JPH0351912B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は斜板式圧縮機に使用される半球状シユ
ーの改良にかかるものである。

［従来の技術］ 車両空調用に供されている斜板式圧縮は、回転
軸と該回転軸と平行に設けられた複数個のシリン
ダボアを持つシリンダブロツクと該回転軸により
回転される斜板と該シリンダボア内に摺動自在に
嵌合されたピストンと該ピストンと該斜板との間
に介在し、該斜板の回転により該ピストンを往復
運動させる半球状のシユーとで構成されている。
そしてシユーは両頭形ピストンの中央部に設けら
れた凹陥部の相対向する両側面中心部に形成され
た凹状球面にその凸状球面が摺動自在に保持さ
れ、平坦に形成された底面は斜板の摺動面と摺接
する構成となされている。

従来のシユーはピストンと摺接する凸状球面が
単一の曲率半径をもつ球面で形成され、ピストン
側の凹状球面もシユーとほぼ同一あるいは、わず
かに大きな単一の曲率半径をもつ球面となされて
いる。

［発明が解決しようとする課題］ 従来のシユーの凸状球面は、球面全体がピスト
ンの凹状球面とほぼ同一の曲率半径によつて形成
されているため、ピストンとシユーとの当接にお
いて、原理的にシユーの凸状球面により押接され
るピストンの凹状球面には、その底部あるいは開
口部のいずれの部分にもほぼ同一の押圧力が作用
するものと考えられる。しかし、斜板の回転揺動
に伴うシユーの複雑微妙なミソ擦り運動は、軸方
向よりもむしろピストンの凹状球面を拡開する向
きの押圧力として強く作用する。従つて、このよ
うな負荷により凹状球面の開口部近傍がとくに侵
食されやすく、俗に球面摩耗といわれる現象が生
起する。この球面摩耗が進行の度を増すとピスト
ンとシユーとの相対移動が激しくなり、これが振
動、騒音の増大へと発展する。

本発明は、シユーの凸状球面形状を改良するこ
とによりピストンの凹状球面に生ずる球面摩耗を
極力抑えて、圧縮機の耐久性向上に寄与すること
を解決すべき技術課題とするものである。

［課題を解決するための手段］ 本発明は上記課題解決のため、ピストンの一端
に設けられた凹状球面と摺接する凸状球面を有す
る半球状シユーの、少なくとも該シユーの揺動に
よりピストンの凹状球面と係脱を繰返す上記凸状
球面の裾部の球帯部分を、該凹状球面とほぼ同一
の曲率半径をもつて形成された頂部の基準球面よ
り中心方向に退避した避退球面で構成するという
技術手段を講じている。上記基準球面は、シユー
が揺動する場合においても、常にピストンの凹状
球面と摺接している球面部分であり、避退球面
は、同凹状球面との摺接を避回した球帯部分であ
る。なお、避退した該球帯部分は、必要に応じこ
れを常に凹状球面内に存在する凸状球面部にまで
拡延させることができる。

［作用］ 上記避退球面が基準球面よりシユーの中心方向
に避退しているため、摺動時ピストンの凹状球面
とシユーの避退球面との間には比較的大きな空隙
が生じる。これにより所要の表面積をもつ基準球
面で面圧の過大化を防ぎつつ、上述したシユーの
揺動による凹状球面を拡開させる向きに作用する
押圧力を巧みに減殺することができる。従つて、
前記凹状球面の球面摩耗が防止されると同時に、
シユーの揺動に伴つて変転する前記空隙のくさび
作用により、摺接面への潤沢な給油が確保され
る。

［実施例］ 以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明す
る。

第３図は斜板式圧縮機の概略構成を示し、図
中、５１，５２はシリンダブロツクであり、この
シリンダブロツク５１，５２内には回転軸６０が
軸受６１，６２を介して回転自在に軸支され、こ
の回転軸６０に、斜板７０が連結固定されてい
る。そして上記シリンダブロツク５１，５２には
放射状等間隔位置にシリンダボア５３がそれぞれ
形成され、各ボア５３内には、両頭形のピストン
４が摺動自在に嵌合されている。シリンダブロツ
ク５１の前端開口部は、バルブプレート５４を介
してフロントハウジング５５により閉塞され、シ
リンダブロツク５２の後端開口部はバルブプレー
ト５６を介してリヤウジング５７により閉塞され
ている。

上記ピストン４の中央部分には斜板７０の外周
部を跨ぐように凹陥部４ａが形成され、この凹陥
部４ａの軸方向対向面には、それぞれ凹状球面４
０が形成されている。そして斜板７０の摺動面と
凹状球面４０との間には、本発明になるシユー３
が摺接自在に保持され、上記斜板７０の回転運動
をピストン４の往復運動に変換して伝達するよう
になされている。

第１図はピストン４に単一の曲率半径をもつて
形成された凹状球面４０と、これに摺接するシユ
ー３を示したもので、該シユー３は斜板７０の摺
動面と摺接する平坦底面３３とピストン４の球状
凹面４０と摺接する凸状球面３０とを有して半球
状に形成されている。該凸状球面３０は上記凹状
球面４０とほぼ同一の曲率半径をもつ頂部の基準
球面３１と、該凹状球面４０と係脱を繰返す裾野
の球帯部分が、この基準球面３１よりシユー３の
中心方向に避退した避退球面３２とで構成されて
いる。すなわち避退球面３２は、基準球面３１が
常に摺接する凹状球面４０との摺接を避回した球
帯部分である。なお、該避退球面３２は、第１図
に示したシユー３の最大斜傾時において、凹状球
面４０の開口部より中心角θが５〜10°程度の範
囲で常に凹状球面４０内に存在する凸状球面３０
部分まで拡延させることができる。これによつて
凹状球面４０の開口部付近に作用する押圧力は一
層減殺され、球面摩耗は確実に防止される。しか
もシユー３は、なお所要の表面積をもつ基準球面
３１によつて摺接しているので、面圧の過大化に
伴う弊害も全く生じない。第２図はシユー３の傾
角を零とした状態を示すもので、同図に表わされ
た凹状球面４０の開口端における該凹状球面４０
と避退球面３２との仮想空隙Ｄは５〜12μｍ程度
が望ましく、しかも避退球面３２と基準球面３１
との境界部は可能な限りなだらかに変化させてい
くのが好ましい。すなわち、境界部からなだらか
に漸増する適度な空隙は、シユー３の揺動により
大小さまざまな形態に変転してくさび作用を助長
し、摺動する基準球面３１の接触界域へ効果的に
潤滑油を供給する。また、平坦底面３３及び基準
球面３１の中心部に潤滑油保持のための油溜孔３
３ａ，３１ａをぞれぞれ設けることも好ましい。
この油溜孔３３ａ，３１ａの開口部直径は１〜
3.5mm程度が良好である。

［発明の効果］ 以上詳述したように本発明は、半球状シユーの
凸状球面を、ピストンの凹状球面とほぼ同一の曲
率半径をもつて形成された頂部の基準球面と、少
なくともシユーの揺動によつて該凹状球面と係脱
する裾野の球帯部分を含む避退球面とで構成した
ものであるから、避退球面の形成により凹状球面
の開口部近傍にかかる負荷は巧みに減殺されて、
同部の球面摩耗は確実に防止される。しかも常に
凹状球面と摺接する基準球面は所要の表面積を十
分確保しているので、面圧の過大化に付随しやす
い局部的偏摩耗の生じる虞れも全くない。また、
凹状球面と避退球面との間に形成される漸増空隙
がシユーの揺動に基づいて変転することにより、
くさび作用が助長されて摺接界域へ効果的に潤滑
油が供給されるので、圧縮機の耐用度を一層向上
させることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図及び第２図は本発明実施例のシユーと、
このシユーと当接する凹状球面をもつピストンと
を示す一部断面図で、第１図はシユーの傾角が最
大、第２図は同傾角が零の状態を示す。第３図は
実施例のシユーを備えた斜板式圧縮機の断面図で
ある。 ３……シユー、３０……凸状球面、３１……基
準球面、３２……避退球面、４……ピストン、４
０……凹状球面。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 斜板式圧縮機の斜板と摺接する平坦底面と、
   ピストンの一端に設けられた凹状球面と摺接する
   凸状球面とを有する半球状シユーにおいて、上記
   凸状球面は頂部に形成された、上記凹状球面とほ
   ぼ同一の曲率半径をもつ基準球面と、少なくとも
   上記シユーの揺動によつて該凹状球面と係脱する
   裾野の球帯部分に形成された、該基準球面より中
   心方向に避退した避退球面とで構成されているこ
   とを特徴とするシユー。 ２ 凹状球面の開口端における該凹状球面と避退
   球面との仮想空隙が５〜12μｍである特許請求の
   範囲第１項記載のシユー。