JPH0511065Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、主として農用又は土工用の作業車に
利用する走行用変速装置に係り、詳しくはペダル
によるクラツチ操作を要することなくギヤ変速が
行える、いわゆるノンクラツチ式の変速装置に関
する。

〔従来の技術〕

ノンクラツチ式の変速装置としては、電磁式ク
ラツチ、もしくは電気アクチユエータによつて作
動操作されるクラツチの操作スイツチを変速レバ
ーに備え、変速レバーを操作するときに同時にク
ラツチの入切りを行えるようにしたものが知られ
ている。

〔考案が解決しようとする問題点〕

しかし、農用や土工用のように過酷な作業条件
で使用される作業車にあつては、電気式にクラツ
チを入切りする構造は信頼性及び、耐久性に問題
が多く、又、コスト的にも高くつきやすく、実用
上に難点があつた。

本考案は、農用及び土工用の作業車の多くが油
圧装置を備えている点に着目し、クラツチを油圧
式に構成するとともに、このクラツチの操作構造
をギヤ変速機構に合理的に連係することで、信頼
性及び耐久性が高く、かつ、比較的構造が簡単で
安価に製作することのできるノンクラツチ式の走
行変速装置を提供することを目的とする。

〔問題点を解決するための手段〕

上記目的を達成するための本考案の特徴構成
は、人為変速されるギヤ変速機構よりも動力伝達
方向での上手側位置に油圧クラツチを備え、この
油圧クラツチが配備される常時回転軸の軸端に連
結される油圧ポンプと、この油圧ポンプからの圧
油を油圧クラツチへ給排制御する制御弁機構とを
設けるとともに、下記〔イ〕〜〔ニ〕に記載の構
成を備えて走行変速装置を構成した点にある。

〔イ〕 前記制御弁機構は、人為操作される変速
用シフト部材と、これを摺動自在に支持する固
定側部材とで構成されている。

〔ロ〕 前記油圧ポンプの吐出口が、常時回転軸
内に形成された油路を介して油圧クラツチに、
かつ、ミツシヨンケースの側壁に沿つて形成さ
れた供給油路を介して固定側部材内に形成され
た軸内油路に夫々連通されている。

〔ハ〕 軸内油路に連通する開口端が固定側部材
に、かつ、ミツシヨンケースの内部空間と開口
端とを連通可能な孔がシフト部材に夫々形成さ
れている。

〔ニ〕 前記シフト部材は、前記ギヤ変速機構が
伝動状態になる各変速位置で前記開口端を遮断
して、前記供給油路から前記ミツシヨンケース
内への圧油流動を阻止することにより前記油圧
クラツチを入りとし、各変速位置から外れた位
置になると、前記開口端と前記孔とを連通させ
て前記圧油流動を許容することにより前記油圧
クラツチを切りとするように構成された弁部分
を備えている。

〔作用〕

上記構成によると、変速用シフト部材を或る変
速位置から隣接する変速位置に向けて少し動かす
と、シフト部材と、これを支持する固定側部材と
の相対変位によつて制御弁機構における油圧クラ
ツチへの圧油供給状態が変化し、油圧クラツチが
自動的に切られる。そして、前の変速段における
ギヤ咬合解除、中立状態への移行、及び次の変速
段でのギヤ咬合はクラツチ切り状態で行われ、次
の変速位置にシフト部材が至ると、再び油圧クラ
ツチが自動的に入つて伝動状態がもたらされる。

〔考案の効果〕

従つて、本考案によれば、ノンクラツチ変速用
に自動入切操作されるクラツチとして油圧クラツ
チを用いたので、泥や水の多い軟弱地、起状や凹
凸の多い不整地で用いられる作業車においても確
実に作動させることができ、又、軸内油路や壁内
油路を多用した油圧構造にできるために、構造的
にもコンパクトで、かつ、制御回路を必要とする
電気式に比較して安価に実施することができる。

〔実施例〕

第１図は本考案を適用したコンバイン用走行変
速装置を例示している。

ミツシヨンケース１には図外エンジンにベルト
連動された常時回転軸としての入力軸２が設けら
れ、この入力軸２に遊嵌した原動ギヤ３と該入力
軸２とを断続する多板式の油圧クラツチ４が備え
られている。

そして、前記原動ギヤ３が中間伝動ギヤ５を介
して変速軸６に固着したギヤ７に咬合連動され、
この変速軸６にスプライン嵌着した２段のシフト
ギヤ８を摺動操作することで、前進３段、後進１
段の変速を行う主ギヤ変速機構９が構成されてい
る。尚、図は中立状態を示している。

この主ギヤ変速機構９は、シフトギヤ８を中立
位置Ｎから１段右にシフトして小ギヤ８ａを第４
軸１０に固着のギヤ１１に咬合させることで前進
１速F₁が得られ、シフトギヤ８を更に右にシフ
トして大ギヤ８ｂを第４軸１０に固着のギヤ１２
に咬合させることで前進２速F₂が得られ、更に
右にシフトしてシフトギヤ８の側面に形成した爪
１３を変速軸６に遊嵌したギヤ１４の爪１５に係
合させることで前進４速F₄が得られ、又、シフ
トギヤ８を中立位置Ｎから左にシフトして小ギヤ
８ａを第３軸１６のギヤ１７に咬合させることで
後進が得られるようになつている。

尚、変速軸６の遊転ギヤ１４は第４軸１０に固
着したギヤ１８に常時咬合され、又、後進用のギ
ヤ１７は、前進１速用ギヤ１１にギヤ連動されて
いる。又、前記主ギヤ変速機構９で変速された第
４軸１０の動力が、副ギヤ変速機構１９を介して
図外下方の車軸に伝達されるようになつている。
尚、副ギヤ変速機構１９は、シフトギヤ２０の左
右シフトによつて高低２段の変速が可能となつて
いる。

前記油圧クラツチ４は前記主ギヤ変速機構９の
変速操作に連動して入切操作されるようになつて
おり、以下、その構造について説明する。

油圧クラツチ４は内装バネ２１によつて切り付
勢されており、この油圧クラツチ４への圧油給排
用の油路２２が入力軸２の一端から形成されてい
る。又、ミツシヨンケース１の外側部には、入力
軸２の端部に係合連結された油圧ポンプ２３が取
付けられ、その吐出口２４がポンプケーシング２
５とミツシヨンケース１の壁面との間に形成した
油路２６に連通されるとともに、この供給油路２
６が前記軸内油路２２に接続させて、もつて、圧
油が油圧シリンダ４に供給されるよう構成されて
いる。尚、ポンプ２３は図外油路を介してミツシ
ヨンオイルを吸入する。

前記主ギヤ変速機構９のシフトギヤ８を操作す
るシフトフオーク２７は、ミツシヨンケース１に
支承固定した支軸２８に支持され、ケース外の変
速レバーの操作によつて任意にシフト操作される
とともに、スプリング・ボール２９によつて上記
各変速位置Ｒ，F₁，F₂，F₃及び中立位置Ｎに位
置決め保持されるようになつている。

又、このシフトフオーク２７と支軸２８とで前
記油圧クラツチ４への圧油給排を司どる制御弁機
構Ｖが構成されている。

つまり、ポンプケーシング２３とミツシヨンケ
ース１との間に形成された供給油路２６が支軸２
８内に形成した油路３０に接続されるとともに、
この軸内油路３０の端部が支軸２８の外周面に開
口され、他方、シフトフオーク２７には、前記軸
内油路３０の開口端３０ａを外部に連通する孔３
１が並設され、シフトフオーク２７が各変速位置
F₁，F₂，F₃，Ｒにある場合にのみ開口端３０ａ
が閉塞されるようになつている。第２図にその油
圧回路図が示される。

従つて、シフトフオーク２７が或る変速位置に
あるときには、開口端３０ａが閉塞されるため
に、ポンプ２３からの圧油は軸内油路２２を介し
て油圧クラツチ４に供給され、油圧クラツチ４が
入り状態となり、所定の変速での伝動が行われ
る。尚、前記供給油路２６には、ミツシヨンケー
ス１内に連通するリリーフ弁３２が設けられてお
り、これによりクラツチ圧が一定に保たれる。

そして、或る変速位置からシフトフオーク２７
を少し動かすと、開口端３０ａが開かれて、ポン
プ２３の圧油がミツシヨンケース１内に抜け、こ
れに伴つてクラツチ圧が低下して油圧クラツチ４
が自動的に切れることになり、伝動が断たれた状
態でのギヤシフトが行われる。ギヤシフトが終了
してシフトフオーク２７が次の変速位置に至る
と、再び開口端３０ａが閉じられることによつて
油圧クラツチ４が自動的に入れられるのである。

〔別実施例〕 前記主ギヤ変速機構９の操作機構が、シフト
フオークを固着したシフト軸をミツシヨンケー
スに対して摺動させる場合には、ミツシヨンケ
ース（固定部材）とシフト軸（シフト部材）と
の間に油圧クラツチ４への圧油給排を司どる制
御弁機構Ｖを構成することができる。

油圧クラツチ４として、圧油供給でクラツチ
切りとなり、排油でクラツチ入りとなるものを
用いてもよい。

油圧ポンプ２３の吐出口２４と軸内油路２２
及び３０を連通する供給油路２６をミツシヨン
ケース１の側壁内部に穿設形成して実施するこ
ともできる。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案に係る作業車の走行変速装置の実
施例を示し、第１図はミツシヨンケースの展開断
面図、第２図は油圧回路図である。 １……ミツシヨンケース、２……常時回転軸、
４……油圧クラツチ、９……ギヤ変速機構、２２
……油路、２３……油圧ポンプ、２４……吐出
口、２６……供給油路、２７……変速用シフト部
材、２８……固定部材、３０……軸内油路、３０
ａ……開口端、Ｖ……制御弁機構。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 人為変速されるギヤ変速機構９よりも動力伝達
   方向での上手側位置に油圧クラツチ４を備え、こ
   の油圧クラツチ４が配備される常時回転軸２の軸
   端に連結される油圧ポンプ２３と、この油圧ポン
   プ２３からの圧油を前記油圧クラツチ４へ給排制
   御する制御弁機構Ｖとを設けるとともに、下記
   〔イ〕〜〔ニ〕に記載の構成を備えている走行変
   速装置。 〔イ〕 前記制御弁機構Ｖは、人為操作される変
   速用シフト部材２７と、これを摺動自在に支持
   する固定側部材２８とで構成されている。 〔ロ〕 前記油圧ポンプ２３の吐出口２４が、前
   記常時回転軸２内に形成された油路２２を介し
   て前記油圧クラツチ４に、かつ、ミツシヨンケ
   ース１の側壁に沿つて形成された供給油路２６
   を介して前記固定側部材２８内に形成された軸
   内油路３０に夫々連通されている。 〔ハ〕 前記軸内油路３０に連通する開口端３０
   ａが前記固定側部材２８に、かつ、前記ミツシ
   ヨンケース１の内部空間と前記開口端３０ａと
   を連通可能な孔３１が前記シフト部材２７に
   夫々形成されている。 〔ニ〕 前記シフト部材２７は、前記ギヤ変速機
   構９が伝動状態になる各変速位置で前記開口端
   ３０ａを遮断して、前記供給油路２６から前記
   ミツシヨンケース１内への圧油流動を阻止する
   ことにより前記油圧クラツチ４を入りとし、各
   変速位置から外れた位置になると、前記開口端
   ３０ａと前記孔３１とを連通させて前記圧油流
   動を許容することにより前記油圧クラツチ４を
   切りとするように構成された弁部分を備えてい
   る。