JPH032036Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、デイフアレンシヤルケース内におい
て左右一対のサイドギアに噛合う四個のピニオン
を、十字状に配置したピニオンシヤフトによつて
それぞれ回転可能に軸支した形式のデイフアレン
シヤル装置に関するものである。

（従来の技術） 従来より、上述したように四個のピニオンを備
えた形式のデイフアレンシヤル装置においては、
例えば第５図及び第６図で示すように十字状に一
体形成されたピニオンシヤフト４５を使用する場
合、デイフアレンシヤルケース４１はこの十字状
のピニオンシヤフト４５を組込むために左右に二
分割された形式となつている。そして、このよう
に左右に二分割されたデイフアレンシヤルケース
４１はピニオンシヤフト４５及びピニオン４４等
を組付けたのちにボルト４６によつて互いに結合
される。また、これとは逆に一体形のデイフアレ
ンシヤルケースを用いたときは、ピニオンシヤフ
トを一本の長軸と二本の短軸とに分割して、その
組付けを可能としている。

（考案が解決しようとする問題点） 上記の第５図及び第６図で示すようにピニオン
シヤフト４５を一体形式とし、デイフアレンシヤ
ルケース４１を分割形式とした場合、分割された
各ケースを適正に組付けるための特別な加工が必
要となり、その生産性並びに組付作業性が低下す
ることとなる。一方、デイフアレンシヤルケース
を一体形とし、ピニオンシヤフトを分割した場合
は、分割された前記の長軸及び各短軸を互いに十
字状となるように適正に結合しなければならず、
かつピニオンシヤフトの端部をデイフアレンシヤ
ルケースに対してボルトやピンによつて固定する
作業が必要となる。したがつて、この場合もやは
りデイフアレンシヤル装置の組付作業性に問題が
残されているとともに、その組付後の分解作業も
困難となるといつた問題が生じる。

（問題点を解決するための手段） 本考案のデイフアレンシヤル装置は、第１〜３
図で示されているようにデイフアレンシヤルケー
ス３１内に、このケース３１の回転軸線回りに回
転する一対のサイドギヤ３２と、これらのサイド
ギヤ３２に対して共に噛み合つて回転する四個の
ピニオン３４と、これらの各ピニオン３４をそれ
ぞれ回転可能に支持するピニオンシヤフト３５と
が組込まれている。

前記デイフアレンシヤルケース３１はその回転
軸線を中心とする環状の一体構造で、その外周面
の軸線に沿つた方向に関するほぼ中間部に形成さ
れた円筒形状のリング組付面３１ｄと、この組付
面３１ｄ上においてその周方向に沿つてほぼ等間
隔で、かつデイフアレンシヤルケースの内外に貫
通する四個の挿通孔３１ｂ，３１ｃとを備えてい
る。

さらに前記ピニオンシヤフト３５は、デイフア
レンシヤルケース３１内の中心部を通つて四個の
ピニオン３４うちの二つを回転可能に支持すると
ともに、両外端部が前記四個の挿通孔３１ｂ，３
１ｃのうちの二つ３１ｂに挿入された一本の長軸
３５Ａと、デイフアレンシヤルケース３１内の中
心部で前記長軸３５Ａと直交するように配置され
て残る二つの３１ｃのピニオンを回転可能に支持
し、それぞれの外端部が前記四個の挿通孔のうち
の残る二つ３１ｃにそれぞれ挿入された二本の短
軸３５Ｂとからなつている。

しかも前記一本の長軸３５Ａと二本の短軸３５
Ｂとは、デイフアレンシヤルケース３１内の中心
部においてホルダー３６で十字状に保持されてい
る。また前記リング組付面３１ｄに対してデイフ
アレンシヤルケース３１の回転軸線に沿つた一方
向から組付けられるリング３８は、一本の長軸及
び二本の短軸のそれぞれの外端部に係合して各軸
の外方向への動きを制限する。また前記リング組
付面３１ｄの一部に取外し可能に取付けられるス
ナツプリング３９は、前記リング３８を定位置に
保持する。

（作用） 上記デイフアレンシヤル装置の組付けにあたつ
ては、デイフアレンシヤルケース３１に対してピ
ニオンシヤフト３５を構成する一本の長軸３５Ａ
と二本の短軸３５Ｂとを、それぞれのピニオン３
４を回転自在に支持し、かつ互いに十字状に結合
された状態で組込む。こののち、デイフアレンシ
ヤルケース３１に対して前記のリング３８を組付
け、これによつてデイフアレンシヤルケース３１
に対する長軸３５Ａ及び各短軸３５Ｂ抜け止めと
回り止めをなし、かつデイフアレンシヤルケース
３１の外周に前記のスナツプリング３９を固定す
ることにより、デイフアレンシヤルケース３１に
対するリング３８の外れ止めをなす。

次に、デイフアレンシヤル装置の分解にあたつ
ては、デイフアレンシヤルケース３１から前記の
スナツプリング３９及びリング３８を取外す。こ
れにより、ピニオンシヤフト３５を構成する一本
の長軸３５Ａ及び二本の短軸３５Ｂをデイフアレ
ンシヤルケース３１からそれぞれ抜取ることがで
き、もつて容易にデイフアレンシヤル装置を分解
することができる。

（実施例） 以下、本考案の実施例を第１図〜第４図に基づ
いて具体的に説明する。

まず、エンジン横置き搭載のFF四輪駆動車用
のトランスアクスルを断面で表わした第４図にお
いて、トランスアクスルケース１０内にはセンタ
デイフアレンシヤル装置１１のデイフアレンシヤ
ルケース１２が、左右一対のテーパードローラベ
アリング１３によつて回転自在に支持されてい
る。このデイフアレンシヤルケース１２の外周に
固定されたリングギア１４は、図示しない変速機
におけるアウトトツプシヤフトのドライブギア１
８と常に噛合つていて、この変速機からの回転を
受けている。そして、このデイフアレンシヤルケ
ース１２の回転はその内部に組込まれているサイ
ドギヤ１７及び後述するフロントデイフアレンシ
ヤル装置３０のデイフアレンシヤルケース３１に
対し、ピニオンシヤフト１５及びピニオン１６を
通じて伝達される。

上記センタデイフアレンシヤル装置１１のサイ
ドギヤ１７からこれと一体に第４図の右方向へ延
びる筒状の軸１７ａ上には、外周にリングギア２
０を備えたリングギヤマウント１９がこの軸１７
ａと回転伝達可能に結合されている。このリング
ギヤ２０と噛合うドライブピニオン２１の回転
は、そのシヤフト２２及び図示しないプロペラシ
ヤフトを通じて後輪に伝達されるのである。な
お、上記のリングギヤマウント１９及びドライブ
ピニオン２１のシヤフト２２についても、当然の
ことながらトランスアクスルケース１０に対し、
テーパードローラベアリング２３，２４によつて
それぞれ回転可能に支持された構造となつてい
る。

さて、上記のフロントデイフアレンシヤル装置
３０は第４図の一部を拡大して表わした第１図、
第１図の−線断面を表わした第２図、同じく
第１図の−線断面を表わした第３図からも明
らかなように、一体形に形成されたデイフアレン
シヤルケース３１の内部に左右一対のサイドギヤ
３２とこれらに噛合つた四個のピニオン３４とが
組込まれている。また、このデイフアレンシヤル
ケース３１の外周の一部にはギヤ３１ａが形成さ
れていて、このギヤ３１ａが前記センタデイフア
レンシヤル装置１１のピニオン１６に噛合つてい
る。つまり、これによつてフロントデイフアレン
シヤル装置３０のデイフアレンシヤルケース３１
はセンタデイフアレンシヤル装置１１から回転力
を分配されているのである。

フロントデイフアレンシヤル装置３０のデイフ
アレンシヤルケース３１内に組込まれている上記
四個の各ピニオン３４は、後で詳細に説明するピ
ニオンシヤフト３５によつてデイフアレンシヤル
ケース３１側に支持されている一方、上記の各サ
イドギヤ３２にはそれぞれフロントアクスルシヤ
フト３３が回転伝達可能に連結されている。した
がつて、フロントデイフアレンシヤル装置３０に
おけるデイフアレンシヤルケース３１の回転は、
上記のピニオンシヤフト３５及びピニオン３４を
通じて左右のサイドギヤ３２に分配され、これら
各サイドギヤ３２の回転はフロントアクスルシヤ
フト３３を通じて左右の前輪（図示しない）に伝
達される。

上記フロントデイフアレンシヤル装置３０のデ
イフアレンシヤルケース３１はその回転軸線、す
なわち前記フロントアクスルシヤフト３３の軸線
を中心とする環状の一体構造であり、これによつ
てピニオンシヤフト３５は第１図〜第３図から明
らかなように一本の長軸３５Ａと二本の短軸３５
Ｂとに分割されている。この長軸３５Ａの両端部
及び各短軸３５Ｂの外端部には、それぞれ切欠状
の係止部３７が形成されている。そして、長軸３
５Ａの両端部は第１図及び第３図から明らかなよ
うにデイフアレンシヤルケース３１の挿通孔３１
ｂに挿通されて支持されており、各短軸３５Ｂの
外端部は第２図及び第３図から明らかなように同
じくデイフアレンシヤルケース３１に形成された
別の挿通孔３１ｃにそれぞれ挿通されて支持され
ている。また、これら一本の長軸３５Ａと二本の
短軸３５Ｂとは、デイフアレンシヤルケース３１
内の中心部に組込まれた筒状のホルダー３６によ
り、第３図で示すように互いに十字状になるよう
に連結されている。

上記長軸３５Ａの両端部及び各短軸３５Ｂの外
端部に形成された上記の係止部３７は、デイフア
レンシヤルケース３１の外周において第１図及び
第２図の左右方向のほぼ中間部に形成された円筒
形状のリング組付面３１ｄと同一平面となるよう
に位置している。そこで、この組付面３１ｄにリ
ング３８を第１図及び第２図の左方向から組付け
ることにより、このリング３８は上記の各係止部
３７に対して係合することとなる。さらに、デイ
フアレンシヤルケース３１のリング組付面３１ｄ
には、上記のリング３８がデイフアレンシヤルケ
ース３１の組付面３１ｄから第１図及び第２図の
左方向へ外れないように保持するためのスナツプ
リング３９が取付けられている。

上記のように構成したフロントデイフアレンシ
ヤル装置３０の組付手順について説明すると、ま
ず一体形のデイフアレンシヤルケース３１の内部
に左右のサイドギヤ３２とこれらに噛合う四個の
ピニオン３４とを第１図〜第３図で示す所定の噛
合い位置に保持した状態で組込む。なお、これら
サイドギヤ３２と各ピニオン３４との組込みに先
立ち、これらによつて囲まれるデイフアレンシヤ
ルケース３１の中心部空間には前記のホルダー３
６を予め組込んでおく。こののち、ピニオンシヤ
フト３５を構成する一本の長軸３５Ａを、デイフ
アレンシヤルケース３１の挿通孔３１ｂからこの
長軸３５Ａで支持すべき二個のピニオン３４及び
上記のホルダー３６に挿通させて組付ける。次
に、二本の短軸３５Ｂをデイフアレンシヤルケー
ス３１の挿通孔３１ｃから各短軸３５Ｂで支持す
べきピニオン３４及びホルダー３６にそれぞれ挿
入し、各短軸３５Ｂの内端を長軸３５Ａの外周面
に当接させた状態（第２図及び第３図参照）で組
付ける。これによつて一本の長軸３５Ａと二本の
短軸３５Ｂとは、それぞれのピニオン３４を回転
自在に支持した状態で、かつ上記のホルダー３６
によつて十字状に結合されたこととなる。

次に、デイフアレンシヤルケース３１の上記リ
ング組付面３１ｄに対し、第１図及び第２図の左
方向から前記のリング３８を組付ける。これによ
り、デイフアレンシヤルケース３１のリング組付
面３１ｄと同一面となるように形成されている長
軸３５Ａの両端部及び短軸３５Ｂの外端部の各係
止部３７にはリング３８が係合し、これによつて
長軸３５Ａ及び短軸３５Ｂはデイフアレンシヤル
ケース３１に対する抜け止めと同時にこれらの軸
心回りの回り止めがなされる。そして、デイフア
レンシヤルケース３１の外周に前記のスナツプリ
ング３９を固定することにより、デイフアレンシ
ヤルケース３１に対するリング３８の外れ止めも
なされる。

フロントデイフアレンシヤル装置３０の分解に
あたつては、デイフアレンシヤルケース３１から
前記のスナツプリング３９を取外すことにより、
まずリング３８をデイフアレンシヤルケース３１
の取付面３１ｄから外すことができる。その後は
ピニオンシヤフト３５を構成する一本の長軸３５
Ａ及び二本の短軸３５Ｂをそれぞれ抜取ることに
より、極めて容易にフロントデイフアレンシヤル
装置３０を分解することができる。

（考案の効果） 以上のように本考案は、四個のピニオンを備え
た形式のデイフアレンシヤル装置において、その
デイフアレンシヤルケースを一体形としたことに
よつて製作コストの低減並びに生産性の向上を図
ることができるとともに、ピニオンシヤフトを構
成する一本の長軸及び二本の短軸の抜け止めを、
デイフアレンシヤルケースに組付けるリングによ
つてなし、かつこのリングの外れ止めをスナツプ
リングによつて行なつたことにより、デイフアレ
ンシヤル装置の組付並びにその分解作業が著しく
簡素化されるといつた利点を有する。

【図面の簡単な説明】

第１図〜第４図は本考案の実施例を示し、第１
図はデイフアレンシヤル装置を表わした断面図、
第２図は第１図の−線断面図、第３図は同じ
く第１図の−線断面図、第４図はエンジン横
置き搭載のFF四輪駆動車用トランスアクスルを
表わした断面図である。第５図は従来のデイフア
レンシヤルケース分割型のデイフアレンシヤル装
置を表わした断面図、第６図は第５図の−線
断面図である。 ３１……デイフアレンシヤルケース、３２……
サイドギヤ、３４……ピニオン、３５……ピニオ
ンシヤフト、３５Ａ……一本の長軸、３５Ｂ……
二本の短軸、３６……ホルダー、３７……係止
部、３８……リング、３９……スナツプリング。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 デイフアレンシヤルケース内に、このケースの
   回転軸線回りに回転する一対のサイドギヤと、こ
   れらのサイドギヤに対して共に噛み合つて回転す
   る四個のピニオンと、これらの各ピニオンをそれ
   ぞれ回転可能に支持するピニオンシヤフトとが組
   込まれたデイフアレンシヤル装置において、 前記デイフアレンシヤルケースはその回転軸線
   を中心とする環状の一体構造で、その外周面の軸
   線に沿つた方向に関するほぼ中間部に形成された
   円筒形状のリング組付面と、この組付面上におい
   てその周方向に沿つてほぼ等間隔で、かつデイフ
   アレンシヤルケースの内外に貫通する四個の挿通
   孔とを備え、 さらに前記ピニオンシヤフトはデイフアレンシ
   ヤルケース内の中心部を通つて四個のピニオンの
   うちの二つを回転可能に支持するとともに、両外
   端部が前記四個の挿通孔のうちの二つに挿入され
   た一本の長軸と、デイフアレンシヤルケース内の
   中心部で前記長軸と直交するように配置されて残
   る二つのピニオンを回転可能に支持し、それぞれ
   の外端部が前記四個の挿通孔のうちの残る二つに
   それぞれ挿入された二本の短軸とからなり、 さらに前記一本の長軸と二本の短軸とをデイフ
   アレンシヤルケース内の中心部において十字状に
   保持するホルダーと、 前記リング組付面に対してデイフアレンシヤル
   ケースの回転軸線に沿つた一方向から組付けら
   れ、一本の長軸及び二本の短軸のそれぞれの外端
   部に係合して各軸の外方向への動きを制限するリ
   ングと、 前記リング組付面の一部に取外し可能に取付け
   られて前記リングを定位置に保持するスナツプリ
   ングとを備えたデイフアレンシヤル装置。