JPH0512740Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［考案の目的］ （産業上の利用分野） 本考案は、各種の技術分野において使用される
振動センサの改良に関するものである。

（従来の技術） 各種振動源からの振動を検知するために用いら
れる圧電型の振動センサは、一般に共振型と非共
振型との２形式に大別される。そして、前者形式
のものは、センサに設定すべき共振周波数を測定
対象の周波数とほぼ同じに測定し、この設定周波
数の帯域においてのみ高感度を有するような感度
特性に構成され、また、後者のものは、広い周波
数帯域に亘つて同程度の感度が得られるような平
坦な感度特性を持つものとして構成される。

以下、本考案を説明する上での前提として圧電
素子を用いた非共振型の振動センサの構造につい
て説明する。第１図に示すものは自動車用エンジ
ンの振動検知に使用される振動センサ（ノツキン
グセンサ）の第１例で、この振動センサ１０は、
下端に鍔部１１ａを備え上端にネジ部１１ｂを形
成した筒状の基体１１と、例えばエンジン等へ取
付けるために該基体１１の中心に穿孔された取付
け孔１２と、前記基体１１の外周に順次に嵌装さ
れた圧電素子１３及び質量体１４と、適宜のワツ
シヤ１５を介してこれらの部材１３，１４を締付
けるナツト１６と、前記圧電素子１３の表裏面に
それぞれ接触する電極部１７と、該電極部１７に
接続するリード線１８と、前記各部材１１乃至１
７及びリード線１８の一部を一体的に被覆してケ
ース体を構成するポリウレタンの外装樹脂１９と
から成る。

（考案が解決しようとする課題） しかして、この構造の振動センサ１０では、周
囲温度が上昇して来ると前述の外装樹脂１９の部
分に熱によるストレスが生じるため、この振動セ
ンサ１０を低温（例えば25℃）や高温（140℃）
の温度条件の下に放置した場合には、温度変化に
伴う熱応力のため出力感度の変化や経時的或いは
振動周波数による変動が大きくなつてしまうとい
う問題があつた。

そのため、この問題を解決する目的で原因とな
る外装樹脂を用いない構造の振動センサが提案さ
れている。この第２例の振動センサ２０は、第２
図に示すような構造のもので、前述の振動センサ
２０における筒状の基体１１とナツト１０の構造
を密閉式の箱形状に変えたものである。即ち、内
部に筒状のポスト２１ａを有する箱形の基体２１
と、下端に鍔２６ａを備えたナツト２６と、両者
の間に介在させた適宜のパツキング材２６ｂとか
ら成る箱形状の構造を持つものである。

一方、外装樹脂を使用する場合であつても、樹
脂部分の熱応力が圧電変換部に悪影響を及ぼさな
いように配慮した振動センサが提案されている。
この第３例の振動センサ３０では、第３図に示す
ように、ケース本体を構成する樹脂部分３９と圧
電変換部分１３，１４との間に隔離部材４０を介
在させて、両部分を隔離するという構造を採用し
ている。

しかしながら、これらの解決策ではいずれも第
１例のものに比べて構造的に複雑になり、しか
も、この構造の複雑化が全て熱応力対策のためだ
けになされているので、振動センサとしての構造
を簡単な構成に保ちつつ別の手段による解決策の
出現が望まれていた。

本考案は、この事情に鑑みてなされたもので、
外装樹脂を用いる簡単な構造を採用しながらも外
装樹脂に起因する前述の悪影響を排除し得る新規
な振動センサを提供することを目的とする。

［考案の構成］ （課題を解決するための手段） この目的を達成するための本考案の構成は、測
定対象物に取付け得る構造を有する筒状の基体
と、その周囲に嵌装された圧電変換部分と、器外
へ接続するリード線部材とを備えた振動センサに
おいて、前記圧電変換部分とリード線の一部とを
ポリアミド系樹脂により一体的に被覆してケース
体とするように構成したことにある。

（作用） この構成に基く本考案の作用は、強靱な結晶性
高分子構造を持つポリアミド系樹脂の特性を活用
して、熱的ストレスに対する振動センサの感度−
周波数特性を改善したことにある。

（実施例） 以下、図示実施例に基づいて本考案を詳細に説
明する。

例えば自動車用エンジンのノツキングを検出す
るような用途に使われる振動センサでは、通常の
振動周波数から高い振動周波数（例えば15KHz程
度）までフラツトな感度−周波数特性を有するも
のが要求され、しかも、高温下（150℃程度）で
の使用にも耐えられるように設計しなければなら
ない。そのため、ケース体を構成する外装樹脂に
使用する材料には、先ず耐熱性に優れ且つ低熱膨
脹率を有するものとして、また、振動センサに接
続される耐熱ケーブルの被覆材であるポリウレタ
ン樹脂との接合性を考慮して、ポリウレタン樹脂
が使用されている。

しかし、ポリウレタン樹脂は、第４図の感度−
周波数特性図に示すように、常温下では問題はな
いものの温度の上昇につれて急激に感度が低下す
るという傾向があり、それも、ノツキングの発生
し易い周波数域（５乃至9KHz近傍）に極めて近
い140℃付近での感度低下が最も大きいという現
象を生じる。この現象は、ポリウレタン樹脂を被
覆した時には生じない現象であるので、前述した
高温域での感度低下現象は同樹脂の使用による影
響であることが明らかとなつた。

そのため、本考案者は鋭意研究の結果、外装樹
脂の材料にポリアミド系樹脂を使用すればこの種
の問題を解消し得ることに考え至つた。

而して、本考案に係る振動センサの構造は、外
装樹脂の材料を除いて前述の第１図の構造と同一
であるのでその詳細な説明は省略するが、この振
動センサ１０′の構成は、取付け孔１２を備えた
筒状の基体１１と、圧電素子１３及び質量体１４
から成る圧電変換部分と、適宜のワツシヤ１５を
介して該圧電変換部分１３，１４を締付けるナツ
ト１６と、前記圧電素子１３の表裏面に接触した
電極部１７に接続するリード線１８と、これら各
部材１１乃至１７及びリード線１８の一部を被覆
してケース体を構成するポリアミド系の外装樹脂
１９′とから成る。

ポリアミド系樹脂は強靱な結晶性高分子構造を
もつ樹脂で、特性的には、強度・伸度が共に高く
且つ弾性にも優れ、屈曲や摩擦等に対する抵抗性
も非常に大きい材料として知られ、用途的にも、
繊維としてだけでなく電線の被覆材や金属代用材
料として歯車・軸受等にも巾広く使われる材料で
ある。一般にはナイロン（デユポン社の商標名）
として知られる。

本実施例においては、外装樹脂である前記ポリ
アミド系の樹脂１９′として30％のガラス繊維を
混入したナイロン（デユポン社の商標名）を用い
た。そして、第５図にこの材料を用いて被覆した
振動センサの感度−周波数特性図を示す。尚、ガ
ラス繊維を混入した目的は熱膨脹係数を抑えるた
めである。

図からも明らかなように、この構成から成る振
動センサでは、周囲温度の変化に対しても、低い
振動周波数域から高い振動周波数域まで全体的に
フラツトな感度−周波数特性が得られ、しかも、
従来のポリウレタン樹脂材と同等以上の耐熱性を
有し、更に、ケーブルとの接合強度についても従
来品と同等であることが確認された。

以上の説明でも明らかなように、本考案は、強
靱な結晶性高分子構造を持つポリアミド系樹脂の
利点を活用したものであるから、その具体的な組
成については特に限定しないが、振動センサとし
て対象とする雰囲気温度の変化巾や測定すべき周
波数領域或いは目的・用途等を考慮して、企画及
び設計の段階で適宜決定するものとする。

以上一実施例について説明したが、本考案はこ
れに限定されるものではなく、その要旨を変更せ
ざる範囲内で種々に変形実施することが可能であ
る。例えば図示実施例ではガラス入りの樹脂を用
いているが、樹脂だけの場合であつても良く、ま
た、他の物質を混入した組成にしても良い。

［考案の効果］ 以上述べた通り本考案を用いる時は、外装樹脂
を用いる簡単な構造を採用しながらも外装樹脂に
起因する悪影響を排除し得る新規な振動センサを
実現することが出来た。

【図面の簡単な説明】

第１図は自動車用エンジンの振動検知のための
振動センサの第１例を示す断面構造図、第２図は
第１図のものに改良を施した第２例の振動センサ
を示す断面構造図、第３図は他の改良手段を施し
た第３例の振動センサを示す断面構造図、第４図
は従来のポリウレタン樹脂に係る感度−周波数特
性図、第５図は本考案のポリアミド系樹脂の一例
に係る感度−周波数特性図である。 １０′……振動センサ、１９′……ポリアミド系
外装樹脂。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 測定対象物に取付け得る構造を有する筒状の
   基体と、その周囲に嵌装された圧電変換部分
   と、器外へ接続するリード線部材とを備えた振
   動センサにおいて、前記圧電変換部分とリード
   線の一部とをポリアミド系樹脂により一体的に
   被覆してケース体となす如く構成したことを特
   徴とする振動センサ。 (2) 前記ケース体は、30％のガラス繊維を混入し
   たポリアミド系樹脂により被覆されたものであ
   る請求項１記載の振動センサ。 (3) 前記振動センサは、自動車用エンジン等の内
   燃機関の振動検出を行うノツキングセンサであ
   る請求項１又は２記載の振動センサ。