JPH04311546A - 加工性と焼入れ性に優れた鋼材及びその製造方法 - Google Patents

加工性と焼入れ性に優れた鋼材及びその製造方法

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JPH04311546A
JPH04311546A JP10521091A JP10521091A JPH04311546A JP H04311546 A JPH04311546 A JP H04311546A JP 10521091 A JP10521091 A JP 10521091A JP 10521091 A JP10521091 A JP 10521091A JP H04311546 A JPH04311546 A JP H04311546A
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Abstract

(57)【要約】本公報は電子出願前の出願データであるた
め要約のデータは記録されません。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、加工性とともに焼入れ
性にも優れ、さらには加工後の熱処理により高い強度と
耐摩耗性にも優れた特性を示す機械部品用鋼として好適
に用いられる鋼材と、その製造方法に関するものである
【0002】
【従来の技術】一般に、機械部品用鋼は、成形後に焼入
れ焼もどしなどの熱処理を施すことにより、所望の強度
、耐摩耗性のものとしている。それ故に、この種の鋼と
しては、焼入れ性を有する高炭素鋼を用いるのが普通で
ある。ところで、近年、生産性の向上のために、上述の
如き焼入れ性を有する高炭素鋼についても冷間で成形し
たいという要望があり、そのために、焼入れ性の他に加
工性にも優れた鋼が必要となってきた。この点について
本発明者らは、所定の成分組成を有する高炭素鋼を焼鈍
することにより、セメンタイトに代えて微細な黒鉛をフ
ェライト中に析出させることにより、焼入れ性を低下さ
せることなく、単純引張り試験時の強度及び伸びを低炭
素鋼並みにできる方法を特開平2−107742号公報
にて提案した。また、フェライト中に黒鉛を析出させた
組織を利用する技術については、特開昭63−3176
29号公報に開示されたような方法もある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記各
従来技術の場合、黒鉛の析出に着目して特性(焼入れ性
)を向上させることとした点で斬新なアイデアであった
が、黒鉛はセメンタイトに比べると溶解する速度が非常
に遅いため、この焼入れ性の改善はなお不十分なもので
あった。このことは、たとえ黒鉛を微細化する方法を採
用したとしても、それでは単に焼入れ性の低下を抑える
だけにしかならず、本質的にはその低下は避けがたいも
のであった。特に、加工性を向上させるために、フェラ
イトと黒鉛を主体とするミクロ組織鋼板を高周波焼入れ
する場合は、この焼入れ性の低下が顕著になるという問
題があった。
【0004】そこで本発明の目的は、上述した従来技術
の欠点を克服して、高炭素鋼における加工性の改善を焼
入れ性の低下を招くことなく実現するための技術を提案
することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記の課題を解決するた
めの研究を進めた結果、本発明者らは、所要の成分組成
の鋼を、2つの温度域に分けて一定時間保持するという
特有の焼鈍を行うことによってCの一部を黒鉛化させた
場合には、フェライト中に球状化セメンタイトと、適量
の黒鉛が析出したミクロ組織となり、球状化処理材や、
従来の一定温度で保持する焼鈍で黒鉛化を行った鋼では
得られなかった高い加工性が得られるとともに、いわゆ
る比較的低い黒鉛化率、すなわち、高い焼入れ性を有し
たままであっても、加工性が著しく改善されることを知
見し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、C:0
.1 〜0.8 wt%、Mn:0.05〜1.0 w
t%を含み、かつB:0.0003〜0.010 wt
%及びAl:0.003 〜1.0wt%のいずれか少
なくとも1種を含み、残部Fe及び不可避的不純物より
なり、Cの1〜80wt%が黒鉛の形態で析出しており
、一方その残りのCが球状化セメンタイトとして析出し
た組織を有する加工性と焼入れ性に優れた鋼材、および
上記の成分組成の鋼に、さらに、Si:3wt%以下、
Ni:3wt%以下及びCu:1wt%以下のうちから
選ばれるいずれか1種以上を含み、残部Fe及び不可避
的不純物よりなり、Cの1〜80wt%が黒鉛の形態で
析出しており、一方その残りのCが球状化セメンタイト
として析出した組織を有する加工性と焼入れ性に優れた
鋼材である。
【0006】また、本発明は、上記各成分組成を有する
鋼を、それぞれ、 700〜900 ℃の温度域で1分
以上加熱保持した後、 500〜700 ℃未満の温度
域で1時間以上保持する焼鈍を行うことにより、Cの1
〜80wt%を黒鉛の形態で析出させるとともに、その
残りのCを球状化セメンタイトとして析出させる加工性
と焼入れ性とに優れた鋼材を製造する方法についての提
案である。
【0007】
【作用】本発明は、鋼組成とミクロ組織および焼鈍の方
法に特徴を有するものである。とくに、前述のような鋼
組成とした場合には、この鋼を焼鈍するとCの黒鉛化が
生じるようになる。もっとも、この黒鉛生成の機構は必
ずしも全部が明らかとなっている訳ではないが、本発明
者らが考えるところによれば、BやAlがBNやAlN
として析出し黒鉛の析出サイトとなることで黒鉛化を促
進するものと思われる。また、Si, Ni, Cuに
ついては、フェライト中のCの活量を上げることで、黒
鉛の析出をこの面でも促進すると考えられる。
【0008】次に、本発明においては、前述のようなミ
クロ組織とすることにより、加工性を従来ミクロ組織の
場合よりも一層向上させることができる。この機構は必
ずしも明らかではないが、以下のように考えられる。本
発明者らの研究によれば、球状化セメンタイトを黒鉛化
した場合、加工硬化は小さくなるものの、黒鉛がボイド
のように作用するために鋼が却って脆くなる。そのため
に黒鉛化率が増加するに伴い加工性は一旦向上して、黒
鉛化率がある値を超えるとまた低下する。このように考
えると、加工性を良好にする黒鉛化率の範囲というもの
が存在することが推定される。また、本発明者らの研究
によれば、セメンタイトと黒鉛が混在する組織の場合、
黒鉛化率が一定であれば、セメンタイトが球状化してい
る場合に、その加工性が最良となることも判ってきた(
なお、本発明における球状化セメンタイトとは、球状化
の程度がJIS G 3539 にある球状化組織の程
度でいうNo.2以下である時のセメンタイトである)
【0009】また、本発明者らの知見によれば、後で詳
述するように、Cの1〜80%が黒鉛で、残りのCが球
状化セメンタイトとなっている場合に、従来では得られ
なかったような高い加工性が得られることも判った。
【0010】以上説明したように、本発明において特有
である組成の鋼に、本発明において特有な焼鈍を施すこ
とにより、従来では得られなかったような本発明に特有
のミクロ組織が得られ、良好な加工性が得られる。上述
したように、この機構は必ずしも全部が解明されている
訳ではないが、本発明者らは次のように考えている。す
なわち、セメンタイトの球状化も黒鉛化も共に焼鈍によ
り生じるが、それぞれの最も速く進む温度がずれており
、黒鉛化を生じる温度ではセメンタイトの球状化が遅く
、セメンタイトの球状化が速く進む温度では黒鉛化は生
じない。そのため、通常の一定温度で保持する焼鈍方法
では、黒鉛化が速く進む温度の場合は黒鉛化率が良好な
加工性の得られる範囲を超えることなくセメンタイトの
球状化を行うことは不可能であり、セメンタイトの球状
化が速く進む温度の場合は黒鉛化を生じない。そのため
、本発明の焼鈍方法のように、初めにセメンタイトの球
状化が進む温度に保持して球状化を十分に進めた後、次
には黒鉛化が進む温度に保持して適切な量だけ黒鉛化が
進むようにした場合にのみ、本発明に特有なミクロ組織
が得られ、良好な加工性が得られる。
【0011】このことに関連して、本発明者らは、従来
の一定温度で保持する焼鈍方法でミクロ組織と切欠伸び
が保持温度によってどのように変化するか、種々実験を
行った。この実験は、表1に示す化学成分の鋼(No.
1)を転炉にて溶製し、 920℃で50%の圧延を行
い、その後、従来の一般的な焼鈍方法である図1に示す
ような条件(640〜750 ℃× 1〜100h) 
で焼鈍を行った鋼材について、焼鈍温度とミクロ組織及
び切り欠き伸びの関係について調査したものである。そ
の結果を図2に示す。
【0012】なお、この図2中の黒丸印は、黒鉛化率が
1〜80wt%で、かつセメンタイトの球状化がなかっ
たことを示し、黒三角印は、黒鉛化率が80wt%以上
でセメンタイトの球状化があったことを示す。この図2
から明らかなように、700 ℃未満の温度で1時間以
上保持すると、黒鉛化とセメンタイトの球状化が起きる
。しかし、この例においては、黒鉛化を生じた500 
〜700 ℃未満の温度域では、黒鉛化率が80wt%
を超えると、初めてセメンタイトの球状化を生じるため
、切欠き伸びはせいぜい10%で飽和する。一方、 7
00℃〜900 ℃の温度で1分以上保持することでセ
メンタイトの球状化を生じて切欠き伸びが向上するが、
焼鈍を十分に長い時間行っても高々11%で飽和する。 従って、このような焼鈍方法では、高い切欠き伸びが得
られないことが判る。
【0013】次に、表1に示す化学成分の鋼(No.1
, 2,3)を転炉にて溶製し、920 ℃で50%の
圧延を行い、その後、本発明にもとづく焼鈍方法に従っ
て、図3に示すような条件(720℃×20h, 50
 ℃/h冷却、640 ℃×1〜100h) の焼鈍を
行った鋼材について、セメンタイト球状化後に黒鉛化さ
せた時の黒鉛化率と切欠き伸びの関係を調査した。その
結果を図4に示す。併せて、セメンタイトの球状化だけ
を行った場合の切欠き伸びを各供試材ごとに点線で示す
。この図から判るように、黒鉛化したC量の添加量に対
する割合、すなわち、黒鉛化率を1〜80wt%の範囲
に制御すれば、いずれの供試材の切欠き伸びもセメンタ
イトを球状化しただけの場合の値以上になる。 しかし、黒鉛化率が80wt%を超えると球状化セメン
タイト材より切欠き伸びが低下することが判る。
【0014】
【0015】以上の実験結果をまとめると、まず、従来
の単純な焼鈍方法では、焼鈍温度によりミクロ組織は以
下のように変化することが判った。すなわち、700℃
未満の温度域では、黒鉛化とセメンタイトの球状化が同
時に進むが、セメンタイトの球状化より黒鉛化が早く進
む。そのために、加工性が良好となる黒鉛量の時は、セ
メンタイトの球状化が不十分となり、逆にセメンタイト
の球状化が十分なときには黒鉛量が多くなり過ぎるとい
う現象を生じて加工性が悪くなる。一方、 700℃以
上の温度域では、黒鉛化が著しく遅くなるので、実質的
にはセメンタイトの球状化のみを生じるため、この温度
域の焼鈍だけでは適切な黒鉛量が得られず、加工性が十
分に向上しないことになる。
【0016】このような知見に基づき、本発明において
望ましいミクロ組織を得るための種々の焼鈍条件を検討
した結果、図3, 図4に示すように、第1段階として
セメンタイトの球状化のみが生じる 700℃以上の温
度域においてセメンタイトを十分に球状化させ、その後
第2段階として、黒鉛化が生じる 700℃未満の温度
域で1時間以上保持して適切な量だけ黒鉛化を図る方法
に想到した。このような2段階に亘る焼鈍処理によれば
、フェライト中に適量の黒鉛と球状化したセメンタイト
とが析出したミクロ組織となって、最良の加工性が得ら
れ、そして、この時に図5に示すような最良の加工性と
焼入れ性のバランスが得られることが判明したのである
【0017】次に、上述した焼鈍条件にあわせて本発明
の作用効果を実現する上で必要となる鋼の化学組成につ
いて、それが前記のように限定される理由について説明
する。 C:Cは、熱処理後の強度、耐摩耗性に応じて適量添加
されるが、このC量が0.1 wt%未満では十分な強
度、耐摩耗性が得られない。一方、 0.8wt%を超
えると熱間圧延が著しく困難になるため、下限を0.1
 wt%、上限を0.8 wt%とした。 Mn:Mnは、鋼中のSを固定して清浄な鋼とするため
に、また、焼入れ性を確保するために必要であるが、こ
のMn量が0.05wt%未満では前記2つの効果とも
不十分であるため下限を0.05%とした。一方で、こ
のMnは黒鉛化阻害元素でもあり、Si, Ni, C
uがいずれも添加されない場合には、このMn量が 1
.0wt%を超えると黒鉛化が進まなくなるため上限を
 1.0wt%とし、Si, Ni, Cuのいずれか
が添加される場合でも 3.0wt%を超えると黒鉛化
が進まなくなるため上限を 3.0wt%とした。 Si, Ni, Cu:これらの元素は、いずれも黒鉛
化促進元素であり、また、鋼を固溶強化する元素であっ
て、必要に応じて適量添加される。ただし、いずれの元
素もそれぞれ3wt%, 3wt%, 1wt%を超え
て添加しても、黒鉛化促進効果、固溶強化とも飽和する
ため、これを上限とした。 B:Bは、BNとして析出し、黒鉛の析出サイトとして
働き、黒鉛化を促進するとともに黒鉛粒を細かくする効
果がある。その効果はB量が0.0003wt%未満で
は生ぜず、0.010 wt%を超えても飽和するため
、下限を0.0003wt%、上限を0.010 wt
%とした。 Al:AlはAlN、またAl2O3 として析出し、
黒鉛の析出サイトとして働き、黒鉛化を促進するととも
に黒鉛粒を細かくする効果がある。また、Fe中に固溶
して黒鉛化を促進する効果がある。それらの効果は、A
l量が0.003 wt%未満では生ぜず、1.0 w
t%を超えても飽和するため、下限を0.003 wt
%、上限を1.0 wt%とした。
【0018】さて、本発明においては、上述したように
、Cの一部を黒鉛化することにより、球状化セメンタイ
ト単独の状態よりも加工硬化が小さくなって加工性を向
上させることができるが、一方で、黒鉛はボイドのよう
に働くため、図4に示したように、セメンタイトを球状
化したままの状態から黒鉛化を進めていくと、加工性は
黒鉛化率が1%以上になると向上するが、さらに黒鉛化
が進むと低下し始め、黒鉛化率が80%を超えると球状
化セメンタイト単独の状態より加工性が低下する。よっ
て、好適な黒鉛量の範囲を加工性向上に効果の現れる1
%以上から80%以下に定めた。
【0019】次に、本発明において、上述したミクロ組
織を得るために必要となる焼鈍処理について説明する。 なお、この焼鈍処理の意義については既に説明したが、
図2から明らかなように、セメンタイトの球状化と黒鉛
化が同時に生じるような温度域(700℃未満) では
、加工性が良好となる添加C量中の黒鉛量:1〜80w
t%では、セメンタイトの球状化は十分でない。逆にセ
メンタイトの球状化が十分な場合には黒鉛量が多くなり
過ぎる。そこで、初めに黒鉛化させずにセメンタイトを
球状化させる必要があるが、そのためには 700℃以
上で焼鈍する必要がある。従って、第1段階での焼鈍温
度は 700℃が下限となる。ただし、焼鈍温度が 9
00℃を超えると、オーステナイト化を開始してセメン
タイトの球状化を生じなくなるため、この温度の上限は
 900℃とした。しかし、この温度範囲であっても、
焼鈍時間が1分未満ではセメンタイトの球状化が十分に
進まないため、1分以上の焼鈍を行うことを特徴とする
が必要である。次に、第2段階の処理については、 7
00℃未満で適切な時間保持して適量の黒鉛を析出させ
る必要がある。ただし、焼鈍温度が 500℃未満では
黒鉛化するに必要な時間が長くなり過ぎるので、この温
度の下限は 500℃とした。なお、この焼鈍は、一定
温度に保持する必要はなく、それぞれの温度範囲に所定
の時間以上滞留していれば良い。
【0020】以上説明したように本発明の製造方法は、
上述した成分組成の鋼を、転炉または電気炉などにて溶
製後、 600〜1100℃で10%以上の圧延を行っ
た後、 700℃未満まで冷却した後に前述した条件の
焼鈍を行うことにより、フェライト中に添加C量の1〜
80%が黒鉛として、残りが球状化セメンタイトとして
それぞれ析出したミクロ組織を得ることができる。この
ようなミクロ組織を有する鋼は、同じC量の鋼の球状化
処理材と比べると、軟質で、加工性特に切欠き引張り特
性等に優れ、かつ熱処理性も同程度以上に行うことがで
きるのはもちろん、絞り、張り出し等の加工性などにも
優れた特性を示すものである。さらに、析出した黒鉛の
チップブレーク作用による快削性、黒鉛とフェライトの
弾性係数の差による制振性等にも優れていることが判っ
た。
【0021】
【実施例】実施例1 この実施例は、表2に示すような化学成分の鋼を溶製後
、 920℃で50%の圧延を行った後、種々の焼鈍を
行ったその結果を、表2に示す供試材について、黒鉛化
率を調査し切欠き引張り試験及び焼入れ試験を行った。 なお、この試験の条件は次のとおりの条件で行った。 (1) 黒鉛化率は、バフ研磨により鏡面に仕上げた供
試材を光学顕微鏡にて観察、画像解析装置により求めた
。 (2) セメンタイト球状化の有無は、バフ研磨により
鏡面に仕上げた供試材を3%ナイタール液で腐食後、光
学顕微鏡にて 400倍で観察し、JIS G3539
にある球状化組織の写真と比べ、No.2以下の場合を
球状化有りと判定したもの。 (3) 切欠き引張り試験は、板厚 2.9mmの供試
材から圧延方向に垂直な方向のJIS5号試験片を採取
、その平行部の中心位置の両側に1mm深さのVノッチ
を機械加工して試験片とし、JIS の金属材料引張り
試験方法に準拠して試験を行い伸びElを測定した。 (4) 焼入れ硬度は、供試材を 900℃で1sec
 保持した後、水焼入れを行った後測定した。
【0022】実施例2 表2に示す本発明範囲内の化学成分を有する供試材(N
o.2)を、転炉にて溶製して920 ℃で50%の圧
延を行い鋼材を得た。その後、比較法である図1及び本
発明法である図3に示すような条件の焼鈍を行い、それ
ぞれの場合での切欠き伸びと焼入れ硬度の関係について
調査した。その結果を図5に示す。なお、図中黒丸印は
比較材、白丸印は発明材である。本発明範囲内の焼鈍条
件で、この特許出願の請求項に記載した範囲内のミクロ
組織である○が優れた加工性と焼入れ性のバランスを有
していることが判る。
【0023】実施例3 表1に示す本発明の範囲内の化学成分を有する供試材(
No.1〜13)と、比較材(No.14,15)を転
炉にて溶製し、通常の薄板の連続圧延を行った。その後
、図6のA〜Dに示す本発明範囲内の条件で焼鈍を行っ
た時の、黒鉛量と切欠き伸びおよび焼入れ硬度について
調査した結果を表3に示す。また、加工性を比較するた
めに、各供試材を 720℃で20時間焼鈍し、セメン
タイトを球状化した時の切欠き伸びを併せて示す。この
処理では、いずれの供試材も黒鉛を生じていない。本発
明範囲内の化学成分を有する供試材(No.1〜13)
 は、いずれもセメンタイトが球状化しているとともに
適切な黒鉛量が得られており、球状化処理材以上の加工
性と良好な焼入れ硬度が得られる。これに対し、Mn量
が本発明範囲外の比較材(No.14,15)は黒鉛化
を生じないため良好な加工性が得られない。
【0024】
【0025】
【0026】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、化学成分
および焼鈍方法を適切に維持することによって、ミクロ
組織をフェライトと球状化セメンタイトと適切な量の微
細な黒鉛にすることが可能になるため、従来の球状化焼
鈍材および黒鉛化材では到達し得なかった高い加工性と
十分な焼入れ性を併せ有する鋼板が提供できるようにな
った。また、本発明鋼は、鋼中黒鉛のチップブレーク作
用による快削性、黒鉛とフェライトの弾性係数の差によ
る制振性および黒鉛の潤滑効果による良好な摺動摩擦性
等を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、従来の単純な摺動方法を示す模式図(
従来の単純な摺動方法でのミクロ組織と切欠き伸びを調
査するための実験条件を示す)である。
【図2】図2は、焼鈍温度のミクロ組織と切欠き伸びに
及ぼす影響を示す図である。
【図3】図3は、本発明に含まれる焼鈍方法を示す模式
図である。
【図4】図4は、黒鉛化率の切欠き伸びに及ぼす影響を
示す図である。
【図5】図5は、本発明材と従来材の加工性と焼入れ性
のバランスを比較する図である。
【図6】図6のA,B,C,Dは、本発明に含まれる他
の焼鈍方法を示す図である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】  C:0.1 〜0.8 wt%、Mn
    :0.05〜1.0 wt%を含み、かつB:0.00
    03〜0.010 wt%及びAl:0.003 〜1
    .0 wt%のいずれか少なくとも1種を含み、残部F
    e及び不可避的不純物よりなり、Cの1〜80wt%が
    黒鉛の形態で析出しており、一方その残りのCが球状化
    セメンタイトとして析出した組織を有する加工性と焼入
    れ性に優れた鋼材。
  2. 【請求項2】  C:0.1 〜0.8 wt%、Mn
    :0.05〜3.0 wt%を含み、B:0.0003
    〜0.010 wt%及びAl:0.003 〜1.0
     wt%のいずれか少なくとも1種を含み、かつSi:
    3wt%以下、Ni:3wt%以下及びCu:1wt%
    以下のうちから選ばれるいずれか1種以上を含み、残部
    Fe及び不可避的不純物よりなり、Cの1〜80wt%
    が黒鉛の形態で析出しており、一方その残りのCが球状
    化セメンタイトとして析出した組織を有する加工性と焼
    入れ性に優れた鋼材。
  3. 【請求項3】  C:0.1 〜0.8 wt%、Mn
    :0.05〜1.0 wt%を含み、かつB:0.00
    03〜0.010 wt%及びAl:0.003 〜1
    .0 wt%のいずれか少なくとも1種を含み、残部F
    e及び不可避的不純物よりなる鋼を、 700〜900
     ℃の温度域で1分以上加熱保持した後、 500〜7
    00℃未満の温度域で1時間以上保持する焼鈍を行うこ
    とにより、Cの1〜80wt%を黒鉛の形態で析出させ
    るとともに、その残りのCを球状化セメンタイトとして
    析出させることを特徴とする加工性と焼入れ性に優れた
    鋼材の製造方法。
  4. 【請求項4】  C:0.1 〜0.8 wt%、Mn
    :0.05〜3.0 wt%を含み、B:0.0003
    〜0.010 wt%及びAl:0.003 〜1.0
     wt%のいずれか少なくとも1種を含み、かつSi:
    3wt%以下、Ni:3wt%以下及びCu:1wt%
    以下のうちから選ばれるいずれか1種以上を含み、残部
    Fe及び不可避的不純物よりなる鋼を、 700〜90
    0 ℃の温度域で1分以上加熱保持した後、 500〜
    700 ℃未満の温度域で1時間以上保持する焼鈍を行
    うことにより、Cの1〜80wt%を黒鉛の形態で析出
    させるとともに、その残りのCを球状化セメンタイトと
    して析出させることを特徴とする加工性と焼入れ性に優
    れた鋼材の製造方法。
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