JPH024254Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、アーマチユアを吸引するための永久
磁石からの漏洩磁束を少なくしその磁気吸引特性
を向上させ得るようにした電磁クラツチの改良に
関する。

〔従来の技術〕

この種従来の電磁クラツチとして、概略第２図
に示すような構成によるカークーラ用のものが知
られている。これを簡単に説明すると、図中１は
たとえばカークーラ用コンプレツサ等のハウジン
グ２にねじ止めされたベアリングホルダで、その
軸線方向に延設された筒状部１ａ上には、ベアリ
ング３を介して回転部材であるロータ４が回転自
在に支持されている。このロータ４は、前記ベア
リング３の外側に嵌装される内側磁束路部４ａ、
外周にＶベルト（図示せず）等が添接されるＶ溝
を有する外側磁束路部４ｂ、およびこれら両磁束
路部を連結しかつ磁束迂回用の円弧状長孔４ｃを
有する半径方向のフランジ部４ｄとによつて断面
略コ字状を呈するように形成され、かつその内側
に形成された空間内には、一対をなす環状磁性板
５，６およびこれら両磁性板で両側から挟持され
た環状の永久磁石７によつて一体的に構成された
積層型の磁性体８が嵌合して配設されている。そ
して、一方の環状磁性板５内周面は内側磁束路部
４ａの外周面に、他方の磁性板６外周面は外側磁
速路部４ｂの内周面にそれぞれ接し、またそれ以
外の磁性体８の内、外周部はそれぞれ間隙Ｓ１，
Ｓ２を介してロータ４側に対接する構成とされて
いる。さらに、この磁性体８において、一方の磁
性板５とロータ４のフランジ部４ｄ間、および他
方の磁性板６とこれに対向するフイールドコア９
間にも、それぞれ間隙Ｓ３，Ｓ４が形成されてお
り、これによつてこの磁性体８は、ロータ４の空
間内で上述した各磁性板５，６の一部のみが接し
た状態とされている。

また、前記フイールドコア９には、電圧印加に
よつて磁性体８を構成する永久磁石７の磁束の流
れに対して正方向および逆方向への磁束を生じさ
せる電磁コイル１０が内設され、かつこのフイー
ルドコア９は、その背面側が前記ベアリングホル
ダ１側に固着されるとともに、その一部が前記ロ
ータ４の空間内に遊嵌状態で嵌入され、ロータ４
と対向して配置されている。

１１は前記ロータ４のフランジ部４ｄと所定間
隙Ｇをおいて対向するアーマチユアで、このアー
マチユア１１には磁束迂回用の環状溝１１ａと円
弧状長孔１１ｂとが形成され、かつこのアーマチ
ユア１１は、板ばね１２を介して前記コンプレツ
サの回転入力軸１３に軸装されたアーマチユアハ
ブ１４に連結支持されている。なお、１５はアー
マチユア用ストツパ１６が装着されたストツパプ
レート、１７ａ，１７ｂ，１７ｃはそれぞれカラ
ー、ワツシヤおよびナツトである。

そして、上述した構成を有する電磁クラツチに
おいて、クラツチを連結状態とするには、前記電
磁コイル１０に電圧を印加し、その励磁力により
アーマチユア１１をロータ４側に吸着させ、この
状態で前記コイル１０への印加電圧を切るとよい
ものである。すなわち、このような状態では、前
記永久磁石７の自己保持機能により、図中実線ａ
で示すように、この永久磁石７からの磁束によつ
てアーマチユア１１が、図示されていないクラン
クプーリとＶベルトによつて回転するロータ４側
に磁気吸着された状態を維持し、ロータ４側の回
転駆動力はアーマチユア１１側すなわち入力軸１
３に伝達されることとなる。また、電磁コイル１
０に対し上述したとは逆方向への電圧を印加する
と、上述したとは逆方向への磁束（図中破線ｂで
示す）が発生し、永久磁石７による磁束が打消さ
れることとなり、その結果アーマチユア１１は板
ばね１２の復帰力によつてロータ４側から離間
し、上述した駆動力伝達が遮断されたクラツチ非
連結状態となるものであつた。

〔考案が解決しようとする問題点〕

しかしながら、上述したような構成による電磁
クラツチにおいて、ロータ４の内側で磁性体８と
の間に形成される間隙Ｓ１，Ｓ２が狭い場合にあ
つては、図中一点鎖線ｃ，ｄで示すような永久磁
石７からの漏洩磁束回路が、上述した間隙を介し
て形成されることとなり、その結果として永久磁
石７によるアーマチユア１１の磁気吸引力が低下
してしまう等といつた問題を生じるもので、クラ
ツチの作動性能を適切かつ確実に確保し得るよう
な何らかの対策を講じることが望まれている。

〔問題点を解決するための手段〕

上述した要請に応えるために、本考案に係る電
磁クラツチは、断面略々コ字状を呈するように形
成されかつ一対をなす磁性板およびその間に挟持
された永久磁石からなる積層型磁性体を内側に嵌
合配設させてなるロータと、このロータ内に遊嵌
状態で嵌入され電磁コイルを内設してなるフイー
ルドコアと、これと反対側のロータ側面部に所定
間隔おいて対向配置されたアーマチユアと、これ
を軸線方向に移動可能に支持してなるアーマチユ
アハブを備え、磁性体を構成する磁性板の一方の
外周部外側面をロータ外周部内面に対し、また他
方の内周部外側面をロータ内周部外面に対し、そ
れぞれ所定間隔おいて対向するごとくテーパ面と
して形成するようにしたものである。

〔作用〕

本考案によれば、磁性板に形成されたテーパ面
の存在によつて、ロータ内での間隙Ｓ１，Ｓ２を
広げることができ、これにより永久磁石からの漏
洩磁束回路中での磁気抵抗が大きくなり、その結
果永久磁石によるアーマチユアの磁気吸引力を増
大させ得るものである。

〔実施例〕

以下、本考案を図面に示した実施例を用いて詳
細に説明する。

第１図は本考案に係る電磁クラツチの一実施例
を示すものであり、図において、前述した第２図
と同一または相当する部分には同一番号を付して
その説明は省略する。

さて、本考案によれば、断面略々コ字状を呈す
るように形成されかつその内側空間内に一対をな
す磁性板５，６およびその間に挟持された永久磁
石７からなら積層型磁性体８を嵌合して配設させ
てなるロータ４と、このロータ４の内側空間内に
遊嵌状態で嵌入され電磁コイル１０を内設してな
るフイールドコア９と、このフイールドコア９と
反対側のロータ４側面部に所定間隔おいて対向配
置されたアーマチユア１１と、このアーマチユア
１１を軸線方向に移動可能に支持してなるアーマ
チユアハブ１４を備え、前記磁性体８を構成する
一方の磁性板５の外周部外側面をロータ４の外周
部４ｂ内面に対し、他方磁性板６の内周部外側面
をロータ４の内周部４ａ外面に対し、それぞれ所
定間隔おいて対向するごとくテーパ面２０，２１
として形成するように構成したところに特徴を有
している。

すなわち、上述した構成による電磁クラツチに
よれば、ロータ４の内側に形成された空間内に嵌
合して配設される積層型の磁性体８において、こ
れを構成する一方の環状磁性板５はその内周面を
ロータ内側磁束路部４ａの外周面に、他方の磁性
板６はその外周面をロータ外側磁束路部４ｂの内
周面にそれぞれ接するようにして配設される一
方、それ以外の磁性体８の内、外周部はそれぞれ
間隙Ｓ１，Ｓ２を介してロータ４側に対接する構
成とされているものである。そして、この場合に
おいて問題とされることは、上述した間隙Ｓ１，
Ｓ２を形成するための各磁性板５，６の外周部ま
たは内周部を、ロータ４の外側、内側磁束路部４
ｂ，４ａの内側面に対し適切な間隔をおいて対向
させることで、本考案はこのような点を考慮し、
磁性板５，６の外、内周部をテーパ状に切欠き形
成することで形成されるテーパ面２０，２１によ
つて、加工公差等に影響されずに、適切かつ確実
に間隙Ｓ１，Ｓ２を確保し得るようにしたもので
ある。ここで、上述した一方の磁性板５外周部の
テーパ面２０は、磁性体８の外周部から中心に向
うように外側に傾斜して形成され、他方磁性板６
内周部のテーパ面２１は、その内側周縁部から外
側で放射方向に向う傾斜面として形成されている
ものである。

そして、このような構成においては、上述した
テーパ面２０，２１による間隙Ｓ１，Ｓ２によつ
て、永久磁石７からの漏洩磁束回路は、永久磁石
７→磁性板５→間隙Ｓ１→ロータ外側磁束路部４
ｂ→磁性板６、および永久磁石７→磁性板５→内
側磁束路部４ａ→間隙Ｓ２→磁性板６と迂回して
形成されるものの、これら各磁束回路中での間隙
Ｓ１，Ｓ２が従来に比べて広くなり、その磁気抵
抗が大きくなるため、漏洩磁束は流れにくくなる
ものである。

したがつて、上述したような本考案によれば、
磁性板５，６に形成されたテーパ面２０，２１の
存在によつて、ロータ４内での間隙Ｓ１，Ｓ２を
広げることができ、これにより永久磁石７からの
漏洩磁束回路中での磁気抵抗が大きくなり、その
結果永久磁石７によるアーマチユア１１の磁気吸
引力を増大させ得るもので、電磁クラツチとして
の駆動トルクを大きくさせ得るとともに、その作
動特性を従来に比べ適正化し得る等といつた利点
を奏することが可能となる。

なお、本考案は上述した実施例構造に限定され
ず、各部の形状、構造等を、適宜変形、変更する
ことは自由である。

〔考案の効果〕

以上説明したように、本考案に係る電磁クラツ
チによれば、断面略々コ字状を呈する内側空間内
に一対をなす磁性板およびその間に挟持された永
久磁石からなる積層型磁性体を嵌合して配設させ
てなるロータと、このロータ内側空間内に遊嵌状
態で嵌入され電磁コイルを内設してなるフイール
ドコアと、これと反対側のロータ側面部に所定間
隔おいて対向配置されたアーマチユアと、これを
軸線方向に移動可能に支持してなるアーマチユア
ハブを備え、磁性体を構成する磁性板の一方を、
その外周部外側面がロータの外周部内面に対し、
他方を、その内周部外側面がロータの内周部外面
に対し、それぞれ所定間隔おいて対向するごとく
テーパ面として形成するようにしたので、簡単か
つ安価な構成にもかかわらず、それぞれの磁性板
に形成されたテーパ面の存在によつて、ロータ内
で外、内周方向の間隙を広げることができ、これ
により永久磁石からの漏洩磁束回路中での磁気抵
抗を大きくし、その結果永久磁石によるアーマチ
ユアの磁気吸引力を増大させることができ、電磁
クラツチとしての駆動トルクを大きくさせ得ると
ともに、電磁コイルの磁束により永久磁石の磁束
を打消す等の作用を良好なものとし、その作動特
性を従来に比べ適正化し得る等といつた実用上
種々優れた効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係る電磁クラツチの一実施例
を示す縦断側面図、第２図はその従来例を示す縦
断側面図である。 ４……ロータ、４ａ，４ｂ……内、外側磁束路
部、５，６……磁性板、７……永久磁石、８……
磁性体、９……フイールドコア、１０……電磁コ
イル、１１……アーマチユア、１３……回転入力
軸、１４……アーマチユアハブ、２０，２１……
テーパ面、Ｓ１，Ｓ２……間隙。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 断面略々コ字状を呈するように形成されその内
   側空間内に一対の磁性板およびその間に挟持され
   た永久磁石からなる積層型磁性体を嵌合配設して
   なるロータと、このロータ内側空間内に遊嵌状態
   で嵌入され電磁コイルが内設されたフイールドコ
   アと、このフイールドコアと反対側のロータ側面
   部に所定間隔おいて対向配置されたアーマチユア
   と、このアーマチユアを軸線方向に移動可能に支
   持してなるアーマチユアハブを備え、前記磁性体
   を構成する一対の磁性板のうち、一方はその外周
   部外側面がロータの外周部内面に対し、他方はそ
   の内周部外側面がロータの内周部外面に対し、そ
   れぞれ所定間隔おいて対向するテーパ面で形成さ
   れていることを特徴とする電磁クラツチ。