JPH0435516B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

産業上の利用分野 本発明のプラスチツクを迅速且つ高精度の鏡面
に研磨するプラスチツク研磨用組成物に関する。
更に詳述すると、例えば眼鏡用プラスチツクレン
ズ、カメラ用プラスチツクレンズ、光用プラスチ
ツクレンズ等のプラスチツクを研磨する水とアル
ミナ研磨材粉末と蓚酸アルミニウム又は乳酸アル
ミニウムの研磨促進剤又はこれらと結晶セルロー
ス又はコロイダルアルミナの沈降防止剤からなる
研磨用組成物に関する。 従来の技術 プラスチツクに対し、従来使用されている研磨
用組成物は特公昭53−3518に開示されている水と
アルミナ研磨材又及び硝酸アルミニウムの研磨促
進剤を混合してスラリー状にしたものである。 又、特開昭62−15282には水とアルミナ研磨材
及び酢酸ニツケル又は酢酸リチウム、硫酸リチウ
ム等のリチウム化合物又は硫酸ナトリウム、酢酸
ナトリウム等のナトリウム化合物、又は硫酸マグ
ネシウム、酢酸マグネシウム等のマグネシウム化
合物から成る弱酸性又は弱アルカリ性の研磨用組
成物が開示されている。 発明が解決しようとする課題 しかし、従来の硝酸アルミニウムを研磨促進剤
とした研磨用組成物にはまず第一にアルミナ研磨
材が保存する容器及び研磨の際に使用する研磨ス
ラリータンクの底に固く沈澱しやすく、使用の際
に均一撹拌するのに時間を要すること、又このた
めにスクラツチの原因となる凝集粒が発生し易い
こと、更にコストダウンのために循環使用をしよ
うとすると研磨機、スラリー配管系統に分離・沈
降し易く、アルミナ研磨材の濃度が変化して安定
した研磨性能が得難いこと、第二に研磨機及び周
辺機器を腐蝕させ機器の損耗と研磨作業中に錆の
混入を招き易いこと、第三に作業者の皮膚や衣類
に付着し、手荒れ等の薬の危険性があることなど
の問題点がある。 又、製造費用の中に占める割合の大きい加工費
を低減させるためにより一層加工能率の高いこと
が求められている。 本発明はこれらの問題点を解決する高い研磨性
能と良質な研磨面が得られ、循環使用に際しても
安定した研磨性能を有し、且つ機械に対する腐蝕
性や人体への有性の少ないプラスチツクの研磨用
組成物を提供することが目的である。 課題を解決するための手段 本発明者らは水にアルミナ研磨材と各種有機酸
あるいは有機酸のアルミニウム化合物を加えてプ
ラスチツクレンズの研磨を行なつたところ、蓚酸
アルミニウムと乳酸アルミニウムの研磨作用が著
しく高いことを見出した。 この場合上記組成だけではアルミナ研磨材が沈
降することがあるので、沈降防止をはかることが
好ましい。沈降防止剤としては組成物の粘性を高
め研磨面に悪影響を及ぼさないためにはアルミナ
研磨材より細かく且つ化学的に不活性な添加物を
加えることが有効との見地から各種添加物につい
て研究を行なつたところ、結晶セルロースとコロ
イダルアルミナが沈降防止に非常に有効なことを
見出した。更に上記二つの添加物は後述の物理的
作用により、研磨速度の向上にも寄与することを
見出した。 以上、アルミナ研磨材粉末と研磨促進剤によ
り、また好ましくはこれらと沈降防止剤の組み合
せによりプラスチツクレンズの研磨に有効な本発
明を完成させた。即ち、本発明は水とアルミナ研
磨材粉末と蓚酸アルミニウムもしくは乳酸アルミ
ニウムの研磨促進剤、又はこれらと結晶セルロー
ス又はコロイダルアルミナの沈降防止剤からなる
プラスチツクの研磨用組成物である。 以下、本発明を詳しく述べる。 蓚酸アルミニウム〔Al₂（C₂O₄）₃・xH₂O〕又は
乳酸アルミニウム〔Al〔CH₃CH（OH）COO〕₃〕
の含有量は0.5重量％未未満（結晶水を除く、以
下同じ）ではその効果が十分でなく、又10重量％
を超えてもその効果は変わらず逆に研磨能率や面
精度の低下をもたらすので0.5〜10重量％が適し、
特に0.5〜４重量％が好好ましい。 結晶セルロース又はコロイダルアルミナの含有
量は0.1重量％未満（後者の場合、結晶水は除く、
以下同じ）ではその効果が十分でなく、又５重量
％を超えると組成物の粘性が増大しすぎてアルミ
ナ研磨材の均一分散や研磨機械への供給などの取
扱いが不便となり且つアルミナ研磨材の凝集が起
り易くなるため0.1〜５重量％が適し、特に0.1〜
１重量％が好ましい。 結晶セルロースは高純度の精製パルプを鉱酸で
加水分解して非晶質領域を洗浄、除去した結晶部
分からなり、摩砕、精製、乾燥して得られたサブ
ミクロンの微粉末であり、組成物中ではコロイド
状に分散し、増粘効果がある。 コロイダルアルミナはベーマイト又は擬ベーマ
イトの水和アルミナ（Al₂O₃・nH₂O，ｎ＝１〜
2.0）でサブミクロンの微粉末であり、酸性領域
でコロイド状に分散し増粘効果がある。 これら結晶セルロースとコロイダルアルミナは
増粘効果とコロイド状に分散してアルミナ研磨材
を保持する効果によりアルミナ研磨材の沈降を防
止する。又研磨時においてアルミナ研磨材のパツ
ド上への保持を良くすることによつて研磨作用を
向上させる。 アルミナ研磨材粉末の含有量は５重量％未満で
は研磨能率の低下と面積度の悪化があり、又25重
量％を超えても研磨能率の向上は認められず且つ
粘度が増増大して作業性が悪くなるので５〜25重
量％が適し、特に15〜20重量％が好ましい。粒子
径は最大が15μm、平均が5μmを超えると面粗さ
が粗くなり過ぎると同時にスクラツチが発生し易
いので最大15μm以下、平均5μm以下が適し、研
磨能率と面粗さを考慮すると１〜3μmが好まし
い。 作 用 本発明において (1) 蓚酸アルミニウムと乳酸アルミニウムはプラ
スチツクに対する化作用を有しケミカル研磨効
果を促進する (2) 結晶セルロースとコロイダルアルミナは組成
物の粘性を増す働きとコロイド状に分散してア
ルミナ研磨材を保持する働きがあり、アルミナ
研磨材の沈降を防止する。又研磨時にアルミナ
研磨材のパツド上への保持を良くする働きがあ
り、メカノ研磨効果を促進する。 実施例 次に、実施例により、本発明を更に詳しく説明
する。以下における研磨特性は次の様な研磨試験
で評価した。 研磨は宇田川式レンズ研磨機（研磨皿径φ120
mm）を使用し、研磨皿にはスエードタイプのパツ
ド（千代田(株)製CIEGAL7355）を貼り付け、φ70
mmのプラスチツクレンンズ（米国PPG社のCR−
39：ジエチレングリコール・ビスアクリルカーボ
ネート）を20分間研磨する。 本発明の研磨用組成物は実際の工程は例えば
＃600程度の炭化珪素質スムージングパツドで粗
研磨し、次いで#1200程度の白色酸化アルミニウ
ム質のスムージングパツドで精研磨した梨地状の
プラスチツクレンズ研磨面を鏡面に研磨するため
に用いられるるが、本実験では同一条件下での比
較を目的とするため一定の条件で仕上げた鏡面プ
ラスチツクレンズを使用した。研磨条件は、加工
圧力：275ｇ／cm²、下皿回転数：400rpm、カンザ
シ注復数：70回、カンザシ振幅：36mm、スラリー
供給量：100ml／min.である。研磨後、プラスチ
ツクレンズを精秤し重量減から研磨磨速度を求め
る。又、表面粗さをランクテーラーホブソン社製
のタリステツプとタリデータ2000で測定する。
又、微分干渉顕微鏡及び10万ルクススポツトライ
トで表面観察を行ない、研磨面のスクラツチ、オ
レンジピール等の表面欠陥の有無を確認する。 比較例 １ 最大粒子径6.4μm、平均粒子径1.9μmのアルミ
ナ粉末（α−Al₂O₃）を20重量％含有するスラリ
ーを用意し、これを純水で希釈してアルミナ研磨
材のみを15重量％含有するスラリーとした。これ
を使用してプラスチツクレンズ（CR−39）の研
磨試験を実施した。試験の結果を第一表に示す。 実施例 １〜５ 比較例１で用意したアルミナ研磨材を20重量％
含有するスラリーに所定量の蓚酸アルミニウムを
加えた後純水で希釈して、アルミナ研磨材含有量
15重量％、蓚酸アルミニウム含有量0.5，1.0，
2.0，4.0，8.0の本発明の研磨用組成物を得た。こ
れらの研磨用組成物を使用してプラスチツクレン
ズ（CR−39）の研磨試験を実施した。試験の結
果を第一表に示す。 実施例 ６〜10 実施例１〜５と同様の操作で蓚酸アルミニウム
に代えて乳酸アルミニウムを用いて、アルミナ研
磨材含有量15重量％、乳酸アルミニウム含有量
0.5，1.0，2.0，4.0，8.0の本発明の研磨用組成物
を得た。これらの研磨用組成物を使用してプラス
チツクレンズ（CR−39）の研磨試験を実施した。
試験の結果を第一表に示す。 比較例 ２ 比較例１で用意したアルミナ研磨材を20重量％
含有するスラリーに所定量の硝酸アルミニウム
〔Al（NO₃）₃・9H₂O〕を加えた後純水で希釈し
て、アルミナ研磨材含有量15重量％、硝酸アルミ
ニウム含有量４重量％の比較用の従来研磨用組成
物を得た。この研磨用組成物を使用してプラスチ
ツクレンズ（CR−39）の研磨試験を実施した。
試験の結果を第一表に示す。 実施例 11〜14 実施例４で得たアルミナ研磨材含有量15重量
％、蓚酸アルミニウム含有量４重量％の研磨用組
成物に結晶セルロース（旭化成(株)製の商品名「ア
ゼセル」）を組成物に占める割合が0.1，0.25，
0.5，1.0重量％になる様に添加し、よく撹拌をし
て本発明の研磨用組成物を得た。これらの研磨用
組成物を使用してプラスチツクレンズ（CR−39）
の研磨試験を実施した。試験の結果を第二表に示
す。 実施例 15〜18 実施例11〜14と同様の操作で結晶セルロースに
代えてコロイダルアルミナ（擬ベーマイト：
Al₂O₃・1.5H₂O）を使用し、コロイダルアルミナ
の含有量が0.1，0.25，0.5，1.0重量％の本発明の
研磨用組成物を得た。これらの研磨用組成物を使
用してプラスチツクレンズ（CR−39）の研磨試
験を実施した。試験の結果を第二表に示す。 第一表によれば、本発明による蓚酸アルミニウ
ム又は乳酸アルミニウムを用いた研磨用組成物は
従来の硝酸アルミニウムを用いた研磨用組成物に
比較して大きい研磨速度と小さい表面粗さが得ら
れることを示している。 又、第二表によれば、結晶セルロース又はコロ
イダルアルミナを添加して研磨用組成物は無添加
の研磨用組成物に比較して研磨速度、表面粗さの
両面において性能向上のあることを示している。
更に特徴的なことは結晶セルロース又はコロイダ
ルアルミナを添加した研磨用組成物では無添加の
ものと比較してアルミナ研磨材の沈降速度が遅
く、且つ沈澱が生じても簡単な撹拌で容易に分散
して沈澱がなくなるので保存の面、作業性の面で
非常に優れていることである。一ケ月の保存にお
いて添加したものは撹拌で簡単に沈澱がなくなつ
たのに対し、無添加のものは沈澱が固く締まり、
撹拌では容易に分散しなかつた。

【表】

【表】 効 果 本発明による蓚酸アルミニウム又は乳酸アルミ
ニウムを研磨促進剤として使用した研磨用組成物
は従来の硝酸アルミナ研磨材を研磨促進剤として
使用した研磨用組成物に比較して イ 研磨磨速度が高い ロ 表面粗さが小さい など加工能率と加工面精度の向上に効果が大き
い。又、結晶セルロース又はコロイダルアルミナ
の沈降防止剤を加えることによつて ハ 研磨磨速度が一層向上する ニ 表面粗さが一層小さくなる ホ アルミナ研磨材の沈降速度が遅くなる ヘ 生じたアルミナ研磨材の沈澱が軟らかく、簡
単に分散できる様になるので長期保存が可能で
ある ト 循環使用に際しても安定した研磨性能が得ら
れる。 など加工能率と加工面精度の向上の外に保存面と
作業性の面でも優れた効果があり、実用上の効果
が著しい。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 水とアルミナ研磨材粉末と、蓚酸アルミニウ
   ム又は乳酸アルミニウムから選ばれた研磨促進剤
   とから成るプラスチツク研磨用組成物。 ２ 水とアルミナ研磨材粉末と、蓚酸アルミニウ
   ム又は乳酸アルミニウムから選ばれた研磨促進剤
   と、結晶セルロース又はコロイダルアルミナから
   選ばれた沈降防止剤とからなるプラスチツク研磨
   用組成物。 ３ アルミナ研磨材粉末の組成物中に占める割合
   が５〜25重量％であり、最大粒子径が15μm以下、
   平均粒子径が5μm以下である特許請求の範囲第１
   項又は第２項記載のプラスチツク研磨用組成物。 ４ 蓚酸アルミニウム又は乳酸アルミニウムの組
   成物中に占める割合は0.5〜10重量％であり、PH
   値が２〜４である特許請求の範囲第１項〜第３項
   記載のプラスチツク研磨用組成物。 ５ 結晶セルロース又はコロイダルアルミナの組
   成物中に占める割合が0.1〜５重量％である特許
   請求の範囲第１項〜第４項記載のプラスチツク研
   磨用組成物。