JPH0335023Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は、引戸用自動閉鎖装置、即ち、手動等
の外力で引戸を開放した後、この外力を取除くと
自動的に引戸を閉鎖する装置に関する。

従来の技術 従来、引戸を自動的に閉鎖する装置としては、
引戸の閉鎖端側にワイヤ等のロープ部材、ガイド
プーリを介して重錘を吊し、その重錘の重力を利
用して上記引戸を閉鎖方向に水平に付勢するもの
や、戸袋内に、渦巻バネの弾性復元力にて回転駆
動される回転ドラムを配置し、この回転ドラムに
巻取り、巻戻し自在にワイヤを巻装し、このワイ
ヤの一端を引戸に連繋装着することにより、上記
渦巻バネの弾性復元力にて引戸を閉鎖方向に付勢
するものがあつた。

しかしながら、前者の装置においては、戸口枠
に垂錘を吊下げるための収納スペースを設ける必
要があり、保守・点検が面倒となる。後者の装置
においては、引戸の閉鎖方向の付勢力が回転ドラ
ムに内蔵された渦巻バネの弾性復元力に依存して
いるため、引戸の閉鎖速度の調整が困難であり、
またワイヤが絡まる恐れもあつた。

また、上記両装置では、引戸が閉鎖位置に近づ
くにつれて、引戸の閉鎖速度が増加するため、引
戸の閉鎖側端面が縦枠に衝突し、この衝突により
締付部分が次第に緩み、縦枠や引戸の破損を生じ
る場合もあつた。

そこで、上記装置の改善策として、実開昭57−
68065号公報並びに実開昭57−68069号公報に開示
される如く、油圧ピストンシリンダ機構を利用し
た引戸用ドアクローザの回転軸にスプロケツトを
取付け、環状のチエンをこのスプロケツトに噛合
させ、上記引戸用ドアクローザに内蔵されたスプ
リングによつて引戸を閉鎖方向に付勢し、引戸の
閉鎖速度は引戸用ドアクローザの油圧による速度
制御弁で行うものが提案されている。

考案が解決しようとする問題点 上記装置においては、引戸に閉鎖方向の付勢力
を付与するスプリングが、ドアクローザに内蔵さ
れているため、上記付勢力の調整が難しく、手動
によつて引戸を開く際には、戸開き力がチエン、
スプロケツトを経由してドアクローザ内のピニオ
ン軸、ラツク、スプリングの順に伝達されるた
め、途中の力伝達経路が長く、摩擦による力の伝
達損失が大きい。従つて、引戸を開放するために
は強い力が必要で、子供、身障者等においては、
この引戸の開放動作が非常に困難を伴うものとな
つていた。

尚、閉鎖力発生用のスパイラルスプリングを用
いるものも実公昭58−30939号公報等で提案され
ているが、この装置は、チエンのスプロケツトと
は全く別個に形成しているため、取付構造が複雑
となり、合理的ではない。

問題点を解決するための手段 本考案は、レール上を転動する戸車に懸垂取付
した引戸と、上記レールの一端側上方に設けられ
た第１のスプロケツトと、上記レールの他端側上
方に設けられた第２のスプロケツトを有する油圧
式速度制御シリンダと、上記第１及び第２のスプ
ロケツトに纒い掛けされ、両端が各々引戸の一部
に固着されて環状をなすチエンとを有する引戸用
自動閉鎖装置において、上記第１のスプロケツト
に蓋体を回転方向へ位置調整可能に固着し、上記
第１のスプロケツトを回転自在に支持する固定枢
軸と上記蓋体との間にその両端を係止し、引戸の
開方向移動で上記第１のスプロケツト及び蓋体を
介して弾性復元力を巻込み蓄勢する引戸の閉鎖用
スパイラルスプリングを上記第１のスプロケツト
に一体に形成した中空ボス部内に内蔵したもの
で、これにより従来の問題点を解決したものであ
る。

作 用 引戸の閉鎖用スパイラルスプリングが、第１の
スプロケツトに内蔵させてあるため、取付構造が
簡単で、取付手数がかからず、コンパクトで合理
的である。また、蓋体を第１のスプロケツトに対
して回転させることによつて、閉鎖力の調整が可
能となり、また、スプリングが第１のスプロケツ
ト内にあるため、閉鎖力の伝達ロスが減少する。

実施例 第１図は本考案に係る引戸用自動閉鎖装置を例
示する概略側面図で、図面では、引戸１が閉鎖し
ている状態を示す。

第１図において、引戸１は、戸口上枠に台板２
を介して横設されたレール３上を転動する戸車
４，４に、ハンガー５，５を介して懸垂吊下さ
れ、レール３に沿つて開放位置と閉鎖位置との間
を移動する。

上記台板２における引戸１の閉鎖側端部には、
第１のスプロケツト６が回動自在に設けられてお
り、開放側端部には、回転軸７に第２のスプロケ
ツト８を固着した油圧式速度制御シリンダ９が配
設されている。上記第１及び第２のスプロケツト
６，８にはチエン１０が纒い掛けされており、当
該チエン１０は、両端を各々ハンガー５，５に係
着することによつて環状をなしている。

第２図乃至第４図は、上記第１のスプロケツト
６の詳細を示す図面である。

第２図乃至第４図において、上記第１のスプロ
ケツト６は、軸線方向奥側に突出する中空ボス部
６ａを有し、この中空ボス部６ａの内部奥側に嵌
入したベアリング１１を介して、台板２に立設固
定した枢軸１２に回転自在に配設されている。上
記第１のスプロケツト６の正面には、円板状の蓋
体１３が、中空ボス６ａの手前側開口部を塞ぐよ
うに、取付けられている。上記蓋体１３は、外周
縁近傍に１対の円弧状長孔１４，１４が穿設され
ており、この円弧状長孔１４，１４の各々に挿通
したボルト１５，１５によつて第１のスプロケツ
ト６に固定されている。上記第１のスプロケツト
６の中空ボス部６ａの内部手前側には、第１のス
プロケツト６に時計方向の回転トルクを与えるス
パイラルスプリング１６が収納されており、この
スパイラルスプリング１６の中心側端部は、前記
枢軸１２の先端に形成した細溝１２ａに係止さ
れ、外周側端部は、前記蓋体１３の一部に貫通取
付したピン部材１７に係止されている。尚、上記
スパイラルスプリング１６が第１のスプロケツト
６に付与する時計方向の回転トルクは、チエン１
０、ハンガー５を介して引戸１に閉鎖方向の付勢
力として伝達される。また、上記円弧状長孔１
４，１４は、スパイラルスプリング１６がスプロ
ケツト６に付与する回転トルクを調整するために
形成されたもので、上記回転トルクの調整は、先
ず、ボルト１５，１５を緩め、ピン部材１７の先
端部１７ａを手指で掴んで、蓋体１３を円弧状長
孔１４，１４に沿つて、スプロケツト６に対して
時計方向あるいは反時計方向に回転させ、スパイ
ラルスプリング１６の巻戻し、あるいは巻込みに
よつて回転トルクを調整した後、上記ボルト１
５，１５を再び締付けて行う。

第５図及び第６図は、上記油圧式速度制御シリ
ンダ９の拡大縦断側面図で、第５図は、引戸１が
閉鎖状態にある場合を示し、第６図は引戸１が開
放状態にある場合を示す。

第５図において、油圧式速度制御シリンダ９の
ケーシング１８内には、適度の粘性を有する作動
油が充填されると共に、前記回転軸７に固着され
たピニオンギア１９と、このピニオンギア１９と
噛合するラツク部２０を刻設したピストン２１と
が収納されている。上記ピストン２１は、軸線方
向に沿つて穿設した作動油通路２２の一端にボー
ル２３を利用した逆止弁２４を有しており、上記
ケーシング１８のシリンダ室２５内に往復動可能
に嵌装されて、シリンダ室２５を圧縮側シリンダ
室２５ａと非圧縮側シリンダ室２５ｂとに二分し
ている。尚、上記逆止弁２４は、非圧縮側シリン
ダ室２５ｂから作動油通路２２を経て圧縮側シリ
ンダ室２５ａへの流れ方向が順方向となつてい
る。

上記ケーシング１８には、上記ピストン２１の
作動油通路２２よりも細い第１、第２の２つの作
動油循環通路２６，２７が形成されている。上記
第１の作動油循環通路２６は、一端が第６図に示
す状態の圧縮側シリンダ室２５ａの略中央部に流
量調整弁２８を介して開口し、他端が第６図に示
す状態の非圧縮側シリンダ室２５ｂの端部に開口
している。一方、第２の作動油循環通路２７は、
一端が第５図に示す状態の圧縮側シリンダ室２５
ａの端部に流量調整弁２９を介して開口し、他端
が第５図に示す状態の非圧縮側シリンダ室２５ｂ
の略中央部に開口している。尚、ピストン２１の
図中左方向への移動の際に圧縮側シリンダ室２５
ａから流量調整弁２８、第１の作動油循環通路２
６を経て非圧縮側シリンダ室２５ｂに流入する作
動油流量は、流量調整弁２９、第２の作動油循環
通路２７を経て非圧縮側シリンダ室２５ｂ内に流
入する作動油流量よりも大きく設定されている。

以下に、本考案装置による引戸の自動閉鎖要領
を説明する。

通常の状態では、引戸１は、スパイラルスプリ
ング１６が第１のスプロケツト６に付与する回転
トルクによつて、閉鎖状態にあり、油圧式速度制
御シリンダ９のピストン２１は、第５図に示す如
くシリンダ室２５の最左端に位置している。

この状態から引戸１を手動等の外力で、開放方
向、即ち、第１図の右方向に移動させると、環状
をなすチエン１０が反時計方向に回転すると共
に、第１、第２のスプロケツト６，８も反時計方
向に回転する。

上記第１のスプロケツト６が反時計方向に回転
すると、スパイラルスプリング１６は、スプロケ
ツト６に固定した蓋体１３の回転により、枢軸１
２に巻込まれて引戸１を閉鎖するための弾性付勢
力が蓄積される。また、第２のスプロケツト８が
反時計方向に回転すると、当該スプロケツト８と
回転軸７によつて一体に連設されたピニオンギア
１９も反時計方向に回転し、このピニオンギア１
９の回転は、ピニオンギア１９とラツク部２０と
の噛合により、ピストン２１に伝達されて、ピス
トン２１を第５図の右方向に移動させる。上記ピ
ストン２１の移動に際しては、逆止弁２４が作動
しないため、非圧縮側シリンダ室２５ｂ内の作動
油は、ピストン２１の作動油通路２２を経て圧縮
側シリンダ室２５ａ内に円滑に流入する。

上述の如くして引戸１が開放位置まで移動する
と、油圧式速度制御シリンダ９は、第６図に示す
状態、即ち、ピストン２１がシリンダ室２５の最
右端に位置する状態となつている。ここで、引戸
１に加えている手動等の外力を除去すると、スパ
イラルスプリング１６に蓄積された弾性付勢力に
よつて、第１のスプロケツト６に、時計方向、即
ち、引戸１を閉鎖する方向の回転トルクが付与さ
れ、第１のスプロケツト６は時計方向に回転す
る。上記第１のスプロケツト６の時計方向の回転
により、チエン１０が時計方向に回転するため、
引戸１は、閉鎖方向に移動する。このとき、上記
チエン１０の回転に伴つて、第２のスプロケツト
８も時計方向に回転するため、ピニオンギア１９
も時計方向に回転し、当該ピニオンギア１９の回
転は、ピニオンギア１９とラツク部２０との噛合
によりピストン２１に伝達されて、ピストン２１
を第６図の左方向に移動させる。ピストン２１が
左方向に移動し始めると、圧縮側シリンダ室２５
ａ内の作動油の圧力により、逆止弁２４が作動し
て作動油通路２２が閉鎖され、また、第２の作動
油循環通路２７は、ピストン２１によつて閉鎖さ
れているため、圧縮側シリンダ室２５ａ内の作動
油は、流量調整弁２８から第１の作動油循環通路
２６を経て非圧縮側シリンダ室２５ｂ内に流入す
る。このとき、作動油が、流量調整弁２８、第１
の作動油循環通路２２内を通過する際の粘性抵
抗、並びに、上述の流量調整弁２８、第１の作動
油循環通路２２から受ける管路抵抗により、上記
ピストン２１の移動速度が制限されるため、引戸
１の閉鎖速度は、スパイラルスプリング１６の弾
性力のみによる閉鎖速度よりも遅く、緩やかなも
のとなる。

上記引戸１が、閉鎖位置手前のクツシヨン位置
（第１図参照）まで閉じると、油圧式速度制御シ
リンダ９のピストン２１は、第６図に二点鎖で示
す位置まで移動する。この状態では、第１の作動
油循環通路２６がピストン２１によつて閉鎖され
る一方、第２の作動油循環通路２７が開かれる。
従つて、圧縮側シリンダ室２５ａ内の作動油は、
第１の作動油循環通路２６に代わつて、第２の作
動油循環通路２７を、流量調整弁２９を介して、
通過し、非圧縮側シリンダ室２５ｂ内に流入す
る。このとき、上述の如く、第２の作動油循環通
路２７内の作動油流量は、前記第１の作動油循環
通路２６内の作動油流量よりも小さくなるように
設定されているため、上記ピストン２１の移動速
度は、前記の状態よりも更に制限を受け、引戸１
は更に遅い閉鎖速度でもつて緩やかに閉鎖する。

尚、上記本考案装置において、引戸１の重量、
引戸１の閉鎖時の戸行程、通行者の種類等に応じ
て引戸１に加える閉鎖方向の付勢力を変更する場
合には、前記の如く、第１のスプロケツト６にス
パイラルスプリング１６から付与される回転トル
クの大きさを調整すればよい。即ち、ボルト１
５，１５を緩め、ピン部材１７の先端を手指で掴
んで、蓋体１３を、円弧状長孔１４，１４に沿つ
て、スプロケツト６に対して時計方向、あるいは
反時計方向に回転させ、この蓋体１３の回転と共
にピン部材１７の位置を回転移動させることによ
つて、スパイラルスプリング１６を枢軸１２に対
して巻捩し、あるいは巻込んで、第１のスプロケ
ツト６に付与する回転トルクを調整し、調整後、
上記ボルト１５，１５を締付けて蓋体１３をスプ
ロケツト６に固定する。このとき、蓋体１３を、
時計方向に回転させた場合には、スパイラルスプ
リング１６から第１のスプロケツト６に付与され
る回転トルクが減少して引戸１の閉鎖方向の付勢
力が弱まり、反時計方向に回転させた場合には、
スパイラルスプリング１６から第１のスプロケツ
ト６に付与される回転トルクが増加して引戸１の
閉鎖方向の付勢力が強まる。

更に、上記本考案装置において、引戸１の閉鎖
速度は、油圧式速度制御シリンダ９に設けられた
２つの流量調整弁２８，２９によつて、閉鎖位置
からクツシヨン位置までの間と、クツシヨン位置
から閉鎖位置までの間とで、独立して調整可能で
ある。

考案の効果 以上説明したように、本考案装置は、第１のス
プロケツトに、引戸を閉鎖方向に付勢するための
スパイラルスプリングを、その付勢力が調整可能
なように内蔵したので、スパイラルスプリングか
ら引戸への付勢力の伝達ロスが少なく、引戸の重
量、引戸の開閉時の戸行程、通行者の種類に応じ
て簡単に対応でき、また引戸の閉鎖速度を油圧式
制御シリンダによつて簡単に調整できるため、円
滑で安定した引戸の閉鎖動作が得られる。

従つて、本考案装置は、長期にわたつて抵抗少
なく、安定した引戸の自動閉鎖動作が得られ、極
めて実用性が高い。

また、本考案は、第１のスプロケツトに中空ボ
ス部を一体に形成し、かつ、蓋体を回転方向に位
置調整可能に固着するだけで、引戸の閉鎖用スパ
イラルスプリングを、閉鎖力の調整を可能にして
設置することができ、設置スペースの減縮及び取
付手数の減少が図れ、コンパクトで合理的な構成
を提供し得る。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本考案に係る引戸用自動閉鎖装置を
例示する概略側面図、第２図は、上記引戸用自動
閉鎖装置の第１のスプロケツトの拡大平面図、第
３図は第２図の内部構造を示す概略図、第４図は
第２図のＸ−Ｘ線に沿う縦断側面図、第５図なら
びに第６図は、油圧式速度制御シリンダの拡大縦
断側面図で、第５図は引戸が閉鎖位置にある場合
を示し、第６図は引戸が開放位置にある場合を示
す。 １……引戸、３……レール、４，４……戸車、
６……第１のスプロケツト、８……第２のスプロ
ケツト、９……油圧式速度制御シリンダ、１０…
…チエン、１６…スパイラルスプリング。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 レール上を転動する戸車に懸垂取付した引戸
   と、上記レールの一端側上方に設けられた第１の
   スプロケツトと、上記レールの他端側上方に設け
   られた第２のスプロケツトを有する油圧式速度制
   御シリンダと、上記第１及び第２のスプロケツト
   に纒い掛けされ、両端が各々引戸の一部に固着さ
   れて環状をなすチエンとを有する引戸用自動閉鎖
   装置において、 上記第１のスプロケツトに蓋体を回転方向へ位
   置調整可能に固着し、上記第１のスプロケツトを
   回転自在に支持する固定枢軸と上記蓋体との間に
   その両端を係止し、引戸の開方向移動で上記第１
   のスプロケツト及び蓋体を介して弾性復元力を巻
   込み蓄勢する引戸の閉鎖用スパイラルスプリング
   を上記第１のスプロケツトに一体に形成した中空
   ボス部内に内蔵させたことを特徴とする引戸用自
   動閉鎖装置。