JPH038437Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔考案の技術分野〕 本考案は枚葉輪転印刷機において版胴の周面に
装着する刷版の両端を咥えて保持する版万力装置
に関するものである。

〔従来技術〕

枚葉輪転印刷機の版胴には、その全長に及ぶ切
欠きが胴周面に設けられており、この切欠き内に
は胴周面に装着する印刷用の版を咥えて保持する
版万力装置が設けられている。この種の版万力装
置は一般に版の一端を咥える咥え側の版万力と、
これに咥えられて胴周面に巻き付けられた版の他
端を咥える尻側の版万力とを備えており、これら
両側の版万力はほゞ同じ構成を有している。

第１図は従来におけるこの種の版万力装置の尻
側版万力を示す平面図、第２図は第１図のＡ視拡
大正面図であつて、これを同図に基いて説明する
と、版胴１の外周部にはその全長に及ぶ切欠き２
が設けられており、版胴１の両端には円板状のベ
アラ３が切欠き２の開口部を閉塞するようにして
一体的に設けられている。切欠き２は円周方向の
中央部に設けた隔壁４を境にして咥え側の切欠き
２ａと尻側の切欠き２ｂとに分割されており、尻
側の切欠き２ｂ内には全体を符号５で示す尻側の
版万力が設けられている。この版万力５は、胴長
中心線Ｌを中心にしてその胴長方向両側が対称形
に形成されており、図はその片側半分を示してい
る。そして版万力５は、中心線Ｌの両側にまたが
る中央部の万力台６と、その胴長両側に延びる左
右の万力台７とを備えており、万力台６と万力台
７との間には、第２図に拡大して示すように両方
の万力台６，７の段部と係合してその上方への浮
き上りを押えるガイド８がボルト９によつて切欠
き２ａの底面に固定されている。各万力台６，７
には押え板１０がボルト１１によつて揺動自在に
装着されており、この押え板１０と万力台６，７
との間に版１２の端を咥えさせ、押え軸の大径部
１３をハンドルで回動させることにより版１２が
強固に咥えられるように構成されている。また、
万力台７にはその胴軸方向への位置決めをするた
めのボルト１４，１５が万力台７とガイド８とに
螺入されているとともに、各万力台６，７には版
締めのためのボルト１６，１７が設けられてい
る。そして図示しない咥え側の版万力に一端を咥
えられた版１２は、版胴１の周面に巻き付けられ
たのち他端を尻側の版万力５に咥えられ、このあ
とボルト１６，１７を回動させることにより、版
万力５全体が円周方向へ平行移動し、これによつ
て版締めが行なわれて版１２が版胴１の周面に密
着する。１８は万力台６，７に挿通され版万力５
全体を隔壁４から離間させる方向に付勢する圧縮
コイルばね１９を備えたガイドピンである。そし
て上記版締め作業は版１２を装着するときにのみ
行なわれるものではなく、多色刷機においては各
色の印刷ユニツトの版胴１とゴム胴とが印圧を受
けながら回転すると版１２が円周方向へ伸びて各
色間の印刷画像がずれてくることがあり、このと
きも印刷を中断して版締めが行なわれる。そして
この印刷中の版締めやあるいは１枚の版に多面付
の焼付けをした場合の誤差修正などの場合には、
刷版１２を部分的に円周方向へ移動させなければ
ならないので、前述したように版万力５が胴軸方
向に分割されている。

しかしながら、このような従来の版万力装置に
おいては、中央部の万力台６と左右の万力台７と
が完全に分離しているため、すべての万力台６，
７をいつせいに平行移動させたい場合に例えば中
央側のボルト１７を締めて万力台６を移動させて
も他の万力台７がこれに追従せず、版１２が万力
台６，７の分割箇所で変形してしまう。そこでこ
の変形を起こさせないためには各ボルト１６，１
７を交互に少しづつ回動させることを繰返さなけ
ればならないので、きわめて作業性が悪く非能率
的であつた。

〔考案の概要〕

本考案は以上のような点に鑑みなされたもの
で、胴軸方向に分割した版万力を締結ボルトで一
体化して、このボルトを弛めることにより版万力
を互に屈曲可能にし、隣接する版万力間に調整ボ
ルトを設けて互の屈曲角度を微調整できるように
構成することにより、刷版の装着時には全版万力
を一体的に移動させて版締め時間の短縮を計り、
見当合わせ時等には各版万力を個々に移動させて
版分割部の変形防止を計つた枚葉輪転印刷機の版
万力装置を提供するものである。以下、本考案の
実施例を図面に基いて詳細に説明する。

〔実施例〕

第３図および第４図は本考案に係る版万力装置
の実施例を示し、第３図はこれを実施した版胴の
尻側切欠きの平面図、第４図は第３図のBB拡大
断面図である。図において、版胴２１の外周部に
はその全長に及び尻側の切欠き２２と咥え側の切
欠き２３とが隔壁２４を挾んでその両側に設けら
れており、また版胴２１の両端には円板状のベア
ラ２５が切欠き２２，２３の開口部を閉塞するよ
うにして一体的に設けられている。尻側の切欠き
２２内に配設された尻側の版万力２６は、胴長中
心線L₁を中心にしてその胴長方向両側が対称形
に形成されており、図はその片側半分を示してい
る。版万力２６は、中心線L₁の両側にまたがる
中央部の万力台２７と、その胴長方向両側に延び
る左右の万力台２８とに分割されており、中央部
の万力台２７の左右両端部には、切欠き２７ａが
それぞれ設けられている。また、左右の版万力２
８の胴中央側の端部には切欠き２７ａと係合する
突片２８ａが設けられており、この係合部はボル
ト２９によつて締結されている。そして、ボルト
２９を緊締することにより両万力台２７，２８が
一体化されて直線状になるように切欠き２７ａと
突片２８ａとの係合面が仕上げ加工されている。
またボルト２９を弛めることにより、隣接する万
力台２７と万力台２８とは互に屈曲が可能となる
ように構成されている。そして左右の万力台２８
には横調整用のボルト３０が、ベアラ２５側側端
面に螺入されており、また、中央の万力台２７に
は同じく横調整用のボルト３１が、両端面の幅方
向中央部に螺入されている。なお、ボルト３１の
頭は、万力台２７の端部を切欠くことによつて形
成された空間部内に位置している。こうすること
によりボルト２９の緊締時には、左右のボルト３
０を回動調節することによつて万力台２７，２８
が一体となつて胴軸方向に移動調節され、またボ
ルト３０を弛めたのちボルト３１を回動させるこ
とにより万力台２７と万力台２８とが互に屈曲す
る。そしてボルト３１の回動回数にしたがつて屈
曲角度が微調節される。

版万力２６は従来周知の版咥え機構を備えてい
る。すなわち、万力台２８にはこれとほゞ同長の
押え板３２、また万力台２７には中心線L₁を境
とする一対の押え板３３がそれぞれ押えボルト３
４によつて取り付けられており、押え板３２，３
３と押えボルト３４との係合部をかまぼこ形に形
成することにより、押え板３２，３３が揺動自在
に形成されている。なお、中央部の押え板３３に
は前記ボルト３１を回動させるための切欠きが設
けられている。符号３５で示すものは、各押え板
３２，３３に対応して万力台２７，２８の長手端
縁部に軸支された押え軸であつて、押え板３２，
３３中央部の切欠きと係合する大径部３５ａを備
えており、また大径部３５ａを除く全長にわたる
切欠き３５ｂを備えている。そして大径部３５ａ
の周面に設けたハンドル孔へハンドルを挿入して
回動させることにより、押え板３２，３３の端縁
が押え軸３５の円弧部と対向したときには押え板
３２，３３の先端部が万力台２７，２８に押圧さ
れ、また押え板３２，３３の端縁が押え軸３５の
切欠きと対向したときには図示しないばね部材の
弾発力により押え板３２，３３の先端部が万力台
２７，２８に対して開口される。このようにして
押え板３２，３３が開閉することにより、版３６
の端が咥えられる。

さらに版万力２６にはこれを版胴２１の円周方
向へ移動させて位置決めと版締めを行なう引張り
ボルト３７が、左右の万力台２８に各１個と中央
の万力台２７に２個との計４個設けられており、
この引張りボルト３７は先端を切欠き２２の壁面
に当接させて万力台２７，２８の長手方向側端面
に螺入されている。また、同じ側端面からはピン
３８が頭部を隔壁２４に当接させて挿入されてお
り、その頭部と万力台２７，２８との間には版万
力２６を隔壁２４から遠ざける方向に付勢する圧
縮コイルばね３９が介装されている。４０は切欠
き２２の底面に固定され万力台２７，２８裏面の
溝と係合して万力台２７，２８の浮き上りを係止
するガイドである。なお、咥え側の切欠き２３内
にもほゞ同構成の版万力が版万力２６と対称状態
で配設されている。

以上のように構成された版万力装置の動作を説
明する。先ず咥え側の版万力の動作を尻側版万力
２６の符号を用いて説明すると、ボルト２９を緊
締することによつて一体化された咥え側の版万力
は隔壁２４と万力台２７，２８との間にブロツク
ゲージなどを挿入することによつて胴軸芯に対し
平行に位置決めされ、ボルト３０でベアラ２５に
突つ張らせることと、引つ張りボルト３７を回動
させてその先端を切欠き２３の壁面に当接させる
こととによつて位置決め箇所に固定される。そこ
で押え軸３５の大径部３５ａ周面のハンドル孔に
ハンドルを挿入して回動させ、押え板３２，３３
を開閉させることによつて版３６の咥え端を押え
板３２，３３と万力台２７，２８との間で咥えさ
せる。そして版３６を保持して版胴２１を寸動さ
せるとほゞ１回転して版３６が胴周面に巻き付け
られ、尻側の切欠き２２が作業者に対向する。そ
こで咥え側と同様にして版３６の他端を押え板３
２，３３と万力台２７，２８との間で咥えさせ
る。このときボルト２９は緊締されていて版万力
２６が一体化されているので、両端の引張りボル
ト３７を交互に回動させることによりその先端が
切欠き２２の壁面を押しながら版３６が移動し、
版３６が締められて胴周面に密着する。中央部の
引張りボルト３７は、先端が軽く切欠き２２の壁
面を押すまで締めておけばよく、また左右のボル
ト３０は頭部がベアラ２５に軽く押されるまで回
動させる。こうすることによつて版３６の装着作
業が完了する。

次に印刷作業中、印圧を加えられながら回転を
繰返すことにより版３６が不均一に伸びて印刷物
天地方向の見当が４色の各印刷ユニツト間でず
れ、しかもそれが版胴２１の軸方向に対して差が
できる場合があるので、この場合には、機台を停
止させて各万力台２７，２８ごとの調節を行な
う。すなわち、ボルト２９とボルト３０および両
端の引張りボルト３７を弛めて連結部のボルト３
１を回動させると、中央部の万力台２７が固定さ
れたまゝ左右の万力台２８が連結部を中心に回動
して両万力台２７，２８が互にわずかに屈曲した
状態となり、この屈曲角度はボルト３１の回動回
数によつて決められる。こうすることにより版３
６の天地方向の見当が部分的に調節されるので、
調節後は両端部の引張りボルト３７とボルト３０
およびボルト２９を締めておく。なお、この調節
は３個の万力台２７，２８のうちいずれか１個を
固定して他の２個を移動させてもよく、またいず
れか２個を固定して残りの１個を移動させてもよ
い。また、版３６の装着時においても、多面付の
版などで部分的な見当調節の必要がある場合に
は、上記と同様にして調節することができる。

なお、本実施例においては版万力を胴軸方向に
３分割した場合を例示したが、分割数を限定する
ものではない。

〔考案の効果〕

以上の説明により明らかなように、本考案によ
れば枚葉輪転印刷機の版万力装置において、版万
力を胴軸方向に分割して分割部をボルトで連結
し、このボルトを締めたり弛めたりすることで分
割版万力を選択的に一体化したり相互に屈曲可能
にしたりするように構成することにより、版の装
着時等においては版万力全体を一体化して版の咥
え作業と版締め作業とを行なうことができるの
で、分割部において版が変形せず版の見当精度と
耐用性が向上するとともに、ボルトの回動調節が
容易になつて作業時間が短縮され、作業能率の向
上と労力の軽減を計ることができる。また、印刷
中の見当ずれや、印刷画像の状況によつては胴軸
方向の任意の箇所を選択して版の見当を部分的に
調節することができるので、見当精度が向上し最
良の印刷物が得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図および第２図は従来における枚葉輪転印
刷機の版万力装置を示し、第１図は尻側版万力の
胴軸方向側半部の平面図、第２図は第１図のＡ視
正面図、第３図および第４図は本考案に係る枚葉
輪転印刷機の版万力装置の実施例を示し、第３図
はこれを実施した版胴の尻側版万力の胴軸方向片
側半部を示す平面図、第４図は第３図のBB断面
図である。 ２１……版胴、２６……版万力、２７，２８…
…万力台、２７ａ……切欠き、２８ａ……突片、
２９……ボルト、３１……ボルト。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 版万力を胴軸方向へ複数個に分割するととも
   に、緊締時に隣接版万力を直線状に一体化し弛緩
   時に隣接版万力を互に分割部で屈曲可能にする締
   結ボルトにより前記分割された各版万力を連結
   し、前記屈曲角度を微調整するボルトを前記隣接
   版万力間に設けたことを特徴とする枚葉輪転印刷
   機の版万力装置。