JPH0367155B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

（産業上の利用分野） 空気入りゴムタイヤやコンベアベルトなどを典
型例として、一般にゴム又はゴム状弾性材料によ
る成形体内部への埋入に供してゴム物品の強化を
司るスチールコードの改良に関してこの明細書に
述べる技術内容は、上記ゴム物品補強用スチール
コードの主として強力効率、さらに耐疲労性の向
上を目指した開発成果であり、ゴム又はゴム状弾
性材料を主体とする複合材料に関連した技術の分
野に位置している。 （従来の技術） この種の補強用スチールコードに関し、その全
フイラメントにつき、同一撚り方向でかつ同一撚
りピツチの撚り構造を有するスチールコード、い
わゆるコンパクトコードが最近注目されている。 それというのは、上記の撚り構造においてフイ
ラメント相互間が完全に線接触をして在来のスチ
ールコードにおけるフイラメントの点接触に由来
した、いわゆるフレツテイング摩耗の不利が回避
され得るからである。ところが従来この種のスチ
ールコードの撚り合わせには専ら、いわゆるバン
チヤータイプ撚り機が主として生産性の点から利
用されて来たため、その撚り機構上、フイラメン
トに捩り成分を入れる撚合わせが行われたのであ
る。 （発明が解決しようとする問題点） 発明者らは、この種のコード開発、テスト生産
を経てゴムとの複合体としての諸性能解明に努力
を傾けつつあるが、上掲した従来のコンパクトコ
ードには、複合体として以下のべるような欠点を
もつことが究明された。 その一つは耐疲労性、他の一つは接着安定性に
関連し、これらの問題については、ゴム複合成形
体のなかでも、とくに過酷な負荷条件で使用され
るトラツクおよびバス用のスチールラジアル空気
入りゴムタイヤの性能試験を実際に行つて発見さ
れた。 すなわちスチールコードによるベルト又はプラ
イの、コード疲労破壊によるタイヤバーストおよ
びゴムとコードとの接着性低下によるセパレーシ
ヨンの形にて、いわゆる複合体機能の喪失を来た
してしまい、もちろんかような挙動はゴムタイヤ
に限らずして、コンベアベルトや高圧ホースその
他、スチールコードによる強化、補強を施すゴム
物品においても発生するのは明らかである。 一方において、上記の如きスチールコードを生
産する立場においては、上掲バンチヤータイプ撚
り機が１工程撚りにて生産性が高いと云われて来
たにも拘らず、実際工程に供したとき、しばしば
フイラメント断線による稼動率の低下が予想以上
に甚しく、生産性についてすら、問題を残してい
ることが明らかとなつたのである。 このような問題点に関しその原因糾明に務めた
結果、その何れの点もすべて本質的に共通した現
象、すなわちバンチヤータイプ撚に機により撚り
上げられたスチールコードには、各フイラメント
に不可避な捩り成分が導入されていることに起因
することが明らかになつたのである。 つまり耐疲労性の低下は、フイラメントの捩り
成分付加のためフイラメント自体の靭性が低下
し、ゴム物品とくにゴムタイヤの負荷条件下での
繰り返し屈曲変形の下に疲労破壊が促進され、ま
た接着力の不安定はフイラメントに加わつた捩り
応力により表面のブラスめつき層と鉄素地との間
のめつき接合力が低下することに加えてめつき層
の物性低下によつて、ゴムとの間の接着力改善の
効果も減少し、ゴムタイヤの使用条件下にて早期
の接着破壊を来すことによる。 さらに、生産の過程におけるフイラメントの断
線による生産性の低下もまた、上記フイラメント
に導入された捩りに起因していることが明らかと
なつた。 上記した問題点の解決をはかり、スチールコー
ドの耐疲労性の改善、接着性の安定化及び生産性
の向上を実現しうるゴム物品補強用スチールコー
ドを提案することがこの発明の目的である。 （問題点を解決するための手段） 上記の目的は、次の事項を骨子とするしくみ
で、有利に充足される。 同一撚り方向でかつ同一撚りピツチに複数本の
スチールフイラメントを撚り合わせたスチールコ
ードであつて、各フイラメントが、コアーを含め
た多層撚りスチールコードの全層に必要なフイラ
メント本数に応じるフイラメントボビンを収納し
たチユーブラー撚り機に組合わせた、多層撚りス
チールコードの各層に対応する複数のプリオーマ
ーによる、らせんくせづけ並びに多層撚りスチー
ルコードの各層に対応する複数の撚り合わせガイ
ドによる撚り合わせにより、事実上捩り成分を含
まない撚り構造に成ること、を特徴とするゴム物
品補強用スチールコード。 （作用） チユーブラー撚り機では、これに組合せたプリ
フオーマーによるフイラメントのらせんづけの際
に、コアーを含めた多層撚りスチールコードの各
層に対応して用意する複数のプリフオーマーによ
り、スチールコードの全層に好ましい加工度のら
せんくせづけを行うことができ、塑性曲げ加工の
みで事実上、捩り変形は加わらないため、フイラ
メント自身の靭性劣化がなく、コードとしての疲
労耐久性向上に寄与する。また、フイラメント表
面のブラスめつき層の捩り変形による物性劣化を
きたすことがないので該めつき層によるゴムとの
接着性も阻害されない。さらに、らせんづけ加工
を経たフイラメントの撚り合せ過程において多層
撚りスチールコードの各層に対応する複数の撚合
わせガイドにより、撚り合わせ時に各層のフイラ
メントが入れ替ることなく簡単に安定した、耐疲
労性に優れたコードが得られ、この際フイラメン
ト断線の恐れも少く、生産性の向上にも役立つの
であり、特にコアーを含めて多層撚りスチールコ
ードにつきその全フイラメントを１工程で撚り上
げてしまうので、断線減少とあいまつて著しく生
産性が向上する。 （実施例） 上記構成によるゴム物品補強用スチールコード
を断面について第１図ａ〜ｆに例示した。ａは２
本のフイラメントよりなるコアーのまわりに８本
のフイラメントによりなる外層を有し、ｂは３本
コアー、９本の外層、またｃは、２本のフイラメ
ントのコアを取り囲んで８本フイラメントの第１
外層、14本フイラメントの第２外層そしてｄは、
３本のフイラメントのコアーを取り囲んで、９本
フイラメントの第１外層、15本フイラメントの第
２外層、またｅは、４本コアーのまわりに10本フ
イラメントの外層、ｆは６本コアーのまわりに、
12本フイラメントの外層をそれぞれ有するコンパ
クトタイプスチールコードであり、これらの何れ
についてもこの発明に適合するがこのうちｂを代
表例として、第２図ａにＺ撚りの場合で外観を示
すように、この発明によれば、各フイラメントと
も同一撚り方向でかつ同一ピツチである。この撚
り方向はもちろんＳ撚りでもかまわない。 なお、第２図ｂおよびｃにて同図ａの１本のフ
イラメントについて捩り成分の有無を区別して示
す。 従来のコンパクトタイプスチールコードは、バ
ンチヤー撚り機で撚り合されたで、第２図ｂに鎖
線にて示す捩れ成分が、不可避に導入されたのに
反してこの発明によれば同図ｃにて、２点鎖線に
示すように、事実上捩れ成分は導入されない。 この発明によるゴム物品補強用スチールコード
は、第３図に示すチユーブラー撚り機１に、プリ
フオーマー２を組合せて、ドライブプーリー対３
による張力のもとにガイドローラー４を介し、巻
き取りスプールに至る間にて撚り合わせる。 ここに、チユーブラー撚り機は、スチールコー
ドの各フイラメントにつき、コアーを含めた多層
撚りスチールコードの全層に必要なフイラメント
本数に応じる数のフイラメントボビン１ａ，１
ｂ，…１ｎを収納し、第４図ａ，ｂにその要部断
面を、コアーとそのまわりの単一の外層とよりな
る多層撚りスチールコードの場合について例示し
た。第４図ａにおいて６は、フイラメントボビン
をそのボビンからのフイラメント繰り出し可能に
枢支する支軸を有し、かつチユーブラー撚り機の
軸心上に揺動可能に保持したクレードル、７はク
レードル６に支持したフイラメントガイドローラ
ー、８，９，１０はチユーブラー撚り機に支持し
たフイラメントガイドローラーであり、１１はガ
イドプレート、１２はガイドプレート１１との間
に、ブリフオーマー２を挟む撚り合わせガイドで
ある。 ここにプリフオーマー２は、第４図ｂに示すよ
うにコアーのフイラメントのらせんくせづけをす
るプリフオーマー２ａと、外層のフイラメントの
らせんくせづけのためのプリフオーマー２ｂとよ
りなり、これに応じて撚り合わせガイド１２もコ
アーについての撚り合わせガイド１２ａと外層の
ための撚り合わせガイド１２ｂとからなる。 プリフオーマー２は、第５図に１つのフイラメ
ントパスについて原理を示すように、少なくとも
３本１組をなすくせづけをピン１３，１４および
１５を、それぞれチユーブラー撚り機１の端軸１
６上のカラー１７，１８および１９に突設し、各
ピンの円周間隔の調節可能に各カラーを保持固定
することによつて、各フイラメントボビンから繰
り出されたフイラメント２０を２０′のようにら
せんくせづけするのであり、ここにフイラメント
２０′は事実上捩り成分を含むことなしにスチー
ルコード２１として撚り合わされる。 ここでプリフオーマー２ａとプリフオーマー２
ｂは巻取り方向と同軸上に直列でプリフオーマー
２ａとプリフオーマー２ｂの順に配置し、プリフ
オーマーで加工される位置が撚り機回転軸からの
距離でプリフオーマー２ｂ、プリフオーマー２ａ
の順に異なるようにすることで、好都合に、各々
のフイラメントに任意のくせづけができる。 また撚り合わせガイド１２は撚り合わせ方向に
コアーのフイラメントを撚り合わせるガイド１２
ａ、外層のフイラメントを撚り合わせるガイド１
２ｂの順に配置することでガイド１２ａで撚り合
わされたコアーに、外層の各々のフイラメントを
ガイド１２ｂでそれぞれ撚り合わせることで、各
層のフイラメントが第１図に示すよう、そこに入
れ替わることなく所定の位置に安定して配置され
るように撚り合わせることができる。 プリフオーマー２によるフイラメント毎に独立
するらせんくせづけが、撚り合わせたスチールコ
ード２１中のフイラメントにおけるらせん形状に
合致するような加工度を100％として、その前後
20〜200％とくに好ましくは50〜150％の範囲で、
自由に調節することができる。 もちろん100％以下のらせんづけを行うことに
より得られるスチールコード２１は、上記したコ
ンパクトタイプとなり、100％を越えるらせんく
せづけを行うことによつて、フイラメント配列に
乱れを伴うことなく種々なオープンタイプスチー
ルコードが得られ、この場合フイラメント相互間
にゴムのペネトラビリテイが確保され、ゴムとの
接着性の適切な改善によつて、例えばタイヤのカ
ツトに伴う浸水によるコード腐食を有利に回避で
きる。 上記のようにして、コアーを含めた多層撚りス
チールコードの各層に必要なフイラメント本数に
応じる数のフイラメントボビンを収納したチユー
ブラー撚り機１に、多層撚りスチールコードの全
層のフイラメント毎にらせんくせづけを行う複数
のプリフオーマー２ａ，２ｂ、そして多層撚りス
チールコードの各層に対応した複数の撚り合わせ
ガイド１２ａ，１２ｂを組合わせ、フイラメント
のらせんくせづけとスチールコードの撚り合わせ
を行うので、スチールコードの各層毎に最適なフ
イラメントのらせんくせづけが施され、また各層
毎の撚り合わせにより層間でのフイラメントの入
れ替りもなく、フイラメントに加わるらせんくせ
づけ変形は、ほとんど曲げ成分のみで事実上捩り
成分を含まないため、フイラメント自身の靭性劣
化はもちろん、捩りによるせん断応力の残留もな
く、スチールコードの強力効率、耐疲労性さらに
はゴムとの接着性の劣化の如き不利がすつかり排
除され、しかも撚り線加工中の断線による生産性
低下も少い。 この発明に従うゴム物品補強用スチールコード
につき、疲労性試験として、回転曲げ疲労試験、
３ローラー張力曲げ試験と接着性試験として、ピ
ーリングテストおよびトラツク、バス用タイヤの
使用後におけるピーリングテストを行い、以下に
示す成績を得た。 なお、回転曲げ疲労試験は、曲げ曲率半径を10
〜20mmとする回転により破断に至る回転数、また
３ローラーテストは、１端を固定したスチールコ
ードを外径40mmの３個のローラに巻きがけし、他
端はガイドシーブを介してコード強力に応じるお
もりを吊し、３つのローラーをそれらの間に巻き
がけたスチールコードに正負両方向の曲げが加わ
るのに十分なストロークで、コードに沿い横移動
させ、破断に至る往復回数で評価した。

【表】

【表】

【表】 破断率試験 製品スチールコード（１×12×0.23φmm）を１
トン生産する過程での断線率につき、従来のバン
チヤー撚り機による断線率を指数100としたとき、
この発明のスチールコードの断線率の指数は20で
あつた。 以上、この発明の代表的な実施例について説明
したが、フイラメント本数が、19、30、37、44、
48および52のような場合であつても同様な利益が
期待でき、また何れの場合も、さらに必要によつ
てはスパイラルラツピングを行つて製品としても
よい。 （発明の効果） コード形成の際にコアーを含めた多層撚りスチ
ールコードの全層に必要なフイラメントボビンを
収納した、チユーブラー撚り機に組合わせた、多
層撚りの各層に対応する複数のプリフオーマーに
よるらせんくせづけにおいて、ほとんどフイラメ
ント曲げ成分のみで、捩り成分が事実上入らない
ので、フイラメント自身の靭性が向上すること、
フイラメント捩り変形によるメツキ層表面の剪断
変形に基くめつき−鉄地間の結合力低下や、めつ
き物性変化が少なく、高接着性を長期にわたり保
証できること、さらにバンチヤー撚り機における
ような、弾性的捩り戻りを殺す為のオーバーツイ
ストが入らないので、撚り線中の断線が極めて少
なくなり、生産性が向上すること、に加え、全フ
イラメントをコアーも含めた多層撚りスチールコ
ードの各層に対応する複数のプリフオーマーによ
るらせんくせづけ並びに多層撚りスチールコード
の各層に対応する複数の撚り合わせガイドによる
スチールコードの撚り合わせとか、同時に１工程
内で行われることにより、多層構造でも、生産性
が向上する。また同一とされるピツチおよび撚り
方向についても簡単な制御にて容易に達成可能
で、また長手方向のピツチばらつきが完全に抑え
られるので、疲労性のばらつきも減少するほか、
フイラメントのくせづけの制御が容易にでき目的
に応じた全フイラメント、各層、各フイラメント
毎のらせんくせづけが、自由に制御可能となり、
スチールコードのフイラメント間へのゴムのペネ
トラビリテイも容易に確保できる。

【図面の簡単な説明】

第１図ａ〜ｆはこの発明による各別実施例のコ
ード断面図、第２図ａは第１図ｂのものの外観
図、第２図ｂ，ｃは、１本のフイラメントにおけ
る捩り成分の有無を区別して示す説明図、第３図
はチユーブラー撚り機と、プリフオーマーの組合
せによる撚り線要領の説明図、第４図ａ，ｂはプ
リフオーマーの要部の詳細図、第５図はプリフオ
ーマーによるらせんくせづけ要領の説明図であ
る。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 同一撚り方向でかつ同一撚りピツチに複数本
   のスチールフイラメントを撚り合わせたスチール
   コードであつて、 各フイラメントが、 コアーを含めた多層撚りスチールコードの全層
   に必要なフイラメント本数に応じるフイラメント
   ボビンを収納したチユーブラー撚り機に組合わせ
   た、多層撚りスチールコードの各層に対応する複
   数のプリオーマーによる、らせんくせづけ並びに
   多層撚りスチールコードの各層に対応する複数と
   撚り合わせガイドによる撚り合わせ により、事実上捩り成分を含まない撚り構造に成
   ること、 を特徴とするゴム物品補強用スチールコード。