JP2664203B2 - 化粧用塗布具素材およびその製造方法 - Google Patents

化粧用塗布具素材およびその製造方法

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JP2664203B2 JP12931388A JP12931388A JP2664203B2 JP 2664203 B2 JP2664203 B2 JP 2664203B2 JP 12931388 A JP12931388 A JP 12931388A JP 12931388 A JP12931388 A JP 12931388A JP 2664203 B2 JP2664203 B2 JP 2664203B2
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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は化粧品の塗布具の素材に関し、特にメイクア
ップ化粧料の化粧用塗布具の素材に関するものである。
〔従来の技術〕
従来からメイクアップ化粧料の塗布具の素材として、
通気性を有し且つ乾燥状態でも柔軟性を有する発泡体が
多用されている。
その内でも代表的なものとして、天然ゴム、NBRラテ
ックス等のフォームラバー類やポリウレタン発泡体があ
る。
これらの発泡体は、多くの場合、素材の劣化を防止す
るための添加剤が添加されている。
例えば、ゴムフォーム類は時間が経つにつれてフォー
ムラバーとしての引張り強度が低下し、反発弾性が失わ
れ、硬化し、亀裂を生じたり、また黄変化する傾向があ
る。このような傾向はゴムフォーム原料に老化防止剤を
添加することにより、ある程度防止することができる。
また、ポリウレタンフォームについても酸化防止剤や
紫外線吸収剤等を発泡体原料に添加することにより、前
記のような物理的劣化をある程度防止できる。
発泡体を化粧用塗布具素材として利用する場合、従来
これらの発泡原料に添加される劣化防止剤の濃度は、例
えば、老化防止剤は2%以下、酸化防止剤は2%以下、
紫外線吸収剤は1%以下である。
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかしながら、従来のフォームラバー類や発泡ポリウ
レタン等の発泡体からなる化粧用塗布具は、店頭で2年
以上経過すると、劣化の現象が生じてくる。
特に、陳列台の照明下に置かれたものは、1年程度で
劣化が生じる。
劣化現象は、フォームラバーの場合には、弾性が失わ
れ、全体に硬くなり、一部に亀裂が生じ、黄変し、最後
には折り曲げると割れてしまい、化粧料を塗布できる状
態ではなくなるものである。
また、発泡ポリウレタンの場合には、まず黄変が始ま
り、続いて反発弾性が失われて、全体的にべとつきが生
じ、塗布時に塗布具としての腰がなくなり、手で引っ張
ると簡単にちぎれてしまう状態となる。
以上の如く、従来の発泡体からなる化粧用塗布具にお
いては経時的に劣化するという問題がある。また、完全
に劣化しない場合でも、その途中において素材が硬くな
ったりするため、化粧料の塗布時に刺激感を与えたりし
て、使用性が悪くなるという問題があった。このため、
改良が強く望まれている。
本願発明者は、上述の従来のフォームラバーや発泡ウ
レタン等の発泡体には劣化防止のための各種添加剤が配
合されているにもかかわらず、経時的に劣化が生じるこ
とに対して以下に記載するような検討を行った。
例えば、発泡原料に混入する老化防止剤,酸化防止
剤,紫外線吸収剤等の劣化防止剤の添加量を増やしてみ
たが、実質的に顕著な効果を得ることができなかった。
これは、発泡原料に混入された劣化防止剤が、発泡体
全体に均一に分散した状態となっているためと考えられ
る。
すなわち、発泡体の劣化は、空気中の酸素、オゾン、
紫外線熱等が発泡体を構成する骨格表面へ作用すること
によって生じる。このように劣化が生じ始めるのは発泡
体の表面部分からであるが、劣化防止剤は発泡体の表面
部のみならず内部まで発泡体全体に均一に分散して存在
し、また微視的には発泡体を構成する骨格の表面部およ
び骨格内部にも均一に分散して存在する。従って、劣化
防止剤の添加量を多少増やしても、発泡体の表面部分や
発泡骨格の表面部における劣化防止剤の量(濃度)がそ
れほど増加しないからである。
反って、発泡原料中に多量の劣化防止剤を添加するこ
とは、発泡条件を阻害する要因となり、均質な発泡体が
得られなかった。また、多量の劣化防止剤を使用するた
め、極めてコスト高となり、実用に供し得るものではな
かった。
〔発明の目的〕
本発明の目的は、上述のような問題を解決し、耐久性
に優れ、長時間経っても発泡体の劣化が生じることな
く、化粧料の塗布時に肌に刺激を与えないような化粧用
塗布具素材を提供すること、およびこのような化粧用塗
布具素材の製造方法を提供することである。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明によれば、通気性を有し且つ乾燥状態でも柔軟
性を有する発泡体であり、該発泡体を構成する発泡骨格
の表面部における劣化防止剤の濃度が骨格中心部におけ
る濃度よりも高いこと、又は前記発泡体の表面部におけ
る劣化防止剤の濃度が発泡体の中心部における濃度より
も高いことを特徴とする化粧用塗布具素材により、上記
目的を達成した。
また、本発明では、次のような製造方法により上記目
的を達成した。
通気性を有し且つ乾燥状態でも柔軟性を有する発泡体
を劣化防止剤を含む水分散液中に浸漬し、該浸漬した発
泡体を水洗、脱水した後、乾燥することを特徴とする化
粧用塗布具素材の製造方法。
通気性を有し且つ乾燥状態でも柔軟性を有する発泡体
を劣化防止剤を含む水分散液中に浸漬し、該浸漬処理し
た発泡体を絞って脱液し、該脱液した発泡体を加熱処理
し、その後該発泡体を洗浄し、脱水した後、乾燥するこ
とを特徴とする化粧用塗布具素材の製造方法。
通気性を有し且つ乾燥状態でも柔軟性を有する発泡体
に、劣化防止剤を含む水分散液を塗布し、該発泡体を加
熱処理し、その後該発泡体を洗浄し、脱水した後、乾燥
することを特徴とする化粧用塗布具素材の製造方法。
前記各製造方法において、劣化防止剤の他に、キャリ
ア剤の増粘剤を水分散液に添加してもよい。
〔作 用〕
本発明によれば、劣化防止剤を含む水分散液に発泡体
を浸漬することにより、または前記水分散液を発泡体に
塗布することにより、劣化防止剤を発泡体を構成する発
泡骨格の表面部に吸着させ、表面部から骨格中心部へと
劣化防止剤を浸透拡散させて、発泡体の分子間に劣化防
止剤が溶け込んだ状態としている(固溶体化させてい
る)。
従って、本発明の化粧用塗布具素材においては、発泡
体を構成する発泡骨格の表面部における劣化防止剤の濃
度が骨格中心部における濃度よりも高い。劣化防止剤の
存在は中心部に近くなるほど徐々に少なくなっている。
また、劣化防止剤は発泡体の分子間に入り込んで、分子
間力等により物理化学的に付着した状態であるので、発
泡体を洗濯しても劣化防止剤は洗い流されない。
また、本発明によれば、劣化防止剤を含む水分散液に
発泡体を浸漬することにより、または前記水分散液を発
泡体に塗布することにより、劣化防止剤を発泡体の表面
部から発泡体の中心部へと劣化防止剤を浸透拡散させて
いるので、本発明の化粧用塗布具素材においては、発泡
体の表面部における劣化防止剤の濃度が発泡体の中心部
における濃度よりも高い。
このように本発明によれば、発泡体を製造した後に、
劣化防止剤を発泡骨格表面から発泡骨格内部へ浸透拡散
させ又は発泡体の表面部から発泡体の内部へ浸透拡散さ
せているので、当初の発泡体における劣化防止剤配合濃
度よりも高濃度に改変されており、劣化し難くなってい
る。特に、劣化が生じ始める発泡体の表面部や発泡骨格
の表面部において劣化防止剤が高い濃度で存在するの
で、発泡体の劣化を充分に防止し、経時的にも極めて安
定した化粧用塗布具素材となる。
また、本発明によれば、発泡原料中に添加される劣化
防止剤は従来と同様の分量でよく、発泡原料中に劣化防
止剤を多量に添加する場合と異なって、発泡体そのもの
の持つ風合や弾性、物理的特性等を損なわない。
〔実施例〕
以下図面に示した実施例に基づいて本発明を詳細に説
明する。
本発明の化粧用塗布具素材は、通気性を有し且つ乾燥
状態でも柔軟性を有する発泡体からなる。この発泡体を
構成する発泡骨格1の表面部11における劣化防止剤2の
濃度が骨格中心部12における濃度よりも高い。
本発明における発泡体としては、天然ゴム、NBR、SBR
等のフォームラバー、発泡ポリウレタン、発泡ポリビニ
ールクロライド等の合成樹脂発泡体を用いればよい。
本発明における劣化防止剤2としては、酸化防止剤、
紫外線吸収剤、老化防止剤等がある。
酸化防止剤としては、例えば、ジアルキルパラクレゾ
ールで示される物質〔例えば2,6′ジ−T−ブチルPク
レゾール〕、ベンゾイルアルコキシフェノールサルフォ
ニックアシッド、ヒンダードフェノール化合物等を用い
ればよい。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線
吸収剤〔例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチル−
フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキ
シ−5−エチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール)
や、オキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤〔例えば、2
−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒド
ロキシ−4−ドデシルベンゾフェノン〕が好適である。
老化防止剤としてはビスフェノール化合物〔例えば、
2,2′−メチレンビス(4メチル−6−t−ブチルフェ
ノール)、2,2′−メチレンビス(4エチル−6−t−
ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(6−t
−ブチル−m−クレゾール)〕や、チオビス化合物〔例
えば、4,4′−チオビス(6−t−ブチル−2−メチル
フェノール)、2,2′−チオビス(4−メチル−6−ブ
チルフェノール)〕、モノフェノール化合物〔例えば、
スチレン化フェノール〕、またはジアルキルフェノール
サルファイト等を用いるとよい。
本発明の第1の製造方法によれば、前述のような化粧
用塗布具素材を次のようにして製造している。
先ず、劣化防止剤(酸化防止剤、老化防止剤および紫
外線吸収剤のうちの少なくとも1種類、好ましくは、全
部または2種類の組合せ)を含む水分散液中に通気性を
有し且つ乾燥状態でも柔軟性を有する発泡体を浸漬す
る。
このようにすると、発泡体は通気性を有する連続気泡
構造であるため、水分散液は発泡体の内部まで入込む。
水分散液における劣化防止剤の配合量は、塗布具素材
の発泡体の重量に対して、酸化防止剤は0.01〜5%、紫
外線吸収剤は0.1〜5%、老化防止剤は0.5〜5%程度と
するとよい。
水分散液における劣化防止剤の濃度は、老化防止剤は
2%以上、酸化防止剤は2%以上、紫外線吸収剤は1%
以上とする。
発泡体を劣化防止剤を含んだ水分散液中に浸漬する場
合、常温にて放置しても、水分散液中に劣化防止剤は発
泡体を構成する発泡骨格1の表面部11に吸着し、表面部
11から骨格中心部12へと発泡骨格内へ徐々に浸漬し拡散
していく。しかし、好ましくは、水分散液温度を40℃〜
90℃程度にするとよい。このように水分散液の温度を常
温よりも高くすると、劣化防止剤の発泡骨格内部への浸
透吸着拡散速度が高まり、効率的に浸透させ、固溶体化
させることができる。
浸漬時間は、浴温度40℃〜90℃の場合、15分〜60分で
よい。この程度浸漬すれば、劣化防止剤を充分に浸透吸
着拡散させることができる。
次いで、発泡体を水分散液より取り出し、発泡体表面
に付着している水分散液を除去するために水洗する。水
洗を終えた後、発泡体を遠心脱水機にかけて、水切りを
行い、乾燥する。
このようにして本発明の化粧用塗布具素材を得ること
ができる。
本発明の他の方法(第2の方法)によれば、柔軟な連
続気泡構造の発泡体を劣化防止剤を含む水分散液中に浸
漬し、該浸漬処理した発泡体を絞って脱液し、該脱液し
た発泡体を加熱処理し、その後該発泡体を洗浄し、脱水
した後、乾燥して、本発明の塗布具素材を得る。
この場合、水分散液中に劣化防止剤と共に、キャリア
剤または増粘剤またはその両者を添加しておくのが好ま
しい。
キャリア剤としては、ポリエチレングリコール、オレ
イルアルコール、パラフィン類のエマルジョン化物、ワ
ックス類のエマルジョン化物などが用いられる。
増粘剤としては、澱粉、デキストリン、カルボキシメ
チルセルロース、アルギン酸ソーダ、ポリビニールアル
コール、ヒドロキシルプロピルセルロースなどが用いら
れる。
キャリア剤の使用目的は、劣化防止剤が発泡骨格に吸
着されるのを促進させる媒体として働くことである。増
粘剤の使用目的は、劣化防止剤を発泡骨格の表面に均一
に仮付着させること、および乾燥時に水分散液が発泡体
表面へと移動するのを防止することである。
キャリア剤および増粘剤は、劣化防止剤が骨格内に浸
透吸着拡散し固溶体化した後は、水洗によって除去され
るものである。
第2の方法においては、先ず、劣化防止剤を含む水分
散液に、好ましくは劣化防止剤の他にキャリア剤または
増粘剤またはその両者を含む水分散液に、発泡体を浸漬
して、発泡体に水分散液を含浸させる。水分散液が発泡
体内部まで含浸したら、水分散液から発泡体を取出し、
脱水機にかけて水分散液を絞る。
絞り比は発泡体重量に対し50%〜200%程度がよい。
なお、この第2の方法においては、第1の方法と異なっ
て、浸漬状態で劣化防止剤を発泡骨格内部に浸透させる
のではないので、浸漬時間は極めて短時間でよい。
水分散液を絞った後、発泡体を80℃〜100℃で予備乾
燥する。その後、120℃〜130℃で5分〜20分間、加熱処
理を施す。加熱処理時に発泡体の分子間の間隔が広が
り、劣化防止剤が発泡骨格表面から発泡骨格内部へと浸
透拡散してゆく。この場合、キャリア剤が存在している
と、キャリア剤を媒体として、劣化防止剤は速やかに発
泡骨格内へ浸透移行し、拡散される。
次いで、発泡体を水洗し、発泡骨格表面のキャリア剤
および増粘剤を除去した後、脱水、乾燥する。
このようにして本発明の化粧用塗布具素材を得ること
ができる。
本発明の更に他の方法(第3の方法)によれば、通気
性を有し且つ乾燥状態でも柔軟性を有する発泡体に、劣
化防止剤を含む水分散液を塗布し、該発泡体を加熱処理
し、その後該発泡体を洗浄し、脱水した後、乾燥して、
本発明の塗布具素材を得る。
この方法においても、前述した第2の方法と同様に水
分散液の中にキャリア剤または増粘剤が添加されている
ことが好ましい。
また、塗布方法としてはスプレーコーティング、ナイ
フコーティング、ロールコーティング等適宜の方法を用
いればよい。
以上のように、第1の方法は浴中で発泡骨格内部に劣
化防止剤を浸透吸着拡散させる方法であり、第2および
第3の方法は浴外で浸透拡散させる方法であるが、いず
れの方法によっても、発泡体を構成する発泡骨格1の表
面部11から骨格中心部12にかけて劣化防止剤2が浸透拡
散により吸着固溶状態となっており、骨格表面部11と骨
格中心部12にかけて劣化防止剤2は濃度差を有するもの
となる。
また、発泡時に生じる発泡面膜(型面に生じる膜)を
有する発泡体に前記第1〜3の何れかの方法を適用した
場合は、発泡体を構成する発泡骨格以外にも発泡面膜に
も同時に浸透させることができる。このように発泡面膜
を有する発泡体は液状ファンデーション用塗布具素材と
しても利用できる。
本発明について、更に具体的に実施例をあげて詳述す
る。
<実施例1> 水100部、エマルゲン#920〔花王アトラス株式会社〕
(界面活性剤)2部、アンテージSP〔川口化学工業株式
会社〕(老化防止剤:スチレン化フェノール)3部、サ
イアソーブUV−9〔日本サイアナミド株式会社〕(紫外
線吸収剤)2部、イルガノックス1010〔日本チバガイギ
ー株式会社〕(酸化防止剤:ヒンダードフェノール)1.
5部からなる溶液中に10mm厚さのNBRフォームシートを浸
漬して、浴温80℃で30分間放置した。その後、NBRフォ
ームシートを脱液し水洗処理を行った。次いで、NBRフ
ォームシートを乾燥処理し、骨格内部に劣化防止剤が浸
透した化粧用塗布具素材を得た。
上述のようにして得られたものと無処理のNBRフォー
ムシートとの劣化比較を行ったところ、JIS L−1042
フェードメーター試験において1級程度の向上が認めら
れた。
<実施例2> アルギン酸ソーダ〔鴨川化学株式会社〕(増粘剤)2.
5部、ポリエチレングリコール(重合度2000)(キャリ
ア剤)5部、流動パラフィン(キャリア剤)3部、マイ
クロクリスタリン ワックス(キャリア剤)5部、エマ
ルゲン#920〔花王アトラス株式会社〕(乳化剤)2
部、アンテージSP〔川口化学工業株式会社〕(老化防止
剤)3部、サイアソーブUV−9〔日本サイアナミド株式
会社〕(紫外線吸収剤)2部、イルガノックス1010〔日
本チバガイギー株式会社〕(酸化防止剤)1.5部、水100
部からなる混合物をホモミキサーで20分間乳化して含浸
液とし、この液を4mm厚さのNBRフォームシートに含浸さ
せた。そして、100%絞りに脱液し、80℃で乾燥した。
その後、125℃で5分間加熱して、老化防止剤、紫外線
吸収剤、酸化防止剤をゴムに吸着浸透拡散させて固溶体
化させた。
次ぎに45℃で湯洗して前記増粘剤およびキャリア剤等
を洗浄し、更に水洗して、化粧料塗布具シート素材とし
た。
この化粧料塗布具用シート素材を打ち抜き成形して、
化粧用塗布具とした。
このようにして得られた化粧料塗布具は極めて老化防
止効果に優れ、70℃で1000時間の老化試験後も弾性、
色、引張強度が極めて変化の少ないものであった。
また、日光暴露試験の結果も未加工のNBRフォームに
比較して、JIS L−1042フェードメーター試験で1級
程度の向上が認められた。このような製品は店頭での変
色防止効果が大きく、優れたものであった。
<実施例3> 可溶性澱粉(増粘剤)15部、流動パラフィン(キャリ
ア剤)3部、マイクロクリスタリン ワックス(キャリ
ア剤)5部、アンテージBHT〔川口化学工業株式会社〕
(老化防止剤)3部、チヌビンP〔日本チバガイギー株
式会社〕(紫外線吸収剤)2部、イルガノックス1010
〔日本チバガイギー株式会社〕(酸化防止剤)1.5部、
ノイゲンEA70〔第一工業製薬株式会社〕(乳化剤)1.5
部、水100部からなる混合物をホモミキサーで20分間乳
化させて含浸液として、この液に10mm厚さのポリウレタ
ンフォームシートを浸漬した。そして、80%絞りに脱液
し、80℃で乾燥した後、135℃で5分間加熱して、老化
防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤をポリウレタンに吸
着浸透拡散させて固溶体化させた。
次いで、45℃で湯洗して前記の増粘剤、キャリア剤等
を洗浄し、更に水洗して化粧料塗布具シート素材とし
た。
この化粧料塗布具用シート素材を打ち抜き成形して得
た化粧料塗布具は、極めて老化防止効果に優れており、
70℃で1000時間の老化試験後も弾性、色、引張強度が極
めて変化の少ないものであった。
また、日光暴露試験の結果も、未加工のウレタンフォ
ームに比較してJIS L−1042の耐光試験結果で少なく
とも1級以上の向上が認められた。
更に、この化粧用塗布具は洗濯を10界繰り返した後、
同様の老化試験を行っても、洗濯前と殆ど類似の結果で
あった。すなわち、発泡骨格内部に吸着浸透拡散した老
化防止剤、紫外線吸収剤、および酸化防止剤は脱落が極
めて少ないことを示した。
<実施例4> デキストリン(増粘剤)25部、マイクロクリスタリン
ワックス(キャリア剤)7部、ポリエチレングリコー
ル(キャリア剤)5部、アンテージBHT〔川口化学工業
株式会社〕(老化防止剤)3部、チヌビンP〔日本チバ
ガイギー株式会社〕(紫外線吸収剤)1.5部、イルガノ
ックス1010〔日本チバガイギー株式会社〕(酸化防止
剤)2倍、エマルゲン#920〔花王アトラス株式会社〕
(乳化剤)1.5部、水100部からなる混合物をホモミキサ
ーで20分間混合して、粘度8000cps(20℃)の塗布液と
した。
この液を14mm厚さのポリウレタンフォームシートの上
に200g/m2になるようにドクターコーティングを施し、8
0℃で乾燥した。その後、135℃で5分間加熱して、老化
防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤をポリウレタンに吸
着浸透拡散させて固溶体化させた。
次いで、45℃で湯洗して前記の増粘剤、キャリア剤等
を洗浄し、更に水洗して化粧料塗布具シート素材とし
た。
この化粧料塗布具用シート素材のコーティング面を塗
布面とした化粧用塗布具を作り、これを日光暴露試験し
たところ、未加工のウレタンフォームに比較して変色が
非常に少なく、JIS L−1042の耐光試験結果で少なく
とも1級以上の向上が認められた。
更に、この化粧用塗布具を10回以上繰り返し洗濯た後
に、日光暴露試験を行ったが、洗濯前のものと大差は認
められなかった。
<実施例5> イルガノックス1098〔日本チバガイギー株式会社〕
(酸化防止剤:ヒンダードフェノール)6部、メタノー
ル94部、エマルゲン#920〔花王アトラス株式会社〕
(界面活性剤)5部、水95部を混合乳化してから、水を
加えて十倍に希釈し、この溶液中に8mm厚さのNBRフォー
ムシートを浸漬し、そして90%に絞って、80℃で1時間
乾燥した。
このようにして得られた処理後のNBRフォームシート
と処理前のNBRフォームシートにおけるヒンダードフェ
ノールの濃度を比較するとともに、NBRフォームシート
の表面部とNBRフォームシートの内部とにおけるヒンダ
ードフェノールの濃度を赤外域光音響分光法より比較し
た。
第3図および第4図に示すように、縦横60×60mm、厚
さ8mmの試料より処理前のものでは1箇所、処理後のも
のでは2箇所を測定点として選び、それぞれ表面および
表面より2mmと4mmの深さの所で赤外吸収スペクトルを測
定した。
その結果、処理後のNBR発泡体にはヒンダードフェノ
ールが認められた。また、第5図に示すように、ヒンダ
ードフェノールは試料の中心部まで浸透しているが、そ
の付着料は試料の表面部で多く、中心部にいくに従って
減少し、中心部では表面の約3分の1の量であった。
<実施例6> アンテージSP〔川口化学工業株式会社〕(老化防止
剤:スチレン化フェノール)2部、トルエン2部、エマ
ルゲン#920〔花王アトラス株式会社〕(界面活性剤)
5部を混合乳化し、水91を加えて処理液とした。この処
理液中に8mm厚さのNBRフォームシートを浸漬し、そして
90%に絞って、80℃で1時間乾燥した。
このようにして得られた処理後のNBRフォームシート
と処理前のNBRフォームシートにおけるスチレン化フェ
ノールの濃度を比較するとともに、NBRフォームシート
の表面部とNBRフォームシートの内部におけるスチレン
化フェノールの濃度を第5実施例と同様の試料を作って
比較した。
波数700cm-1における差スペクトル強度によってスチ
レン化フェノールの量を分析した。その結果、第5実施
例の場合と同様に、スチレン化フェノールの付着量は試
料の表面部で多く、中心部では少なかった。
〔発明の効果〕
本発明によれば、塗布具素材を構成する発泡体の骨格
表面部又は発泡体表面部が高い濃度で劣化防止剤を含ん
でいるので、発泡体の劣化を防止し、経時的にも極めて
安定した化粧用塗布具素材となる。従って、本発明の化
粧用塗布具素材を用いた化粧用塗布具は劣化し難く、長
時間経っても、使用時に刺激感を伴うことなく、化粧料
を塗布することができる。
しかも、塗布具素材を構成する発泡体に添加される劣
化防止剤は従来と同様の分量でよく、発泡骨格表面部又
は発泡体表面部に高濃度で劣化防止剤が添加されている
だけであるので、発泡体そのものに劣化防止剤を多量に
添加する場合と異なって、発泡体そのものの持つ風合や
弾性等を損なわない。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の化粧用塗布具素材の一実施例の拡大断
面図、第2図は発泡骨格の一部を示す拡大断面図、第3
図は処理前の試料の測定位置を示す斜視図、第4図は処
理後の試料の測定位置を示す斜視図、第5図は処理後の
薬剤の付着状況を示す線図である。 1……発泡骨格、2……劣化防止剤、 11……骨格表面部、12……骨格中心部。

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】通気性を有し且つ乾燥状態でも柔軟性を有
    する発泡体であり、該発泡体を構成する発泡骨格の表面
    部における劣化防止剤の濃度が骨格中心部における濃度
    よりも高いことを特徴とする化粧用塗布具素材。
  2. 【請求項2】通気性を有し且つ乾燥状態でも柔軟性を有
    する発泡体であり、該発泡体の表面部における劣化防止
    剤の濃度が発泡体の中心部における濃度よりも高いこと
    を特徴とする化粧用塗布具素材。
  3. 【請求項3】通気性を有し且つ乾燥状態でも柔軟性を有
    する発泡体を劣化防止剤を含む水分散液中に浸漬し、該
    浸漬した発泡体を水洗、脱水した後、乾燥することを特
    徴とする化粧用塗布具素材の製造方法。
  4. 【請求項4】通気性を有し且つ乾燥状態でも柔軟性を有
    する発泡体を劣化防止剤を含む水分散液中に浸漬し、該
    浸漬処理した発泡体を絞って脱液し、該脱液した発泡体
    を加熱処理し、その後該発泡体を洗浄し、脱水した後、
    乾燥することを特徴とする化粧用塗布具素材の製造方
    法。
  5. 【請求項5】通気性を有し且つ乾燥状態でも柔軟性を有
    する発泡体に、劣化防止剤を含む水分散液を塗布し、該
    発泡体を加熱処理し、その後該発泡体を洗浄し、脱水し
    た後、乾燥することを特徴とする化粧用塗布具素材の製
    造方法。
  6. 【請求項6】前記水分散液にキャリア剤が含まれている
    請求項3、4又は5記載の化粧用塗布具素材の製造方
    法。
  7. 【請求項7】前記水分散液に増粘剤が含まれている請求
    項3、4又は5記載の化粧用塗布具素材の製造方法。
  8. 【請求項8】前記水分散液にキャリア剤および増粘剤が
    含まれている請求項3、4又は5記載の化粧用塗布具素
    材の製造方法。
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