JPH0447361Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は、ダブルオーバヘツドカムシヤフト形
エンジンに関し、特にそのタイミングベルト張設
部分の改良に係るものである。

［従来の技術］ 近時の自動車用エンジンには、吸気弁と排気弁
をそれぞれ専用のカムシヤフトにより各別に作動
させるようにしたものも少なくない。いわゆるダ
ブルオーバヘツドカムシヤフト（以下「DOHC」
と略称する）形のエンジンといわれるものであ
る。

しかして、この種のエンジンでは、対をなすカ
ムシヤフトの一端にタイミングプーリをそれぞれ
軸装しておき、クランクシヤフトの一端に設けた
駆動プーリの回転動力をタイミングベルトを介し
て前記各タイミングプーリに伝達することによつ
て吸気弁および排気弁を作動させるようになつて
いる。そのため、１本のカムシヤフトで吸気弁と
排気弁を駆動するようにしたシングルオーバヘツ
ドカムシヤフト形のエンジンに比較してタイミン
グベルトが著しく長くなり、それが原因でテンシ
ヨンプーリ関連部分の大型化を招くという不都合
がある。すなわち、この種の動弁系においては、
タイミングベルトの運転中のばたつきや振動によ
る騒音の発生あるいはタイミングベルトとプーリ
との噛合部における目飛びの発生というような不
都合を防止するためテンシヨンプーリを設け、タ
イミングベルトに常に所定の張力を与えるように
している。ところが、DOHC形エンジンにおい
ては、そのタイミングベルトが長尺なものになる
ため、寸法誤差や使用による伸び等が大きくな
る。そのため、これを所定の張力に維持するには
テンシヨンプーリをシリンダブロツク等に枢支さ
せるブラケツトを大型化してテンシヨンプーリの
可動範囲を大きくしたり、テンシヨナースプリン
グを大きなものにする必要がある。このためテン
シヨンプーリに関連した部品を小型化してエンジ
ン端部に収納するのが難しいという不都合があ
る。

なお、この種DOHC形エンジンに関する先行
技術として、特開昭58−152962号公報に示される
ように、タイミングベルトの張り側に転接するア
イドラプーリと、タイミングベルトの緩み側に転
接するアイドラプーリとを共通のプーリ保持レバ
ーに軸着しておき、そのプーリ保持レバーを回動
させることによつて、アイドラプーリのタイミン
グベルトに対する転接位置を調整することができ
るようにしたものがある。しかしながら、このも
のは、吸気弁用のカムシヤフトと排気弁用のカム
シヤフトとの連動タイミングを変更するために、
対をなすアイドラプーリを背反的に移動させ得る
ようにしたものであり、かかるアイドラプーリの
移動によつてテンシヨンプーリの可動範囲を縮小
するような作用は成し得ない。すなわち、かかる
先行技術は、テンシヨンプーリ関連部分の小型化
というような目的は一切有しておらず、前述した
不都合を解消し得るような技術を開示あるいは示
唆するようなものではない。

［考案が解決しようとする問題点］ 本考案は、以上のような問題点、すなわち、
DOHCエンジンでは、タイミングベルトが長尺
なものになるため、テンシヨンプーリ関連部分が
大型化してエンジンのコンパクト化を阻害してい
るという問題点を簡単な構成により有効に解消す
ることを目的としている。

［問題点を解決するための手段］ 本考案に係るダブルオーバヘツドカムシヤフト
形エンジンは、かかる目的を達成するために、ク
ランクシヤフトに設けた駆動プーリと、対をなす
カムシヤフトにそれぞれ設けたタイミングプーリ
との間にタイミングベルトを張設し、このタイミ
ングベルトの外面にテンシヨンプーリと第１、第
２のアイドラプーリとを転接させてなるエンジン
において、前記テンシヨンプーリおよび第１のア
イドラプーリをシリンダヘツドに配設し、前記テ
ンシヨンプーリをシリンダヘツドに回動可能に軸
着されるブラケツトの回動端部に軸着し、該ブラ
ケツトの回動端をシリンダヘツド方向に付勢する
テンシヨナースプリングをタイミングプーリ間に
配設し、前記第２のアイドラプーリをシリンダブ
ロツクの下部に位置させて前記駆動プーリから前
記タイミングプーリに至る張力設定側に配置する
とともに、この第２のアイドラプーリを、前記タ
イミングベルトに接触して回転するプーリ本体
と、このプーリ本体を回転自在に保持する保持体
と、この保持体の偏心位置に回動可能に挿通され
所望の回動位置においてこの保持体をシリンダブ
ロツクの下部に固定する止着軸とを具備してなる
ものにしたことを特徴とする。

［作用］ このような構成のものであれば、前記第２のア
イドラプーリの保持体を止着軸回りに回動させる
と、この保持体およびプーリ本体が偏心動作を行
なうことになり、このアイドラプーリの前記タイ
ミングベルトに対する押し付け量が変化する。そ
のため、このアイドラプーリの偏心動作によりタ
イミングベルトの緩みを適正な状態にまで矯正し
た上で、このアイドラプーリの保持体を止着軸に
よりシリンダブロツクの下部に固定し、しかる後
に、テンシヨナースプリングにより付勢されたテ
ンシヨンプーリによりこのタイミングベルトの張
力を調整するようにすれば、第２のアイドラプー
リにより張力の一部が負担されてテンシヨンプー
リが負担するタイミングベルトの張力が少なくな
り、したがつてテンシヨンプーリの可動範囲を大
きく設定しておかなくてもタイミングベルトの張
力を適正な値に調整し維持することができる。

また、DOHCエンジンの場合、構造的にシリ
ンダヘツドが大型であり、このシリンダヘツドに
タイミングプーリとは別に２個のプーリを設ける
ことは可能であるが、シリンダブロツク部分は構
造的にあまり大きくならない。したがつて、テン
シヨンプーリおよび第１、第２のアイドラプーリ
の３点のプーリを前述のようにそれぞれ配置する
とともに、テンシヨナースプリングを２個のタイ
ミングプーリの間に配設する構成および第２のア
イドラプーリを前述の構成にしておけば、シリン
ダヘツドやシリンダブロツクの増大を招くことが
なく、エンジン全体のコンパクト化が図り易くな
る。

［実施例］ 以下、本考案の一実施例を図面を参照して説明
する。

図中１はエンジン本体を示しており、２はカム
シヤフトハウジング、３はシリンダブロツク、４
はクランクケース４である。

カムシヤフトハウジング２内には、図示しない
吸気弁および排気弁をそれぞれ独立に駆動するた
めの対をなすカムシヤフト５，６が配設されてお
り、それら各カムシヤフト５，６の外部延出端に
タイミングプーリ７，８がそれぞれ軸装してあ
る。

一方、クランクケース４内に配設したクランク
シヤフト９の外部延出端には、駆動プーリ１０が
軸装してある。そして、この駆動プーリ１０と、
前記タイミングプーリ７，８との間にタイミング
ベルト１１を張設している。このタイミングベル
ト１１は歯付きベルトであり、前記駆動プーリ１
０に連動して時計回り方向（図中矢印方向）に巻
掛回転するようになつている。そして、このタイ
ミングベルト１１の駆動側、つまりタイミングプ
ーリ７から駆動プーリ１０に至る側には、タイミ
ングベルト１１の外面に転接する第１のアイドラ
プーリ１２がタイミングプーリ７の下方近傍に位
置させて配設してある。すなわち、この第１のア
イドラプーリ１２は、第１図に示すように、前記
シリンダブロツク３の上端３ａに固設されたシリ
ンダヘツド１ａに保持させてある。一方、張力設
定側、つまり、駆動プーリ１０からタイミングプ
ーリ８に至る側には、タイミングベルト１１の外
面にそれぞれ転接するテンシヨンプーリ１３と、
第２のアイドラプーリ１４とが配設してある。テ
ンシヨンプーリ１３は、支軸１５回りに回動可能
なブラケツト１６の回動端部に軸着されており、
第１図に示すように、このブラケツト１６を介し
てシリンダヘツド１ａに保持させている。このブ
ラケツト１６の回動端とエンジン本体１のシリン
ダヘツド１ａとの間にはテンシヨナースプリング
１７が張設してある。第２のアイドラプーリ１４
は、第１図に示すように、シリンダブロツク３の
下部を構成するクランクケースカバー２３に保持
させてあり、前記タイミングベルト１１の外面に
接触して回転する円筒状のプーリ本体１８と、こ
のプーリ本体１８を回転自在に保持する保持体１
９と、この保持体１９の偏心位置に回動可能に挿
通され所望の回動位置においてこの保持体１９を
前記エンジン本体１に固定する止着軸２１とを具
備してなる。詳述すれば、保持体１９は、図示し
ない内設ベアリングを介して前記プーリ本体１８
を回転自在に保持する短寸軸状のもので、プーリ
本体１８の回転中心O₁から偏心した位置O₂に偏
心孔２２を有しており、この偏心孔２２に前記止
着軸２１を挿通させている。止着軸２１はボルト
状のもので、エンジン本体１のクランクケースカ
バー２３に設けたボス部２４のねじ孔２５に螺合
させてある。なお、前記保持体１９の背面にはブ
ラケツト２６が固着してあり、このブラケツト２
６の一端２６ａはエンジン本体１側へ屈曲させて
ある。そして、このブラケツト２６の屈曲させた
一端２６ａを前記クランクケースカバー２３に設
けた係止部２７に係止させることができるように
してある。このブラケツト２６は、止着軸２１が
緩んだ場合に前記保持体１９が無制限に回動する
のを防止するためのもので、この実施例では、前
記ブラケツト２６を前記係止部２７に係止させた
場合に、この第２のアイドラプーリ１４の中心
O₁がタイミングベルト１１から最も離れた位置
に保持されるようになつている。

このような構成のものであれば、止着軸２１の
緊締状態を解除した状態で第２のアイドラプーリ
１４の保持体１９をこの止着軸２１回りに回動さ
せると、この保持体１９およびプーリ本体１８が
偏心動作を行なうことになり、このアイドラプー
リ１４の前記タイミングベルト１１に対する押し
付け量が変化する。そのため、このアイドラプー
リ１４の偏心動作によりタイミングベルト１１の
緩みを適正な状態にまで矯正した上で、このアイ
ドラプーリ１４の保持体１９を止着軸２１を締付
けることによつてエンジン本体１に固定し、しか
る後に、テンシヨンプーリ１３によりこのタイミ
ングベルト１１の張力を調整するようにすれば、
前記テンシヨンプーリ１３の可動範囲を大きく設
定しておかなくてもタイミングベルト１１の張力
を適正な値に調整し維持することができる。

そのため、このようなものであれば長尺なタイ
ミングベルト１１に生じる長手方向の寸法誤差や
使用による伸び等が大きなものになつても、テン
シヨンプーリ１３を保持するブラケツト１６やテ
ンシヨナースプリング１７を大型化する必要はな
くなる。したがつて、テンシヨンプーリ関連部分
の小型化を図つてエンジン全体のコンパクト化を
期することができる。しかも、このものは前記保
持体１９に対する止着軸２１の挿通位置を若干偏
心させただけのものであるため、部品点数の増大
や構造の複雑化を一切招くことなしに容易に実施
することができるという利点もある。

また、それぞれのタイミングプーリ７，８の下
方近傍にテンシヨンプーリ１３と第１のアイドラ
プーリ１２をそれぞれ配設し、シリンダブロツク
３の下部に第２のアイドラプーリ１４を配設する
とともに、この第２のアイドラプーリ１４を前述
のように構成しておけば、前記テンシヨンプーリ
１３の可動範囲およびその関連部分が縮小できる
だけでなく、このテンシヨンプーリ１３と第１の
アイドラプーリ１２とを接近させることも可能と
なる。このため、シリンダヘツド１ａやシリンダ
ブロツク３を小型化することもでき、エンジン全
体をコンパクトなものにすることも可能となる。

なお、本考案は以上の実施例に限定されるもの
ではなく、例えば、保持体に係止用のブラケツト
を設けていないものも本考案に含まれる。

［考案の効果］ 本考案は、以上のような構成であるから、タイ
ミングベルトが長尺であるにもかかわらずテンシ
ヨンプーリ関連部分の大型化を招くことなしにそ
のタイミングベルトの張力を適正な値に維持する
ことが可能であり、しかも、構造が簡単で容易に
実施することができるオーバヘツドカムシヤフト
形エンジンを提供できるものである。

また、シリンダヘツドにテンシヨンプーリおよ
び第１のアイドラプーリを配設し、シリンダブロ
ツクの下部に偏心動作可能な第２のアイドラプー
リを配置し、この第２のアイドラプーリを保持体
により所望の回動位置に駐止しておいて止着軸に
てシリンダブロツクの下部に固定する構成である
ので、第２のアイドラプーリで第一段目の張力を
タイミングベルトに与えることができ、さらにブ
ラケツトに軸着されたテンシヨンプーリとテンシ
ヨナースプリングとにより適切に調整された張力
をタイミングベルトに与えることができる。した
がつてタイミングベルトの張力の設定が容易にで
きるとともに、テンシヨンプーリで負担すべき張
力の一部が第２のアイドルプーリにより負担され
るので、テンシヨンプーリの可動範囲の縮小およ
びその関連する機構部材を小型化（コンパクト
に）することができるだけでなく、シリンダヘツ
ドやシリンダブロツクを小型化することもでき、
エンジン全体を有効に小型化することが可能とな
る。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の一実施例を示し、第１図はエン
ジンのタイミングベルト張設部分を示す正面図、
第２図はアイドラプーリを示す平面図、第３図は
同正面図である。 １……エンジン本体、１ａ……シリンダヘツ
ド、３……シリンダブロツク、５，６……カムシ
ヤフト、７，８……タイミングプーリ、９……ク
ランクシヤフト、１０……駆動プーリ、１１……
タイミングベルト、１２……第１のアイドラプー
リ、１３……テンシヨンプーリ、１４……第２の
アイドラプーリ、１６……ブラケツト、１７……
テンシヨナースプリング、１８……プーリ本体、
１９……保持体、２１……止着軸、２２……偏心
孔。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. クランクシヤフトに設けた駆動プーリと、対を
   なすカムシヤフトにそれぞれ設けたタイミングプ
   ーリとの間にタイミングベルトを張設し、このタ
   イミングベルトの外面にテンシヨンプーリと第
   １、第２のアイドラプーリとを転接させてなるエ
   ンジンにおいて、前記テンシヨンプーリおよび第
   １のアイドラプーリをシリンダヘツドに配設し、
   前記テンシヨンプーリをシリンダヘツドに回動可
   能に軸着されるブラケツトの回動端部に軸着し、
   該ブラケツトの回動端をシリンダヘツド方向に付
   勢するテンシヨナースプリングをタイミングプー
   リ間に配設し、前記第２のアイドラプーリをシリ
   ンダブロツクの下部に位置させて前記駆動プーリ
   から前記タイミングプーリに至る張力設定側に配
   置するとともに、この第２のアイドラプーリを、
   前記タイミングベルトに接触して回転するプーリ
   本体と、このプーリ本体を回転自在に保持する保
   持体と、この保持体の偏心位置に回動可能に挿通
   され所望の回動位置においてこの保持体をシリン
   ダブロツクの下部に固定する止着軸とを具備して
   なるものにしたことを特徴とするダブルオーバヘ
   ツドカムシヤフト形エンジン。