JPH0227962B2 - Shitsujunzai - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は水溶性部分脱アセチル化キチンを含有
してなる湿潤剤に関し、その目的とするところは
安全性が高く、しかも吸湿性および保湿性にすぐ
れた湿潤剤を提供することにある。 一般に化粧品、軟膏、菓子類の如く製品中より
水分が失われると品質を損なう製品、あるいは皮
膚用ローシヨン、クリーム、靴クリームなどの如
く湿潤性を賦与することを目的として用いる製品
には吸湿性の高い物質が湿潤剤として用いられて
いる。吸湿能力の高い物質には有機物、無機物を
合わせるとかなりの種類があるが、安全性あるい
は製品の形態安定性への影響が低いものであるこ
と等の必要性から実際に用いられる湿潤剤の種類
は限られている。さらに湿潤剤の備えるべき性質
としては吸湿性すなわち水分を吸収する能力と同
時に、保湿性すなわち水分の蒸発を防ぐ能力が求
められる。一般に用いられる湿潤剤はこれらの諸
特性を所要のものとするために多くの場合複合し
て用いられる。しかしながら通常用いられる湿潤
剤のうち、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン
酸ナトリウム等の吸湿性の大きな物質は電解質で
あるために乳化阻害作用等の製品配合上好ましく
ない性質があり、使用量、用途が制限される。 一方、グリセリン、ソルビトール、プロピレン
グリコール等のポリオール系湿潤剤は保湿性が比
較的良好であるが、製品にべたつきが生じやす
く、化粧品等に用いた場合使用感に難点がある。
また、最近適度な吸保湿性を持ち、使用感の良好
な湿潤剤としてヒアルロン酸が注目されている
が、原料が鶏冠、ヒトの臍帯等の稀少天然物であ
り極めて高価であるため、その用途は自ら限定さ
れる。 そこで本発明者は吸保湿性に富み、しかも使用
感の良好な湿潤剤を開発すべく、廉価な天然系高
分子に着目して鋭意検討を行つた結果、資源とし
て豊富で、しかも現在のところ有効に活用されて
いない、かに、えび、おきあみなどの甲殻類の主
成分であるキチンを部分脱アセチル化して得られ
る水溶性キチンが、湿潤剤として優れた特性を有
することを見い出し本発明を完成した。 本発明に於ける水溶性部分脱アセチル化キチン
は、例えば、特開昭53−47479号公報記載の方法
によつて天然産キチン粉末をアルカリを用いて脱
アセチル化して得られ、Ｎ−アセチル−Ｄ−グル
コサミンとＤ−グルコサミンを構成単位とし、Ｎ
−アセチル−Ｄ−グルコサミン単位の含量40〜60
％、Ｄ−グルコサミン単位の含量60〜40％である
ところの非晶質の水溶性部分脱アセチル化キチン
が単独又は混合物として用いられる。さらに水溶
性部分脱アセチル化キチンはＤ−グルコサミン単
位中のアミノ基を一部又は全部中和して用いても
よい。中和に用いる酸としては塩酸、硫酸、リン
酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、酪酸、乳酸、リ
ンゴ酸、コハク酸、グルコン酸、ピロリドンカル
ボン酸等の有機酸およびアスパラギン酸、グルタ
ミン酸、システイン酸、ホモシステイン酸等の酸
性アミノ酸のいずれでもよい。 本発明の湿潤剤は後記実施例に示すごとく優れ
た吸保湿性を示すとともに、高分子構造に由来す
る皮膜形成力により、被塗布物にべとつかずしつ
とりと感じを賦与する。従つて本発明の湿潤剤を
大気中にさらして水分を失なう傾向のある製品、
例えば、靴クリーム、塗料、紙製品等に添加する
ことによつて品質の維持向上に役立つばかりでな
く、繊維製品、複写紙、レコードなど帯電性を嫌
う製品に添加ないしは本発明の湿潤剤溶液に浸漬
するなどの処理を施すことによつて製品に適度の
吸湿性を賦与し、さらにこのような処理を施した
繊維製品はしつとり感が増し風合も改良される。 このように本発明の湿潤剤は安全性の高い物質
であることから、食品・化粧品等に添加すること
ができ、特に化粧品用湿潤剤として用いることに
より製品形態の維持のみならず、使用後の皮膚に
適度な潤い滑らかさを賦与し、皮膚あれを防ぐ効
果を奏する。このような化粧品としてはヘアスプ
レー、整髪剤、クレンジングクリーム、化粧水、
シヤンプー、リンス、ヘアートリートメント、乳
液、ローシヨン、ひげそり用クリーム、コールド
クリーム、ハンドクリーム、パーマ液、固型洗
剤、液状洗剤、汗とり剤などがあげられ、製品の
形態によらず適用することができる。 本発明の湿潤剤を各種製品に添加した場合、そ
の添加量に応じた湿潤性を賦与することができる
が、通常0.01〜10重量％好ましくは0.05〜５重量
％用いれば所期の目的を達成することができる。 さらに本発明の湿潤剤は他の湿潤剤例えばグリ
セリン、プロピレグリコール、ソルビトール、ピ
ロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウ
ム、アミノ酸等と併用しても効果を損なわれるこ
とはない。さらに必要に応じ各種界面活性剤、可
溶化剤、油剤等と併用することもできる。 以下、実施例により具体的に説明する。 実施例 １ 本発明の湿潤剤である水溶性部分脱アセチル化
キチンの塩酸部分中和物（脱アセチル化度50％）
および対照とした湿潤剤の１％水溶液３ｇを湿度
25％の空気を10／minの流量で導入した25℃の
恒温恒湿槽中における水の乾燥による重量減少か
ら保湿性を調べた。その結果を図１に示す如く、
本発明品は対照に比べ良好な保湿性を示した。さ
らに本発明の湿潤剤は中性で透明に溶解したが、
対照の脱アセチル化度90％及び100％のキトサン
は保湿性が低いばかりでなく、水に不溶であり湿
潤剤としては使いにくく、本発明の優位性が確認
された。また、本発明の湿潤剤の吸湿性を広巾パ
ルスNMR法（フレグランスジヤーナル 10(5)，
59（1982））にて調べたところ、表１に示すごとく
対照のヒアルロン酸と同等の吸湿性が認められ
た。

【表】 実施例 ２ 次の処方のミルクローシヨンを調製した。 油相 流動パラフイン 10.5重量％ ミツロウ 1.0 ステアリルアルコール 1.5 イソパルミチルアルコール 1.2 ポリオキシエチレン(10)グリセリルトリ
イソステアレート 2.4 水相 水溶性部分脱アセチル化キチン（脱アセ
チル化度50％） 1.5 水 82.0 30人の成人女子を２組に分けて、上記配合品お
よび対照として上記処方から湿潤剤を除いた配合
品を使用したところ、本発明の配合品を用いた組
からは使用感ならびに使用後の感じがしつとりと
して良いとの評価を得たのに対し、湿潤剤無添加
品を用いた組は肌がややかさかさする傾向が認め
られた。 実施例 ３ ヘアシヤンプー 次の処方のヘアシヤンプーを調製した。 ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸ジエタノール
アミン塩（30％） 50.0重量％ ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 3.0 クエン酸２ナトリウム1.5水塩 2.0 ポリオキシエチレングリコールモノステアレー
ト 1.0 プロピレングリコール 1.0 ポリオキシエチレンラノリンアルコール
2.0 水溶性部分脱アセチル化キチンピロリドンカル
ボン酸部分中和物（脱アセチル化度40％）
0.5 水溶性部分脱アセチル化キチン（脱アセチル化
度55％） 0.5 水 40.0 本シヤンプーは洗浄後頭髪にしつとり感が付与
され、本発明の湿潤剤未添加のものに比べて風合
がすぐれていた。 実施例 ４ 饅頭の皮 次の処方に従つて組成物を調製した。 小麦粉 100ｇ ベーキングパウダー ５ｇ 白砂糖 60ｇ 水 大さじ ３杯 水と白砂糖を合わせて熱し、溶解したところで
放冷し、小麦粉とベーキングパウダーを入れてよ
く混合した。この組成物を２分し、一方には水溶
性部分脱アセチル化キチンの塩酸部分中和物（脱
アセチル化度48％）１％および乳酸ナトリウム１
％を添加した。 両者の組成物を10分間蒸して饅頭の皮を製造し
た。この両者を10日間室温にて空気中にさらした
ところ、本発明の湿潤剤を添加したものには殆ん
ど変化が認められなかつたが、無添加のものは水
分が損失してかさかさになつた。

【図面の簡単な説明】

図１は各種湿潤剤の１％水溶液（３ｇ）を25℃
で25％空気を導入した恒温恒湿槽中に放置した際
の水分蒸発による経時的重量減少を示した図面で
ある。図中イは本発明の水溶性脱アセチル化キチ
ン、ロはヒアルロン酸、ハはキトサン（脱アセチ
ル化度90％）、ニはキトサン（脱アセチル化度100
％）、ホは水のみを用いた場合の測定結果である。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ Ｎ−アセチル−Ｄ−グルコサミンとＤ−グル
   コサミンを構成単位とし、Ｎ−アセチル−Ｄ−グ
   ルコサミン単位の含量40〜60％、Ｄ−グルコサミ
   ン単位の含量60〜40％であるところの非晶質の水
   溶性部分脱アセチル化キチンを含有することを特
   徴とする湿潤剤。