【発明の詳細な説明】
物体搬送用の搬送装置
発明の分野と先行技術
この発明は、搬送装置と物体との間の推進力伝達係合を構成するための機構を備
え、円形の物体を搬送するための操向可能な搬送装置に関する。この物体はまず
車両のホイールで構成され、車両に固定されたホイールの搬送によって車両の搬
送を生起させるものである。この車両とは、乗用車が主であるが、トラック、バ
ス、トレーラ等の車両であってもよい。
車両の販売および修理等のための場所での車両の搬送は困難な問題である。車両
のエンジンは健康に有害な廃気ガスを放出するので特殊な装置を付設しない限り
、車両輸送用に使用することができない。この装置は通常、車両の排気装置に接
続されたホースを備え、廃気ガスをホースを通して外部へ排出させる。しかるに
これらの装置はきわめて高価につくと共に、車両の輸送時間以外の時間にもエン
ジンを掛けておけるような大きな作業工場で主として使用されるものである。こ
のような廃気排出装置は、高価につくためと審美的考慮により、車両の販売等に
は通用できない。車両販売展示場において廃棄ガスが展張しないようにするため
に、現在ではエンジンの始動と車両の搬送とが手動では行えないようにしている
。換言すれば、顧客がテストランをしたい場合には、しばしば顧客に手伝っても
らってディーラ−か車を展示場から外または中へ引いたり押したりして移動させ
ねばならない。この動作はきわめて緊鎖で時間の浪費にもなる。輸送中に車両を
操向せねばならぬ人は、車両を押している間に同時にドアを開いたままで操向し
なければならないので、輸送中の車両の制御が不完全となる。それゆえ展示場に
居る人々を傷けたり、他の車両を損傷する危険が少くない。
車両を搬送させるための操向可能な搬送装置の実例は、従来多種のものが知られ
ていて、救急車、レッカー車その他の実例をあげることができるか、これらは屋
内にある車両の搬送を主目的とするものではない。
発明の概要
この発明の目的は、特に例えば車両の販売展示場等の屋内において、物体および
特定の車両を移動させるのに適する操縦可能な搬送装置に関し、軽重量で、車両
をかなり接近して並列させることができ、同時に搬送装置は移動中の車両を適切
に制御しなければならない。さらに車両以外の物体の搬送にも適することが必要
とされる。
この目的は、基本的に添付の特許請求の範囲1によって規定された発明によって
達成される。この発明によって搬送装置を設計すれば、物体あるいは車両の車輪
を挙上するためのきわめて簡単な構造が可能となる。なお搬送装置を請求項2に
よって設計すれば、支持部材の平面を傾斜させることにより、きわめて小動力と
することができる。
その他の有用な実施例は、従属請求項の各々によって実現される。
図面の簡単な説明
以下添付の図面を参照して、この発明の実施例をさらに具体的に説明する。
図1は、この発明の搬送装置の一部破断による側面図で、破線は車両の一部を示
し、図2は、図1の搬送装置の平面図、図3は、異なる実施例の搬送装置の平面
図、図4は、紙ロール等の円形物体搬送用の搬送装置の側面図、図5は、図4の
搬送装置の平面図、図6は、図4の実施例の一変形例の側面図、図7は、図6の
搬送装置の平面図で、さらに図8は、図6の■−■線に沿って切断した断面図で
ある。
好適な実施例の詳細な説明
図1および図2の搬送装置は、図中に破線で図示した車両に当接して推進力を伝
達させるための当接装置1を備える。この当接装置1は、通常は車両の前輪であ
る操向車輪3に当接して、こわを地面から持ち上げる装置である。さらに搬送装
置は、この搬送装置を移動する際に、当接装置1および車輪3を経由して推進力
を車両2に伝達させる。搬送装置および当接装置1は、車両の他の車輪を直接に
駆動せず、これらが、搬送中において接地していても差し支えないようになって
いる。
搬送装置のシャーシ4に設置された当接装置1は、支持部材5とシャーシに可動
に配設された駆動部材6とから成り、車輪に作用させることにより、車輪3と支
持部材5とを、車輪3の少なくとも一部が支持部材5上にあって、それによって
部分的にも支持されるような関係位置に保たしめるようになってしAる。支持部
材5は、車輪3に接触するための上部平面7を備え、この上部平面7は、地面に
かなり接近した位M8から上方に向けて傾斜している。この上部平面7は、傾斜
面を形成するのである。
駆動部材6は車輪3を駆動して、車輪3と支持部材5とが相互に移動し、傾斜面
7により、車輪3が上方に移動し、地面から分離するようになる。図1において
車輪は、記号3゛であるが、接地位置では鎖線で図示されている。また記号3”
の破線は、支持部材5の傾斜面7に沿って遡上しつつある車輪を示す。
駆動部材6は、搬送装置の搬送中には、車輪3が支持部材5に固定された位置か
ら逸脱しないようにされている。後に詳述するが、駆動部材6は回転自在に軸支
されたローラより成るものが適切であり、さらに搬送装置のシャーシ4に支承さ
れていれば、一層好適である。
長さの可変な駆動機構9により、駆動部材6は、図2中に実線で図示された不作
動位置から、破線で表示された6′または6”の作動区域へと移動が可能である
。不作動位置では駆動部材6により、支持部材5に近い車輪3の外周面と支持部
材5とが互いに接近するような位置に置かれるが、作動区域では駆動部材6が、
車輪3を支持部材5に当接する位置まで駆動すると共に、その位置に保持させる
。
搬送装置のシャーシ4は、相互に一定の間隔に位置される2個の製梁1O111
を備え、これらは車輪3の各々の側に位置されている。支持部材5は、図示の如
く製梁1O111の間に配列され、さらに駆動部材6は、製梁の自由端付近にお
ける相互間隔を全体あるいは部分的に保持させるように構成されている。
製梁10.11は、その両端に地面に転接するための支持転輪12を備えると共
に、横梁13によって連結されている。支持部材5は搬送装置のシャーシ4に回
動自在に支承され、さらに具体的には支持部材5は、支持部材5に固設されたブ
ラケットの透孔から突出した2本のビン14で形成されるほぼ水平の軸線を中心
として製梁10.11に支承されている。支持部材5は、図示されていない適宜
のストップ部材により、図1での時計方向回転は制止され、反時計方向には回動
可能であり、支持部材5が地上の境界線等に当接した場合に有利である。そのよ
うな場合に、支持部材5がらくに回動できるように、その下面は図1のように後
方に行くに従フて低くなるような傾斜が付与されている。
上部の傾斜面7は、傾斜方向に平行に、すなわち車輪3の平面に平行に配列され
た線条が形成され、支持平面7上にある車輪3が横方向に滑らないようにする。
駆動部材6は、はぼ水平面上を移動することが必要である。
駆動部材6は回動軸15の周りに回動可能である。駆動部材6は、ローラとして
設計され、軸線18に対して回転自在であるが、軸方向には移動不能に支承され
、また軸線15の周りには回動可能である。軸線15を包囲して回転可能なスリ
ーブを、例えば軸線16に固設することもできる。このスリーブにはレバー17
を固定し、その18の位置に駆動機構9の一端が軸支される。駆動機構9の他端
は、搬送装置のシャーシ4のブラケットに軸支される。このブラケットおよび軸
15は、一方の製梁10に固定される。駆動機構9が伸張されると、駆動部材6
は図2中の実線の不作動位置から破線の作動区域へ移動し、駆動部材6は車輪3
に当接する。駆動機構9は、それが成る一定の基準値以上の抵抗を受けたときに
、その動作を停止させるように制御する手段を備えたものが好適である。さらに
は、電動機で駆動されるねしナツト装置を備えた駆動機構9が好適であるが、勿
論他の興なる方式のものを使用してもよい。
シャーシ4の前端部には、方向変換可能な車輪2oが設けられている。これは上
下軸の周りに回動可能なキャリヤ21に連結され、ハンドル23付きの操向レバ
ー22がキャリヤ21に連結されている。それにより地上を歩行する操作員は、
ハンドル23を把持し、操向レバー22を操作して、キャリヤ21と車輪20と
を回転し、搬送装置の移動方向を変えることができる。さらに車輪20は、電動
機等により駆動されることが適切であり、操作員は搬送力を与える必要はなく、
単に搬送装置の方向を制御するだけでよい。モーターは、周知の方法で車輪20
を駆動するように構成されていればよく、特にモーターの駆動を車輪20のハブ
に伝達させるように構成されていれば適切である。シャーシ4の前端のケーシン
グは、搬送装置の電流消費部品に電流を供給する蓄電池を収納する部分24を備
える。前部方向車輪20の両側には、支持輪25が付設され、通常は接地面より
上方にあり、搬送装置が横に傾く傾向がある場合に支持機能を果たすように設け
られる。
製梁10.11の長さは、例えば駆動部材26によって調整できる。すなわち製
梁10.11は、望遠鏡式の部材27、例えば管状部材と、この部材27に挿入
される2個の部材28とが前端シャーシ部に固定されて成る望遠鏡方式の構造を
備える。駆動部材26は例えば前記9と類似の構成より成り、その一端は、部材
27の間の横桟13に対して当接する点と、前端シャーシ部に対して当接する点
とに作用する。駆動部材26を伸縮させることにより、製梁10.11の全長を
変化させることができる。これは、細かい操作には短い方がよく、他方、車両は
長いので製梁10.11も相当の長さが必要があるために、適切である。
駆動機構9と26の制御用、および車輪20の駆動用のモーターの制御用の各操
作部材は、操向レバー22に配設されることが適切である。
支持部材5は上・方突出部30を備え、車輪3に接触することによって支持部材
5上で車輪3が前方へ移動するのを制止する。
駆動部材6は回動動作をするので、回動軸15に最も近い位置にある部分が、最
初に車輪3のタイヤに接触する可能性が大である。そこで駆動部材6が軸15に
最も接近した部分を図示31のように軸15の方向に向けてテーパーを付けるの
が好適であり、このテーパ一部の形状は円形が適切である。車両の車輪3が駆動
部材6に沿って滑らないようにするためには、この車輪3に、駆動部材6の回転
中心線に対して垂直方向に向いた円形突起または凹部を形成することが必要であ
る。実施例においては、突起の方が普通であり、突起は側面を備え、回動軸15
に最も接近した側面は軸から傾斜しており、車輪3のタイヤとの間の緊密な接触
が得られる。
以下この搬送装置の機能について説明する。車両を移動する場合2搬送装置は駆
動部材6か不作動位置にあるので、通常、操向前輪が製梁10.11の間に支持
部材5の8と図示された部位の近くに位置される。駆動機構9は励起されると、
駆動部材6が製梁10.11の間で内側へ回動され車輪3のタイヤに当接して車
輪3を押圧するので、支持部材5の傾斜面7に沿って上昇する。タイヤが停止部
材30に達すると、駆動部材6が回動しようとしても大きな抵抗を受けるので、
駆動機構9の動作が中断された後に、駆動機構9は伸張された状態に保たれ、駆
動部材6は車輪3と接触を保ち、支持部材5と協同して車輪3を挙上した状態に
保持する。駆動部材6は、これは回動可能に設計されているので、それは車輪3
に当接したまま回転することができる。駆動部材6の最終位置は、車輪3の実際
の直径によって異なる。車輪3が挙上された位置では、通常駆動部材6は、図2
の6°と6”との間に位置する。この状態で操作員は車輪20の操作を開始する
ことができ、搬送装置と車輪3を、したがって車両(自動車等)を自由に移動さ
せ、その間に、操向レバー22により、思い通りに搬送装置の方向を変え、制御
することができる。
特に車両2の慣性か、搬送装置の慣性よりも大であるときは、まず挙上動作か優
先的に進行する結果、駆動部材6と車輪3とが当接するときに、支持部材5が車
輪3の下方に押込まれる状態になる。また車両2が搬送装置よりも転勤しやすい
か。
または搬送装置にブレーキか掛かつている場合には、駆動部材6によって駆動さ
れ、車両が支持部材5の傾斜面7に転接して上昇することができる。またこれら
の動作が平行して発生する場合もある。
図3はキャリジの他の実施例て、前記実施例との主要な相違点は、当接機構1°
が、2基の支持部材5°と、駆動機構9゛によって作動される駆動部材6′とか
ら成り、対象とする車両の2個の前輪、特に操向車輪を同時に挙上させる点にあ
る。すなわち車両の前端部全体を挙上させるように構成されている。
当然、搬送装置のシャーシ4の構造も異なり、幅広く構成され、支持部材5°は
シャーシ4°から側方に突出して付設されている。さらに後部支持輪12’は、
支軸32上に回動可能に支承されるのが適切である。支持部材5°はシャーシ4
゛に固定されていてもよく、あるいは前記実施例と同様に、図1および図2中の
部番14と類似の支軸の周りに回動できるものでもよい。いずれの場合でも、支
持部材5°に支持輪33を取付け、シャーシ4が側方に傾斜しやすい場合には、
この支持輪33が地面に当接して支持するようになっている。あるいは必要な場
合は、支持輪33が常に地上に転接しているように構成することもできる。
上記キャリジの主要な利点は、上部傾斜表面7を有する支持部材5.5゛の設計
により、車両の車輪が小動力できわめて効率よく挙上されることである。
図1より明らかな通り、車輪3が挙上された状態において、駆動部材6と車輪3
との接触面は、支持部材5と車輪3との接触面よりも高い位置にある。換言すれ
ば、車輪3が挙上された状態においては、車輪3の中心を通りこの中心線に平行
な鉛直面が、駆動部材6と車輪3との接触面よりも、支持部材5と車輪3との接
触面の方に近い位置にある。よって結論的には、車輪3が挙上された状態におい
ては、支持部材5と駆動部材6との相互の位置関係により、車輪3に作用する車
両の重量および負荷は、その大部分か支持部材5によって生じるということであ
る。換言すれば、車輪3が挙上されているとき、駆動部材6には、車輪と車両の
重量の比較的少ない比率が作用しているので、その駆動部材6が、主として車輪
3の支持部材5からの滑り落ちを防止する役目を完遂することができるのである
。従って傾斜支持面7の最も地面に近い部分は、車輪あるいは物体3に当接すべ
き駆動部材6の一部の下方に位置するので、動力要件がかなり小とされた物体は
支持面7に転接して容易に上昇することができる。支持面7の傾斜角度は、水平
面に対して45°を超えない値で、できれば30°以下が適切であり、さらに2
5°より小であれば最適である。
搬送装置はさらに種々の変形が可能である。種々の変形例においては、駆動部材
6.6°が積極的に車輪3の挙上保持を担うようになっている。しかしながら、
支持部材5を改善することにより、搬送中において搬送装置により車両の車輪の
全部または殆ど全部を上昇保持させることも考えられ、この場合には搬送中に、
駆動部材6.6′が全く変形を受けないか、ごく僅かの変形を受けるだけである
。最後に、変形例において挙上運動中は駆動部材6.6′を同じ作動に位置に置
き、他方、支持部材5の傾斜面7をシャーシに対して移動可能に設計することが
できる。この場合は、支持部材5は車輪3の下方に押し込まれるが、車輪3は依
然として駆動部材6に当接したままであり、駆動部材6は可能な回転性から離れ
て静止する。この構成では、駆動部材6の主なる機能は車輪3に当接することで
ある。搬送装置のその他の変形例もこの発明の範囲内において可能である。
特にこの発明で特徴的なことは、いま仮に、図1、図2の搬送装置によって挙上
される車両が2個の平行な操向車輪を備え、その一方の車輪がこの搬送装置によ
って挙上されたとすると、この車輪および車両の操向機構を経由して、搬送装置
の操向動作が、未だ地面に転接している他方の操向車輪の方へ伝達されることで
ある。つまり車両の操向動作は、車両の操向性能(回転半径)の範囲内に制限さ
れ、その条件は、車両は、その操向動作が挙上された車両の車輪に伝達されるよ
うに構成されていることである。これに対して図3の実施例においては、車両の
2個の車輪を挙上することにより、車両の前端部(または後端部でもよい)が全
体的に挙上されるので、搬送装置の操向動作が車両の操向動作によって制限を受
けないという利点がある。
図4と図5の実施例は、紙ロール等の、車両車輪以外の円形物体を搬送するため
の搬送装置であり、以下前記各実施例との主要な相違点について説明する。前記
同様に、2個の製梁10.11は一定の相互間隔をとって配設され、その間に紙
ロール等が載置される。この間隔は大きく形成され、物体の長さに応じて調節さ
れる。支持部材5も、その上部支持面が傾斜面7を形成する。2基の駆動部材6
は、駆動機構9にょフて回動可能に配設され、紙ロールを駆動して傾斜面7上に
転接させる。製梁10.11の各々は、その最先端に駆動部材6が軸支され、駆
動部材6は駆動機構9に連結されたレバーに連結されている。
前J己各実施例では、物体または車輪は、左右製梁の間に収納されているので、
物体等の中心線は製梁に対してほぼ垂直方向に延長されている。図6ないし図8
の実施例でも、紙ロール等の円形物体が製梁10.11の間に保持されて搬送さ
れるが、紙ロールの中心線を製梁10,11の長さ方向に対して平行にして搬送
する点において相違する。よってこの場合は支持部材5が、傾斜面7を形成する
支持面を有すると共に、搬送装置の一方の製梁11に沿って延長されている。他
方の製梁10には、長尺のローラとして構成された駆動部材6が、実線と破線で
図示された各位置の間を駆動機構9の作用により移動できるように配設されてい
る。さらに具体的に言えば、駆動部材6は回動アーム16の最先端に配設され、
図7に図示の通り、駆動部材6は長尺で、製梁10にほぼ平行に位置している。
駆動部材6が図8中に実線で図示された位置にあるときは、製梁10.11は円
形物体の何れの側にあってもよい。駆動機構9によって駆動部材6を破線の位置
まで回動させると、物体は傾斜支持面7に転接して遡上する。この遡上中におけ
る物体と搬送装置との間の相互移動方向は、製梁10.11の延長方向に対して
ほぼ直交する。これに対して図1〜5の各実施例においては、前記相互移動方向
か製梁10.11に対してほぼ平行となるという相違がある。
国際調査報告