JPH0262685B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は、各別に外面を露出して設けられた複
数のシリンダを備えた、熱、騒音及び有害物質の
エミツシヨンの少ない油冷却内燃機関に関する。

［従来の技術］ 冷却が発熱に等しいという公式はいかなる内燃
機関にとつてもそうあるべきことである。特に、
将来の機関に期待されることは、熱エミツシヨン
をできるだけ低くすることである。加えて、内燃
機関において避けることのできない熱損失は、最
大の温度レベルにおいて有益な目的、例えばキヤ
ビンの加熱に利用すべきである。水冷の場合、水
は比較的低い温度で沸騰するし、また、空冷の場
合、空気は機関により汚染される。したがつてい
ずれの場合も不都合である。そこで、機関油を冷
却媒体として利用するという考えがでてくる。こ
のような理由から、例えばピストン、シリンダ或
いはシリンダヘツドのような機関構成部分に対し
て油室を付設して、発生する熱を油で捕収する試
みがなされた。（例えば西独特許2649562）。しか
し、この場合、油の熱特性に起因する理由から、
冷却と発熱が等しいという公式は、例えば低い機
関出力のような小さい発熱の場合にしか当てはま
らなかつた。

ピストン及び燃焼プロセスが、燃焼室からシリ
ンダ壁へわずかな熱しか流れないように構成され
ているときは、油冷式においても高い機関出力を
達成できる（本発明者による西独特許3314543）。
しかしながら、この場合でも、冷却作用がほぼク
ランクシヤフトに対して横方向にしか効果をもた
ないので、冷却に限界がある。すなわち、冷却は
機関の縦断面方向には効果的ではない。というの
は、ピストンの下方部分に配置された冷却油偏向
羽根が１つの方向にしか作用しないからである。
そのため、シリンダ内部の一様な冷却がなされ
ず、また、シリンダ外部の冷却も、各シリンダが
一体的にまとめて鋳造されているので、全体に一
様にはなされない。したがつて、この構造では、
クランクシヤフトの長手方向に内部においても外
部においても冷却不足を生ぜしめる。

［発明の目的及び概要］ 本発明によれば、油冷却機関を上述した点に関
して最適化させるために、冷却油によつてシリン
ダの内面及び外面を最大限に一様に冷却すること
によつてシリンダ及びピストンの冷却を改善する
ための画期的態様が提案される。本発明において
は、各シリンダのための共通の油室が設けられ
る。

さらに、各シリンダの外部冷却は、各シリンダ
を機関の油室内に各別に露出させて設けることに
よつて大巾に改善される。このことは、シリンダ
がＶ型に配置される場合には、両方のシリンダ列
が共通のカバーで被われることにより一層達成さ
れる。このカバーは、通常のシリンダヘツドカバ
ーにとつて代るものであり、これにより、弁制御
及びヘツド冷却のために用いられるすべての油が
さらにシリンダの外部冷却のために利用可能とな
る。

さらに、上記西独特許3314543とは対照的に、
外部冷却用の環状空間が、シリンダの全周囲にわ
たつて配される。このような環状空間を形成する
ために必要となる各シリンダの間隔の増大は、Ｖ
型エンジンにおいて慣用されていように２つのシ
リンダに共通のクランクピンを用いるのではなく
て、クランク駆動が各シリンダに対して別個のク
ランクピンを有するようにすることによつて得ら
れる。

熱の減少及び冷却に関しては、西独特許
3314543に示されているように、これまでは、ピ
ストンの構造及び燃焼プロセスに依存してきた。
しかしながら熱エミツシヨンをさらに小さくする
ために、本発明では、シリンダ及びシリンダヘツ
ドの半分は、断熱層を間に挟んだ二重壁構造又は
ジヤケツトである機関壁及び機関カバーで包囲す
ることによつて外部に対して熱放射をしないよう
に隔置されている。

この場合において、熱エミツシヨンを減少させ
るように働らく構造は、デイーゼル機関にとつて
一層問題となつている騒音エミツシヨンも抑える
ように働らく。

また、有害物質、例えばCHのエミツシヨンの
減少は、本発明にあつては、ピストンをガス密に
構成するようにシリンダの周方向冷却を熟慮する
ことによつて得られる。そのためには、ピストン
は、ピストンリングの上側で、シリンダに対して
完全に密接するようにされねばならない。この点
に関して従来の冷却形式はすべて不完全なもので
あつた。というのは、シリンダの熱による非円形
的変形が起り、これにピストンが適応できないこ
とによる。それにより、シーリングギヤツプが起
り、そこから有害物質が発生する。本発明にあつ
ては、特にシリンダの内外冷却が均一に行われる
結果、シリンダの運転中における円形性維持が基
本的に改善され、両者間に熱変形による間隙が生
じることが大巾に避けられる。

割合的に最も大きいエミツシヨン、CO₂の排除
に対しては、将来的には、燃焼プロセス及び燃焼
室部分の最大熱密度がピストン及びシリンダの最
適なガスシール性と関連づけられることが重要と
なろう。このことのみが、鉱油の代りに植物油を
機関燃料として用いることを可能にさせる。

［実施例］ 第１図には、本発明によるシリンダ４の内部及
び外部の油噴射冷却が示してある。機関ハウジン
グは、潤滑油を供給する油通路２を有し、該通路
２には、単数又は複数の油噴射装置３が接続され
ている。油噴射装置３は、連接棒の運動面におい
てシリンダ４の内部に油を吹付ける。噴射された
油５は、その向きを偏向させる案内羽根６によつ
てピストンの上方部分７の方向に制御され、そこ
から再びピストンの下方部分８に向けて戻され
る。なお、ピストンは、下方部分８と、これとは
別体に構成された上方部分７とをピストンピンで
リンク結合した、いわゆるリンクピストンの構造
となつている。また、案内羽根６は、第１図右側
にピストンピンと直交する面での断面図で示され
ているように、この実施例では、直径方向に対向
して下方部分８の内面略中央部から上向きかつ内
向きに断面湾曲状に突設された２枚の板状体であ
る。これにより噴射油は偏向され、下方部分８の
上部にある開口から上方部分７に向けて噴出され
ることとなる。また、冷却油は、それとは別に、
シリンダ壁中に設けられた孔９を通つて、リング
室１０内に流入する。リング室１０は、シリンダ
ヘツド１１の中まで延びている。このリング室１
０から、次に、冷却油は、孔１２，１３を通つて
弁制御室１４内に流入し、そこから共通の油室１
５内に入り、シリンダ４を外側から冷却すること
となる。約60゜のＶ型に配置された２列のシリン
ダのための共通の油室１５は、両方の弁制御室１
４を包囲する共通のジヤケツトを備えたカバー１
６によつてカバーされている。図からわかるよう
に、各シリンダヘツド１１の弁制御室１４の外側
にある部分のみが油の噴射を受けない。しかしな
がら、その冷却のために、シリンダヘツド１１の
その部分中には、インレツト１７及びアウトレツ
ト１８のための通路が延びている。このように、
シリンダを外側から冷却する油は、各別に設けら
れたシリンダ４の間を通り、各シリンダと音及び
熱を遮断するジヤケツトを備えた外壁１９によつ
て各シリンダのまわりに画定される環状空間を通
つて各シリンダの外面を十分に冷却したうえで戻
される。

シリンダ４は、このように各別に設けられ、そ
の外面が十分に露出するように配置されており、
また、リング室１０は、各シリンダの全周にわた
つて延びているので、外側から十分に一様に冷却
される。また、シリンダの内側も、シリンダの全
周にわたつて十分かつ一様に油冷却されるように
なつている。そのために、前述したように、ピス
トン下方部分８の内側には、ピストンピン２０の
方向へ延びる案内羽根６が設けられており、さら
に、その外側には、ピストンピン２０に対して横
方向に延びる案内面３１（第２図）が設けられて
いる。案内面３１は、この例では下方部分８の両
側のピストンピン用孔３２の上方部分を、直径方
向対向位置で略斜め内向きに傾斜させることによ
つて設けられるもので、したがつて２つあること
になる。下方部分８の上部の開口から上向きに噴
出された油は、上方部分７により押し戻され、こ
の案内面に沿つて下向きに流れることとなる。従
つて、冷却油はシリンダの全周囲に届き、かつ、
シリンダの内面については、シリンダ内面のシリ
ンダ長さのほぼ80％の部分に届く。すなわち、内
側の冷却油は、ピストンシーリングジヤケツト２
２によつて覆われるシリンダ面（ほぼ20％に相当
する）には達しない。そこで、その部分の冷却の
ため、ピストンシーリングジヤケツト２２は、そ
の内面を噴射油５で冷却されるようにピストン上
方部分に図示のようなえぐりが設けられるととも
に、リング室１０は、ほぼピストンシーリングジ
ヤケツト２２の長さと同じ深さで形成されてお
り、もつて、シリンダのこの重要な上方部分の十
分な冷却もまた保証されている。

なお、冷却油の供給量は調節可能にすることが
望ましいことは明らかであろう。それにより、機
関の運転中すべての負荷範囲においてシリンダ・
ピストン間の遊〓を実質的に不変に、或いは、最
小に保つことができる。例えばカム軸２３，弁駆
動部材２４，噴射ポンプ２５及びノズル２６のよ
うな騒音発生部分も同様に音・熱を遮断する共通
の油室１５内に配置される。このようにして、高
い運転温度が可能にされる。このような高い運転
温度は、燃料が植物油である場合に必要となり、
これにより燃料に植物油を用いることが可能とな
る。

また、燃焼室２７内で燃焼プロセスが起るが、
そこでは、余剰空気２９が高温の燃焼区域２８の
回りを循環することによつてピストン上方部分７
における高温に対する十分な保護を確実にする。

このような最小の温度上昇と十全な冷却によ
り、シリンダとシリンダヘツドとの間の接続箇所
３０における慣用のガスシールを省略することが
可能になる。

第２図は、ピストンピン２０の方向に沿つてみ
たピストン下方部分８の断面図であり、この部分
８は、外側に案内面３１を備えており、この案内
面は、ピストンの上方部分（第１図）から戻され
る噴射油５（第１図）を捕えて、ピストンピン２
０のための孔３２の方へ油を偏向させる。そこで
油はシリンダ壁のさらなる冷却を行うために、下
方の油シール縁３３によつて短時間の間保持され
る。ついで油は孔３４を通つてシリンダ４の下方
の部分へ流出する。この場合、シリンダすなわち
ピストンが概ね上向きに配設されると、油が重力
により孔３４を通つて排出されることとなり、よ
り円滑に流出する。矢印３５は、案内羽根６によ
り上方へ向けられ、ついでピストンの上方部分７
により押し戻される油を示している。なお、（従
来の技術）のところで述べたように、戻された油
から熱を回収し、キヤビンの加熱や機関に供給さ
れる燃料の予熱に利用する手段を付設することが
望ましいことは明らかであろう。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の実施例の断面図、第２図は本
発明の実施例のピストン下方部分の断面図であ
る。 ２…油通路、３…油噴射装置、４…シリンダ、
５…噴射油、６…案内羽根、７…ピストン上方部
分、８…ピストン下方部分、９…孔、１０…リン
グ室、１１…シリンダヘツド、１２及び１３…
孔、１４…弁制御室、１５…油室、１６…カバ
ー、１９…外壁、２０…ピストンピン、２２…ピ
ストンシーリングジヤケツト、２３…カム軸、２
４…弁駆動部材、２５…噴射ポンプ、２６…ノズ
ル、２７…ピストン燃焼室、２８…燃焼区域、２
９…余剰空気、３１…案内面、３３…油シール
縁。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ クランクシヤフトと、前記クランクシヤフト
   から上方に延び、各別に外面を露出して設けられ
   た複数のシリンダであつて、各々が内面及び外面
   を有するシリンダと、少なくとも実質的に均一に
   前記内面及び外面を油によつて少なくとも実質的
   に専ら冷却するための手段であつて、前記シリン
   ダに油を供給する手段及び供給された油を前記シ
   リンダの内面及び外面の少なくとも主要部に向け
   させる手段を含む手段と、前記シリンダの周辺に
   沿つての温度分布の均一性を一層達成するため
   の、前記シリンダのための共通の室を画定する手
   段とからなる内燃機関。 ２ 特許請求の範囲第１項に記載の内燃機関にお
   いて、前記油を供給する手段が、前記シリンダの
   夫々の内面の約80％に噴射油を向けさせる手段を
   含む内燃機関。 ３ 特許請求の範囲第１項に記載の内燃機関にお
   いて、前記シリンダが約60゜の角度で２列になつ
   たＶ型配置にされている内燃機関。 ４ 特許請求の範囲第１項に記載の内燃機関にお
   いて、前記室を画定する手段が、熱及び音を防ぐ
   ジヤケツトを備えている内燃機関。 ５ 特許請求の範囲第１項に記載の内燃機関にお
   いて、さらに、前記シリンダ中に往復ピストンが
   備えられ、該ピストンは下方部分と該部分とは別
   個の上方部分を有し、前記油を向けさせる手段
   が、前記ピストンの下方部分に配置され、油を上
   方部分の方に向けさせるように配置された案内羽
   根と、前記下方部分上に備えられ、油を各シリン
   ダの内面の方に向けさせる案内面とを有している
   内燃機関。 ６ 特許請求の範囲第５項に記載の内燃機関にお
   いて、前記各ピストンの下方部分が孔を有し、該
   孔が、前記案内面により各シリンダの内面に向け
   られた油を集めるように配置されている内燃機
   関。 ７ 特許請求の範囲第６項に記載の内燃機関にお
   いて、前記ピストンの下方部分が、各シリンダの
   内面と係合し、前記孔の区域に油を集めるように
   配置された油シール縁を有している内燃機関。 ８ 特許請求の範囲第６項に記載の内燃機関にお
   いて、前記ピストンの下方部分が、ピストンピン
   に近接して対応する区域から重力により油を排出
   するように配置された少なくとも１つの孔を有し
   ている内燃機関。 ９ 特許請求の範囲第１項に記載の内燃機関にお
   いて、前記室を画定する手段が熱及び音を防ぐジ
   ヤケツトを有しており、また、前記油を向けさせ
   る手段が、前記室へと油を送るべく前記シリンダ
   中に設けられた孔を含んでいる内燃機関。 １０ 特許請求の範囲第１項に記載の内燃機関に
   おいて、さらに、前記シリンダの夫々に往復動可
   能なピストンを備えており、前記クランクシヤフ
   トは、前記シリンダが相互に適切に離れて位置す
   るように前記ピストンの夫々に対して別個のクラ
   ンクピンを有している内燃機関。 １１ 特許請求の範囲第１項に記載の内燃機関に
   おいて、さらに、前記シリンダ中にリンクピスト
   ンを有している内燃機関。 １２ 特許請求の範囲第１項に記載の内燃機関に
   おいて、さらに、前記シリンダを冷却するのに用
   いられた油から熱を回収する手段を有している内
   燃機関。 １３ 特許請求の範囲第１２項に記載の内燃機関
   において、さらに、回収した熱を機関に供給され
   る燃料の予熱に利用するための手段を備えている
   内燃機関。 １４ 特許請求の範囲第１項に記載の内燃機関に
   おいて、さらに、前記シリンダ中に遊〓をもつて
   受けられるピストンを有し、前記油を向けさせる
   手段が、前記ピストンの内面及び外面に向けさせ
   られる油の量的調節のもとに前記シリンダを冷却
   することができるようになつており、もつて前記
   シリンダとピストンの間の遊〓が機関の運転中す
   べての負荷範囲において実質的に不変に保たれる
   ようにした内燃機関。 １５ 特許請求の範囲第１項に記載の内燃機関に
   おいて、前記シリンダ中に遊〓をもつて往復動可
   能に受けられたピストンを有し、また、前記室を
   画定する手段が音及び熱を防止するジヤケツトを
   有し、前記冷却手段が、ピストンとシリンダの間
   の遊〓を最小にするように配設されている内燃機
   関。 １６ クランクケースと、前記クランクケースか
   ら上方に延び、各別に外面を露出して設けられた
   複数のシリンダであつて、各々が内面及び外面を
   有するシリンダとを備え、前記シリンダはヘツド
   を有しており、さらに、前記ヘツド上に支承され
   た弁制御手段と、前記内面及び外面を少なくとも
   実質的に均一に冷却するための手段であつて、前
   記シリンダ中に油を供給する手段及び供給された
   油を前記シリンダの内面及び外面の少なくとも主
   要部に向けさせる手段を含む手段とを備え、前記
   油を向けさせる手段が前記シリンダ及び弁制御手
   段のすべてに共通なカバーを有するとともに前記
   シリンダの外面に噴射油を向けさせるように配置
   されている内燃機関。 １７ 内面を有するシリンダと、回転するクラン
   クシヤフトと、前記シリンダ中で往復動可能であ
   るとともに、前記クランクシヤフトに対してより
   近い下方部分及びより離れた上方部分からなるピ
   ストンとを有し、前記下方部分は実質的に軸方向
   に延びる通路と該通路中にある案内手段を有して
   おり、さらに、前記通路を通して前記案内手段に
   対して噴射油を向けさせるための手段を備え、前
   記案内手段は該噴射油を前記上方部分に向けさせ
   るように適応されており、ついで油が前記上方部
   分により前記下方部分に押し戻されるようになつ
   ており、前記下方部分が、さらに、押し戻される
   油の通路中に配置され、かつ、前記シリンダの内
   面に押し戻された油を向けさせるように適応され
   たもう一つの案内手段を有しており、さらに、前
   記クランクシヤフトの回転に応答して前記ピスト
   ンを往復動させるための手段を備えてなる内燃機
   関。