JPH029105B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は金色装飾面の新規な形成方法に関する
ものである。さらに詳しくいえば、本発明は、成
形体の表面に施された窒化チタン皮膜上に、操作
が簡単である上に色調のコントロールが容易な乾
式めつき法により、金−ニツケル−クロム又は金
−鉄−クロムの三元合金皮膜を密着性よく、形成
させることによつて、例えば腕時計ケースや各種
装飾品などにおける金色装飾面を効果的に形成す
る方法に関するものである。

従来の技術 従来、窒化チタンは優れた硬度を有し、かつ金
に類似した色調を有することから、例えば腕時計
ケースや、ネツクレス、指輪の台座、記章、勲章
などの装飾品、食器、楽器などの表面にその皮膜
を形成させることによつて、これらの製品に耐摩
耗性を付与するとともに高級品としてのイメージ
を与えることに有効であることが知られている。

しかしながら、窒化チタン皮膜は、金や金合金
と色調が本質的に異なるため、通常その表面に金
合金皮膜を施して、色仕上げすることが行われて
いる。この色仕上げ用の金合金皮膜としては、従
来金−クロムの二元合金皮膜が用いられており、
このものは通常、真空蒸着法やイオンプレーテイ
ング法などの乾式めつき法によつて、該窒化チタ
ン皮膜上に設けられている。

このような、乾式めつき法にによつて窒化チタ
ン皮膜上に金−クロムの二元合金皮膜を形成させ
る方法は、色調及び付着強度の点からは優れた方
法といえるが、クロムは単体で強い昇華性を有す
ることから、目的の金−クロムの二元合金皮膜を
形成させるには、あらかじめ金とクロムとの合金
を作製して蒸発材料として用いることが必要であ
る。この蒸発材料として用いられる金−クロム合
金は、通常ボートに所定量のクロム粉末と金粉末
とを秤量して載置し、ボート上で融解する方法で
調製されている。しかしながら、このような方法
においては、秤量が面倒である上に、融解が一様
でないために均質な合金が得られず、したがつて
安定した色調を有する装飾面が形成されないなど
の問題がある。

発明が解決しようとする問題点 本発明は、このような問題を解決し、成形体の
表面に設けられた窒化チタン皮膜上に、従来の金
−クロム二元合金皮膜と同等の色調を有する皮膜
を、操作が簡単である上に色調のコントロールが
容易な手段で窒着性よく設けて、安定な色調を有
する金色装飾面を効果的に形成する方法の提供を
目的としてなされたものである。

問題点を解決するための手段 本発明者らは前記目的を達成するために鋭意研
究を重ねた結果、蒸発材料として金単体とニツケ
ル−クロム合金又は金単体と鉄−クロム合金を用
い、乾式めつき法により金−ニツケル−クロム又
は金−鉄−クロムの三元合金皮膜を窒化チタン皮
膜上に設けることにより、その目的を達成しうる
ことを見い出し、この知見に基づいて本発明を完
成するに至つた。

すなわち、本発明は、成形体の表面に窒化チタ
ン皮膜を形成させ、次いでこの皮膜上に、金単体
とニツケル合金又は鉄−ミキシング合金との混合
蒸発材料を用いて乾式めつき処理を施し、金−ニ
ツケル−クロム又は金−鉄−クロムの三元合金皮
膜を形成させることを特徴とする金色装飾面のの
形成方法を提供するものである。

以下、本発明を詳細に説明する。

本発明方法において用いられる基板としては、
金属、ガラス、セラミツク、プラスチツクスなど
の素材から成るものを使用することができる。こ
れらの基板は、その表面に必要に応じ適当な金属
や合金、あるいは金属化合物の薄膜を施したもの
であつてもよい。

本発明方法においては、前記基板の表面に、ま
ず窒化チタン皮膜を形成させる。この窒化チタン
皮膜を形成する方法として、通常真空蒸着法、イ
オンプレーテイング法、スパツタリング法、
CVD法などの乾式めつき法が用いられる。該窒
化チタン皮膜の厚さについては特に制限はない
が、通常0.5〜2μｍの範囲で選ばれる。

次に、このようにして、基板の表面に設けられ
た窒化チタン皮膜上に、乾式めつき法により、金
−ニツケル−クロム又は金−鉄−クロムの三元合
金皮膜を形成させる。該乾式めつき法としては、
真空蒸着法、イオンプレーテイング法、スパツタ
リング法、CVD法などが挙げられるが、これら
の中で、特にイオンプレーテイング法が好まし
い。このイオンプレーテイング法は、イオン化し
たガス雰囲気中で行う蒸着法のことであつて、
10^-3Torr以下で行う高真空イオンプレーテイン
グ法及び活性ガス中で行う活性反応蒸着法
（ARE法）や高周波を利用する高周波励起イオン
プレーテイング法に大別されるが、本発明におい
てはいずれの方法も用いることができる。また蒸
発材料を蒸発させる手段として、抵抗加熱、電子
銃、高周波誘導加熱レーザーなどが用いられる
が、いずれの手段も用いることができる。

本発明方法においては、蒸発材料として金単体
とニツケル−クロム合金、又は金単体と鉄−クロ
ム合金が用いられる。これらの蒸発材料は線材又
は板材が好適である。また、ニツケル−クロム合
金、鉄−クロム合金は、通常ニツケル又は鉄とク
ロムとの重量比が60：40ないし80：20の範囲にあ
るものが好ましく用いられる。

さらに、窒化チタン皮膜上に設けられる金−ニ
ツケル−クロム、金−鉄−クロムの三元合金皮膜
における金とニツケル−クロムとの重量比及び金
と鉄−クロムとの重量比は、90：10までの範囲に
あることが好ましい。

本発明方法において、所望の組成の三元合金皮
膜を形成するには、例えば蒸発材料として線材を
用いる場合、所定の長さの金線とニツケル−クロ
ム合金線又は鉄−クロム合金線とをボートや電子
銃（EBガン）上のライナなどに載置して蒸発さ
せればよく、また板材を用いる場合には、所定の
面積を有する金板とニツケル−クロム合金板又は
鉄−クロム合金板とをボートや電子銃上のライナ
に載置して蒸発させればよい。このように、蒸発
材料として線材又は板材を用いいることによつ
て、秤量などの面倒な操作を必要とせずに、均一
な融解を可能にし三元合金皮膜の成分比を容易に
制御することができ、したがつて色調のコントロ
ールも容易である。

このようにして、窒化チタン皮膜上に設けられ
た三元合金皮膜の厚さは、通常0.1〜2μｍの範囲
にあることが好ましい。

発明の効果 本発明方法によると、成形体表面に設けられた
窒化チタン皮膜上に、従来の金−クロム二元合金
皮膜と同等の色調を有する金−ニツケル−クロム
又は金−鉄−クロムの三元合金皮膜を、秤量など
の面倒がない簡単な密着性よく設けることができ
る上に、色調のコントロールが容易であり、かつ
量産時における色調のバラツキが少ない。

本発明方法は、例えば腕時計ケースや各種装飾
品、食器、楽器などにおける金色装飾面の形成に
好適に用いられる。

実施例 次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明
する。

実施例 １ 黄銅製時計ケース上に、厚さ約2μｍのニツケ
ルめつきを施したのち、N₂ガス圧７×10^-4Torr、
RF電力500W、EB電力5kw、基板温度300℃、蒸
着時間20分間の条件下で、この上にイオンプレー
テイング法により厚さ約0.5μｍの窒化チタン皮膜
を蒸着した。

次に、蒸着材料として金線びニツケル−クロム
合金線を用い、イオンプレーテイング法により、
該窒化チタン皮膜上に、厚さ約0.1μｍの金−ニツ
ケル−クロムの三元合金皮膜を蒸着した。この三
元合金皮膜における金とニツケル−クロムとの重
量比は約95：５であつた。

また、この蒸着はArガス圧５×10^-4Torr、RF
電力500W、基板温度度300℃、蒸着時間５分間の
条件下で行われた。

このようにして、金色装飾面が形成された時計
ケースは、その色調が従来時計ケースに用いられ
ている湿式合金めつきを施した時計ケースとほぼ
同等であり、また、窒化チタン皮膜と金合金皮膜
との密着性（90゜折り曲げテスト）や人工汗によ
る耐食テストにも十分に耐えるものであつた。

実施例 ２ ステンレス製時計ケース上に、厚さ約1μｍの
窒化チタン皮膜を実施例１と同様にイオンプレー
テイング法により形成した。次いで、蒸発材料と
して金板及び鉄−クロム合金板を用い、Arガス
圧５×10^-4Torr、RF出力500Wの条件下でのイ
オンプレーテイング法により、該窒化チタン皮膜
上に、厚さ約0.1μｍの金−鉄−クロムの三元合金
皮膜を蒸着した。この三元合金皮膜における金と
鉄−クロムとの重量比は約95：５であつた。

この方法においても、金合金の色調調整が可能
であり、また得られた時計ケースは、実施例１と
ほぼ同様の色調及び品質を有していた。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 成形体の表面に窒化チタン皮膜を形成させ、
   次いでこの皮膜上に、金単体及びニツケル−クロ
   ム合金又は鉄−クロム合金から成る蒸発材料を線
   材又は板材として用いて乾式めつき処理を施し、
   金−ニツケル−クロム又は金−鉄−クロムの三元
   合金皮膜を形成させることを特徴とする金色装飾
   面の形成方法。