JPH05123823A

JPH05123823A - 複数の色彩を有する貴金属宝飾品の製造方法及び製造装置

Info

Publication number: JPH05123823A
Application number: JP31009791A
Authority: JP
Inventors: Noboru Morita; 昇森田
Original assignee: YOSHIDA CAST KOGYO KK
Current assignee: YOSHIDA CAST KOGYO KK
Priority date: 1991-10-30
Filing date: 1991-10-30
Publication date: 1993-05-21

Abstract

(57)【要約】【目的】ロストワックス法においてワンキャスティン
グで複数の色彩・色調を有する貴金属宝飾品を一体成形
することを目的とする。【構成】本発明の複数の色彩を有する貴金属宝飾品の
製造方法は、ロストワックス鋳造方法における鋳型空洞
内に１以上の堰を固定して複数の室を形成し、各室へ異
なる貴金属溶湯を供給して鋳造することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、複数の色彩を有する貴
金属宝飾品の製造方法及び製造装置に関し、さらに詳し
くはロストワックス法においてワンキャスティングで複
数の色彩・色調を有する貴金属宝飾品を一体成形するこ
とを特徴とするものである。

【０００２】

【従来の技術】従来より、貴金属宝飾品の製造において
その加工方法の主体をなす工法はロストワックス鋳造法
である。上記したロストワックス鋳造法の特徴（利点）
は、デザインにおける自由度が極めて大きく、しかも複
雑な形状を高い信頼性で再現することができることであ
る。

【０００３】一方、宝飾品に利用される貴金属として
は、金（Ａｕ）や銀（Ａｇ），白金（Ｐｔ）等の純金属
を用いることもあるが、主として強度等の機械的性質を
改善するため、並びに色調の変化を求めるために、これ
らに卑金属を合金して使用することが通例となってい
る。現在、汎用されている金合金の代表的組成は金⁷⁵−
銀¹⁵−銅¹⁰の三元合金であり、鋳造用として脱酸材が添
加されている。この三元合金の色調は、黄金色でカラッ
ト金として多用されている。上記した合金組成において
銅を多くすると濃赤色を帯び、銀を多くすると淡緑色を
帯びることが知られている。さらに近年、アルミニウム
を添加してスミレ色としたり、ニッケルを添加して淡白
色としたり、或いは、コバルト，鉄，チタンを加えて選
択酸化して黒色化するなど、金合金を種々の色彩に着色
する傾向を示している。このように種々の色彩に着色さ
れた金合金は、通常、基調色となる黄金色と組合せて宝
飾品とするので、各々個別に鋳造したものを溶接するこ
とにより製作するのが通例である。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
たような方法では溶接作業に手間が掛かり、比較的大き
な宝飾品ならまだしも、特に小さな宝飾品では溶接作業
が極めて面倒なものであった。また、小さな宝飾品では
個別に鋳造する部材はさらに小さなものになるため、極
めて高い精度（物品寸法精度並びに溶接加工精度）が必
要とされるものであった。その際、例えば指輪のような
形状の宝飾品においては、溶接欠陥があると指輪形状そ
のものが破壊することになるため、特に高い溶接加工精
度が必要であった。そして、上記したような問題点は、
デザインにおける自由度を著しく低下するものであっ
た。

【０００５】そこで、本発明者は、上記した問題点を解
決することを目的とした宝飾品の製造方法（特開平２−
１８５２０５号公報）を提案した。上記した製造方法
は、予め色調の異なるパーツ（金合金）を鋳造し、これ
を加飾形成したり、または不定形に形成したものをワッ
クス模型の表面に付着し、ロストワックス法によってパ
ーツと異なる色調の金合金を鋳込む方法である。この方
法は、前記したような溶接作業自体を不要とする、若し
くは極めて軽減するので、極めて有効な方法として採用
され、今日定着化している。

【０００６】しかしながら、ワンキャスティングで色調
の異なる宝飾品を一体成形することは未だかって行われ
たことが全くない。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記に鑑み提
案されたもので、ロストワックス鋳造方法における鋳型
空洞内に１以上の堰を固定して複数の室を形成し、各室
へ異なる貴金属溶湯を供給して鋳造することを特徴とす
る複数の色彩を有する貴金属宝飾品の製造方法に関する
ものである。

【０００８】また、本発明は上記した製造方法を具体的
に実施する製造装置をも提案するものであり、その製造
装置は、ロストワックス鋳造装置における鋳型空洞内に
１以上の堰を固定して複数の室を形成し、各室にそれぞ
れ溶湯導入ゲートを設け、各溶湯導入ゲートを貴金属溶
湯が供給される湯道に接続してなることを特徴とするも
のである。

【０００９】上記した本発明における堰は、供給される
貴金属溶湯の熱により溶融して軟化したり液化したりし
ないものであり、また、表面に酸化皮膜を形成して密着
性を低下させないものであることが必要である。したが
って、堰は、使用される貴金属より融点が高く、酸化さ
れない（されにくい）金属が使用され、特に熱伝導の良
い白金（Ｐｔ）、或いは白金合金（例えばＰｔ−Ｐｄ合
金）が使用される。

【００１０】本発明の製造方法は、まず、ロストワック
ス鋳造方法における鋳型空洞内に上記したような堰を１
以上固定することにより複数の室を形成する。具体的に
は、ワックス模型に大きめの堰、或いは支持部を突出さ
せた堰を装着して鋳型を造型すれば良い。例えば丸棒状
の宝飾品を製造する場合、ワックス模型も丸棒状に成形
されるが、装着する堰を丸棒の径よりも大きな径を有す
る円板状に形成しても良いし、或いは丸棒の径と略等し
い径の円板から複数の支持片が放射状に突出する形状に
形成しても良い。このように鋳型材に堰の端部を保持さ
せることにより、堰を安定に固定することができるので
ある。そして、鋳型空洞内に形成された複数の室にそれ
ぞれ異なる貴金属溶湯を供給すれば、複数の貴金属は堰
を介して一体に融着されるのである。尚、堰を鋳型空洞
内に固定するために設けた支持部などは、鋳造後、切削
すれば良い。

【００１１】上記した丸棒状の宝飾品において平板状
（円板）の堰を使用したので、鋳造された宝飾品におい
ては、堰は線状に見える。この堰をデザインに一役擔わ
せるためには堰の形状や色彩を考慮して選定・使用すれ
ば良い。例えば、波板状の堰を用いると、鋳造された宝
飾品においては、堰は波線状に見える。或いは使用する
貴金属の色彩と堰の色彩とを考慮し、相互のコントラス
トが際立つようにしても良い。上記した堰を設けない場
合は室が形成されないので、複数の貴金属溶湯を供給し
てもそれらは混合（溶解）して見掛け上、単一の色彩を
呈するものとなる。

【００１２】また、本発明は、上記した堰に孔を開設す
るようにしても良い。この場合、堰の孔より一方側の貴
金属溶湯が他方側の貴金属溶湯へ侵入し、一部融合して
縞模様を形成したり、双方の色が入り混ざった奇抜なデ
ザインの融合部を形成することができる。上記した堰の
孔の径は、０．５〜１ｍｍφ程度が良く、径が大き過ぎ
ると堰を設けない場合と同様に、堰を介して隣り合う別
種の貴金属溶湯が溶解・混合し、小さ過ぎると貴金属溶
湯が他方側へ侵入できない。

【００１３】尚、本発明の製造装置は、上記した鋳型空
洞内の各室にそれぞれ溶湯導入ゲートを設け、各溶湯導
入ゲートを貴金属溶湯が供給される湯道に接続してなる
ものであり、貴金属溶湯の供給方法等は特に限定するも
のではない。例えば、図１は、本発明者が実公昭５０−
１６８号公報において開示した真空溶解鋳造装置であ
り、ルツボ１’の下方には鋳型２’が固定されると共に
一体に昇降可能であり、ルツボ１’の底部に設けられた
通孔３’を閉塞可能な栓杆４’が中空に固定される構成
である。この装置においては、まず、ルツボ１’が高周
波加熱コイル５’内に位置される状態（ａ）で、栓杆
４’がルツボ１’の通孔３’を閉塞し、真空下で金属溶
融が行われる。そして、ルツボ１’が下降すると、栓杆
４’がルツボ１’の通孔３’の閉塞を解除するので金属
溶湯６’が下方の鋳型２’空洞内に導入され、加圧下で
鋳造が行われる（ｂ）。上記した真空溶解鋳造装置は、
単一の貴金属溶湯を供給するものであるが、上記したル
ツボの内部に複数の隔壁を設けるか、或いは図２に示す
ように高周波加熱コイル５内に複数の単体ルツボ１₁ ，
１₂ を設ければ、複数の貴金属溶湯６₁，６₂ を供給す
ることが可能となる。

【００１４】

【実施例】以下に本発明の実施例を示す。２種の貴金属
（溶湯）を使用する場合の実施例を図面（図２〜４）に
基づいて説明する。

【００１５】実施例１図２は、本発明の製造装置の概略図である。加圧鋳造機
の釜体７の下蓋に固定されている高周波加熱コイル５の
内側に、黒鉛を主材とするルツボ１₁ ，１₂ を設ける。
各ルツボ１₁ ，１₂ の底部には、５〜１０ｍｍの通孔３
を開設し、これを内側より黒鉛棒４にて密栓する。尚、
この黒煙棒４は中空に固定してある。また、各ルツボ１
₁ ，１₂ は、鋳型２の上方にある湯口８に定置され、鋳
型２と共に一体的に昇降可能である。この装置におい
て、釜体７の上蓋（図示せず）を閉めて、内側を６００
〜６５０ｍｍ／Ｈｇに減圧して各ルツボ１₁ ，１₂ 内で
貴金属の溶解を開始し、キャストチャンスにいたれば鋳
型昇降台９を降下させる。すると、ルツボ１₁ ，１₂ 底
部の通孔３より流下した各貴金属溶湯６₁ ，６₂ は、湯
口８から湯道１０を通過して水平に移行し、この時内部
にあるタンク（図示せず）より２〜３ｋｇ／ｃｍ² の圧
力を釜体７内に放出するので、溶湯６₁ ，６₂ は細部に
至るまで圧力を受けて鋳型空洞部を満たす。尚、１１は
鋳物を示す。

【００１６】図３は、リング用のワックスパターンを示
す平面図である。濃赤色金合金（Ａｕ⁷⁵−Ｃｕ²⁵）を仮
りにＲ合金とし、淡緑黄色金合金（Ａｕ⁷⁵−Ａｇ²⁵）を
Ｇ合金とし、この色彩・色調の異なる二色の合金を用い
て単純な構成のリングを製作した。尚、リングのデザイ
ンとして、円周の３／４をＲ合金、１／４をＧ合金と
し、略円板状の白金板堰１２を設けた。まず、ワックス
模型（原型）をハードワックスで削り、円周の２／３の
点と１／３の点の合わさる２点に両合金が合流しない白
金板堰１２を設ける。この白金板堰１２の形状は、その
ワックスパターンの形状によって変化するが、甲丸状の
リングの場合には円板状が良く、その厚さは、平均０．
１５〜０．２５ｍｍ位が工作上便利であった。また、こ
の白金板堰１２には、支持部（図示せず）をその端部か
ら０．５〜１ｍｍ外部に突出するように設けた。上記し
た原型のＲ合金側、Ｇ合金側にそれぞれゲート用原型１
３₁ ，１３₂ （鋳型においては溶湯導入ゲートとなる）
を設け、湯口直下に続く湯道に挟まって取付ける。次
に、ロストワックス法による通法にしたがって鋳型を作
製する。これにより、２つの溶湯導入ゲートが設けられ
ると共に２箇所に白金板堰が固定された鋳型空洞が形成
される。そして、焼成して加熱した状態でルツボ２個に
分けられたＲ合金，Ｇ合金を溶解して、前記したように
鋳型昇降台を降下させ、各合金溶湯を鋳型に流入して鋳
造する。冷却後、鋳造体を取り出して酸処理を施し、鋳
造体から白金板堰１２の支持部を切り落として研磨す
る。両合金は白金板堰１２を介して極めて密に強固に融
着し、剥れることはなく明らかに色調・色彩を異にする
特殊なリングが一体成形されて美しく輝く。また、白金
板堰１２は、白色の線となってデザインに一役を擔う。

【００１７】比較例１上記した白金板堰１２を取り除いて一方よりＲ合金、他
方よりＧ合金を鋳込むと鋳造圧力（３ｋｇ／ｃｍ² ）よ
って溶解・混合して共融合金（Ａｕ⁷⁵−Ａｇ¹² ^.5−Ｃｕ
^12.5）を作り、色の識別ができず、恰も単一種の金合金
のような色調・色彩となる。これは、Ｒ合金及びＧ合金
の融点や比重が凡そ等しく、且つ圧力によって回転溶和
したためと考えられる。

【００１８】実施例２白金板堰１２”に孔１４を開設した以外は、前記した実
施例１と同様に貴金属宝飾品を製造した。二つの貴金属
合金の溶湯に掛かる圧力差は、溶湯導入ゲート位置の太
さで、大きい程、単位時間に運び込まれる溶湯量は多く
なる。白金板堰１２”に設けた孔径が小さいと、当然溶
湯量の単位時間内の運び込む量は減少するが逆にスピー
ドは大きくなる。溶湯導入ゲートの太さと、孔径のバラ
ンスが変わると、一部Ｒ合金（またはＧ合金）が混合し
た状態で凝固する。金合金の場合、金以外の添加元素に
よって比重は余り変わらないが、融点は大きく変わる。
したがって、この融点の差を利用することもまた一方法
である。実験上、両合金が一部融合して縞模様を形成す
るために適正な孔径は０．８〜１．５ｍｍφであった。

【００１９】このように、実施例１及び実施例２では２
種の貴金属合金を使用した例を示したが、同様にさらに
多種に亘る色調の異なる金合金を一体成形することが可
能である。

【００２０】実施例３多元の色調を表層部に細かくちりばめる方法としては、
前述のように、本発明者が特開平２−１８５２０５号公
報で開示した方法がある。また、特開平２−２２５６５
５号公報に開示された金合金は、所謂「黄金色」と最も
際立つコントラストとなる黒色に着色したものである。
上記した２つの発明と本発明を組合せて多種の色調・色
彩を有する宝飾品を作製することができる。図４は、リ
ング用のワックスパターンを示す平面図である。ここで
は、予め、上記した特開平２−２２５６５５号公報に開
示された黒色化金合金を小片状に製造した。そして、こ
の小片状の黒色化金合金１５を特開平２−１８５２０５
号公報で開示した方法にしたがって固定すると共に前記
した実施例１と同様に白金板堰１２を固定した鋳型空洞
を形成し、通法により宝飾品を鋳造した。冷却後、宝飾
品鋳造体を取り出して酸処理を施し、鋳造体から白金板
堰１２の支持部を切り落として研磨した。実施例１と同
様に、両合金は白金板堰１２を介して極めて密に強固に
融着し、剥れることはなかった。また、その表面には黒
色化合金１５が強固に融着していた。したがって、濃赤
色、淡緑黄色、白色、黒色が入り交じり、極めてカラフ
ルなリングが得られた。

【００２１】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の製造方法
は、ロストワックス法においてワンキャスティングで複
数の色彩・色調を有する貴金属宝飾品を一体成形するこ
とができる。そして、堰を固定する以外の操作は、殆ど
ロストワックス法に準じる操作で良く、堰を固定する操
作も極めて簡単である。上記したようにワンキャスティ
ングで、従来のように別々に鋳造した部材を手間をかけ
て溶接する必要もないので、極めて迅速に且つ容易に製
造することができる。また、同じ理由により、従来の方
法に比べ生産性及び経済性にも優れている。

【００２２】上記した本発明の製造方法により得られる
宝飾品は、異なる貴金属が堰を介して融着されているの
で、その接合強度が高いものとなる。また、得られる宝
飾品は、複数の色彩・色調を有するが、それに加えて堰
がデザイン、及びデザインの創造性に一役を擔うものと
なり、デザインの自由度が極めて大きいものとなる。

【００２３】さらに、孔を開設した堰を使用すると、堰
の一方側の貴金属溶湯が他方側へ侵入し、両合金が一部
融合して縞模様などを形成するので、上記したデザイン
の自由度はより一層向上するものとなる。

【００２４】また、本発明の製造装置は簡単な構成であ
り、特に複数の貴金属溶湯の供給装置として、高周波加
熱コイルの内側に複数のルツボを設け、各ルツボの底部
から溶湯を導出させる装置は、本発明の製造方法を実施
する装置として極めて好適であり、自動的に複数の色彩
・色調を有する宝飾品を鋳造・量産することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】従来の真空溶解鋳造装置の断面図であり、
（ａ）は真空中の金属溶融状態を示し、（ｂ）は加圧鋳
造状態を示す。

【図２】本発明の製造装置の一実施例の一部を示す断面
図である。

【図３】ワックスパターンの一実施例を示す平面図であ
る。

【図４】ワックスパターンの他の実施例を示す平面図で
ある。

【図５】ワックスパターンの他の実施例を示す平面図で
ある。

【符号の説明】

１₁ ，１₂ ，１’ ルツボ２，２’ 鋳型３，３’ 通孔４，４’ 栓杆５，５’ 高周波加熱コイル６₁ ，６₂ ，６’ （貴）金属溶湯７釜体８湯口９鋳型昇降台１０湯道１１鋳物１２，１２” 堰１３₁ ，１３₂ ゲート用原型１４孔１５黒色化金合金

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】ロストワックス鋳造方法における鋳型空
洞内に１以上の堰を固定して複数の室を形成し、各室へ
異なる貴金属溶湯を供給して鋳造することを特徴とする
複数の色彩を有する貴金属宝飾品の製造方法。
【請求項２】孔を開設した堰を使用することを特徴と
する請求項１に記載の複数の色彩を有する貴金属宝飾品
の製造方法。
【請求項３】ロストワックス鋳造装置における鋳型空
洞内に１以上の堰を固定して複数の室を形成し、各室に
それぞれ溶湯導入ゲートを設け、各溶湯導入ゲートを貴
金属溶湯が供給される湯道に接続してなることを特徴と
する複数の色彩を有する貴金属宝飾品の製造装置。
【請求項４】高周波加熱コイル内に複数のルツボを主
要し、複数の貴金属溶湯を供給するようにしたことを特
徴とする請求項３に記載の複数の色彩を有する貴金属宝
飾品の製造装置。