JPH0424126Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案は、エンジンの振動低減装置に関する
ものである。

〔従来の技術〕

車両用エンジンにおいては、エンジンの爆発圧
力による加振力、あるいは各種駆動部分、例えば
クランク機構の慣性力によつて回転バランスに不
均衡が生じ、これが原因となつてシリンダブロツ
クのスカート部に左右方向の振動が生じて騒音が
発生し、又この左右方向の振動によつてシリンダ
ブロツク下側のオイルパンが共振して異常な騒音
（うなり）が発生することが知られている。

そこで従来の車両用エンジンでは、例えば実開
昭55−94439号公報に示されるように、シリンダ
ブロツク下端部とオイルパンとの間に補強部材を
介設し、該補強部材によつてシリンダブロツクス
カート部の剛性アツプを図り、シリンダブロツク
スカート部の振動を抑制することが行なわれてい
る。

〔考案が解決しようとする問題点〕

しかるに上記従来公報記載の装置では、補強部
材として単純な方形状の剛性板を用い、しかもこ
の剛性板にクランクシヤフトのバランスウエイト
回転軌跡に対応して複数のオイル流動孔を形成し
ているので、補強部材自体の剛性があまり高くな
く、シリンダブロツクスカート部の十分な剛性を
確保できず、所望の制振効果を得ることができな
いという問題があつた。

このような問題を解決する方法としては、剛性
板を厚肉に形成して補強部材の剛性を高めること
が考えらえるが、この方法では、エンジンの重量
が増大して軽量化の要請に反するばかりでなく、
エンジン全高が高くなつて小型化の要請に反する
こととなる。

これに対し、本件出願人は、エンジン重量が増
大したり、エンジン全高が高くなつたりすること
なく、十分な制振効果を得るようにしたエンジン
の振動低減装置を既に開発し、出願している（実
願昭60−104400号）。これはシリンダブロツク下
端部とオイルパンとの間に補強部材を介設してな
るエンジンにおいて、補強部材をオイルパン上方
全面を塞ぐ底壁部と該底壁部に設けられた縦壁部
とで構成し、底壁部についてはクランクシヤフト
のバランスウエイト回転軌跡を避けるようにオン
ルパン内に突出させ、かつシリンダブロツクの左
右スカート部に連結させ、一方縦壁部については
クランクシヤフトのメインベアリングキヤツプ部
の投影される底壁部の位置から上方に突出させ、
かつシリンダブロツク側壁下端部と締結される底
壁部の部分まで延設させ、縦壁部のリブ効果によ
つて補強部材の剛性、特に左右方向の拡縮に対す
る剛性を大幅に向上させるようにしたものであ
る。

また車両用エンジンにおいては、エンジン各部
を潤滑してシリンダブロツクから流下するオイル
をオイルパンに戻してやる必要があるが、上述の
振動低減装置においては、オイルパンの上方全面
を補強部材で塞閉していることから、この補強部
材にオイル落とし穴を形成してやる必要がある。

しかるにこの場合、補強部材に単にオイル落と
し穴を形成するようにすると、このオイル落とし
穴に起因して補強部材の剛性が低下してしまい、
本来の目的であるシリンダブロツクスカート部の
制振効果を確保できないという問題が懸念され
る。

〔問題点を解決するための手段〕

そこでこの考案は、シリンダブロツク下端部と
オイルパンとの間に補強部材を介設したエンジン
において、上記補強部材をオイルパン上方全面を
塞ぐ底壁部と該底壁部に設けられた断面略コ字状
の縦壁部とを用い、縦壁部と底壁部とにより閉塞
された空間部が形成されるよう構成し、縦壁部お
よび上記空間部における底壁部にオイル落とし穴
を形成するようにしたものである。

〔作用〕

この考案においては、補強部材を、底壁部と縦
壁部とを用い、縦壁部と底壁部とにより閉塞され
た空間部が形成されるよう構成したので、補強部
材の剛性が高く、また縦壁部および上記空間部に
おける底壁部にオイル落とし穴を形成したことか
ら、オイルが円滑にオイルパンに戻され、しかも
オイル落とし穴による補強部材の剛性低下がほと
んど生じず、さらにオイル落とし穴のシリンダブ
ロツク側が縦壁部により閉塞された空間部に位置
しているため、オイルパン内のオイルがシリンダ
ブロツク側に侵入することがない。

〔実施例〕

以下、本考案の実施例を図について説明する。

第１図ないし第３図は本考案の一実施例による
エンジンの振動低減装置を示す。図において、１
はエンジンで、該エンジン１のシリンダブロツク
２内にはその左右のスカート部３間にてクランク
シヤフト４が配設され、該クランクシヤフト４は
各気筒間に対応するメインジヤーナル５でメイン
ベアリングキヤツプ部６によりシリンダブロツク
２に回転自在に支承されている。

上記シリンダブロツク２の下側にはオイルパン
７が配設されている。このオイルパン７はその外
周縁にフランジ部８を有し、該フランジ部８はシ
リンダブロツク２下端外周縁のフランジ部９にボ
ルト１０によつて締付け固定され、又両フランジ
部８，９間にはシール部材１１，１２が介設され
ている。

また上記シリンダブロツク２下端部とオイルパ
ン７との間には補強部材１３が介設されている。
この補強部材１３はオイルパン７の上方全面を塞
ぐ底壁部１４と、該底壁部１４に固着して設けら
れた縦壁部１５とから成り、上記底壁部１４はそ
の外縁にフランジ部１８を有し、該フランジ部１
８は上記シール部材１１，１２間に介挿されてお
り、これにより上記底壁部１４は上記ボルト１０
によりシリンダブロツク２の下端部に連結されて
いる。また上記底壁部１４はクランクシヤフト４
の回転軌跡、即ちメインジヤーナル５を回転中心
とするバランスウエイトの回転軌跡を避けるよう
にオイルパン７内に突出して略逆三角形状に形成
されている。

一方、上記縦壁部１５はシリンダ軸上方から見
てメインベアリングキヤツプ部６が投影される上
記底壁部１４の各位置から上方に突出し、かつク
ランク軸と平行なシリンダブロツク２側壁下端部
と締結される上記底壁部１４の部分まで延設され
ている。この縦壁部１５は断面逆Ｕ字状を成し、
その下辺は底壁部１４の上面に溶接等によつて固
着されており、縦壁部１５と底壁部１４とで閉塞
された空間部が形成されている。

そして上記補強部材１３では縦壁部１５の垂直
辺部１５ａ下端及び縦壁部１５の垂直辺部間の底
壁部１４にオイル落とし穴１６，１７が形成され
ている。

次に作用効果を説明する。

本装置においては、補強部材１３を底壁部１４
と複数の縦壁部１５とによつて構成しており、補
強部材１３は縦壁部１５のリブ効果によつて剛
性、特に左右方向の拡縮に対する剛性が高く、そ
の結果エンジンの爆発圧力によに加振力、あるい
は各種駆動部分の慣性力によつて回転バランスに
不均衡が生じても、シリンダブロツク２のスカー
ト部３にはそれほど左右方向の振動が発生せず、
又この振動に伴うオイルパン７の共振も従来に比
して抑制されるものである。

また本装置では、補強部材１３の底壁部１４を
クランクシヤフト４の回転軌跡を避けるようにオ
イルパン７内に突出させているので、上記従来公
報記載の装置のようにクランクシヤフトの回転軌
跡を避ける位置にオイル落とし穴を設ける必要が
なく、又縦壁部１５を左右のスカート部３に向け
て延設しており、これらにより十分な剛性が確保
でき、その結果補強部材１３は全体として薄肉に
形成でき、重量アツプを招いたり、エンジン全高
が高くなつたりすることもない。

ところで上述のように、オイルを円滑にオイル
パン７に戻すために、補強部材１３にオイル落と
し穴を形成する必要があり、この場合単に補強部
材１３にオイル落とし穴を形成すると、補強部材
１３の剛性が低下し、上述の効果が期待できなく
なる。これに対し、本装置では、補強部材１３の
剛性の高い縦壁部１５にオイル落とし穴１６，１
７を形成しているので、補強部材１３の剛性はほ
とんど低下することもなく、上述の制振効果が保
証され、又シリンダブロツク２から流下してきた
オイルは補強部材１３からオイル落とし穴１６，
１７を通してオイルパン７内に円滑にまた、オイ
ル落とし穴１７は、縦壁部１５と底壁部１４とに
よつて形成された空間部に位置しているため、例
えば車両旋回時等において、オイルパン７内のオ
イル液面が一時的に補強部材１３の位置よりも高
くなつても、オイル落とし穴１７が縦壁部１５に
よつて囲まれているため、多量のオイルがシリン
ダブロツク２側に侵入して、クランクシヤフト４
にて攪拌されることがない。

なお上記実施例では、底壁部と縦壁部とを別体
として設けたが、例えば鋳造等によつて一体に形
成してもよい。

〔考案の効果〕

以上のように、本考案によれば、シリンダブロ
ツク下端部とオイルパンとの間に補強部材を介設
したエンジンにおいて、上記補強部材をオイルパ
ン上方全面を塞ぐ底壁部と該底壁部に設けられた
断面略コ字状の縦壁部とを用い、縦壁部と底壁部
とにより閉塞された空間部が形成されるよう構成
し、縦壁部および上記空間部における底壁部にオ
イル落とし穴を形成するようにしたので、シリン
ダブロツクのスカート部の振動を低減できるとと
もに、オイルを円滑にオイルパンに戻すことがで
き、またオイル落とし穴のシリンダブロツク側が
縦壁部により閉塞されているため、車両旋回時等
においてオイルパン内のオイルがシリンダブロツ
ク側に侵入することがないという効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例によるエンジンの振
動低減装置の全体構成図、第２図及び第３図は
各々上記装置における平面図及び断面側面図であ
る。 ２……シリンダブロツク、７……オイルパン、
１３……補強部材、１４……底壁部、１５……縦
壁部、１６，１７……オイル落とし穴。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 エンジンのシリンダブロツク下端部とオイルパ
   ンとの間に介設される補強部材を有するエジンに
   おいて、 上記補強部材は、上記オイルパン上方の全面を
   塞ぐ底壁部と、該底壁部に設けられた断面略コ字
   状の縦壁部とから成り、該縦壁部と底壁部とによ
   り閉塞された空間部を有し、 上記縦壁部は、クランクシヤフトの回転軌跡を
   避けるように上記オイルパン内に突出し、かつ上
   記シリンダブロツク下端部と連結され、 上記縦壁部は、シリンダ軸方向から見てメイン
   ベアリングキヤツプ部が投影される上記底壁部の
   位置から上方に突出し、かつクランク軸と平行な
   シリンダブロツク側壁下端部と締結される上記底
   壁部の部分まで延設され、 上記縦壁部および上記空間部における底壁部に
   は、上記底壁部の下方にオイルを落下させるオイ
   ル落とし穴が設けられていることを特徴とするエ
   ンジンの振動低減装置。