JPH0310811B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は切換クラツチ、特に自動車の切換ギヤ
における切換クラツチのための同期装置に関す
る。この同期装置には、ガイドスリーブと歯車と
切換スリーブと同期リングが設けられている。ガ
イドスリーブは、１本のシヤフトに固定され、歯
列として構成された外位噛合部を有している。歯
車は、ガイドスリーブの傍で前記シヤフト上に回
動可能に支承され、歯車と相対回動不能に結合さ
れたクラツチ本体を有している。クラツチ本体に
は外位噛合部を形成するクラツチ歯が設けられて
いる。切換スリーブは、スリーブを囲繞し且つ内
位噛合部を有している。この内位噛合部クラツチ
歯は、ガイドスリーブの外位噛合部と係合し、切
換スリーブを軸方向に移動させることにより切換
スリーブをクラツチ本体の外位噛合部と係合させ
ることの出来るようになつている。同期リング
は、ガイドスリーブとクラツチ本体との間に配置
され、ガイドスリーブとは形状接続式に、クラツ
チ本体とは摩擦接続式に、それぞれ周方向で結合
されている。この同期リングの周面に設けられた
複数の係止歯は、切換スリーブの内位噛合部に所
属する各係止歯と協働している。同期リングに設
けられた係止歯の長さは、軸方向においてクラツ
チ歯の長さより小さく設計されている。更に、こ
の同期装置における全ての噛合部の互いに向き合
つた端部には、それぞれ楔面が形成されており、
そのうち係止歯の各楔面は、非同期状態である場
合には互いに当接して、同期回転数に達しないか
ぎりは各クラツチ歯が互いに内外係合することを
阻止するように構成されている。

［従来の技術］ 上述した形式の同期装置は、ドイツ連邦共和国
第2659448号明細書により既に公知となつている。
それぞれ異なつた歯を用いることによつて、同期
回転数に達するまで切換スリーブを係止してお
き、且つ切換スリーブと連結しようとする歯車
（切換歯車）との形状接続部を形成するならば、
安全にして確実な切換プロセスに支障を来たすこ
となく、極めて短かい切換行程が保証される。切
換操作に際して、同期リングをクラツチリングに
圧着させる圧着力と、これによつて生じる摩擦モ
ーメントとによりシヤフトと切換歯車との間の回
転数整合が行われ、同期回転の達成時に摩擦モー
メントが急激に崩壊されると、切換スリーブがそ
の係止歯の端部に取付けられた楔面、即ち、同期
リングにおける係止歯の端部に設けられた楔面と
協働する楔面によつて、切換歯車を有する同期リ
ングを切換スリーブに対し相対的に回動させ、ひ
いては切換スリーブの係止歯を同期リングの各係
止歯間に位置する間隙と向き合わせ、切換スリー
ブのクラツチ歯がクラツチ本体に設けられたクラ
ツチ歯と係合するまで切換スリーブを同期リング
を越えて移動させる可能性がある。クラツチ本体
に対する同期リングの角度位置は規定されていな
いので、一般に切換スリーブの各クラツチ歯間に
位置する間隙と向き合わされておらず、従つて各
クラツチ歯は、程度の差こそあれ、或る程度たが
いにオーバラツプする楔面で互いに当接してお
り、切換スリーブを軸方向で更に移動させること
は、同期リングのクラツチ本体に対する相対回動
が行われない限り、つまり同期リングと切換歯車
との間の摩擦接続式結合が再び解離された場合で
なければ、実施不能である。このような係止解除
が必要とされることは、ギヤ操作時に抵抗を生ぜ
しめる原因となり、その抵抗は、切換プロセス終
了時における第２の圧力点を高めるという不都合
な形で作用する。

［発明が解決しようとする課題］ 従つて、本発明の課題とするところは、冒頭に
述べた形式の切換クラツチ用同期装置に改良を加
えて、同期が達成され、ひいては摩擦モーメント
が崩壊せしめられた後でのギヤ操作に際しては、
切換作業時に克服しなければならないような別の
新しい圧力点が生じないようにすることである。

［課題を解決するための手段］ 本発明の要旨は切換クラツチ、特に自動車の切
換ギヤにおける切換クラツチ用の同期装置であつ
て、ガイドスリーブ４が１本のシヤフト１に固定
されており、このガイドスリーブ４には歯列とし
ての外位噛合部５が設けられており、ガイドスリ
ーブ４の傍でシヤフト１上に回動可能に支承され
ている歯車２，３が、歯車２，３と相対回動不能
に結合されたクラツチ本体８を有しており、クラ
ツチ本体８には外位噛合部を形成するクラツチ歯
１０が設けられており、切換スリーブ７がガイド
スリーブ４を囲繞し且つ内位噛合部を有してお
り、この内位噛合部のクラツチ歯６がガイドスリ
ーブ４の外位噛合部５と係合し、切換スリーブ７
を軸方向に移動させることによつて切換スリーブ
７をクラツチ本体８の外位噛合部と係合させ、ガ
イドスリーブ４とクラツチ本体８との間に配置さ
れた同期リング１２が、ガイドスリーブ４とは形
状接続式にクラツチ本体８とは摩擦接続式に、そ
れぞれ周方向で結合されており、同期リング１２
の周面には複数の係止歯１４が設けられていて、
これらの係止歯１４は切換スリーブ７の内位噛合
部に所属する係止歯１３と協働しており、切換ス
リーブ７の係止歯１３の長さが軸方向においてク
ラツチ歯６の長さより短かくなつており、全ての
噛合部の互いに向き合つた端部には、それぞれ楔
面６１，１０１，１３１，１４１が形成されてお
り、そのうち係止歯１３，１４の楔面１３１，１
４１が、非同期状態にある際には互いに当接し
て、同期回転数に達しないかぎりクラツチ歯６，
１０が互いに係合することを阻止するように構成
されている形式の切換えクラツチ用の同期装置に
おいて、同期リング１２に取り付けられた係止歯
１４と切換スリーブ７に取付けられた係止歯１３
が、それぞれの楔面１３１，１４１の近くで長手
方向の軸線６３に対して次のような角度、即ち、
それぞれクラツチ本体８及び切換スリーブ７のク
ラツチ歯１０，６の端部に位置する楔面１０１，
６１の角度と少くとも等しい値の角度で直接バツ
クカツトされていることを特徴とする同期装置で
ある。

［発明の作用効果］ 切換スリーブ並びに同期リングの各係止歯にバ
ツクカツト加工が施されていることにより、いつ
たん同期が達成され摩擦モーメントが崩壊せしめ
られると、切換スリーブと同期リングとが互いに
相対的に回動できる。即ち、クラツチ歯の端部に
設けられた楔面の滑落により切換スリーブと切換
歯車との相対回動運動が生ずることが可能ならし
められる。しかも、そのために同期リングと切換
歯車との間の摩擦接続式の結合を再び解離する必
要はない。切換スリーブと切換歯車とのこのよう
な相対回動運動は、摩擦モーメントの崩壊後に実
質的な低抗なしに行われるので、切換プロセスの
完了のためにそれ以上の係止解除を行なう必要は
なく、従つて、この切換プロセス終了時に第２の
圧力点が生ずることがない。

係止歯は専ら同期化作業のためにのみ用いら
れ、運転トルクを伝達する必要がないので、クラ
ツチ歯の数を出来るだけ多くする一方、係止歯の
数を最少限に抑えることが可能になる。

［発明の実施態様］ 本発明の１つの実施態様においては、切換スリ
ーブの周面に複数の、好ましくは３つの個別的な
係止歯を配置し、これらの係止歯を同期リングの
周面に設けられた各１対の係止歯を協働させる。

更に、本発明の構成による同期装置において
は、係止歯およびクラツチ歯に形成された各楔面
を、その都度の運転状況に合つた最適なものとし
て整合することが出来る。全ての歯における楔面
が、通常はこれらの歯の縦軸線に対して等しい勾
配を有するように形成されているのに対し、本発
明の好適な１実施態様では、軸方向に対する係止
歯の楔面勾配が、クラツチ歯の楔面勾配より小さ
く設定されている。係止歯における楔面をこのよ
うによりフラツトに形成しておくことにより、切
換操作に当り同期化のために消費されるエネルギ
ーの軸方向成分を特に大きくし、ひいては同期化
プロセスを迅速に行なうと同時に切換に必要なエ
ネルギーの消費量を軽減することが効果的に達成
される。また、他方では、クラツチ歯の角度をよ
り急勾配にしておくことにより、互いに係合せし
められたクラツチ歯を摩擦モーメントの崩壊後に
特に容易に相対回動させることが可能になる。特
に効果的な同期化を達成し且つ同期化に際して生
ずるエネルギーを申分なく支配するため、個別的
な係止歯のみが用いられる場合には、周方向で見
た係止歯の延在寸法をクラツチ歯の延在寸法より
大きくしておくと有利である。

ところで、本発明による同期装置は、切換スリ
ーブが選択的に、ガイドスリーブの傍に配置され
た単一の歯車のみをシヤフトに回転接続式に結合
するために用いられるか、或いはガイドスリーブ
の両サイドに配置された２つの歯車の一方をシヤ
フトに回転接続式に結合するために用いられるか
という問題とは関係なく使用することが出来る。
クラツチ本体と同期リングとを備えた歯車がそれ
ぞれガイドスリーブの両側に配置され、切換スリ
ーブがガイドスリーブに対し両側に移動可能にな
つている場合には、切換スリーブの内位噛合部の
一部を形成する係止歯を、その中央範囲に間隙を
設けることにより中断することが出来る。このよ
うな切欠としての中断部は、本発明によるバツク
カツト処理が行われる場合には製作技術上の観点
から有利であると見做されるので、意識的に設け
ことが可能である。

［図示例］ 次に、添付図面に示した実施例につき本発明を
詳細に説明する。

各図および本明細書の記述から容易に推考され
る各特徴は、本発明による別の実施態様において
も、それ自体単独で又は複数の特徴と任意に組合
わせて応用することが可能である。

第１図と第２図とに示された装置において、ギ
ヤシヤフト１上には相互間隔をおいて配置された
２つの歯車２，３が回動自在に支承されており、
これらの歯車２，３には、図示されてない形式に
よりギヤシヤフト１と平行な別のシヤフト上に固
定配置された各歯車が常に係合せしめられてい
る。歯車２と歯車３との間には、これら２つの歯
車２，３を選択的にギヤシヤフト１と回転接続式
に結合させることの出来る切換クラツチが設けら
れている。従つて、このギヤシヤフト１に作用す
るトルクは、切換クラツチによりギヤシヤフト１
に相対回動不能に結合された歯車を介して、互い
に係合状態にある各歯車の歯数比に基いた伝動比
でギヤシヤフト１と平行なシヤフトに伝達され
る。

両歯車２，３における任意の一方とギヤシヤフ
ト１とを互いに相対回動不能に結合するために用
いられる切換クラツチは、ギヤシヤフト１上の両
歯車２，３間で相対回動不能に配置されたガイド
スリーブ４を有している。このガイドスリーブ４
の周面には、ガイドスリーブ４を囲繞する切換ス
リーブ７の内位噛合部と係合する外位噛合部５が
設けられている。各歯車２，３は、それぞれガイ
ドスリーブ４に面した側にクラツチ本体８を有し
ている。クラツチ本体８は、例えばセレーシヨン
９により所属の歯車に回転接続式に結合されてい
る。更に、このクラツチ本体８の周面にはガイド
スリーブ４の外位噛合部５と整合されたクラツチ
歯０が設けられている。また、クラツチ本体８に
おける径の小さな区分には楔面１１が、設けられ
ている。各楔面１１上には、それぞれ対応する楔
面を備えた同期リング１２が坐着している。これ
らの同期リング１２は、クラツチ本体８のクラツ
チ歯１０の設けられた区分とガイドスリーブ４と
の間に位置を占めており、ガイドスリーブ４の外
位噛合部５とクラツチ本体８のクラツチ歯１０と
に整合された外位噛合部を有している。

切換スリーブ７は、通常、係止部材により中央
位置に保持されている。図示された実施例の場
合、この係止部材はコイル状の押ばね２２により
ばね負荷される球体２１として構成されている。
コイル状の押ばね２２自体は、ガイドスリーブ４
に形成された半径方向穿孔部２３内に収容されて
いる。これらの球体２１は、切換スリーブ７に設
けられた切欠、例えばリング溝２４内に係合せし
められる。ガイドスリーブ４は、コイル状の押ば
ね２２で負荷される球体２１の範囲における周面
に、それぞれスラストピース２５が挿入される横
方向スリツトを有している。スラストピース２５
の各端部は、その反対側に位置する同期リング１
２の端面と僅かな距離をおいて向き合つている。

第３図には、クラツチ本体８の周面に取付けら
れたクラツチ歯１０が展開された状態で示されて
いる。これらのクラツチ歯１０の各端部には、そ
れぞれ楔面１０１が形成されている。切換スリー
ブ７の内位噛合部はクラツチ歯６を有している。
このクラツチ歯６は切換スリーブ７の全幅に亙つ
て延び、その端部に楔面６１を有している。楔面
６１の勾配は、クラツチ本体８のクラツチ歯１０
に形成された楔面１０１の勾配に等しい。各クラ
ツチ歯６の間には、切換クラツチの周面に分配さ
れた３つ中断部６２が位置しており、これらの中
断部範囲にはそれぞれ１つの係止歯１３が設けら
れている。係止歯１３の長さ寸法１は幅方向にお
いてクラツチ歯６の長さ寸法より小さく設計され
ている。他方、この係止歯１３は、クラツチ歯６
の幅より大きな幅ｂを有している。係止歯１３の
端部に形成された楔面１３１は、クラツチ歯６に
形成された楔面６１より平坦に形成されている。
換言すれば、楔面１３１が軸線６３と成す角度α
がクラツチ歯６の楔面６１と縦軸線６３との成す
角度より大きい。更に、これらの係止歯１３は、
楔面１３１に接続されるところでバツクカツトさ
れている。そのため、楔面１３１とは反対側に向
つて先細に収斂している。係止歯１３におけるこ
の収斂度を規定する側面１３２は、クラツチ歯６
の端部に形成された各楔面６１に対してそれぞれ
平行に延びている。第３図から明らかなように、
係止歯１３は後方の側面１３２における実際の重
なりを考慮してその中央範囲で切欠かれているの
で、２つの歯部分を分割する間隙１３３が生ぜし
められる。

切換スリーブ７にはクラツチ歯６と係止歯１３
３が設けられており、これらの軸方向の長さを比
較すると、クラツチ歯６が係止歯１３よりも長く
なつている。

また、同期リング１２には係止歯１４が設けら
れている。

クラツチ本体８には、クラツチ歯１０が設けら
れている。

同期リング１２の係止歯１４には２つの傾斜し
た面、すなわちブロツク面である楔面１４１とカ
ツトバツク面である側面１４２が形成されてい
る。同様に、切換スリーブ７の係止歯１３にも２
つの傾斜した面、すなわち係止面であ楔面１３１
とバツクカツト面である側面１３２が形成されて
いる。

３つの係止歯１３には、それぞれ同期リング１
２に沿つて２つの係止歯４が配属されており、こ
れらの係止歯１４は、第２図に示されているよう
に、周方向で見た切換スリーブ７の各係止歯１３
の前後に配置されており、切換スリーブ７の係止
歯１３に面した側の端部に、係止歯１３の端部に
設けられた楔面１３１の勾配と同じ勾配の楔面１
４１を有している。更に、同期リング１２に設け
られた係止歯１４もバツクカツトされている。従
つて、その楔面１４１に接続されるところに位置
する側面１４２は、係止歯６，１０の端部に形成
された楔面６１，１０１の勾配と等しく、ひいて
は切換スリーブ７の係止歯１３におけるバツクカ
ツトを規定する側面１３２の勾配とも等しい勾配
を有している。同期リング１２に設けられ、それ
ぞれ切換スリーブ７の係止歯１３に配属されてい
る両係止歯１４間の距離は、係止歯１３の周方向
延在寸法にほぼ等しく、従つてその幅ｂに等しい
ので、この係止歯１３は同期リング１２の周面に
形成された各係止歯１４間の間隙を通過すること
が出来る。

第１図および第３図に示された状態では、切換
スリーブ７が２つの歯車２，３のいずれもギヤシ
ヤフト１と相対回動不能に結合されてないニユー
トラル位置を占めている。これら２つの歯車２，
３を連結するに当つては、同期達成後に切換スリ
ーブ７のクラツチ歯６をクラツチ本体８の周面に
設けられたクラツチ歯１０と係合させ、これによ
つてギヤシヤフト１上に回動不能に保持されたガ
イドスリーブ４に対する形状係止式の結合を行わ
せるため、外側のリング溝１５内に係合する図示
されてない切換フオークによつて切換スリーブ７
を左右いずれかの方向に移動させなければならな
い。

そこで、この切換スリーブ７を第１図の場合に
は隣接の歯車２に向つて左右方向に、また第３図
〜第５図の場合には下方に、それぞれ移動させる
と、先づ初めにスラストピース２５が隣接の同期
リング１２に当接して、同期リング１２の楔面を
クラツチ本体８に形成された対応楔面１１に圧着
する。これによつて同期リング１２とクラツチ本
体８との間には摩擦接続式の結合部が生じ、ひい
ては、同期リング１２とガイドスリーブ４との間
に周方向の形状接続式結合が許容されるように、
同期リング１２がガイドスリーブ４及び切換スリ
ーブ７に対するクラツチ本体８の相対的な回転方
向で連行せしめられる。

第３図に示されている装置の場合には、下位の
クラツチ本体８が１点鎖線でその輪郭形状を示し
たガイドスリーブ４に対して矢印８１の方向で、
即ち図の平面で見て右手方向で先行し、摩擦接続
により同期リング１２を連行するので、同期リン
グ１２に形成された係止歯１４は、ガイドスリー
ブ４の側面４の側面４１に当接するまで上記の運
動に追従する。このようにして到達した位置で
は、第３図の左下方に示された係止歯１４の楔面
１４１が、切換スリーブ７の係止歯１３に設けら
れた楔面１３１と向き合つた位置を占める。な
お、この位置は、同期リング１２とクラツチ本体
８との楔面１１間における摩擦接続式の結合によ
つて両者の同期が達成されるまで、そのままの状
態で維持される。同期が達成されると、摩擦モー
メントが急激に崩壊するので、切換スリーブ７の
係止歯１３は、同期リング１２及びクラツチ本体
８の歯車２により回動運動のもとで、同期リング
１２に設けられた両係止歯１４間のスペース内に
進入することが可能になる。第４図に示されてい
るように、切換スリーブ７が更に移動すると、そ
のクラツチ歯６の端部がクラツチ本体８における
クラツチ歯１０の端部に当接する。但し、唯一の
例外として、切換スリーブ７のクラツチ歯６が、
クラツチ本体８の各クラツチ歯１０間に位置する
間隙と偶々正確に向き合つた場合には、第５図に
示されているように、クラツチ歯６は何ら妨げら
れることなく該当のクラツチ歯１０間に間挿せし
められることになる。切換スリーブ７のクラツチ
歯６がクラツチ本体８のクラツチ歯１０に対して
相対的に占める位置は、同期リング１２とクラツ
チ本体８との間で同期が達成される正にその瞬間
の角度位置によつて左右される。

各クラツチ歯６，１０の端部に設けられた楔面
６１，１０１を介して強制することの出来る切換
スリーブ７とクラツチ本体８との間の相対回動運
動は、同期リング１２とガイドスリーブ４と切換
スリーブ７との間の回転接続式結合状態に基い
て、従来では同期リング１２とクラツチ本体８と
の間の摩擦接続式結合を再び解除しない限り達成
出来なかつた。そのために必要とされるエネルギ
ーは、切換プロセス終了時における第２の圧力点
とし顕現する不都合なものであつた。

しかるに、図示された本発明の実施例によれ
ば、クラツチ歯６，１０の各端部に設けられた楔
面６１，１０１と同じ勾配を有しかつ側面１３
２，１４２によつて制限されるバツクカツト部が
形成されているので、同期の達成後にロツク解除
に際するガイドスリーブ４と同期リング１２との
間の相対回動が可能ならしめられるのみならず、
係止歯１３，１４の楔面１３１，１４１を互いに
滑落させた後で、クラツチ歯６，１０により形成
される噛合部の相互内外係合に必要な新たな回動
運動をもこのバツクカツト部によつて行わせるこ
とが可能になる。第５図に示されている状態で
は、切換スリーブ７のクラツチ歯６とクラツチ本
体８のクラツチ歯１０とが連結され、これによつ
て切換スリーブ７が到達した位置においては、切
換スリーブ７とガイドスリーブ４との形状接続式
結合に基いて、歯車２とギヤシヤフト１とが相対
回動不能に結合されている。

本発明において重要な点は、同期達成後の同期
リングの回動自在性に基いて、切換スリーブがク
ラツチデイスク内に完全に係合した際にそれ以上
の圧力点が生ぜしめられないようになつているこ
とである。従つて、本発明による同期装置により
可能ならしめられている短い工程と相俟つて、特
にソフトでスピーデイな切換操作が行われる。

本発明は単に図示の実施例にのみ限定されるも
のではなく、本発明の枠を逸脱せずに種々異なる
態様で実施可能であることは言うまでもない。特
に、本発明は１つの歯車のみが選択的に１本のシ
ヤフトに連結可能であるような配置形式において
も効果的に応用可能である。更に本発明は、切換
スリーブの周面に分配された係止歯グループの数
とは無関係に、またこれらの各グループ内に配置
された係止歯の数とも無関係に実施可能である。
従つて本発明による同期装置は、種々異なる構造
のギヤに極めて効果的に用いることが出来る。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本発明による同期装置を有するギヤ
部分の縦断面図である。第２図は、第１図による
ギヤの−線に沿つた断面図である。第３図〜
第５図は、第２図の−線に沿つた展開図であ
つて、協働する各部品のそれぞれ異なつた位置に
おける互いに係合せしめられた噛合部を示す図で
ある。 符号一覧、１……ギヤシヤフト、２，３……歯
車、４……ガイドスリーブ、５……外位噛合部、
６……切換スリーブのクラツチ歯、７……切換ス
リーブ、８……クラツチ本体、９……セレーシヨ
ン、１０……クラツチ本体のクラツチ歯、１１…
…クラツチ本体の楔面、１２……同期リング、１
３……切換スリーブの係止歯、１４……同期リン
グの係止歯、１５……リング溝、２１……係止部
材としての球体、２２……コイル状の押しばね、
２３……半径方向穿孔部、２４……リング溝、２
５……スラストピース、４１……ガイドスリーブ
の側面、６１……クラツチ歯の楔面、６２……中
断部、６３……縦軸線、８１……クラツチ本体の
運動方向を示す矢印、１０１……クラツチ歯の楔
面、１３１……係止歯の楔面、１３２……係止歯
の側面、１３３……間隙、１４１……係止歯の楔
面、１４２……係止歯の側面。α……楔面１３１
と縦軸線６３との成す角度、ｂ……係止歯１３の
幅、ｌ……係止歯１３の軸方向長さ。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 切換クラツチ、特に自動車の切換ギヤにおけ
   る切換クラツチ用の同期装置であつて、ガイドス
   リーブ４が１本のシヤフト１に固定されており、
   このガイドスリーブ４には歯列としての外位噛合
   部５が設けられており、ガイドスリーブ４の傍で
   シヤフト１上に回動可能に支承されている歯車
   ２，３が、歯車２，３と相対回動不能に結合され
   たクラツチ本体８を有しており、クラツチ本体８
   には外位噛合部を形成するクラツチ歯１０が設け
   られており、切換スリーブ７がガイドスリーブ４
   を囲繞し且つ内位噛合部を有しており、この内位
   噛合部のクラツチ歯６がガイドスリーブ４の外位
   噛合部５と係合し、切換スリーブ７を軸方向に移
   動させることによつて切換スリーブ７をクラツチ
   本体８のギヤ噛合部と係合させ、ガイドスリーブ
   ４とクラツチ本体８との間に配置された同期リン
   グ１２が、ガイドスリーブ４とは形状接続式にク
   ラツチ本体８とは摩擦接続式に、それぞれ周方向
   で結合されており、同期リング１２の周面には複
   数の係止歯１４が設けられていて、これらの係止
   歯１４は切換スリーブ７の内位噛合部に所属する
   係止歯１３と協働しており、切換スリーブ７の係
   止歯１３の長さが軸方向においてクラツチ歯６の
   長さより短かくなつており、全ての噛合部の互い
   に向き合つた端部には、それぞれ楔面６１，１０
   １，１３１，１４１が形成されており、そのうち
   係止歯１３，１４の楔面１３１，１４１が、非同
   期状態にある際には互いに当接して、同期回転数
   に達しないかぎりクラツチ歯６，１０が互いに係
   合することを阻止するように構成されている形式
   の切換えクラツチ用の同期装置において、同期リ
   ング１２に設けられた係止歯１４と切換スリーブ
   ７に設けられた係止歯１３が、それぞれの楔面１
   ３１，１４１の近くで長手方向の軸線６３に対し
   て次のような角度、即ち、それぞれクラツチ本体
   ８及び切換スリーブ７のクラツチ歯１０，６の端
   部に位置する楔面１０１，６１の角度と少くとも
   等しい値の角度で直接バツクカツトされているこ
   とを特徴とする同期装置。 ２ 切換スリーブ７の周面に複数の、好ましくは
   ３つの、個別的な係止歯１３が配置されており、
   これらの係止歯１３が、同期リング１２の周面に
   設けられた１対の係止歯１４と協働するように構
   成されていることを特徴とする特許請求の範囲第
   １項に記載の同期装置。 ３ 係止歯１３，１４の楔面１３１，１４１が長
   手方向の軸線６３に対してクラツチ歯６，１０の
   楔面６１，１０１よりも勾配が緩かになつている
   ことを特徴とする特許請求の範囲第１項または第
   ２項に記載の同期装置。 ４ 係止歯１３，１４がクラツチ歯６，１０より
   大きな周方向寸法を有していることを特徴とする
   特許請求の範囲第１項ないし第３項のいずれか１
   項に記載の同期装置。 ５ ガイドスリーブ４の両側にそれぞれ歯車２，
   ３とクラツチ本体８と、同期リング１２とが配置
   されており、ガイドスリーブ４に対し両方向に移
   動可能な１つの切換スリーブ７が設けられている
   形式の特許請求の範囲第１項ないし第４項のいず
   れか１項に記載の同期装置において、切換スリー
   ブ７の内位噛合部の一部を形成する係止歯１３
   が、その中央範囲に設けられた間隙１３３により
   中断されていることを特徴とする同期装置。