フッ化炭素からなる混合ガスの流量を制御することにより、真空容器1の内圧を2×10−2Paに調整した。この状態でイオン源5をイオン加速電圧500V、イオン電流密度1mA/cm2 の作動条件で作動させ、発生した混合ガスのイオンをイオンビーム7として基材2に照射し、膜厚が1μmの硬質炭素膜8を成膜した。
【0018】
以上のようにして得られた硬質炭素膜8の特性評価として、撥水性の評価、硬度測定、摩擦特性の評価を行った。
【0019】
[撥水性の評価]
撥水性の評価は、成膜した炭素膜の上に純水の水滴を置き、その接触角を測定することにより行った。なお、接触角とは、固体表面と固体表面に置かれた液滴とがなす角のうち液体を含む方の角を指し、角度が大きいほど撥水性が高いことを示す。図2は、本実施例で作製した硬質炭素膜のフッ素含有量と接触角との関係図である。なお、硬質炭素膜に含有されるフッ素量はラザフォード後方散乱法(RBS)により測定した。同図に示すように、フッ素含有率が0原子%の従来の硬質炭素膜では接触角は65°であるが、フッ素含有率が4原子%の硬質炭素膜では82°に向上している。さらにフッ素含有率の増加と共に接触角は増加し、フッ素含有率が50原子%の硬質炭素膜では接触角が100°を示した。すなわち、フッ素を含有させ、また含有率を増加させることにより、硬質炭素膜の撥水性を向上させることができた。
【0020】
[硬度測定]
硬度については、微小硬度計により荷重1gにてビッカース硬度を測定した。測定の結果、従来の硬質炭素膜(フッ素含有率0原子%)及び本実施例で作製した炭素膜のうちフッ素含有率が30原子%までの炭素膜の硬度は、共におよそHv1770であった。また、これらのフッ素含有率0〜30原子%の硬質炭素膜は、ラマンスペクトル分析の結果、1500〜1600cm−1付近に広いピークを示し、アモルファス構造の硬質炭素膜であることが確認できた。一方、フッ素含有率が30原子%を超えた炭素膜では、硬度が大幅に低下した。また、これらの炭素膜では、ラマンスペクトル分析においてアモルファス構造特有のピークが確認されず、ポリマー状の構造となっているものと推測された。
【0021】
以上、撥水性の評価及び硬度測定の結果から、フッ素含有量が4〜30原子%の炭素膜において、優れた撥水性と高い硬度とを両立する硬質炭素膜を得ることができた。
【0022】
[摩擦特性の評価]
摩擦特性の評価については、ボールディスク型摩擦特性試験機を用い、相手材のボールをステンレス鋼(JIS:SUS304)とし、荷重2N、速度0.1m/sec、温度30℃の条件下において、大気中における摩擦係数を測定した。その結果、従来の硬質炭素膜(フッ素含有率0原子%)及び本実施例で作製した硬質炭素膜(フッ素含有率30原子%)の摩擦係数は、それぞれ0.1、0.07であり、本実施例で作製した硬質炭素膜は優れた摩擦特性を有することが分かった。
【0023】
前記原料ガスについては、炭化水素化合物ガスとしてメタン以外にもエタン、プロパン、ブタン、アセチレン、ベンゼン等、また、フッ化炭素化合物ガスとして四フッ化炭素以外にも六フッ化二炭素(C2 6 )、八フッ化四炭素(C4 8 )等を用いることができ、これらのガスを用いても同等性能の硬質炭素膜が作製可能である。また、前記イオン加速電圧については、50V〜2000Vが好ましい。イオン加速電圧が50V未満では、炭素膜中に水素が多く混入しポリマー状となる結果、軟質な膜となる。一方、イオン加速電圧が2000Vを超えると、炭素膜の自己スパッタ効果が強くなり極端に成膜速度が低くなる。
【0024】
図3は、本発明の実施例2に係る硬質炭素膜の製造装置の概略図である。同図に示すように、硬質炭素膜の製造装置はガス導入口6が設けられた真空容器1と、当該真空容器1の内部に設置されたホルダー3と、真空容器1の周囲にそれぞれ対向するように設置された電磁コイル15と、導波管13を介して真空容器1に接続されているマイクロ波電源14とからなる。
【0025】
真空容器1は、図示していない真空排気装置によって真空排気されるようになっている。ホルダー3は、硬質炭素膜8が成膜される基材2を真空容器1内に保持するための台であり、高絶縁フィードスルー10を介して、負のパルス電圧の印加が可能なバイアス電源11に接続されている。
【0026】
次に、プラズマ12の発生原理について説明する。まず、ガス導入口6から導入される原料ガスの流量を制御することにより、真空容器1の内圧を一定に調整する。また、電磁コイル15により真空容器1内に磁場を発生させると共に、マイクロ波電源14によりマイクロ波を真空容器1内へ導入する。これらの条件を適切に調整することにより、基材2付近において、マイクロ波を効果的に吸収することができる磁場を形成し、混合ガスのプラズマ12を発生させることができる。なお、プラズマを発生させる方法としては、上記以外に高周波プラズマ、ヘリコンプラズマ、誘導結合プラズマ等のプラズマ源を用いる方法によっても同様な効果を得ることができる。
【0027】
次に、図3に示した硬質炭素膜の製造装置を用いた炭素膜の製造例を説明する。まず、基材2として高速度工具鋼(JIS:SKH55)をホルダー3に設置し、真空容器1を1.5×10−3Pa以下に真空排気した。次に、ガス導入口6より、主に炭素源としての炭化水素化合物ガスと主にフッ素源としてのフッ化炭素化合物ガスとからなる原料ガスを供給した。ここで、炭化水素化合物ガスとしてはメタン(CH4 )、フッ化炭素化合物ガスとしては四フッ化炭素(CF4 )を用い、これらのガスを図示していない流量制御装置により設定した流量比で混合した後、ガス導入口6より供給した。また、硬質炭素膜8に含有されるフッ素量は前記流量比で制御した。
【0028】
次に、メタン及び四フッ化炭素からなる混合ガスの流量を制御することにより、真空容器1の内圧を5×10−2Paに調整した。また、電磁コイル15に300Aの電流を流すと共に、マイクロ波電源14から1000Wの出力のマイクロ波(周波数2.45GHz)を真空容器1内へ導入した。これにより、真空容器1内の中心部から100mm離れた場所において、混合ガスがマイクロ波を効果的に吸収することができる磁場(875ガウス)を形成し、混合ガスのプラズマ12を発生させた。この状態において、高絶縁フィードスルー10を介してバイアス電源11から基材2に、電圧−2kV、duty比1%のパルス電圧を印加することにより硬質炭素膜8を成膜した。
【0029】
以上のようにして得られた硬質炭素膜8の特性評価として、撥水性の評価、硬度測定、摩擦特性の評価を行った。
【0030】
[撥水性の評価]
撥水性の評価は、成膜した炭素膜の上に純水の水滴を置き、その接触角を測定することにより行った。なお、接触角とは、固体表面と固体表面に置かれた液滴とがなす角のうち液体を含む方の角を指し、角度が大きいほど撥水性が高いことを示す。図4は、本実施例で作製した硬質炭素膜のフッ素含有量と接触角との関係図である。なお、硬質炭素膜に含有されるフッ素量はラザフォード後方散乱法(RBS)により測定した。同図に示すように、フッ素含有率が0原子%の従来の硬質炭素膜では接触角は66°であるが、フッ素含有率が4原子%の硬質炭素膜では84°に向上している。さらにフッ素含有率の増加と共に接触角は増加し、フッ素含有率が50原子%の硬質炭素膜では接触角が99°を示した。すなわち、フッ素を含有させ、また含有率を増加させることにより、硬質炭素膜の撥水性を向上させることができた。
【0031】
[硬度測定]
硬度については、微小硬度計により荷重1gにてビッカース硬度を測定した。測定の結果、従来の硬質炭素膜(フッ素含有率0原子%)及び本実施例で作製した炭素膜のうちフッ素含有率が30原子%までの炭素膜の硬度は、それぞれHv1800、約Hv1750であった。また、これらのフッ素含有率0〜30原子%の硬質炭素膜は、ラマンスペクトル分析の結果、1500〜1600cm−1付近に広いピークを示し、アモルファス構造の硬質炭素膜であることが確認できた。一方、フッ素含有率が30原子%を超えた炭素膜では、硬度が大幅に低下した。また、これらの炭素膜では、ラマンスペクトル分析においてアモルファス構造特有のピークが確認されず、ポリマー状の構造となっているものと推測された。
【0032】
以上、撥水性の評価及び硬度測定の結果から、フッ素含有量が4〜30原子%の炭素膜において、優れた撥水性と高い硬度とを両立する硬質炭素膜を得ることができた。
【0033】
[摩擦特性の評価]
摩擦特性の評価については、ボールディスク型摩擦特性試験機を用い、相手材のボールをステンレス鋼(JIS:SUS304)とし、荷重2N、速度0.1m/sec、温度30℃の条件下において、大気中における摩擦係数を測定した。その結果、従来の硬質炭素膜(フッ素含有率0原子%)及び本実施例で作製した硬質炭素膜(フッ素含有率30原子%)の摩擦係数は、それぞれ0.1、0.06であり、本実施例で作製した硬質炭素膜は優れた摩擦特性を有することが分かった。
【0034】
前記原料ガスについては、炭化水素化合物ガスとしてメタン以外にもエタン、プロパン、ブタン、アセチレン、ベンゼン等、また、フッ化炭素化合物ガスとして四フッ化炭素以外にも六フッ化二炭素(C2 6 )、八フッ化四炭素(C4 8 )等を用いることができ、これらのガスを使用しても同等性能の硬質炭素膜が作製可能である。また、基材2に印加するパルス電圧については、−0.2kV〜−10kVが望ましい。パルス電圧が−0.2kV未満(0から−0.2kVの間)では、炭素膜中に水素が多く混入しポリマー状となる結果、軟質な膜となる。一方、パルス電圧が−10kVより大きい(すなわち印加する負のパルス電圧の絶対値が10kVより大きい)場合は、炭素膜の自己スパッタ効果が強くなり極端に成膜速度が低くなる。
【0035】
図5は、本発明の実施例3に係る硬質炭素膜の製造装置の概略図である。同図に示すように、硬質炭素膜の製造装置はガス導入口6が設けられた真空容器1と、当該真空容器1の内部に設置されたスパッタ源20と、当該スパッタ源20の対向位置に設置された基板電極28からなる。
【0036】
真空容器1は、図示していない真空排気装置によって真空排気されるようになっている。基板電極28は、硬質炭素膜8が成膜される基材2を真空容器1内に保持するための台の機能も有し、真空シール機能を備えた絶縁体25を介して真空容器1の内部に通じるように設置されている。また、基板電極28は加熱ヒーター4を備えており、当該加熱ヒーター4の上に基材2が設置されている。スパッタ源20は、炭素から構成されるターゲット21と、磁場発生用磁石22と、内部に水冷機能を備えたターゲットホルダー23と、これらの部品の周囲を囲むように設置されたシールド24とからなる。また、ターゲットホルダー23は、絶縁体25を介して真空容器1の内部に通じるように設置されており、真空容器1の外部では、整合器26を介して高周波電源27に接続されている。この電源としては、高周波電源以外に直流電源を用いても良く、この場合には整合器26は不要となる。
【0037】
次に、図5に示した硬質炭素膜の製造装置を用いた炭素膜の製造例を説明する。まず、基材2として高速度工具鋼(JIS:SKH55)を基板電極28に設置し、真空容器1を2×10−4Pa以下に真空排気した。次に、ガス導入口6より、放電ガスである希ガスと主にフッ素源としてのフッ化炭素化合物ガスとからなる原料ガスを供給した。ここで、希ガスとしてはアルゴン(Ar)、フッ化炭素化合物ガスとしては四フッ化炭素(CF4 )を用い、これらのガスを図示していない流量制御装置により設定した流量比で混合した後、ガス導入口6より供給した。また、硬質炭素膜8に含有されるフッ素量は前記流量比で制御した。
【0038】
次に、アルゴン及び四フッ化炭素からなる混合ガスの流量を制御することにより、真空容器1の内圧を7×10−1Paに調整した。この状態において、整合器26を介して高周波電源27より高周波電力をターゲットホルダー23に印加し、アルゴンガスを放電させると共に四フッ化炭素(CF4 )を分解させる。放電により生じたアルゴンイオンはターゲット21の表面に衝突し、ターゲット21の表面からは炭素膜中の炭素源となる炭素スパッタ粒子が飛び出す。この炭素スパッタ粒子及び四フッ化炭素(CF4 )の分解により生じたフッ素が基板2に堆積することにより、硬質炭素膜8が形成される。前記実施例と同様に、成膜した硬質炭素膜の膜厚は1μmとした。
【0039】
以上のようにして得られた硬質炭素膜8の特性評価として、撥水性の評価、硬度測定、摩擦特性の評価を行った。
【0040】
[撥水性の評価]
撥水性の評価は、炭素膜の上に純水の水滴を置き、その接触角を測定することにより行った。なお、接触角とは、固体表面と固体表面に置かれた液滴とがなす角のうち液体を含む方の角を指し、角度が大きいほど撥水性が高いことを示す。図6は、本実施例で作製した硬質炭素膜のフッ素含有量と接触角との関係図である。なお、硬質炭素膜に含有されるフッ素量はラザフォード後方散乱法(RBS)により測定した。同図に示すように、フッ素含有率が0原子%の従来の硬質炭素膜では接触角は64°であるが、フッ素含有率が4原子%の硬質炭素膜では87°に向上している。さらにフッ素含有率の増加と共に接触角は増加し、フッ素含有率が50原子%の硬質炭素膜では接触角が102°を示した。すなわち、フッ素を含有させ、また含有率を増加させることにより、硬質炭素膜の撥水性を向上させることができた。
【0041】
[硬度測定]
硬度については、微小硬度計により荷重1gにてビッカース硬度を測定した。測定の結果、従来の硬質炭素膜(フッ素含有率0原子%)及び本実施例で作製した炭素膜のうちフッ素含有率が30原子%までの炭素膜の硬度は、それぞれHv1820、約Hv1750であった。また、これらのフッ素含有率0〜30原子%の硬質炭素膜は、ラマンスペクトル分析の結果、1500〜1600cm−1付近に広いピークを示し、アモルファス構造の硬質炭素膜であることが確認できた。一方、フッ素含有率が30原子%を超えた炭素膜では、硬度が大幅に低下した。また、これらの炭素膜では、ラマンスペクトル分析においてアモルファス構造特有のピークが確認されず、ポリマー状の構造となっているものと推測された。
【0042】
以上、撥水性の評価及び硬度測定の結果から、フッ素含有量が4〜30原子%の炭素膜において、優れた撥水性と高い硬度とを両立する硬質炭素膜を得ることができた。
【0043】
[摩擦特性の評価]
摩擦特性の評価については、ボールディスク型摩擦特性試験機を用い、相手材のボールをステンレス鋼(JIS:SUS304)とし、荷重2N、速度0.1m/sec、温度30℃の条件下において、大気中における摩擦係数を測定した。その結果、従来の硬質炭素膜(フッ素含有率0原子%)及び本実施例で作製した硬質炭素膜(フッ素含有率30原子%)の摩擦係数は、それぞれ0.1、0.08であり、本実施例で作製した硬質炭素膜は優れた摩擦特性を有することが分かった。
【0044】
前記原料ガスについては、希ガスとしてアルゴン(Ar)以外にもネオン(Ne)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)等、また、フッ化炭素化合物ガスとして四フッ化炭素以外にも六フッ化二炭素(C2 6 )、八フッ化四炭素(C4 8 )等を用いることができ、これらのガスを使用しても同等性能の硬質炭素膜が作製可能である。
【0045】
【発明の効果】
本発明に係る炭素膜及びその製造方法よれば、優れた撥水性と共に高い硬度を有する硬質炭素膜を提供することができる。これにより、各種回転機械の軸受けやスライドなどの摺動部材および情報記憶装置等の耐摩耗性等を要求される部材の性能や寿命を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1に係る硬質炭素膜の製造装置の概略図である。
【図2】実施例1に係る硬質炭素膜のフッ素含有量と接触角との関係図である。
【図3】本発明の実施例2に係る硬質炭素膜の製造装置の概略図である。
【図4】実施例2に係る硬質炭素膜のフッ素含有量と接触角との関係図である。
【図5】本発明の実施例3に係る硬質炭素膜の製造装置の概略図である。
【図6】実施例3に係る硬質炭素膜のフッ素含有量と接触角との関係図である。
【符号の説明】
1 真空容器
2 基材
3 ホルダー
4 加熱ヒーター
5 イオン源
6 ガス導入口
7 イオンビーム
8 硬質炭素膜
10 高絶縁フィードスルー
11 バイアス電源
12 プラズマ
13 導波管
14 マイクロ波電源
15 電磁コイル
20 スパッタ源
21 ターゲット
22 磁場発生用磁石
23 ターゲットホルダー
24 シールド
25 絶縁体
26 整合器
27 高周波電源
28 基板電極

Claims (7)

  1. フッ素原子を含有することを特徴とする炭素膜。
  2. フッ素原子を含有するアモルファス構造の炭素膜であって、フッ素含有量が4〜30原子%であることを特徴とする炭素膜。
  3. 少なくとも炭化水素化合物のガスとフッ化炭素化合物のガスとを含有する混合ガスをイオン化させた後、発生したイオンを一定の電圧で加速し基材に照射することにより、前記基材の表面に炭素膜を成膜することを特徴とする炭素膜の製造方法。
  4. 請求項3に記載の炭素膜の製造方法であって、前記イオンを加速する電圧が50Vから2000Vであることを特徴とする炭素膜の製造方法。
  5. 少なくとも炭化水素化合物のガスとフッ化炭素化合物のガスとを含有する混合ガスのプラズマを発生させ、当該プラズマ中に浸漬した基材に負のパルス電圧を印加することにより、前記基材の表面に炭素膜を成膜することを特徴とする炭素膜の製造方法。
  6. 請求項5に記載の炭素膜の製造方法であって、前記基材に印加するパルス電圧が−0.2kVから−10kVであることを特徴とする炭素膜の製造方法。
  7. 少なくとも希ガスとフッ化炭素化合物のガスとを含有する混合ガスの存在下における炭素ターゲットに電圧を印加することにより、混合ガスを放電させ、当該放電により生じた希ガスイオンが前記炭素ターゲットに衝突することにより発生した炭素のスパッタ粒子と当該放電により生じたフッ素とにより、炭素膜を成膜することを特徴とする炭素膜の製造方法。
JP2002187136A 2002-06-27 2002-06-27 炭素膜とその製造方法 Withdrawn JP2004027309A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN100453788C (zh) * 2004-09-14 2009-01-21 日产自动车株式会社 内燃机用部件及其制造方法
JP2013100601A (ja) * 2011-10-14 2013-05-23 I'msep Co Ltd フッ化処理による表面改質方法

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