JPH04214475A - 改質合成樹脂製品の製造方法 - Google Patents

改質合成樹脂製品の製造方法

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JPH04214475A
JPH04214475A JP2016391A JP2016391A JPH04214475A JP H04214475 A JPH04214475 A JP H04214475A JP 2016391 A JP2016391 A JP 2016391A JP 2016391 A JP2016391 A JP 2016391A JP H04214475 A JPH04214475 A JP H04214475A
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gelatin
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soluble
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Shigetaka Kushino
櫛野 滋隆
Tetsuya Fujioka
徹也 藤岡
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Nitta Gelatin Inc
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Abstract

(57)【要約】本公報は電子出願前の出願データであるた
め要約のデータは記録されません。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、改質合成樹脂製品の
製造方法に関し、詳しくは、表面の風合いや吸放湿性等
の諸性質が改善された改質合成樹脂製品を製造する方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、合成皮革や合成繊維生地を製造す
る際に、その表面性状を改善するために、表面改質用の
合成樹脂フィルムを積層したり、表面改質用の合成樹脂
コーティングを施すことが行われている。これは、通常
の合成皮革や合成繊維生地は、天然の材料に比べて、吸
湿性や防水性あるいは表面の風合いに劣る等の欠点があ
り、これらの欠点を解消するために、合成皮革や合成繊
維または生地の表面のみを別の改質合成樹脂で覆ってお
くことが行われるのである。例えば、ナイロンやポリエ
ステル生地の透湿性を改善するために、これらの生地に
ポリウレタン樹脂で表面加工することが行われている。
【0003】しかし、このポリウレタン樹脂は、表面の
感触にべとつき感があることや、表面の光沢が強過ぎた
り、生地の風合いを損なったりするという問題を有して
いた。また、天然の皮革や生地に比べると、吸放湿性の
点でも劣るものであった。ここで、吸放湿性とは、単に
湿気を吸収保持する性質だけでなく、外部環境との湿度
差によっては、吸収した湿気を外部環境に容易に放出し
、フィルムやシート等の表裏面を湿気が通過し易いとい
う、いわゆる透湿性をも意味する性能である。
【0004】そこで、上記ポリウレタン樹脂の表面の風
合いを改善し、吸放湿性をより向上させるために、ポリ
ウレタン樹脂にゼラチンやコラーゲン繊維(粗コラーゲ
ンまたは牛革粉)の微粉末を添加することが提案されて
おり、例えば、特開昭63−99300号公報等に開示
されている。このような微粉末の添加により、ポリウレ
タン樹脂は、吸放湿性が良好でドライタッチ感があって
、結露抑制や高水蒸気透過性等をも備えた表面加工剤と
なり、前記ナイロン生地等の表面改質に有効であるとさ
れている。
【0005】また、合成樹脂に、膠、ゼラチン、コラー
ゲン、カゼイン、キトサン等を添加して吸放湿性を改善
する技術が、特開昭62−252459号公報に開示さ
れている等、合成樹脂に各種の蛋白質や多糖類等を添加
して吸湿性や放湿性あるいは表面の風合いを改善するこ
とが様々に試みられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記のよう
な従来の各種添加材による合成樹脂の改質方法では、い
まだ十分な性能を備えた改質合成樹脂製品が得られない
という問題があった。例えば、合成樹脂に皮革粉を添加
する方法は、吸放湿性の改善効果が低い。これは、天然
の皮革は、独特の組織構造によって優れた吸放湿性や風
合いを示すのであるが、皮革を細かく粉砕した皮革粉で
は上記のような組織構造は無くなるので、皮革粉自体に
はそれほど吸放湿性がなく、このような皮革粉を合成樹
脂に添加しても、吸放湿性の向上が認められないのであ
る。おなじことは、カゼイン、キトサン等の各種蛋白質
や多糖類の粉末を用いた場合にも言える。
【0007】また、合成樹脂にゼラチンを添加する方法
は、合成樹脂製品が高温高湿環境にさらされると、ゼラ
チンが溶けだしてしまうという問題がある。特に、合成
樹脂繊維や生地等に利用する場合、製造工程あるいは使
用中の洗浄あるいは洗濯に対する耐久性が要求されるが
、従来のゼラチンを含有させた合成樹脂では、十分な耐
久性がないため、製造工程中あるいは長期間使用してい
るうちに、前記吸放湿性が低下して無くなってしまうと
いう問題があった。このことは、ゼラチン以外の水溶性
蛋白質などを用いた場合にも同様である。
【0008】上記説明は、改質合成樹脂製品として、吸
湿性と放湿性の何れにも優れた製品を得ようとする場合
であるが、合成樹脂製品の用途として、ウインドブレー
カ、スキーウエア等のスポーツウエアやスポーツシュー
ズのように、吸湿性は必要でなくても透湿性が特に高い
ものを要求される場合がある。このような場合、従来の
改質合成樹脂製品では、透湿性が不十分であり、前記要
求に答えることができなかった。
【0009】なお、前記表面改質加工用のポリウレタン
樹脂以外にも、各種の合成樹脂を利用する際に、その目
的や要求性能に合わせて、吸放湿性や表面の風合い等を
改善することが要望されている。そこで、この発明の課
題は、前記ポリウレタン樹脂その他の合成樹脂から成形
製造される合成樹脂製品において、吸放湿性や表面の風
合い等が良好に改善された改質合成樹脂製品を製造する
ことのできる方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する、こ
の発明にかかる改質合成樹脂製品の製造方法は、合成樹
脂液を成形硬化させて合成樹脂製品を製造する方法にお
いて、合成樹脂液に水溶性蛋白質を含有させておき、合
成樹脂液が成形硬化させるまでの間もしくは成形硬化さ
れた後に、水溶性蛋白質を不溶化させることを特徴とす
る。
【0011】合成樹脂としては、各種の製品を製造する
ための材料として利用されている任意の合成樹脂が使用
できる。具体的には、前記ポリウレタンのほか、ポリス
チレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポ
リアクリレート、ポリエチレン、塩化ビニル等が挙げら
れる。これらの樹脂は、液状で供給され、この合成樹脂
液を所定の成形方法で成形して、各種の製品が製造され
る。
【0012】水溶性蛋白質としては、ゼラチン、卵白、
カゼインナトリウム、大豆等の植物性蛋白質等、水溶性
であるとともに、熱や紫外線などの物理的手段あるいは
不溶化処理剤と反応させる化学的手段等で、不溶化させ
ることができるものが用いられる。ゼラチンとしては、
アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチンその他の通常の
ゼラチンが使用できる。但し、後述する分解ゼラチンは
、不溶化しないので、分解ゼラチンのみでは、この発明
にかかる作用効果は発揮できない。したがって、この明
細書において、「ゼラチン」とは、分解ゼラチンを除い
た通常のゼラチンを指し、分解ゼラチンを表す場合には
「分解ゼラチン」と呼ぶ。
【0013】ゼラチンは、微粉末の状態で合成樹脂液に
含有させてもよいし、水溶液の状態で合成樹脂液に含有
させてもよい。粉末よりも水溶液のほうが、合成樹脂液
に均一に混合され、後述する水溶物除去処理により形成
される空孔も小さくなって均一に分布するようになる。 ゼラチン水溶液を合成樹脂液に加える場合には、水によ
るブロッキング等の問題を起こし難い合成樹脂材料や溶
媒を用いるのが好ましい。ゼラチン粉末としては、粒径
の小さなものほど合成樹脂液に均一に混合され、後述す
る不溶化処理も行い易く、水溶物除去処理を行った場合
に合成樹脂製品に形成される空孔の大きさも小さくなり
、合成樹脂成形品の表面状態も良好になる等の効果があ
る。具体的なゼラチン粉末の粒径としては、例えば、約
10〜50μm程度の範囲のものが好ましい。ゼラチン
として、着色されたものを用いれば、合成樹脂に対する
着色剤としての機能も果たせる。合成樹脂液に含有させ
るゼラチンの添加量は、改質合成樹成形品の用途や目的
あるいは要求性能によっても異なるが、一般に、約0.
1〜40重量%、好ましくは1〜30重量%の範囲で使
用される。
【0014】水溶性蛋白質として、卵白やカゼインナト
リウム等を用いる場合は、粉末状態で合成樹脂液に含有
させておくのが好ましい。粉末の粒径は、前記ゼラチン
の場合と同程度のものが好ましい。また、添加量も同様
の範囲でよい。卵白やカゼインナトリウム等の水溶性蛋
白質粉末とともに、不溶化処理剤となるクエン酸、酒石
酸、リンゴ酸などの有機酸粉末を、合成樹脂液に含有さ
せておくと、合成樹脂液を成形硬化させた後、水洗した
り水に浸漬したりして、水を作用させるだけで、前記有
機酸粉末が水に溶解して水溶性蛋白質粉末と反応し、水
溶性蛋白質を不溶化させることができる。
【0015】合成樹脂液には、上記水溶性蛋白質に加え
て、吸湿性や放湿性を改善させるための添加材として有
効な分解ゼラチンや親水性多糖類粉末、皮革粉、水溶性
蛋白質を加水分解して不溶化しないようにしたもの等を
含有させておいてもよい。また、複数種類の水溶性蛋白
質を併用することも勿論可能である。このうち、分解ゼ
ラチンは、通常のゼラチンを化学的あるいは物理的な処
理で分解したものであり、一般に冷水でも溶ける良好な
水溶性を有し、水溶性ゼラチンとも呼ばれている。分解
ゼラチンは、後述する不溶化処理を行っても不溶化しな
い特性がある。分解ゼラチンにも、ゼラチンと同様の吸
放湿作用があるとともに、分解ゼラチンは、後述する水
溶物除去処理において非常に溶けだし易く、改質合成樹
脂製品に微細な空孔を形成するのに有効である。すなわ
ち、分解ゼラチンは分子量が小さく容易に微粉砕できる
ので、合成樹脂液中に極めて均一に分散させることがで
き、改質合成樹脂製品の表面に凹凸が出来たり場所によ
る特性のバラツキが生じたりする問題が起こり難い。ま
た、水あるいは温水で処理するだけで、分解ゼラチンの
みを簡単に除去することができ、空孔の形成が容易にな
る。
【0016】親水性多糖類粉末としては、例えば、キト
サン塩、アルギン酸ナトリウム,アルギン酸カリウム等
のアルギン酸塩、カラギーナン、ペクチンなどが挙げら
れる。親水性多糖類粉末にも、ゼラチンなどと同様の吸
放湿作用があるとともに、水溶物除去処理により溶け出
して、改質合成樹脂製品に空孔を残す。合成樹脂液には
、さらに、通常の成形用合成樹脂液と同様に、各種の添
加剤を添加することができる。具体的には、着色剤、可
塑剤、硬化剤、安定剤、滑剤、発泡剤等が挙げられる。
【0017】以上に説明した、水溶性蛋白質を含有する
合成樹脂液からは、通常の合成樹脂に対する成形方法に
よって各種製品を製造することができる。成形方法は、
原料となる樹脂の種類や目的とする製品の形態等によっ
ても異なるが、例えば、合成樹脂液を薄い層状に流した
後、硬化させてフィルム成形品を製造する方法や、合成
樹脂その他の材料からなる製品の表面に、合成樹脂液を
塗布して硬化させ、前期製品の表面を改質合成樹脂で被
覆する方法、繊維や布に合成樹脂液を含浸させて繊維そ
のものに被覆硬化させる方法等が良好に適用できる。何
れの方法でも、合成樹脂液を目的とする形状にして硬化
させ、固形化された製品として利用するものであればよ
い。
【0018】この発明では、上記のように合成樹脂液を
成形硬化させて合成樹脂製品を製造する工程の途中ある
いは後で、合成樹脂製品に含まれた水溶性蛋白質の全部
もしくは一部を不溶化させる。水溶性蛋白質の不溶化と
は、もともとは水に溶解する性質のある水溶性蛋白質に
対して、物理的あるいは化学的な処理を施して、水に溶
けないようにすることである。具体的な不溶化方法は、
水溶性蛋白質の種類に合わせて、適切な手段を選択すれ
ばよい。
【0019】例えば、ゼラチンの不溶化方法として、紫
外線照射する方法のような物理的方法と、グルタールア
ルデヒド、ホルマリン、ヘキサメチレンテトラミン、タ
ンニン、明バン、硫酸アルミニウム等、従来、皮なめし
剤として利用されている薬剤で処理する方法、4,4′
−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソ
シアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソ
シアネートモノマーで処理する方法、蛋白質凝固酵素で
あるトランスグルタミナーゼで処理する方法、エポキシ
化合物で処理する方法等の化学的方法が適用できる。
【0020】卵白やカゼインナトリウムの不溶化方法と
しては、高熱の水を作用させる、いわゆる熱水処理など
で加熱硬化させる方法、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、
塩酸等の酸水溶液や、エタノール、メタノール、アセト
ン等の有機溶媒水溶液、グルタールアルデヒド、ホルム
アルデヒド等のアルデヒド水溶液、トランスグルタミナ
ーゼなど、蛋白質を硬化させる作用のある薬剤で処理す
る方法、高圧で加圧することで不溶化させる方法などが
採用できる。具体的には、卵白を用いた場合、60℃以
上の熱水に接触させたり、水中で3000〜7000気
圧に加圧することによって不溶化させることができる。 また、カゼインナトリウムを用いた場合、塩化カルシウ
ムや乳酸カルシウム等のCa塩水溶液に接触させること
によって、カゼインカルシウムが生成されて不溶化する
【0021】不溶化処理の処理時間や処理条件を調整す
ることにより、合成樹脂液に含有された水溶性蛋白質の
全体を不溶化させることもできるし、水溶性蛋白質の一
部を不溶化させないで残しておくこともできる。上記の
ような不溶化処理は、水溶性蛋白質を含有させた合成樹
脂液を成形してから硬化するまでの段階で行ってもよい
し、合成樹脂液を成形硬化させて成形品が得られた後、
成形品に含まれる水溶性蛋白質に対して不溶化処理を施
すこともできる。水溶性蛋白質を不溶化させる時期は、
適用する不溶化処理方法の種類や製造工程等を考慮して
適当な時期を選択すればよい。具体的には、例えば、予
め合成樹脂液に不溶化処理剤を含有させておけば、合成
樹脂液の成形硬化とともに、水溶性蛋白質と不溶化処理
剤との反応が進行して、水溶性蛋白質の不溶化が行われ
る。合成樹脂液の成形硬化中に、加熱や紫外線照射を行
って水溶性蛋白質を不溶化させてもよく、製造された合
成樹脂製品を不溶化処理剤の液中に浸漬してもよい。
【0022】水溶性蛋白質を不溶化処理して得られた改
質合成樹脂成形品は、そのままで改質合成樹脂製品とし
て利用できるほか、別な合成樹脂製品の表面や一部のみ
を、改質合成樹脂成形品で構成するようにしてもよい。 さらに、前期合成樹脂液で、合成樹脂成形品や繊維、布
生地、合成皮革その他の物品をコーティングし、改質合
成樹脂成形物からなるコーティング膜を形成することに
よって、コーティング製品の表面性状を改善するために
用いることもできる。具体的なコーティング手段は、通
常の表面改質コーティング技術と同様に行われる。不織
布や織物からなる布にコーティングする場合は、布の表
面だけでなく、内部まで浸透させて、個々の繊維そのも
のをコーティングすることもできる。改質合成樹脂製品
の表面あるいはコーティングされた改質合成樹脂層に対
して、各種の表面処理加工を施すことができる。例えば
、合成皮革の表面にコーティングされた改質合成樹脂層
に対して、サンディングや革シボ加工を施すことができ
る。
【0023】さらに、改質合成樹脂製品に、水溶物除去
処理を施すことによって、吸放湿性をより向上させるこ
とができる。水溶物除去処理とは、改質合成樹脂製品中
に含まれる物質のうち、水に溶ける可能性のある物質す
なわち水溶物を、物理的もしくは化学的手段で除去する
処理である。水溶物除去処理では、不溶化した水溶性蛋
白質は除去されない。
【0024】水溶物としては、前記したような各種の水
溶性蛋白質、水溶性多糖類を含む任意の水溶性材料が使
用できる。すなわち、不溶化させるために用いる水溶性
蛋白質に対する不溶化処理では不溶化しないような材料
であれば、水溶性蛋白質を用いることも可能である。水
溶物としては、微粉末化できる材料が好ましく、また、
比較的低分子量のものが低粘度で、水に溶け出させて除
去し易い。
【0025】水溶物除去処理の具体的方法としては、最
も単純には、改質合成樹脂製品を、水に浸漬したりして
水溶物を水に溶かし出せばよいが、高熱の水に浸漬した
り、高熱の水や水蒸気と接触させたりする、いわゆる熱
水処理を行えば、水溶物を効率的に除去することができ
る。但し、この方法は、熱硬化性の水溶物を除去する場
合には適用できない。
【0026】水溶物除去処理では、十分に不溶化した水
溶性蛋白質は溶け出さないが、不溶化されずに残ってい
る水溶性蛋白質、および、前記した分解ゼラチンや親水
性多糖類粉末等は溶け出すことになる。熱水処理を行う
場合、処理温度が高いほど、各成分が溶け出し易くなり
、溶け出し量も多くなるが、目的とする特性を発揮させ
るために、どの材料をどの程度の割合で溶け出させるか
によって、処理温度と処理時間を設定すればよい。一般
的には、約40〜80℃程度の範囲で、処理時間は1〜
60分間程度行えればよい。なお、前記した分解ゼラチ
ンについては、熱水でなくても、温水あるいは常温水で
も溶け出させることができる。
【0027】水溶物除去処理を行う場合、水溶性蛋白質
の不溶化処理を行った後で水溶物除去処理を行えば、水
溶性蛋白質の不溶化部分を除いた、未不溶化の水溶性蛋
白質その他の材料が溶け出して空孔を形成することにな
る。また、合成樹脂液を成形硬化させて合成樹脂成形品
を製造した後、先に水溶物除去処理を行い、ついで不溶
化処理を行うこともできる。この場合、水溶物除去処理
では、水溶性蛋白質が完全に除去されない程度の処理条
件にして、水溶性蛋白質の一部が残るようにしておき、
この残った水溶性蛋白質を次の不溶化処理工程で不溶化
させる。
【0028】さらに、卵白などの加熱によって不溶化す
る熱硬化性の水溶性蛋白質とともに、熱水に溶けるゼラ
チンなどの水溶物を合成樹脂液に添加しておくと、合成
樹脂液の成形硬化後、熱水処理を行うだけで、熱硬化性
の水溶性蛋白質の不溶化と、不溶化していないゼラチン
に対する水溶物除去が同時に行える。このように、水溶
性蛋白質の不溶化処理と水溶物除去処理が同時に行える
材料の組み合わせおよび処理方法としては、上記、卵白
を熱水処理で不溶化させる場合には、水溶物としてゼラ
チンなどの熱で硬化しない材料を加えておけばよく、卵
白やカゼインナトリウムを酸水溶液で不溶化させる場合
には、酸で硬化するペクチンやアルギン酸ナトリウム等
を除いた各種多糖類やゼラチンを水溶物として加えてお
けばよい。さらに、前記したように、合成樹脂液に、卵
白粉末とその不溶化処理剤となる有機酸粉末を添加して
おいた場合には、成形後に水に浸漬したりしたときに、
卵白を不溶化させた後、有機酸は水に溶け出すので、有
機酸粉末が前記水溶物と同じ作用を果たすことになる。
【0029】水溶物除去処理が行われた改質合成樹脂製
品には、水溶物除去処理によって溶け出した材料が存在
していた部分に、微細な空孔が残ることになる。この空
孔が、透湿作用を果たす。したがって、水溶物除去処理
された改質合成樹脂製品においては、水溶性蛋白質の不
溶化物による吸放湿作用とともに、前記空孔による吸放
湿作用が複合的に発揮され、さらに、不溶化しなかった
水溶性蛋白質や親水性多糖類などの一部が水溶物除去処
理で除去されずに残っている場合には、これらの物質に
よる吸放湿作用も加わることになる。一般に、水溶性蛋
白質の不溶化物は、吸湿性と放湿性の両方に優れ、不溶
化していない水溶性蛋白質や親水性多糖類粉末等も吸湿
性と放湿性があるのに対し、空孔の場合は、吸湿性はあ
まりないが極めて高い透湿性を発揮する。したがって、
改質合成樹脂製品の用途や要求性能に合わせて、前記3
種類の構造部分による吸放湿作用を適当な割合で組み合
わせればよい。
【0030】特に、合成樹脂として、ウレタン樹脂等の
加水分解し易い材料を用いる場合には、吸湿し過ぎると
樹脂が加水分解してしまって、長期間使用しているうち
に劣化したり性能の低下を来すことがある。そこで、こ
のような場合には、吸湿性を小さくし透湿性を高めて使
用するのが好ましく、そのためには、不溶化処理を行う
前に水溶物除去処理を行って、大量の空孔を形成してお
くとともに、吸湿性の成分があまり残らないようにして
おくほうが好ましい場合もある。
【0031】この発明にかかる改質合成樹脂製品の具体
例について説明する。まず、改質合成樹脂フィルムが製
造できる。改質合成樹脂フィルムの成形もくしは製造方
法は、通常の合成樹脂フィルムと同様の方法が採用でき
る。特に、溶媒で適当な濃度に調整された合成樹脂液を
薄く塗布した後、溶媒を蒸発させて膜形成する方法が好
ましい。水溶性蛋白質の不溶化処理は、製膜されて硬化
する前の合成樹脂フィルム、または、硬化した後の合成
樹脂フィルムに対して行われる。改質合成樹脂フィルム
を成形した後、前記熱水処理を施すこともできる。改質
合成樹脂フィルムは、それ自体で吸放湿性に優れたフィ
ルム材料として各種の用途に使用できるほか、この改質
合成樹脂フィルムを、各種合成樹脂成形品や布、合成皮
革等の表面に積層して、これらの製品の表面改質加工に
使用することができる。
【0032】不織布や織物からなる布を、前記合成樹脂
液に浸漬して、布の表面だけでなく内部全体に合成樹脂
液を含浸させておき、合成樹脂液を硬化させる前もしく
は硬化させてから、水溶性蛋白質を不溶化させれば、吸
放湿性が改善された改質布が得られる。不織布あるいは
織物を構成する繊維材料は、通常の合成繊維等からなる
ものが使用できる。
【0033】
【作用】水溶性蛋白質に不溶化処理を施して得られる不
溶化物は、本来、水に溶け易い水溶性蛋白質が水に溶け
ないようになったものであるが、その組織構造中には、
親水性部分がある程度残っており、この親水性部分の作
用で、合成樹脂に対する吸湿性や吸水性の向上効果を発
揮できるものと考えられる。
【0034】例えば、水溶性蛋白質として、卵白やカゼ
インナトリウムを粉末状態で合成樹脂に添加した後、不
溶化処理を行った場合には、粉末の外部から熱が伝わっ
たり不溶化処理剤との反応が行われたりするので、粉末
の外周部分は十分に不溶化されるが、粉末の中央には不
溶化されていない部分が残ったり、外周部分に比べて不
溶化度が低くなったりするものと考えられる。粉末の外
周部分が不溶化していれば、もはや、水に溶け出すこと
はないとともに、中央の未不溶化部分もしくは低不溶化
部分は親水性を維持しているので、吸湿性や吸水性を発
揮できることになるものと考えられる。
【0035】また、水溶性蛋白質として、ゼラチンを用
いた場合には、不溶化処理を行っても、ゼラチン組織に
特有の親水性基は残ることになるので、この親水性基が
吸湿性や吸水性を発揮するものと考えられる。何れにし
ても、水溶性蛋白質が不溶化していれば、熱水処理を行
っても溶け出すことがないので、改質合成樹脂成形品か
らなる各種製品を製造する際に、高熱の水や水蒸気と接
触させる洗浄工程等を行ったり、改質合成樹脂成形品を
含む繊維製品を使用中に頻繁に洗濯を行ったりしても、
水溶性蛋白質の不溶化物が溶け出す心配はなく、長期間
にわたって良好で安定した吸放湿性を発揮することがで
き、改質合成樹脂製品の耐久性を向上させることができ
る。
【0036】つぎに、合成樹脂液に水溶性蛋白質を含有
させた後、合成樹脂液が成形硬化されるまでの間もしく
は成形硬化させてから、水溶性蛋白質を不溶化させてい
るので、予め不溶化させた水溶性蛋白質すなわち水不溶
性蛋白質を合成樹脂液に加えるのに比べて、製造工程が
簡略になり、合成樹脂液に対する不溶化物の分布を均一
かつ微細にできる。
【0037】これは、予め製造された水不溶性蛋白質粉
末を合成樹脂液に添加する場合には、水不溶性蛋白質粉
末を得るために、粉末状の水溶性蛋白質に所定の不溶化
処理を行う。ところが、このようにして得られた水不溶
性蛋白質は、ブロック状に固まったりして微粉末が得ら
れない。そのため、得られた水不溶性蛋白質をもう一度
粉砕して、粉末状の水不溶性蛋白質を製造した後、この
水不溶性蛋白質粉末を合成樹脂液に添加する必要がある
【0038】しかし、この発明の場合には、一般の水溶
性蛋白質粉末あるいは水溶液をそのまま合成樹脂液に添
加して混合しておけば、水溶性蛋白質が合成樹脂液中に
均一に分布した状態のままで不溶化処理が行われること
になるので、最終的に得られる不溶化物も、改質合成樹
脂製品中に均一かつ微細に分布することになる。すなわ
ち、水不溶性蛋白質を使用する場合には、水不溶性蛋白
質の粉砕工程が必要であるのに対し、この発明の場合に
は、面倒な粉砕工程が省略できることになるのである。
【0039】特に、この発明において、水溶性蛋白質と
してゼラチン水溶液を使用した場合には、合成樹脂液と
の混合作業が極めて簡単になる。しかも、水溶液の状態
で合成樹脂液と混合されたゼラチンを不溶化させれば、
合成樹脂液の中に均一かつ微細に分散しているゼラチン
分子もくしはゼラチン分子の集団が、ばらばらの状態で
不溶化することになり、改質合成樹脂製品中に、極めて
微細なゼラチン不溶化物を均一に分布させることができ
、吸放湿性等の諸特性や外観性能等を良好にすることが
できる。
【0040】不溶化された水溶性蛋白質を含む合成樹脂
製品に、熱水などによる水溶物除去処理を施すと、熱水
などに溶け出す成分、例えば、不溶化されていない水溶
性蛋白質、親水性多糖類粉末、分解ゼラチン等が合成樹
脂製品から除去されて、その跡に空孔が残り、この空孔
による透湿作用が、不溶化された水溶性蛋白質による吸
放湿作用と同時に発揮される。また、一度水溶物除去処
理を行っておくと、その後は、改質合成樹脂製品を洗濯
等で熱水に接触させたりしても、もはや溶け出してくる
成分がほとんど無くなっているので、長期間にわたって
安定した吸放湿性能を発揮できるようになる。
【0041】水溶物除去処理を、水溶性蛋白質の不溶化
処理の後で行えば、水溶性蛋白質の不溶化物以外の成分
を除去して、その跡に空孔を形成することになり、比較
的大量の水溶性蛋白質不溶化物が存在することによる高
い吸湿性と、水溶性蛋白質不溶化物の放湿性および空孔
による高い透湿性を相乗的に発揮させることができ、吸
放湿性の非常に優れた改質合成樹脂製品が得られる。
【0042】水溶物除去処理を、水溶性蛋白質の不溶化
処理の前に行えば、処理温度や時間等を適当に調整する
ことにより、水溶性蛋白質の一部および分解ゼラチン等
を任意の割合で除去して空孔を形成し、残った水溶性蛋
白質を不溶化させることができる。したがって、改質合
成樹脂製品における水溶性蛋白質不溶化物と空孔の割合
を調整し易くなり、目的や要求性能に合わせて、吸湿性
と透湿性の程度が最適な状態に組み合わせられた改質合
成樹脂製品を容易に製造することができる。特に、水溶
物除去処理で除去する水溶性蛋白質の割合を多くすれば
、改質合成樹脂製品には、大量の空孔が形成されること
になるので、透湿性が極めて高い製品を得ることもでき
る。
【0043】水溶性蛋白質として、卵白やカゼインナト
リウムの固形粉末を用い、この固形粉末を、有機酸など
からなる不溶化処理剤粉末とともに合成樹脂液に添加し
ておけば、成形硬化後の合成樹脂製品を水に浸けるなど
して水を作用させるだけで、水溶性蛋白質の固形粉末と
不溶化処理剤粉末が水に溶けて互いに接触し反応を起こ
すことになり、水溶性蛋白質の不溶化が極めて簡単に行
える。また、水溶性蛋白質が不溶化した後、残った不溶
化処理剤は水に溶け出して合成樹脂製品から除去される
ので、この不溶化処理剤が除去された跡に空孔が形成さ
れる。すなわち、この場合には、水溶性蛋白質の不溶化
と、不溶化処理剤すなわち水溶物の除去が、ひとつの工
程で同時に行えるのである。
【0044】
【実施例】この発明にかかる製造方法を用いて改質合成
樹脂製品のひとつである改質合成樹脂フィルムを製造し
、その特性を評価した。水溶性蛋白質として、ゼラチン
を用いた場合と、卵白およびカゼインナトリウムを用い
た場合にわけて説明する。                         I
.ゼラチンを用いた場合  <ゼラチン>   ■ゼラチン粉末       アルカリ処理100ブルームゼラチン粉末
(粒径25μm以下)  ■ゼラチン溶液       アルカリ処理100ブルームゼラチン溶液
          ゼラチン濃度15%、pH4、N
aCl5%含有  <合成樹脂>     NB−630(大日本インキ株式会社製、  
                      合成皮
革用ウレタン樹脂、不揮発分29〜31%)  <溶剤
>     メチルエチルケトン(MEK)  <不溶化処
理剤>     1%グルタールアルデヒド溶液(GA)(25
%試薬から調製)以上の材料を用いて、下記表1に示す
配合の合成樹脂液を調製して、合成樹脂フィルムを成形
した。
【0045】<改質合成樹脂フィルムの製造>■製膜 合成樹脂液を100μmのドクターブレードを用いて離
型紙上にコーティングし、120℃で5分間の加熱処理
を行って硬化させて合成樹脂フィルムを得た。
【0046】■不溶化処理 下記2種類の方法でゼラチンの不溶化を行った。 (a)  合成樹脂液中に不溶化処理剤を含有させてお
き、ゼラチンの不溶化が進行している間に、合成樹脂液
の成形を行った。 (b)  成形された合成樹脂フィルムを前記不溶化処
理剤に10分間浸漬した後、60℃で乾燥させた。
【0047】表1に、実施例および比較例で用いた合成
樹脂液の配合および不溶化処理方法を示している。
【0048】
【表1】
【0049】<特性試験>上記のようにして製造された
改質合成樹脂フィルムに対して、以下の試験を行った。 (a) 吸湿性測定試験 5cm角に裁断した合成樹脂フィルムに対して、乾燥状
態の重量(W0)を測定しておき、ついで、相対湿度9
0%(20℃)の雰囲気下に30分間静置して吸湿させ
た後の重量(W)を測定し、下式により吸湿度を算出し
た。
【0050】 吸湿度=(W−W0 )×400  g/m2    
  …(1) (b) 透湿性測定試験 JIS−Z0208(防湿包装材料の透湿度試験方法)
に準じて透湿度を測定した。 (c) 風合い・外観性試験合成樹脂フィルムを観察し
て、風合いおよび外観性を下記基準で評価した。
【0051】 ×…光沢が強い、べとつきがある。 ○…光沢がない、滑性がある。 ◎…光沢がない、滑性、柔軟性がある。 (d) 長期耐久性試験 合成樹脂フィルムを、70℃、相対湿度95%の雰囲気
下に1ヵ月保持しておいた後、(試験後の強度/試験前
の強度)×100%で表される強度保持率を算出した。 強度保持率70%を超えるものを○、50〜70%のも
のを△、50%未満のものを×と評価した。強度測定は
、合成樹脂フィルムを20mm幅に裁断し、引張圧縮試
験機SDT−200(今田製作所製)を用いて、破断強
度を測定した。
【0052】なお、この長期耐久性試験は、自動車や家
具のシート材のように、非常に長期間にわたって高い耐
久性が要求される用途に使用する場合の適性を、通常の
使用環境よりもはるかに過酷な環境にさらして、比較的
短期間で知るための促進試験である。したがって、この
試験で×と評価されても、衣料品や靴などのように、そ
れほど長期間にわたる耐久性を要求されない用途に用い
る場合には、何ら支障はない。
【0053】各試験を、合成樹脂フィルムに下記方法で
熱水処理を行ったものと行わなかったものについて実施
した。 <熱水処理>合成樹脂フィルムを、60℃の熱水中に3
0分間浸漬した後、60℃で乾燥させる。この熱水処理
を、前記不溶化処理の前または後で行った。
【0054】試験の結果は、表2、表3に示している。
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】以上の試験結果から、比較例1.1 と比
較例1.2 、1.3 を比べると、合成樹脂にゼラチ
ンを含有させることによって、吸湿度および透湿度を高
め、風合い・外観性も良好にできることがわかる。しか
し、比較例1.2 、1.3 では、熱水処理を行うと
、ゼラチンが溶け出してしまい、吸湿度が大きく低下し
ているのに対し、この発明の実施例1.1〜1.4 で
は、ゼラチンの不溶化後に熱水処理を行った場合には、
吸湿度があまり低下していない。したがって、この発明
によれば、比較例すなわち従来技術では達成出来ない、
吸湿度と透湿度の両方ともが高い、すなわち吸放湿性に
優れた改質合成樹脂製品が得られることが実証された。 特に、ゼラチン溶液を用いた実施例1.2 、1.4 
は、ゼラチン粉末を用いた実施例1.1 、1.3 に
比べて、吸湿度および透湿度の何れも高い値を示してい
る。
【0058】また、実施例1.3 および1.4 で、
ゼラチンの不溶化処理前に熱水処理を行った場合には、
吸湿度は低くなっているが、透湿度が高くなっており、
吸湿度が低くて透湿度の高い改質合成樹脂製品を得るの
に有効な処理方法であることが判る。さらに、長期耐久
性についてみると、比較例1.1 のように、ウレタン
樹脂のみからなる場合には、もともと吸湿性がないので
、高温高湿環境においても、ウレタン樹脂が加水分解す
ることはなく、強度が低下することはない。しかし、ゼ
ラチンを含有させて吸湿性を改善した比較例1.2 、
1.3 および実施例1.1 〜1.4 では、高温高
湿環境における強度低下が認められる。
【0059】ところが、実施例1.3 と1.4 のよ
うに不溶化処理前に熱水処理を行った場合には、高温高
湿環境における強度低下が少ない。このことから、合成
樹脂液を成形硬化させた後、熱水処理を施し、ついでゼ
ラチンを不溶化させることによって、透湿性に優れると
ともに耐久性が非常に高い改質合成樹脂製品が得られる
ことが実証された。
【0060】 II.卵白またはカゼインナトリウムを用いた場合前項
の各実施例と同様の合成樹脂および溶媒と下記材料を用
いた。 卵白            :  卵白K(キューピ
ー株式会社製)カゼイン        :  アシッ
ドカゼイン(DANMARK 社製) カゼインNa    :  カゼインナトリウムスプレ
ー(三晶株式会社製) クエン酸−水和物およびd−酒石酸:  試薬上記材料
は、全て、固形物を粉砕し分級して得られた400メッ
シュ通過品を、固形粉末のままで合成樹脂液に添加した
【0061】合成樹脂液の成形硬化方法は、前項と同様
であった。成形硬化後の水溶性蛋白質の不溶化処理は、
表4に記載された方法で行った。表4に示す、実施例お
よび比較例の合成樹脂フィルムを製造した。
【0062】
【表4】
【0063】各実施例および比較例の合成樹脂フィルム
について、特性を評価した。特性試験のうち、吸湿度は
前項と同じ吸湿度試験と、下記試験を行った。 <水洗減量測定試験> 水洗処理を行い、その前後における合成樹脂フィルムの
重量を測定して、水洗による減少量の、水洗前の全重量
に占める比率すなわち〔全減量率%〕を算出した。また
、()内の数値は、添加剤の重量に占める減少量の比率
を〔添加物%〕として算出した。
【0064】<風合い試験> 合成樹脂フィルムに適量の水を塗布して吸水させた状態
で、表面を触ってべとつき感を評価した。(評価基準:
  ×…べとつきあり、○…べとつきなし)表5に、各
試験の結果を示している。
【0065】
【表5】
【0066】上記試験の結果をみれば、カゼインすなわ
ち不溶化している蛋白質を用いた比較例2.3 に比べ
て、カゼインNaすなわち水溶性蛋白質を用いた比較例
2.1 は、水洗前の吸湿度は格段に優れていることが
判る。しかし、水洗処理を行うと、比較例2.1 では
極端に吸湿度が低下してしまっている。つぎに、実施例
2.1 、2.2 と比較例2.1 、2.2 を比べ
れば、卵白やカゼインナトリウムについても、不溶化処
理を行うことによって、水洗処理を行っても、吸湿度が
低下せず、減量率も小さくなっており、長期間にわたっ
て安定した良好な吸湿性を発揮できるようになることが
判る。また、水洗処理を行わない状態で比べると、べと
つき感の少ない優れた風合いを発揮できることも判る。
【0067】また、実施例2.3 や2.4 のように
、水溶性蛋白質(卵白、カゼインNa)粉末と不溶化処
理剤(d−酒石酸、クエン酸)粉末を合成樹脂液に添加
しておけば、合成樹脂成形品に水洗処理を行うだけで、
水溶性蛋白質の不溶化が行われ、前記同様の作用効果が
発揮できることも判る。  III.空孔形成用の水溶物を添加しておく場合前項
の各実施例と同様の材料に加え、下記材料を用いた。
【0068】 カラギーナン:ゲニュゲルCJ(The Copenh
agen Pectin Factory Ltd.)
  アラビアガム:アラビックコール(三栄薬品貿易)上記
材料は、全て、固形物を粉砕し分級して得られた400
メッシュ通過品を、固形粉末のままで合成樹脂液に添加
した。表6に示す、実施例および比較例の合成樹脂フィ
ルムを製造した。表中、〔添加物〕は、成形後に不溶化
処理を施す水溶性蛋白質であり、〔水溶物〕は、成形後
に溶け出させて空孔を形成するための材料である。 合成樹脂液の成形硬化方法は、前項と同様であった。成
形硬化後の水溶性蛋白質の不溶化処理は、表6に記載さ
れた不溶化処理剤の水溶液に合成樹脂フィルムを浸漬す
る方法で行った。何れの処理も、添加物は不溶化させる
が、水溶物は不溶化させないような処理液を選んだ。不
溶化処理の後、40〜50℃の温水で洗浄して、水溶物
を完全に除去してから乾燥させて、合成樹脂フィルムを
得た。
【0069】
【表6】
【0070】各実施例および比較例の合成樹脂フィルム
について、特性を評価した。特性試験は前記各項と同様
の試験を行った。表7に結果を示している。
【0071】
【表7】
【0072】上記試験の結果、合成樹脂に、不溶化させ
る水溶性蛋白質とともに水溶物を添加しておくことによ
って、吸透湿性が非常に優れた改質合成樹脂製品が得ら
れることが実証された。
【0073】
【発明の効果】以上に述べた、この発明にかかる改質合
成樹脂製品の製造方法によれば、合成樹脂液に水溶性蛋
白質を含有させておき、この水溶性蛋白質を不溶化させ
ることによって、従来の合成樹脂では実現できなかった
良好な吸放湿性を備えた合成樹脂製品を製造することが
可能になる。また、風合いや外観性の点でも、従来の合
成樹脂に比べて、はるかに天然の素材に近い良好なもの
が得られる。特に、不溶化された水溶性蛋白質は、合成
樹脂製品の製造工程における洗浄や使用中における洗濯
によって溶け出すことがないので、良好な吸放湿性能を
長期間にわたって発揮することが可能になる。
【0074】その結果、合成皮革や繊維製品等の表面仕
上げ加工用樹脂や各種のフィルム・シート、その他の製
品に利用したときに、優れた吸放湿性あるいは風合い等
を発揮でき、これらの製品の品質性能の向上および用途
の拡大に大きく貢献することができる。具体的には、例
えば、合成皮革の表面層を構成する層材料として利用し
たり、合成皮革を構成する繊維層に含浸させて用いたり
した場合、天然の皮革と同程度の優れた吸放湿性を発揮
し、肌触りが滑らかで自然な光沢を有するものとなり、
従来の合成皮革の欠点であったムレ感やベトツキ感を解
消して、合成皮革の品質向上を果たすことができる。各
種の衣料の表面仕上げあるいは繊維の表面加工に用いた
場合には、汗の吸収が良くなるとともに、吸収した汗を
直ぐに放出することができ、帯電防止性も良好になるの
で、さわやかな着心地感を与えることができる。
【0075】特に、水溶性蛋白質としてゼラチン水溶液
を用いたり、合成樹脂製品に水溶物除去処理を行うこと
によって、さらに吸湿性や風合い・外観性等を向上させ
ることができ、前記したような効果をより高めることが
可能になる。また、水溶性蛋白質としてゼラチンを用い
、ゼラチンの不溶化前に熱水処理を行っておくことによ
り、透湿性に優れているとともに、耐久性が非常に高い
合成樹脂製品が得られ、自動車や家具のシート材料のよ
うに、長期間にわたる耐久性を要求される用途に最適な
合成樹脂製品となる。
【0076】さらに、水溶性蛋白質として卵白またはカ
ゼインナトリウムの固形粉末を用い、この固形粉末とと
もに有機酸などからなる不溶化処理剤の粉末を合成樹脂
液に添加しておけば、合成樹脂液の成形硬化後に水に作
用させるだけで、水溶性蛋白質を不溶化させることが可
能になり、不溶化処理が極めて簡単に行える。しかも、
不溶化処理剤が水溶物として水に溶け出して除去される
ので、不溶化処理と同時に水溶物の除去処理による空孔
の形成が行え、作業の簡略化および能率向上を図ること
ができる。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】  合成樹脂液を成形硬化させて合成樹脂
    製品を製造する方法において、合成樹脂液に水溶性蛋白
    質を含有させておき、合成樹脂液が成形硬化させるまで
    の間もしくは成形硬化された後に、水溶性蛋白質を不溶
    化させることを特徴とする改質合成樹脂製品の製造方法
  2. 【請求項2】  水溶性蛋白質を不溶化させた後、水溶
    物除去処理を行う請求項1記載の改質合成樹脂製品の製
    造方法。
  3. 【請求項3】  水溶性蛋白質が、ゼラチンである請求
    項1または2記載の改質合成樹脂製品の製造方法。
  4. 【請求項4】  ゼラチンを水溶液の状態で合成樹脂液
    に添加する請求項3記載の合成樹脂製品の製造方法。
  5. 【請求項5】  合成樹脂液を成形硬化させた後、水溶
    物除去処理を行ってゼラチンの一部のみを除去し、つい
    で残ったゼラチンを不溶化させる請求項3または4記載
    の改質合成樹脂製品の製造方法。
  6. 【請求項6】  水溶性蛋白質が、卵白またはカゼイン
    ナトリウムの固形粉末である請求項1または2記載の改
    質合成樹脂製品の製造方法。
  7. 【請求項7】  水溶性蛋白質の固形粉末を、不溶化処
    理剤粉末とともに合成樹脂液に添加しておき、成形硬化
    後の合成樹脂製品に水を作用させ、水溶性蛋白質の固形
    粉末と不溶化処理剤粉末を溶解反応させて、水溶性蛋白
    質を不溶化させる請求項6記載の改質合成樹脂製品の製
    造方法。
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