JPH0447405Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ａ 考案の目的 （産業上の利用分野） この考案に係るメタルシリンダヘツドガスケツ
トは、内燃機関のシリンダヘツド下面とシリンダ
ブロツク上面との間に挟持し、両面間の気密及び
液密を保持するのに利用する。

（従来の技術） 内燃機関のシリンダヘツド下面とシリンダブロ
ツク上面との間にはシリンダヘツドガスケツトを
挟持して、シリンダ内で発生する高圧の燃焼ガ
ス、或はシリンダブロツクとシリンダヘツドとの
間を流通する冷却水や潤滑油が外部に漏洩するの
を防止している。

第２図はこの様なシリンダヘツドガスケツト１
の１例を示している。このシリンダヘツドガスケ
ツト１には、シリンダ頂部の開口形状に合わせた
円形のボア孔２，２、シリンダヘツドをシリンダ
ブロツクに固定する為のボルトを挿通する小円孔
３，３、冷却水や潤滑油を通す為の透孔４，４が
穿設されている。５は各ボア孔２，２の内周縁部
に装着した金属薄板製のグロメツトである。

この様なシリンダヘツドガスケツト１は、従来
はフツク付鉄板或は金網の様な芯材の表裏面に、
アスベスト或は炭素等を主成分とするコンパウン
ドを塗布したり、或はこれらのシートを貼着して
造っていた。ところが、近年ターボチヤージヤの
普及等により、エンジンの熱負荷が高くなる傾向
が強くなつて、耐熱性の良好なメタルシリンダヘ
ツドガスケツトを使用する場合が多くなつた。メ
タルシリンダヘツドガスケツトは、ボア孔等を打
ち抜き形成した亜鉛メツキ鋼板、ステンレス鋼板
等の金属薄板６〜１０を、第３図に示す様に３枚
以上（図示の例では５枚）重ね合わせ、ボア孔
２，２の内周縁部に装着したグロメツト５によ
り、これら複数の金属薄板６〜１０を束ねて構成
されている。但し、グロメツト５は各金属薄板６
〜１０と別体とする代わりに、表面又は裏面の金
属薄板６又は１０と一体とする場合も多い。

更に、中間の金属薄板７〜９の内の何れかの金
属薄板９には、第３図に示す様に上記ボア孔２，
２の周囲を囲む突条１１，１１を形成し、メタル
シリンダヘツドガスケツトをシリンダブロツク上
面とシリンダヘツド下面との間で強く挟持した場
合に、ボア孔２，２の周囲部分の当接圧力が高く
なり、この部分の気密が良好に保たれる様にして
いる。

ところが、上述の様に構成され使用されるメタ
ルシリンダヘツドガスケツトは、ボア孔２，２の
周囲に突条１１，１１を形成した事に起因して、
次に述べる様な不都合を生じる。

即ち、このシリンダヘツドガスケツト１をシリ
ンダブロツクの上面とシリンダヘツドの下面との
間に挟み、小円孔３，３に挿通したボルトを緊締
する事により、シリンダヘツドをシリンダブロツ
クに対して固定すると、ガスケツト１はシリンダ
ブロツク上面とシリンダヘツド下面との間で圧縮
されるが、特に最近の軽量化エンジンではシリン
ダヘツド、シリンダブロツクの剛性が低い為、第
７図に誇張して示す様に、シリンダヘツド１２の
下面１２ａが、中央部が凹となる様に彎曲してし
まう。

即ち、上記突条１１，１１を形成する事によ
り、ボア孔２，２の周囲部分に於ける突っ張り
力、即ち、シリンダブロツク上面とシリンダヘツ
ド下面との間隔を広げようとする力が大きくな
る。一方、突条１１，１１が存在しない、シリン
ダヘツドガスケツトの長さ方向（第２図の左右方
向）両端部に於いては、上記突っ張り力が上記周
囲部分よりも小さくなる。この結果、上記小円孔
３，３を挿通したボルトの緊締に伴なつて、シリ
ンダブロツク上面とシリンダヘツド下面との間隔
が、ボア孔２，２に対応する中間部分で広く、長
さ方向両端部で狭くなる傾向となる。

シリンダヘツドの剛性が十分に高い場合には、
実開昭61−29044号公報の開示されている様に、
シリンダブロツクが変形し、シリンダ孔の内径が
広がる事も考えられるが、近年、エンジンの軽量
化を目的として採用される様になつた、アルミニ
ウム合金製のシリンダヘツドの様に、シリンダヘ
ツドの剛性が低い場合には、前記第７図に誇張し
て示す様に、シリンダヘツド１２の下面１２ａ
が、中央部が凹となる様に彎曲してしまう。

この様に、シリンダヘツド１２の下面１２ａが
彎曲すると、このシリンダヘツド１２の下面１２
ａとシリンダブロツク上面との間の気密保持が不
十分となる。特に、第２図に示した様に、小円孔
３，３に挿通されたボルト同士の中間部分ａ，ａ
に於いては、ガスケツトを押圧する力が弱くな
り、上記両面間の気密保持が不足してしまう。

この様な問題を解決する為のメタルシリンダヘ
ツドガスケツトとして、実開昭61−69450号公報
に開示されたものがある。

この先考案のメタルシリンダヘツドガスケツト
は、未使用時に於ける厚さを、中央部を薄く、両
端部を厚く形成している。この様に、メタルシリ
ンダヘツドガスケツトの厚さを中央部と両端部と
で異ならせる為に、ボア孔の周囲に設ける突条１
１の高さを中央寄りのボア孔２，２と両端のボア
孔２，２とで異ならせたり、或はボルト挿通用の
小円孔３，３の内、両端に位置する小円孔３，３
の周囲にのみ突条を形成したりする。

即ち、ボア孔２，２の周囲に形成する突条１
１，１１の高さを変える場合には、第３〜４図に
示す様に、中央寄りのボア孔２，２の周囲に形成
する突条１１，１１（第３図）の高さｈを、両端
のボア孔２，２の周囲に形成する突条１１（第４
図）の高さＨよりも小さく（ｈ＜Ｈ）形成し、小
円孔３の周囲に突条を形成する事により厚さを変
える場合には、第５〜６図に示す様に、両端に位
置する小円孔３（第５図）の周囲に突条１３を形
成し、中間部に位置する小円孔３（第６図）の周
囲には突条１３を設けない。

上述の様に構成される先考案のメタルシリンダ
ヘツドガスケツトをシリンダブロツク上面とシリ
ンダヘツド下面との間に挟持して使用した場合、
未使用時に於ける両端部の厚さが中間部の厚さに
比べて厚い為、シリンダヘツドをシリンダブロツ
クに固定するのに各小円孔３，３に挿通したボル
トを緊締した場合でも、シリンダブロツクが彎曲
する事はなく、シリンダヘツド１２が第７図に示
す様に下面１２ａの中央部が凹に彎曲する事がな
くなる。

（考案が解決しようとする問題点） ところが、上述の様に構成され、作用する先考
案に係るメタルシリンダヘツドガスケツトに於い
ても、依然として次に述べる様な不都合を生じ
る。

即ち、メタルシリンダヘツドガスケツトはシリ
ンダブロツク上面とシリンダヘツド下面との間に
挟持して使用する場合、エンジンの発生する熱に
よつて高温になる事が避けられない。この為、メ
タルシリンダヘツドガスケツトの未使用時に於け
る厚さを長さ方向で異ならせた場合に於いても、
突条１１，１３が使用に伴なつてへたり、シリン
ダヘツドガスケツトの厚さがその長さ方向に亙つ
て均一になつてしまう。この様な状態に於いて、
シリンダヘツドをシリンダブロツクに固定する為
のボルトを増し締めしたり、或はシリンダヘツド
をシリンダブロツクから取り外した後、再び組み
付ける作業を行なつた場合、シリンダヘツド１２
の下面１２ａが第７図に誇張して示す様に彎曲し
たり、或はボア孔２の周囲部分の気密保持が不完
全になる事が避けられない。

更に、上記従来からのメタルシリンダヘツドガ
スケツトは、最低でも３枚以上の金属薄板を組み
合わせて構成されていた為、材料費が嵩み、組立
工数が多い為、高価とならざるを得なかつた。

本考案のメタルシリンダヘツドガスケツトは、
上述の様な不都合を何れも解消するものである。

ｂ 考案の構成 （問題を解決するための手段） 本考案のメタルシリンダヘツドガスケツトは、
第１図に示す様に、２枚以上の金属薄板１４，１
５を積層して成り、複数のボア孔２と、液体を通
す透孔４と、ボルトを挿通する為の複数の小円孔
３（第２図参照）とを有する。

本考案のメタルシリンダヘツドガスケツトに於
いては、メタルシリンダヘツドガスケツトの一方
の面に露出する第一の金属薄板１４の厚さを、他
方の面に露出する第二の金属薄板１５の厚さより
も大きくしている。

上記第一の金属薄板１４は、少なくともボア孔
２の周縁部全周とメタルシリンダヘツドガスケツ
トの長さ方向両端部とに於いて180度折り返す事
で、第一の金属薄板１４の２枚分の厚さを有する
折り返し部１６，１７としている。ボア孔２の周
縁部にはグロメツトを設けない。

スポツト溶接等、シリンダブロツク上面とシリ
ンダヘツド下面との間で挟まれる部分の厚みが増
さない方法により、或はシリンダブロツク上面と
シリンダヘツド下面との間から外れる部分で接合
する事により、第一の金属薄板１４に固定される
上記第二の金属薄板１５は、この折り返し部１
６，１７の何れにも重畳しない状態で第一の金属
薄板１４に積層されている。

即ち、上記第二の金属薄板１５の一部が上記折
り返し部１６，１７の何れかと重畳する事で、こ
の重畳部分の厚さが徒に大きくなる事を防止した
状態で、第一の金属薄板１４に対して第二の金属
薄板１５を積層している。尚、過つて上記第二の
金属薄板１５の一部が、上記折り返し部１６，１
７の何れかと重畳した場合には、この重畳した部
分に於いてメタルシリンダヘツドガスケツトの厚
さが厚くなり過ぎる事に伴ない、シリンダブロツ
クとシリンダヘツドとの結合時に於ける他の部分
の押圧力が不足し、メタルシリンダヘツドガスケ
ツトによるシール性保持が不完全となる。

又、第二の金属薄板１５の一部で、少なくとも
各透孔４の周囲に位置する部分には、第一、第二
の両金属薄板１４，１５の厚さの差よりも高い閉
鎖環状の突条１８を形成している。但し、図示の
実施例に於いては、第一の金属薄板１４の上記突
条１８と整合する位置にも突条１９を形成してお
り、更にボア孔２の周縁部に形成した折り返し部
１６の周囲にも同様の突条２０，２１を形成して
いる。各突条１８〜２１は、同方向に互いに重な
り合う状態で形成しても良い。

但し、第一の金属薄板１４の突条１９，２１、
並びに第二の金属薄板１５の突条１８，２０の内
でボア孔２の周囲に設けた突条２０，２１、並び
に第一の金属薄板１４の、透孔４の周囲に設けた
突条１９は、省略しても良いが、第二の金属薄板
１５の、透孔４の周囲に位置する部分に形成した
突条１８は必須である。これは、ボア孔２の周囲
の気密は折り返し部１６によつて保持されるのに
対し、上記透孔４の周囲の液密保持は、上記突条
１８によつて図る必要があるからである。

又、第一の金属薄板１４に突条１９を形成し、
第二の金属薄板１５の突条１８を省略しても、一
応上記透孔４の周囲の液密保持を図れる。但し、
突条１９のみで突条１８を省略すると、この突条
１９の一部と折り返し部１７とが近接していた場
合（実際の場合には近接する事が多い。）に、メ
タルシリンダヘツドガスケツトの両面で上記透孔
４の周囲部分が、シリンダブロツク上面とシリン
ダヘツド下面とに、全周に亙つて均等に接触しに
くくなる為、好ましくない。

尚、第一、第二の両金属薄板１４，１５の厚さ
の差は0.02〜0.25mm程度（更に好ましくは0.02〜
0.10mm程度）が適当であり、第二の金属薄板１５
の透孔４の周囲に形成する突条１８の高さは150
〜400μｍとして、ボルト締付時にこの突条１８
が100μｍ以上押し潰された状態とするのが好ま
しい。

（作用） 上述の様に構成される本考案のメタルシリンダ
ヘツドガスケツトをシリンダブロツクの上面とシ
リンダヘツドの下面との間に挟み、更に小円孔に
挿通したボルトを緊締する事で上記両面間で強く
挟持した場合、ボア孔周縁部の気密は折り返し部
１６によつて（突条２０，２１を形成した場合
は、更にこの突条２０，２１によつても）保持さ
れる。又、透孔４周囲の液密保持は、第二の金属
薄板１５に形成された突条１８によつて（突条１
９を形成した場合は、突条１８，１９によつて）
保持される。

上記折り返し部１６の厚さとメタルシリンダヘ
ツドガスケツトの長さ方向両端部に形成した折り
返し部１７の厚さとは等しい為、上記ボルトの緊
締作業によつてシリンダヘツドをシリンダブロツ
クに向けて強く押し付けた場合に於いても、シリ
ンダブロツクの上面とシリンダヘツドの下面との
間隔がメタルシリンダヘツドガスケツトの長さ方
向両端部で狭くなる事がなく、このシリンダヘツ
ドの下面が凹に彎曲する事がない。

即ち、本考案のメタルシリンダヘツドガスケツ
トを、シリンダブロツク上面とシリンダヘツド下
面との間で強く挟持した場合には、第一、第二の
金属薄板１４，１５に形成した突条１８〜２１が
完全に押し潰される以前に、各ボア孔２の周縁部
に形成した折り返し部１６の上下両面と、メタル
シリンダヘツドガスケツトの長さ方向両端部に設
けた折り返し部１７の上下両面とが、上記シリン
ダブロツク上面及びシリンダヘツド下面により、
強く押圧される。そしてこの状態で、上記各突条
１８〜２１形成部分は、未だ弾性圧縮可能である
のに対して、各折り返し部１６，１７は、それ以
上は殆ど弾性圧縮されなくなる。従つて、各折り
返し部１６，１７部分を押圧する事で各折り返し
部１６，１７部分に発生する圧力は、各突条１８
〜２１形成部分を押圧する事で各突条１８〜２１
形成部分に発生する圧力よりも、十分に大きくな
る。

一方、図７に示す様に、シリンダヘツドを湾曲
させる突つ張り力は、上記圧力の反作用として生
じる。従つて、本考案のメタルシリンダヘツドガ
スケツトの場合、長さ方向両端部に於ける突つ張
り力が、各ボア孔２周縁部に於ける突つ張り力と
同等になる。この為、各ボア孔２及び透孔４の周
囲に形成した突条１８〜２１の存在に拘らず、シ
リンダヘツド１２が図７に示す様に湾曲する事が
なくなる。

尚、本考案のメタルシリンダヘツドガスケツト
は、少なくとも第一の金属薄板１４と第二の金属
薄板１５とを２枚重ね合わせる必要があるが、メ
タルシリンダヘツドガスケツトの厚さ寸法を大き
くする等の為、３枚以上の金属薄板を重ね合わせ
る事は自由である。即ち、メタルシリンダヘツド
ガスケツトを厚くする為、第一、第二の金属薄板
１４，１５を厚くすると、折り返し部１６，１７
を形成しにくくなつたり、或は突条１８〜２１の
剛性が高くなり過ぎる場合がある。そこで、この
様な場合には、金属薄板を３枚以上積層する。但
し、この場合には、第三（更には第四以下）の金
属薄板の平面形状は、上記第一の金属薄板１４と
ほぼ同じとして、この第三の金属薄板を、折り返
し部１６，１７を含め、第一の金属薄板１４全体
に重ね合わせる（重畳させる）。

ｃ 考案の効果 上述の様に構成され作用する本考案のメタルシ
リンダヘツドガスケツトの場合、高温に曝された
場合に於いてもシリンダヘツドの彎曲防止効果が
衰える事がなく、しかも最低２枚の金属薄板を積
層する事で造る事が出来る為、製作費の低廉化を
図れる等、実用上の効果が大きい。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案のメタルシリンダヘツドガスケ
ツトの実施例を示す、第２図の拡大Ａ−Ａ断面
図、第２図は本考案の対象となるメタルシリンダ
ヘツドガスケツトの１例を示す平面図、第３図は
第２図の拡大Ｂ−Ｂ断面図、第４図は同Ｃ−Ｃ断
面図、第５図は同Ｄ−Ｄ断面図、第６図は同Ｅ−
Ｅ断面図、第７図はシリンダヘツドの彎曲状態を
誇張して示す側面図である。 １……シリンダヘツドガスケツト、２……ボア
孔、３……小円孔、４……透孔、５……グロケツ
ト、６，７，８，９，１０……金属薄板、１１…
…突条、１２……シリンダヘツド、１２ａ……下
面、１３……突条、１４……第一の金属薄板、１
５……第二の金属薄板、１６，１７……折り返し
部、１８，１９，２０，２１……突条。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ２枚以上の金属薄板を積層して成り、複数のボ
   ア孔と液体を通す透孔とボルトを挿通する為の複
   数の小円孔とを有するメタルシリンダヘツドガス
   ケツトに於いて、メタルシリンダヘツドガスケツ
   トの一方の面に露出する第一の金属薄板の厚さを
   他方の面に露出する第二の金属薄板よりも大きく
   し、上記第一の金属薄板を、少なくともボア孔の
   周縁部全周とメタルシリンダヘツドガスケツトの
   長さ方向両端部とに於いて180度折り返す事で第
   一の金属薄板２枚分の厚さを有する折り返し部と
   し、第一の金属薄板に第二の金属薄板を、この第
   二の金属薄板が上記折り返し部に重畳しない状態
   で積層すると共に、この第二の金属薄板の、少な
   くとも透孔の周囲に位置する部分に、第一、第二
   の両金属薄板の厚さの差よりも高い環状の突条を
   形成した事を特徴とするメタルシリンダヘツドガ
   スケツト。