JPH042722Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ この考案は、円形板状の丸チツプが装着された
多用途に使用可能なスローアウエイ式バイトに関
するものである。

［従来の技術］ 近年、旋盤による倣い切削加工等に用いられる
バイトとして、角柱状のバイト本体の先端部に超
硬合金等からなる小片板状のスローアウエイチツ
プが着脱自在に装着されたスローアウエイ式バイ
トが多用されている。

ところで、一般にこの種のスローアウエイ式の
切削工具に装着される上記スローアウエイチツプ
（以下、チツプと略称する。）の形状としては、第
１１図に示す三角形状のもの、第１２図に示す四
角形状のものあるいは第１３図に示す円形状のも
の等が知られている。このうち、特に第１３図に
示す円形状の丸チツプ１にあつては、上述したス
ローアウエイ式バイトに用いた場合に、第１４図
に示すように、他のものに比べて切削に関与する
切刃２の全長が長いため高い仕上げ面精度を得る
ことができ、さらにその切刃２の強度が高いうえ
しかも一回転当たりの送り量Ｌに対する切屑厚さ
Ｔが、T₁で示す他のものの1/2〜1/3程度と薄い
ため、結局高送り切削加工を行うことができると
いう利点がある。

このため、従来よりこのようなスローアウエイ
式バイトにおいては、円形板状の丸チツプが用い
られている。

第１５図および第１６図は、上記従来のスロー
アウエイ式バイトの一例を示すもので、角柱状の
バイト本体３の先端部上面に、切刃逃げ角が０で
あるネガテイブの丸チツプ４が、バイト本体３の
先端において最大となる−6°程度の負のすくい角
α₁を付されて装着されたものである。

また、第１７図および第１８図は、従来のスロ
ーアウエイ式バイトの他の例を示すもので、バイ
ト本体５に、切刃逃げ角が7°〜11°程度の丸チツ
プ６が、バイト本体５の先端において0°〜5°程度
の正のすくい角α₂を付されて装着されたものであ
る。

［考案が解決しようとする問題点］ しかしながら、上記従来のスローアウエイ式バ
イトにおいては、いずれもバイト本体３，５の先
端に位置する丸チツプ４，６の切刃部分７，８で
通常の倣い切削加工を行う場合には上述したよう
な利点を得ることができるものの、丸チツプ４，
６の切刃逃げ角が各々11°以下であるため、上記
バイト本体３，５に正のすくい角を付して装着す
るとバイト本体３，５の先端側に位置する切刃部
分７，８か側面側に位置する切刃部分９，１０か
のいずれか一方において十分な実効逃げ角が得ら
れなくなつてしまうため、よつて倣い加工か端面
加工かのいずれか一方の加工を行うことができな
いという欠点があつた。

加えて、いずれもすくい角が負かまたは正方向
に小さいために切削抵抗が大きく、よつてこれら
をチタンやインコネル等の難削材の切削加工に使
用すると切削熱が刃先付近に集中してすくい面に
損傷を与えてしまい、また高硬度材の切削加工に
使用すると切刃自体が欠損してしまう等の問題が
あつた。

この考案は、このような問題点を解決すること
を目的とするものである。

［問題点を解決するための手段］ この考案のスローアウエイ式バイトは、丸チツ
プの切刃逃げ角θを20°〜35°に設定するととも
に、上記丸チツプをバイト本体にその取付基準面
に対して45°をなす方向においてすくい角が最大
であつて、しかもその角度が（θ−5°）〜（θ−
7°）となるように装着したものである。

［作用］ 以上の構成からなるスローアウエイ式バイトに
あつては、丸チツプのバイト本体の先端から取付
基準面の反対側に位置する側面までに至る切刃の
全長において十分な実効逃げ角を得ることができ
るため、この範囲の切刃部分を用いた多様な切削
加工を行うことができる。

また、そのすくい角が正方向に大きいために切
削抵抗が小さく、この結果チタンやインコネル等
の難削材や高硬度材の切削加工にも使用すること
ができる。

［実施例］ 第１図〜第４図は、この考案のスローアウエイ
式バイトの一例を示すもので、図中符号１１がバ
イト本体である。

このバイト本体１１は角柱状もので、その一側
面はこのスローアウエイ式バイトを工具台に固定
するための平坦な取付基準面１２とされている。
そして、このバイト本体１１の先端部上面１３に
丸チツプ１４がクランプ装置（図示せず）により
着脱自在に装着されている。

この丸チツプ１４は、第３図および第４図に示
すように、円形板状のもので、そのすくい面とさ
れる上面１５の周縁部に切刃１６が全周に亙つて
形成されている。また、逃げ面とされる上記切刃
１６から下面１７に至る側面１８は、上面１５か
ら下面１７に向けてθ＝20°〜35°の範囲内の角度
で中央部側に傾斜する傾斜面によつて形成されて
いる。これにより、上記丸チツプ１４には20°〜
35°の範囲内の切刃逃げ角θが形成されている。

ここで、上記切刃逃げ角θを20°〜35°としたの
は、この切刃逃げ角θが20°に満たないと、十分
な実効逃げを確保するためには丸チツプ１４に大
きなすくい角を付すことができなくなつて不都合
であり、他方上記切刃逃げ角θが35°を超えると
切刃強度が低下して高硬度材の切削に用いた場合
に切刃の欠損を招くおそれがあるからである。

そして、上記丸チツプ１４は、バイト本体１１
の取付基準面１２に対して45°をなす方向におい
て、そのすくい角αが最大であつて、しかもこの
角度αが（θ−5°）〜（θ−7°）の範囲内となる
ように、換言すれば5°〜7°の実効逃げ角を付され
た状態で装着されている。

以上の構成からなるこの例のスローアウエイ式
バイトにあつては、丸チツプ１４のバイト本体１
１の先端に位置する切刃部分２０から、取付基準
面１２の反対側の側面に位置する切刃部分２１ま
でに至る切刃１６の全長において、十分な実効逃
げ角を得ることができる。このため、上記切刃部
分２０を用いた倣い切削加工や上記切刃部分２１
を用いた端面加工等の多様な切削加工を行うこと
ができる。

また、上記切刃１６に沿うすくい角αが正方向
に大きいために切削抵抗の低減化を図ることがで
き、この結果チタンやインコネル等の難削材や高
硬度材の切削加工にも使用することができる。

［他の実施例］ 第５図〜第８図は、この発明のスローアウエイ
式バイトの第二実施例を示すもので、この例のス
ローアウエイ式バイトにおいても、バイト本体２
５の先端部上面２６に、切刃逃げ角θ₁が20°〜35°
の範囲内とされた丸チツプ２７が、上記バイト本
体２５の取付基準面２８に対して45°をなす方向
において最大で、かつその角度が（θ₁−5°）〜
（θ₁−7°）であるすくい角を付されて着脱自在に
装着されている。

また、この例のスローアウエイ式バイトにおい
ては、バイト本体２５の先端部上面２６に傾斜面
３０が形成されている。この傾斜面３０は、第８
図に示すように、丸チツプ２７からＡ＝０〜５mm
離れた位置からバイト本体２５の取付基準面２８
と直交する方向に向けて、上記丸チツプ２７のす
くい面に対してβ＝110°〜140°の傾斜角度で延び
るように形成されている。

以上の構成からなるスローアウエイ式バイトに
あつては、第一実施例に示したものと同様の作用
効果を得ることができるほか、さらに第７図およ
び第８図に示すように、特に切断され難い傾向に
あるステンレスやチタン等の難削材の切屑３１を
上記傾斜面３０に沿つて無理なくカールさせて円
滑に排出することができるため、優れた切屑排出
性能をも得ることができる。

第９図および第１０図は、この発明の第三実施
例を示すもので、この例のスローアウエイ式バイ
トにおいては、第二実施例に示したものにおける
上記傾斜面３０に、超硬合金等からなる耐摩耗チ
ツプ３５がろう付けにより固定されている。

したがつて、この例のスローアウエイ式バイト
にあつては、上記第二実施例に示したものにおい
て得られる作用効果に加えて、上記耐摩耗チツプ
３５により切屑３１によつて擦られる傾斜面３０
の当該部分の耐摩耗性を一層向上させることがで
きる。

なお、上記第三実施例においては、耐摩耗チツ
プ３５に代えて傾斜面３０の当該部分に超硬皮膜
を形成したり、耐摩耗性材料によるコーテイング
を施したり等しても同様の作用効果を得ることが
できる。

［考案の効果］ 以上説明したようにこの考案のスローアウエイ
式バイトは、丸チツプの切刃逃げ角θを20°〜35°
に設定するとともに、上記丸チツプをバイト本体
にその取付基準面に対して45°をなす方向におい
てすくい角が最大であつて、しかもその角度が
（θ−5°）〜（θ−7°）となるように装着したも
のである。

したがつて、このスローアウエイ式バイトによ
れば、丸チツプのバイト本体先端側を用いた倣い
切削加工やバイト本体の取付基準面の反対側に位
置する切刃部分を用いた端面加工等の各種の加工
を行うことができる。さらに、上記範囲内におけ
る丸チツプの切刃の全長において正方向に大きな
すくい角を得ることができ、この結果切削抵抗の
低減化を図ることができるため、難削材や高硬度
材等の切削加工も行うことができる。

【図面の簡単な説明】

第１図〜第４図はこの考案のスローアウエイ式
バイトの第一実施例を示すもので、第１図は正面
図、第２図は第１図のＸ矢視図、第３図は丸チツ
プの正面図、第４図は同側面図、第５図〜第８図
はこの考案の第二実施例を示すもので、第５図は
正面図、第６図は第５図の−線視図、第７図
は切削状態を示す先端部の正面図、第８図は第７
図の−線視断面図、第９図および第１０図は
この考案の第三実施例を示すもので、第９図は正
面図、第１０図は第９図のＸ−Ｘ線視図、第１１
図〜第１３図はそれぞれ各種のチツプ形状を示す
概略図、第１４図は各種形状のチツプによる切削
状態を比較するための概略図、第１５図〜第１８
図はそれぞれ従来のスローアウエイ式バイトを示
すもので、第１５図および第１７図はそれぞれ正
面図、第１６図およびは第１８図はそれぞれ側面
図である。 １１，２５……バイト本体、１２，２８……取
付基準面、１３，２６……先端部上面、１４，２
７……丸チツプ、１６……切刃、３０……傾斜
面、３１……切屑、３５……耐摩耗チツプ、α…
…すくい角、β……傾斜角度、θ，θ₁……切刃逃
げ角。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 側面に平面状の取付基準面が形成されたバイト
   本体の先端部上面に、円形板状をなし上面の稜線
   部に切刃が形成された丸チツプが装着されてなる
   スローアウエイ式バイトにおいて、上記丸チツプ
   の切刃逃げ角θを20°〜35°に設定するとともに、
   この丸チツプを上記バイト本体に上記取付基準面
   に対して45°をなす方向においてすくい角が最大
   であつて、しかもその角度が（θ−5°）〜（θ−
   7°）となるように装着したことを特徴とするスロ
   ーアウエイ式バイト。