JPH043070Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案はコンクリート建造物のコンクリート打
設後における壁面などに発生した微細なクラツク
に薬液を合理的に注入することができる薬液注入
装置に関するものである。

一般にコンクリート建造物は、コンクリート打
設後、コンクリートの引張り強度が低く、また収
縮によるクラツクの発生が避けられないものであ
るために、建築物の屋上や壁面、トンネルなどの
内壁面等において、建設後クラツクが生じて浸水
或いは漏水が起り、構造物の機能が低下し、また
表面の中性化が進むにつれて埋設した鉄筋や鉄骨
の発銹膨張が生じて構造物の耐久性が縮まる傾向
を示す。

そこで斯かる現象を防止するため、従来見過さ
れていた詳細なクラツクの発生部分を薬液注入し
て補強することにより、コンクリート構造物の機
能低下を予防する対策が注目されている。

そこで本考案はコンクリート構造物の壁面部に
発生した微細クラツクの補修対策について、壁面
に穿設したりするような加工を施すことなしに、
即ちコンクリート打設面を傷めることなく発生ク
ラツク内に少量づつ薬液を注入して深部まで薬液
充填し、確実な補強ができる工法を得たのであ
る。しかし乍ら、何分にも微細クラツクではその
幅が狭いために一挙に多量の薬液を注入できず、
内部に残留する空気を追い出して薬液が流入し得
る状態で作業を進めねばならないから、作業時間
が長くなり、その上作業の途中で中断して、改め
て先の注入部に補充するようなことはできない
（時間の経過によつて薬液が凝結するから継ぎ目
が生じて一体化しなくなる）ので、作業を中断す
ることが許されず、その結果工費が嵩むのみなら
ず能率の向上を計ることも困難である。

本考案は斯かる問題点を解決して、微細なクラ
ツクに対して所要の条件で注入薬液を吐出量を減
じて高い圧力で自動的に注入することができる壁
面装着型の薬液注入装置を提供することにある。

斯かる目的を達成するために、本考案は対象と
なるコンクリート壁面に対して接着する取付け座
金と、この取付け座金に着脱可能に螺着する接手
金具と、この接手金具の中間部に装着されるケー
ス取付け片と、前記接手金具に先端部を接続され
て連結する注入管付きキヤツプに開口首部を螺合
して軸線方向に伸縮できる薬液カプセルと、この
薬液カプセルの底端に推力を付勢するコイルバネ
と、前記薬液カプセル及びコイルバネを収容して
先端を前記ケース取付け片に着脱可能に取付ける
と共に、後端には前記コイルバネ端支持部片を装
着して薬液カプセルに対する加圧反力を受け止め
るようにしたケースとで、自動薬液注入装置を構
成したのである。

以下本考案装置を一実施例図について詳述すれ
ば第１図乃至第４図に示す通りである。対象とな
るコンクリート壁面Ａのクラツク上に接着剤にて
張着する取付け座金１と、該取付け座金１の中央
に着脱可能に螺着する接手金具２と、この接手金
具２に対して取付ける薬液カプセル１０と、該薬
液カプセル１０内充填の薬液に対し注入押出しの
ための加圧力を加えるコイルバネ１５と、前記薬
液カプセル１０及びコイルバネ１５を収容するケ
ース２０及びその取付け片２１とコイルバネ端支
持部片２２とらなる。

而して取付け座金１としては装置全体を支持す
るに対応できる接着面積を有するものであつて、
中央部に接手金具２の螺着用ねじ孔１′が穿設し
てあり、かつこのねじ孔１′部は他の部分より厚
くするか、或いは図示のように膨張させて接手金
具２装着時の安定性を所有せしめ得るようにして
ある。

接手金具２は本体３基部外周に取付け座金締着
用のねじ部３′を設け、中間部には着脱用のスパ
ナ掛りを付した鍔部３ａを形成し、先端部外周に
は袋ナツト４取付けねじ部３″を設け、基部内中
心には注入液溜め孔５を穿設して、先端部中央に
設けた細いパイプ６の内部と連通せしめ、該細い
パイプ６の先端は金具本体の先端よりもやや長く
し、該金具本体３先端部の細いパイプ６周囲は環
状凹所７を形成して、端面７′が内側に曲面を形
成するようになつており、前記袋ナツト４によつ
て、半球面を形成した頭部８′を有する接続管８
が、その頭部８′を前記端面７′に当接して接続シ
ールするようになつている。

薬液カプセル１０は合成樹脂製で容器本体１１
が適宜容積（特定されるものではないが、一般に
30〜80c.c.程度である）で、軸線方向に伸縮自在な
ようにいわゆるジヤバラ形になつており、首部１
１′には細長い注入管１２を備えたキヤツプ１
２′が被嵌螺合するようにしてあり、このキヤツ
プ１２′の注入管１２先端部は前記接手金具２の
接続管８に嵌挿できる外径で、かつ細いパイプ６
に密接被嵌する内径となされている。従つて組立
た状態では第１図に示すような嵌め合い構造で気
密に連結されることになる。

斯かる薬液カプセル１０に加圧推力を付加する
ためのコイルバネ１５は、その前端に推力付加用
円板１６が固着してあり、後端には座板１６（必
要に応じて省略できる）が取付けてある。そして
前記した薬液カプセル１０とコイルバネ１５とを
内蔵して支持するためのケース２０は、円筒形で
その前端は前記接手金具２の中間部に中央孔２
１′を被嵌定着したケース取付け片２１に螺合し
て固定できるようにし、後端には外周に刻設した
ねじ部に被嵌螺合するコイルバネ端支持部片２２
を取付けたものになつている。なお、このケース
２０の全長は前記薬液カプセル１０の全長とこれ
に推力を加えるコイルバネ１５を収容できる長さ
との和よりもやや長い寸法になつている。

本考案はこのように構成されているのでその使
用に際しては、先づ取付け座金１のみを第２図に
示すように発生クラツクＣの表面所要個所に開口
部を位置せしめてエポキシ樹脂のような接着剤に
て接着し、しかる後該座金１の中央ねじ孔１′部
に、第３図で示されるように、ケース取付け片２
１が中間部に取付けられて、かつ薬液カプセル１
０のキヤツプ１２′注入管１２が接続管８を介し
て後部に連結された接手金具２を、そのねじ部
３′を螺合して固着させる。しかる後薬液カプセ
ル１０本体１１内に作業現場で混合調製した注入
薬液、たとえば変性エポキシ樹脂と硬化剤として
の変性ポリアミドアミンとを所要の混合比で混じ
たものを入れて、この薬液カプセル首部１１′を
前記した接手金具２連結済みのキヤツプ１２′に
螺合し、薬液カプセル１０を接手金具２に対して
漏液のない状態で固定装着する。その後直ちにケ
ース２０を薬液カプセル１０が収容されるよう被
嵌して、該ケース２０の先端を先に壁面Ａに固着
してある接手金具２付設のケース取付け片２１に
螺合する。

このようにして薬液注入の準備が整えば、コイ
ルバネ１５の推力付加用円板１６を薬液カプセル
１０の底面に当接するように挿入して、該コイル
バネ１５に圧縮力を付加しながらケース２２の後
端にコイルバネ端支持部片２２を螺合定着すれ
ば、コイルバネ１５が圧縮した状態でケース２０
内に収容され、直ちにこのコイルバネ１５の反発
力がジヤバラ形の胴部になつている薬液カプセル
１０に円板１６を介して作用し、収容されている
薬液はキヤツプ１２′の注入管１２を経て細いパ
イプ６内で吐出量を絞られて接手金具２内の液溜
め孔５に先づ送られ、バネ１５力により薬液カプ
セル１０の底面全体に付加される押圧力によつて
高圧力に高められて取付け壁面ＡのクラツクＣ内
に薬液が注入されることになる。そしてクラツク
Ｃ内に薬液の注入が行われている間、薬液カプセ
ル１０及び加圧用コイルバネ１５等はケース２０
とその取付け片２１を介して接手金具２に支持さ
れるので、他の支持物を要することなしに安定し
た状態で継続してクラツクへの薬液注入が自動的
に行えるのである。なおこの薬液注入作業時には
注入装置取付け部の前後又は左右のクラツク表面
はシール剤により覆つて漏液がないようにしてお
くことは作業上必要なことであり、斯くすること
により本考案装置による自動注入作用が有効に働
くことになる。

而して、このような状態で薬液カプセル内に充
填しておいた薬液は、ケース２０内でコイルバネ
１５力によつて細く絞られた注入管１２を経て接
手金具２内からクラツクＣに圧入されることにな
るから、注入速度が遅いときには予め薬液の凝結
時間が早くならないように調節しておくことで装
着後人手を要することなしに自動注入することが
でき、省力合理化を図ることが可能になつたので
ある。

更に、本考案装置は上記したようにコンクリー
ト壁面に接着した取付け座金に順次各部品を取付
けて最終的に自己保持して自動薬液注入ができる
ので、その取付け方向は如何なる方向であつても
使用できることになり、注入開始時に周囲に薬液
の漏出等がなしに装着操作ができる利点を有する
のである。従つて、ケース２０を透明な材料、た
とえばアクリル樹脂や透明なポリカーボネート樹
脂などで作成したものを用いるようにすれば、外
部から薬液カプセル１０の収縮状態にて注入量を
知ることができ、もし注入量が不足であると判断
すれば、ケース２０後端のコイルバネ端支持部片
２２を外し、コイルバネ１５を取り出した後、ケ
ース２０を取付け片２１から外すことにより薬液
カプセル１０が露出するので、必要に応じ注入管
１２付きキヤツプ１２′から薬液カプセル１０を
取り外して、再びその薬液カプセル１０内に薬液
を充填して前記要領で再装着し、補充注入するこ
とができ、作業状況を見廻るようにするだけで目
的を達成することができるのである。

なお本考案趣旨によれば、薬液カプセルとそれ
に注入力を付加するためのコイルバネとを取付け
支持するケースの取付け機構についてはねじによ
る連結のほかに、鉤状の回動係合手段を採用する
ことができる。また、コイルバネ端支持部片の着
脱に際しての作業を容易にするため、そのコイル
バネ端支持部片の中央に孔を穿設しておき、この
孔に棒を挿入して座板１６′を介してコイルバネ
を強く押し、コイルバネとコイルバネ端支持部片
との接触を断つてからケースに対するこのコイル
バネ端支持部片の着脱を行えば推力が作用しない
ので速やかに行える。

斯くの如くして薬液注入の操作を行つて終了し
た後は、薬液カプセルを含めて薬液と接した各部
はその凝結によつてそのままでは再使用できない
ので、ケースとコイルバネとコイルバネ端支持部
片及びケース取付け片を取り外して再使用し、そ
の他の部品は壁面から適当な手段で除去した後廃
棄する。

叙上の如く本考案装置は伸縮自在にした薬液カ
プセルを、その吐出部を絞った状態で接手金具を
介して予め目的コンクリート面に接着する座金に
取付けてコイルバネによつて推力がカプセルに付
勢されるようにし、自己保持されるケースで保護
収納できる至極簡単な構造でもつて、自動注入で
き、どうしても注入に長い時間を必要とする微細
クラツクへの薬液注入が合理的に行えるようにし
てした、その実用的効果は著しく大なるものであ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案薬液注入装置の一実施例縦断面
図、第２図乃至第４図は取付け態様を示す図であ
る。 １……取付け座金、２……接手金具、５……液
溜め孔、６細いパイプ、８……接続管、１０……
薬液カプセル、１１……容器本体、１１′……容
器首部、１２……注入管、１２′……注入管付き
キヤツプ、１５……コイルバネ、１６……推力付
加用円板、１６′……座板、２０……ケース、２
１……ケース取付け片、２２……コイルバネ端支
持部片、Ａ……建造物の壁面、Ｃ……クラツク。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 対象となるコンクリート壁面に対して接着する
   取付け座金と、この取付け座金に着脱可能に螺着
   する接手金具と、この接手金具の中間部に装着さ
   れるケース取付け片と、前記接手金具に先端部を
   接続されて連結する注入管付きキヤツプに開口首
   部を螺合して軸線方向に伸縮できる薬液カプセル
   と、この薬液カプセルの底端に推力を付勢するコ
   イルバネと、前記薬液カプセル及びコイルバネを
   収容して先端を前記ケース取付け片に着脱可能に
   取付けると共に、後端には前記コイルバネ端支持
   部片を装着して薬液カプセルに対する加圧反力を
   受け止めるようにしたケースとを、有することを
   特徴とするコンクリート建造物の微細クラツクへ
   の自動薬液注入装置。