JPH04107526U - プルタイプクラツチ用レリーズ装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 クラッチとトランスミッションとの中心位置
のずれを吸収し、レリーズ装置の耐久性を向上させ、か
つ軸方向の寸法を短くできるプルタイプクラッチ用レリ
ーズ装置を提供する。 【構成】 この装置は、スリーブ１３と、レリーズベア
リング１７と、受け部１６と、ウェッジカラー１４及び
ワイヤリング１５とを備えている。スリーブ１３は、ダ
イヤフラムスプリング７の中心部に配置され、軸方向に
摺動自在となっている。レリーズベアリング１７は、ダ
イヤフラムスプリング７の内周端部７ａとスリーブ１３
との間に配置されており、ダイヤフラムスプリング７の
内周端部７ａが固定されたアウターレース１７ｃと、装
置の偏位中心側に中心を有する凹の球面１７ｂを内周側
に有するインナーレース１７ａとを含んでいる。受け部
１６は、インナーレース１７ａの球面１７ｂに摺動可能
に圧接する凸の球面１６ａを有している。ウェッジカラ
ー１４及びワイヤリング１５は、受け部１６とスリーブ
１３とを連結する機構である。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、レリーズ装置、特に、ダイヤフラムスプリングの内周端部をトラン スミッション側に引き出すことによりクラッチを解除するためのプルタイプクラ ッチ用レリーズ装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】

クラッチディスク及びクラッチカバーを備えた通常のクラッチでは、ダイヤフ ラムスプリングがプレッシャプレートをフライホイール側に押し、プレッシャプ レートとフライホイールとの間にクラッチディスクを挟持してクラッチ連結状態 となっている。そしてクラッチを解除する際には、プルタイプクラッチでは、ダ イヤフラムスプリングの内周部をレリーズ装置によりトランスミッション側に引 き出す。

【０００３】 このようなプルタイプクラッチに用いられるレリーズ装置では、一般に、レリ ーズベアリングのインナーレースが軸方向に延び、ダイヤフラムスプリングの内 周部に固定されたレバープレートを通過してさらに内部に進入している。そして 、この延長部とレバープレートとが連結機構で連結されており、インナーレース の延長部はレバープレートに対して着脱自在となっている。

【０００４】 しかし、このようなレリーズ装置では、ベアリングが軸方向に長く延びており 、またベアリング本体とレバープレートとの間が長くなっている。ベアリングを 調心する向心力はレバープレートの位置で発生するために、このようなレリーズ 装置においてはベアリングに対する向心力の伝達が弱くなり、ベアリングの首振 り現象とともにベアリングを保持するクイルカップの揺動現象が発生してしまう 。

【０００５】 そこで、図４に示すように、レリーズベアリング１０１がダイヤフラムスプリ ング１０２の内周側の軸方向前方（図４の左側）に配置されたプルタイプクラッ チ用レリーズ装置が知られている。ここで、Ｏ−Ｏは回転中心線である。ダイヤ フラムスプリング１０２の内周端部は、レバープレート１０３を介して、レリー ズベアリング１０１のアウターレース部１０４に固定されている。レリーズベア リング１０１のインナーレース部１０５は、筒状のリテーナ１０６に支持されて いる。リテーナ１０６は、連結機構を１０７を介して、スリーブ１０８に取り付 けられている。

【０００６】 このような装置では、図示しない駆動機構によって、スリーブ１０８が軸２１ に沿って移動されると、リテーナ１０６及びレリーズベアリング１０１等を介し て、ダイヤフラムスプリング１０２の内周部が同方向に移動し、クラッチの連結 ・解除動作が行われる。

【０００７】

【考案が解決しようとする課題】

前記従来のプルタイプクラッチ用レリーズ装置では、クラッチとトランスミッ ションとの間で中心がずれて配置されると、すなわち両者の配置に角度方向にミ スアラインメントが生じると、ダイヤフラムスプリング１０２とスリーブ１０８ との間に配置されたレリーズベアリング１０１等に無理な力がかかり破損する等 、レリーズ装置の耐久性が低下する。また、レリーズベアリング１０１は、ダイ ヤフラムスプリング１０２の内周端部の軸方向前面に固定されているため、レリ ーズ装置の全体の軸方向の長さが長くなってしまう。

【０００８】 本考案の目的は、クラッチとトランスミッションとの角度方向の位置ずれを吸 収しレリーズ装置の耐久性を向上させることができるとともに、軸方向の寸法を 短くできるプルタイプクラッチ用レリーズ装置を提供することにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】

本考案に係るプルタイプクラッチ用レリーズ装置は、ダイヤフラムスプリング の内周部をトランスミッション側に引き出すことによりクラッチを解除するため のものである。

【００１０】 この装置は、スリーブと、レリーズベアリングと、受け部と、連結機構とを備 えている。スリーブは、ダイヤフラムスプリングの中心部に配置され、軸方向に 移動自在となっている。レリーズベアリングは、ダイヤフラムスプリングの内周 端部とスリーブとの間に配置されており、ダイヤフラムスプリングの内周端部が 固定されたアウターレース部と、装置の偏位中心側に中心を有する凹の球面を内 周側に有するインナーレース部とを含んでいる。受け部は、インナーレース部の 球面に摺動可能に圧接する凸の球面を有している。連結機構は、受け部とスリー ブとを連結する機構である。

【００１１】

【作用】

本考案に係るプルタイプクラッチ用レリーズ装置において、スリーブに連結機 構を介して連結された受け部は、装置の偏位中心側に中心を有する凸の球面の部 分において、レリーズベアリングのインナーレース部の凹の球面と摺動可能であ る。そのため、クラッチとトランスミッションとが、中心がずれた状態で配置さ れたとしても、受け部がレリーズベアリングのインナーレース部に対して摺動し て角度方向のミスアラインメントを吸収する。したがって、レリーズベアリング 等に無理な力がかかることはなく、レリーズ装置の耐久性が向上する。

【００１２】 また、本考案に係るプルタイプクラッチ用レリーズ装置においては、レリーズ ベアリングがダイヤフラムスプリングの内周端部とスリーブとの間に配置されて いるので、レリーズ装置の軸方向の寸法を短くできる。

【００１３】

【実施例】

図１は、本考案の一実施例が採用されたプルタイプクラッチを示している。こ こで、Ｏ−Ｏは回転中心線である。図１において、このプルタイプクラッチは、 主として、クラッチカバー組立体１と、クラッチディスク２と、レリーズ装置３ とから構成されている。

【００１４】 クラッチカバー組立体１は、エンジン側のフライホイール４に固定されたクラ ッチカバー５と、クラッチカバー５の内側に配置されたプレッシャプレート６及 びダイヤフラムスプリング７とを有している。ダイヤフラムスプリング７は、そ の外周端部がクラッチカバー５に支持され、さらにその内周側の部分でプレッシ ャプレート６をフライホイール４側に圧接している。また、ダイヤフラムスプリ ング７は、径方向の中間部から内周部にかけて放射状のスリットを備えており、 内周端部７ａがレリーズ装置３に連結している。

【００１５】 クラッチディスク２は、その外周部である摩擦フェーシングがフライホイール ４とプレッシャプレート６との間で挟持されるようになっている。クラッチディ スク２の中心には、トランスミッション側のメインドライフシャフト９がスプラ イン係合している。

【００１６】 クラッチカバー１の後方（図１の右側）には、ミッションハウジング１０が配 置されている。クラッチディスク２にスプライン係合するメインドライブシャフ ト９の後部は、ミッションハウジング１０内に延びている。ミッションハウジン グ１０の前端部には、クラッチカバー１及びフライホイール５等を外周側から覆 うクラッチハウジング１１がミッションハウジング１０と一体に設けられている 。また、ミッションハウジング１０の前壁１０ａには、その中心部にカラー１２ が配置されている。カラー１２は前方に突出して設けられており、メインドライ ブシャフト９は、カラー１２内を挿通している。

【００１７】 次に図２において、レリーズ装置３を詳細に説明する。 筒状のスリーブ１３は、カラー１２の外周側に軸方向にスライド自在に嵌合し ている。このスリーブ１３にはレリーズレバーの先端が連結されており、外部か らの操作によりスリーブ１３は軸方向に移動させられる。スリーブ１３の軸方向 前方に延長された延長部１３ａには、連結機構であるウェッジカラー１４及びワ イヤリング１５を介して、受け部１６が連結されている。受け部１６は、偏位中 心（図１のＢ点）に中心を有する凸の球面１６ａを軸方向後方に有している。受 け部１６とダイヤフラムスプリング７の内周端部７ａとの間には、レリーズベア リング１７が配置されている。レリーズベアリング１７は、インナーレース１７ ａと、アウターレース１７ｃとを有している。受け部１６の球面１６ａは、レリ ーズベアリング１７のインナーレース１７ａの凹の球面１７ｂに摺動可能に当接 している。両球面１６ａ，１７ｂは、図１におけるメインドライブシャフト９の 先端Ｂ点を中心とする半径Ｒの球Ｃの一部となっている。ここで、メインドライ ブシャフト９の前端部（図１の左端部）は、フライホイール４の内周部にボール ベアリング４ａを介して支持されている。したがって、クラッチに対するメイン ドライブシャフト９の角度方向のミスアラインメントは、Ｂを中心として生じる ことになる。このミスアラインメントの中心点Ｂが、球面１６ａ，１７ｂの中心 となっている。

【００１８】 ダイヤフラムスプリング７の内周側には、レバープレート１８が配置されてい る。レバープレート１８は、内部にレリーズベアリング１７を収容するようにキ ャップ状に形成されており、胴部１８ｄと、胴部１８ｄの一端側に内周側に突出 する内フランジ部１８ａと、他端側に外周側に突出する外フランジ部１８ｂとを 有している。胴部１８ｄには、複数箇所に窓部１８ｃが形成されている。また、 外フランジ部１８ｂはダイヤフラムスプリング７の内周端前面に係止し、内フラ ンジ部１８ａはレリーズベアリング１７のアウターレース１７ｃの一側面と当接 している。レバープレート１８の胴部１８ｄ外周とダイヤフラムスプリング７の 内周端との間、及び胴部１８ｄ内周とアウターレース１７ｃとの間には、それぞ れ隙間が設けられており、これらにより半径方向の位置ずれが吸収できるように なっている。

【００１９】 レバープレート１８の軸方向前方には、レバープレート１８とともにレリーズ ベアリング１７を収容するようにサポートプレート１９が配置されている。サポ ートプレート１９は円盤ドーナッツ状の部材であり、円盤本体１９ａと、円盤本 体１９ａから外周側において軸方向後方に突出した複数の爪１９ｂと、爪１９ｂ の先端において外周側に折り曲げられた折曲げ部１９ｃとを有している。爪１９ ｂはレバープレート１８の窓部１８ｃに内周側から挿通され、折曲げ部１９ｃが レバープレート１８の外周側でダイヤフラムスプリング７の後方に突出している 。なお、爪１９ｂは外周側へのばね力を有している。折曲げ部１９ｃとダイヤフ ラムスプリング７との間にはコーンスプリング２０が配置されており、このコー ンスプリング２０が折曲げ部１９ｃを後方に付勢している。つまり、サポートプ レート１９全体が軸方向後方に付勢されていることになる。サポートプレート１ ９の円盤本体１９ａとレリーズベアリング１７のアウターレース１７ｃとの間に は、樹脂リング２１が配置されている。この樹脂リング２１を介して、レリーズ ベアリング１７がサポートプレート１９により、レバープレート１８の内フラン ジ部１８ａに押圧されていることになる。なお、レリーズベアリング１７のアウ ターレース部１７ｃは、樹脂リング２１上を摺動して径方向に移動が可能である 。

【００２０】 このような構成のレリーズ装置では、コーンスプリング２０のばね力によって 、サポートプレート１９及び樹脂リング２１を介してレリーズベアリング１７が 後方に押され、これによりレバープレート１８の外フランジ部１８ｂがダイヤフ ラムスプリング７に押圧されている。したがって、スリーブ１３を後方に付勢す る力（プリロード）を与えなくても、レバープレート１８が所定の位置に支持さ れることとなり、位置ずれを起こすことがない。このため、レバープレート１８ の磨耗等を抑えることができる。

【００２１】 また、受け部１６の前端とサポートプレート１９の円盤本体１９ａとの間には 、軸方向に所定の隙間が確保されている。この隙間によって、受け部１６がイン ナーレース１７ａに対して摺動したときにも、受け部１６がサポートプレート１ ９に当接することはない。

【００２２】 次に、レリーズ装置を組み付ける際の工程を説明する。

【００２３】 まず、ダイヤフラムスプリング７に、レバープレート１８及びコーンスプリン グ２０を装着しておく。次に、レリーズベアリング１７、受け部１６及び樹脂リ ング２１をレバープレート１８内にセットする。そしてさらに、サポートプレー ト１９を、その爪１９ｂをレバープレート１８の窓部１８ｃに位置合わせしなが ら、前方から挿入していく。すると、爪１９ｂが内側に弾性変形しながらダイヤ フラムスプリング７及びコーンスプリング２０内周を通過し、その後、ばね力に よって外側に拡がって、図１及び図２に示す状態にセットされる。

【００２４】 組立が完了した状態で、図３に示すように、本来の中心位置Ｃ１からずれた中 心位置Ｃ２の状態でトランスミッションが配置される場合がある。この場合には 、受け部１６の球面１６ａがレリーズベアリング１７のインナーレース１７ａの 球面１７ｂに対して摺動することにより、角度方向のミスアライメントが吸収さ れる。このとき、受け部１６の軸方向前部とサポートプレート１９との間には充 分な隙間が確保されているため、両者が当接して破損が生じることはない。

【００２５】 またこのような組立時において、クラッチとトランスミッションとが径方向に ずれて配置されたときに、サポートプレート１９とレリーズベアリング１７のア ウターレース１７ｃとの間の隙間によって、径方向のミスアラインメントが吸収 される。

【００２６】 以上のように、この実施例では、クラッチとトランスミッションとの中心が角 度方向及び径方向にずれて配置されたとしても、レリーズベアリング１７等の連 結部分に無理な力がかからなくなり、レリーズ装置３の耐久性が向上する。

【００２７】 さらに、ダイヤフラムスプリング７とレバープレート１８の中心位置がずれて 配置された場合にも、両者の径方向の隙間がミスアラインメントを吸収する。さ らにまた、ダイヤフラムスプリング７とレバープレート１８とは、コーンスプリ ング２０及びサポートプレート１９により弾性的に連結されているため、スリー ブ１３に対するフロリロードの有無にかかわらず、がたつきを防止して信頼性を 向上させている。

【００２８】 また、この実施例では、レリーズベアリング１７をスリーブ１３とダイヤフラ ムスプリング７の内周端部７ａとの間に配置したので、レリーズ装置３の軸方向 の寸法を短くできる。このことにより、クラッチ全体の軸方向の寸法を短くする ことが可能となる。

【００２９】

【考案の効果】

本考案に係るプルタイプクラッチ用レリーズ装置では、偏位中心側に中心を有 する凹の球面を内周側に有するインナーレース部を含んだレリーズベアリングと 、インナーレース部の球面に摺動可能に圧接する１つの球面を有する受け部とが 備えられている。したがって、本考案で、トランスミッションの取付け時に生じ る角度方向のミスアラインメントを吸収でき、耐久性が高いプルタイプクラッチ 用レリーズ装置を実現できる。

【００３０】 また、本考案に係るプルタイプクラッチ用レリーズ装置では、レリーズベアリ ングはダイヤフラムスプリングの内周端部とスリーブとの間に配置されている。 したがって、本考案では、レリーズ装置の軸方向の寸法を短くできる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例が採用されたプルタイプクラ
ッチの縦断面図。

【図２】レリーズ装置の縦断面部分図。

【図３】トランスミッションとクラッチとのミスアライ
ンメントの状況を示す縦断面図。

【図４】従来例の縦断面部分図。

【符号の説明】

２ クラッチ ７ ダイヤフラムスプリング ７ａ 内周端部 １３ スリーブ １４ ウェッジカラー １５ ワイヤリング １６ 受け部 １６ａ 球面 １７ レリーズベアリング １７ａ インナーレース １７ｂ 球面 １７ｃ アウターレース

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】ダイヤフラムスプリングの内周端部をトラ
   ンスミッション側に引き出すことによりクラッチを解除
   するためのプルタイプクラッチ用レリーズ装置であっ
   て、前記ダイヤフラムスプリングの中心部に配置され、
   軸方向に移動自在なスリーブと、前記ダイヤフラムスプ
   リングの内周端部と前記スリーブとの間に配置され、前
   記ダイヤフラムスプリングの内周端部が固定されたアウ
   ターレース部と、装置の偏位中心側に中心を有する凹の
   球面を内周側に有するインナーレース部とを含むレリー
   ズベアリングと、前記インナーレース部の球面に摺動可
   能に圧接する凸の球面を有する受け部と、前記受け部と
   スリーブとを連結する連結機構と、を備えたプルタイプ
   クラッチ用レリーズ装置。