JPH0223262B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は減圧雰囲気またはアルゴンガス雰囲
気中において溶解した合金を同じ雰囲気状態にお
かれている鋳型にアルゴンガスなどの連続的な加
圧によつて鋳造する高周波溶解加圧鋳造機の改良
に関する。

歯牙用補綴材を鋳造するものとして、従来から
第１図に示すような鋳造機が用いられている。こ
の鋳造機は第１図に示すように、外側部に高周波
誘導コイル１を配した凸字状の気密容器内に、上
部にルツボ２を一体に形成した鋳型３を図示の如
く収容するとともに、鋳型３の肩部を加熱室４の
下端開口部に圧接して、この加熱室４とその下室
５とを気密に分離するようにし、鋳造に際して
は、この上下の２室を10^-3Torr程度に減圧した
後、ルツボ２内の金属塊を誘導加熱によつて溶解
せしめ、しかる後、加熱室４に例えば５気圧程度
のアルゴンガス等の不活性ガスを導入して、その
気体圧力でもつて、鋳型３内に溶融金属を鋳込む
ように構成されている。

したがつて、加熱室４は、鋳型３の肩部で完全
密封されていなければならないし、また、その下
室５は、これを形成する固定蓋６と上下動する筐
体７との嵌合面において完全密封されていなけれ
ばならない。

このため、従来の鋳造機は、図示の如く下段の
圧縮コイルバネ９の押上力でもつて、筐体７の周
端面を固定蓋６に圧接するようにしており、また
上段の圧縮コイルバネ１０の押上力でもつて鋳型
３の肩部を加熱室４の下端開口部に圧接するよう
にしている。

ところが、一般に鋳型３の底面と前記肩部まで
の高さｈは、個々の鋳型によつて不揃いであり、
ために、鋳型３の加熱室４に対する圧接力の調整
と、筐体７の固定蓋６に対する圧接力の調整とは
困難を極め、次のような種々の問題を招来させて
いた。

すなわち、上段圧縮コイルバネ１０の押上力は
鋳型３の底面とその肩部までの高さｈに比例する
ために、その高さｈが不足すると、上段圧縮コイ
ルバネ１０による押上力は減少して、加熱室４の
気密保持に支障を来たし、加圧鋳造の効果を減じ
させる。逆に、前記高さｈが大きすぎると、鋳型
３に対する押上力が過大となつて、鋳型３を破壊
させるおそれがある。特に、加圧鋳造の際には加
熱室４に５気圧程度の不活性ガスを瞬間的に導入
するので、鋳造３に対する押上力が過大である
と、鋳型の極めて僅かな亀裂に対してもそこに集
中応力がかかり、不活性ガスの導入時に鋳型３を
一瞬のうちに破砕させるおそれがある。

このため従来においては、前記高さｈの調整に
は細心の注意を払わねばならず、極めて煩しいも
のであつた。また、鋳型材質の変化によつてその
圧縮強度が異なるために、それに対応できない等
の欠点もあつた。

この発明の、かかる現状に鑑み鋳型の底面とそ
の肩部までの高さを調整せずとも加熱室の下端開
口部に対する鋳型の圧接力と、固定蓋に対する筐
体の圧接力とを常に適正値に保持することのでき
る鋳造機を提供しようとするものである。

すなわちこの発明は、鋳型の上部に一体に形成
されたルツボを下端開口の加熱室に、鋳型をその
加熱室に隣接する下室にそれぞれ収容するように
し、前記鋳型を上下動可能な鋳型受台上に載置し
その鋳型受台を上昇させることによつて鋳型を前
記加熱室の下端開口部に圧接するようにするとと
もに、前記下室を、その下室を形成する固定蓋と
上下動可能な筐体とで密封するようにして、前記
加熱室と下室とをそれぞれ独立的に減圧もしくは
加圧するようにした高周波溶解加圧鋳造機におい
て、中空のピストンロツド内に、そのピストンロ
ツドの中空部内径よりも小径のピストンロツドを
嵌挿し、それら２つのピストンロツドを互いに連
動して上下に駆動する流体圧シリンダ機構を設
け、前記中空のピストンロツドの上端部を前記筐
体に結合し、前記小径のピストンロツドの上端部
を前記鋳型受台に結合したことを特徴とする高周
波溶解加圧鋳造機にかかるものである。

これによつて、鋳型の前記高さが種々異なつて
も、流体圧を適正圧に保持するだけで加熱室の下
端開口部に対する鋳型の圧接力と、固定蓋に対す
る筐体の圧接力とを常に適正圧に保持することが
でき、鋳型をこの鋳造機にセツトする際にその高
さの調整が不要となる。また鋳型に対する押上力
も適正圧に保持されるので、連続加圧注湯の際の
鋳込みの失敗も少ない。

以下、この発明の具体的な構成を図示する実施
例に基づいて説明する。

第２図は、この発明の一実施例装置の主要部の
縦断面図である。図において、第１図に示した従
来装置と同一の構成部分については、同じ番号を
付し説明は省略する。

ルツボ２が収容される加熱部４は、石英ガラス
のパイプからなり、その上端は、同じく石英ガラ
スでもつて密封されて覗き窓１１が形成されてい
る。また加熱部４の外側部に取付けられる高周波
誘導コイル１は、図示しない高周波発生装置に接
続されるとともに、そのコイル１の外側部におい
て還流する冷却水によつて冷却される。

鋳型３が収容される下室５は、アスベスト成形
材の上蓋６′とそれと一体に結合されたアルミニ
ウム合金の環状蓋６″と、この環状蓋６″にはまり
合い昇降するようにされた筐体７とから形成され
る。そして、この上蓋６′と環状蓋６″とで筐体７
に対する固定蓋６が形成される。

筐体７は、アルミニウム合金から形成されると
ともに、その下端部は開口されて、後述する流体
圧シリンダ機構Ａでもつて昇降される。また鋳型
受台１２は、筐体７内の中心位置において、同じ
く後述する流体圧シリンダ機構Ａでもつてこの筐
体７と連動して昇降される。

そして、この第２図において、第１図と最も大
きく相違する点は、筐体７並びに鋳型受台１２
を、流体圧シリンダ機構Ａでもつて昇降させるよ
うにした点である。

すなわち、流体圧シリンダ機構Ａは、シリンダ
１３に嵌挿されて上下動するようにされた中空の
ピストンロツド１４と、このピストンロツド１４
内に嵌挿されて、同じく上下動するようにされた
小径のピストンロツド１５とを備えてなり、この
大径のピストンロツド１４は、その先端部におい
て、前記筐体７の下端部と結合してこれを昇降さ
せるようにされており、また小径のピストンロツ
ド１５は、前記筐体７の下端開口部を上下に貫通
するとともに、そのロツド先端部において、球関
節軸受１６とその外側に配設されたコイルバネ１
７とを介して、前記鋳型受台１２に係合され、こ
れを昇降させるようにされている。

この場合、筐体７と鋳型受台１２とを別個独立
の流体圧シリンダ機構に連結して昇降させること
もできるが、筐体７と鋳型受台１２とは同一中心
軸上において昇降させる必要があるので、この実
施例では、特に大小のピストンロツド１４，１５
を同一中心軸上において昇降させるようにしてい
る。

鋳型受台１２が、球関節軸受１６とコイルバネ
１７を介して小径のピストンロツド１５先端部に
係合されるのは歪んだ鋳型３をこの受台１２で押
し上げる場合に、鋳型３の底面を均等な加圧力で
もつて押し下げるためである。この流体圧シリン
ダ機構Ａは、空気圧あるいは油圧で駆動される
が、この実施例においては空気圧で駆動するよう
にされる。１８，１９はエアーコンプレツサーに
切換弁を介して接続される吸排気口であり、２０
は、小径のピストンロツド１５を緩徐的に下降さ
せるための排気口である。

尚、吸排気口１９の前段には、圧力調節器が接
続され、シリンダ１３内空気圧を所望圧に設定で
きるようにされる。

また、大径のピストンロツド１４の下端部は、
シリンダ１３内に開放されて、このシリンダ１３
内への圧縮空気の導入によつて、大小のピストン
ロツド１４，１５は、同時に連動して駆動され
る。この場合、小径のピストンロツド１５の方が
大径のそれよりも速く上昇するように動作し、下
降の時は、逆に大径のピストンロツド１４の方が
速く下降するように動作する。

また、この場合の小径ピストンロツド１５の押
上力は、加熱室４を不活性ガスで瞬間的に加圧す
る際のこの鋳型３が受ける押下力に充分対抗する
ことができる圧力であつて、しかも鋳型３を破壊
させない範囲の値に設定される。また、大径ピス
トンロツド１４の押上力は不慮にして鋳型３が破
壊された場合であつても、その筐体７が受ける押
下力に充分対抗することができる値に設定され
る。

尚、２１，２２は加熱室４と下室５とをそれぞ
れ10^-1〜10^-2Torr程度の減圧状態にする排気系
との接続部であり、２３は約５Kg／cm²Ｇの圧力を
もつ加圧用アルゴンガスの導入部であり、２４は
約１Kg／cm²Ｇの圧力をもつガス置換用アルゴンガ
スの導入部である。

次に、この鋳型３をこの鋳造機にセツトする方
法を付記しておく。

鋳型３をかかる鋳造機にセツトする場合、従来
では鋳型３を鋳型受台１２に載置せしめた状態で
鋳型受台１２を上昇させ、ルツボ２を加熱室４に
挿入せしめていた。しかし、ルツボ２の外周面と
加熱室４の内周面との間隙は、極めて僅かであ
り、したがつてルツボ２の加熱室４への挿入に際
しては、鋳型３の鋳型受台１２における正確な位
置決めが要求される。

ところが、鋳型３の外形は個々のものによつて
不揃いであり、かかる不揃いのものを鋳型受台１
２において加熱室４の直下に正確に位置せしめる
ことは容易ではない。特に鋳型受台１２の昇降を
手動でもつて微細に調整できないかかる発明装置
においては、鋳型３を鋳型受台１２に載置せしめ
た状態でルツボ２を加熱室４に挿入することは極
めて難かしい。

そこで、この発明装置においては次のような新
たな方法でもつてルツボ２を加熱室４にセツトす
る。

すなわち、鋳型受台１２と筐体７とを最下端位
置に位置せしめた状態において、排気機を作動さ
せ、前記接続部２１から排気せしめて加熱室４を
減圧して行く。そしてルツボ２を第２図の如く、
手動でもつて直接加熱室４に挿入せしめて、鋳型
３を加熱室４の下端開口部に真空吸着せしめる。

この場合、鋳型３の肩部にはアスベスト材から
なるパツキン２５が装填される。しかる後、鋳型
受台１２を鋳型３の底面に圧接させるとともに、
筐体７を環状蓋６″に嵌合圧接せしめる。これに
よつて、鋳型３の鋳型受台１２における正確な位
置決め操作が不要となり、鋳造３のセツトを短時
間でかつ容易に行なうことができる。

次に、この発明装置の操作手順を第３図と第４
図に示す操作盤に基づいて説明する。この操作盤
には、この発明装置の主要部の模式図が描かれて
おり、この模式図の各主要操作端には、その作動
状態をランプ表示する表示燈が付設されている。
すなわち、２６，２７は第２図における排気系の
接続部２１，２２に対応する排気表示燈であり、
２８，２９は、同じく第２図におけるアルゴンガ
スの導入部２３，２４に対応する表示燈である。
また３０は、加圧用アルゴンガスの導入時に点燈
する加圧表示燈であり、３１は高周波誘導コイル
の作動時に点燈する誘動加熱表示燈である。３２
は第２図の鋳型３を収容している下室５が気密状
態に保持されていることを表示する気密表示燈で
ある。

そして、まず電源スイツチ３３をONにセツト
すると、パワーランプ３４と、ウオーターランプ
３５と溶融温度調節器入力ランプ３６とが点燈し
て、電源の入力表示と、冷却水の還流表示等を行
なう。

次に、鋳造する合金の種類、量等に応じて溶融
温度調節ボタン３７を選択する。選択されると棒
状ランプ３８が点燈してこれを表示する。

次に、操作ボタン３９を投入するとエアーコン
プレツサが作動して、第２図の加熱室４を排気す
るとともに、筐体７と鋳型受台１２とをゆるやか
に上昇させる。この時、ポンプ出力ランプ４０
と、排気表示燈２６とが点燈する。そしてこの操
作ボタン３９の投入を持続せしめて、第２図のル
ツボ２を前述した方法でもつて加熱室４に挿入
し、鋳型３を加熱室４の下端開口部に吸着せしめ
る。

しばらくの後、筐体７と鋳型受台１２とは、そ
れぞれ上昇してきて筐体７は固定蓋６に鋳型受台
１２は鋳型３にそれぞれ圧接する。圧接すると図
示しないリミツトスイツチが作動して気密表示燈
３２を点燈させるとともに、加熱室４の真空排気
を停止する。

次に加圧鋳造を真空雰囲気下で行なうか、アル
ゴンガス雰囲気下で行なうかを４１，４２の操作
ボタンで選択してこれを投入する。

もし、前者を選択したならば第２図の接続部２
１，２２から排気が行なわれるとともに、２６，
２７の表示ランプが点燈する。また後者を選択し
たならば、まず下方の第２図の導入部２４から所
定時間アルゴンガスが導入され、第２図の排気接
続部２１から排気されて、ガス置換が行なわれ
る。と同時に第３図の２９，２６の表示燈が点燈
してこれを表示する。

それ以後は、時間設定された制御装置によつ
て、高周波誘導加熱が行なわれ３１，４３のラン
プが点燈する。そして、合金の溶融状態を第３図
の中央覗き窓から監視し、適当な時期に加圧用ボ
タン４４を投入する。すると第２図のアルゴンガ
ス導入部２３からアルゴンガスが所定時間圧入さ
れ、鋳型内に加圧注湯される。この時２８，３
０，４５のランプが所定時間点燈する。そして加
圧注湯が完了すると、第２図の加熱室４とその下
室５とは大気圧に保持され、下降用ボタン４５を
投入すると、第２図の筐体７と鋳型受台１２とは
下降し、元の準備位置に復帰せしめられる。３２
の気密表示燈は消燈する。

この発明は、以上説明した如く、鋳型をこの鋳
造機にセツトする際の鋳型高さの調整を必要とし
ないので、鋳型セツト時の操作性を向上させるこ
とができる。しかも、鋳型の加熱室の下端開口部
に対する圧接力は、適正圧に保持されるので、鋳
型を破壊させることもなく、したがつて連続加圧
注湯による鋳込の失敗も少ない等の効果を奏す
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来の高周波溶解加圧鋳造機の一例の
本体主要部を示した縦断面図、第２図はこの発明
にかかる実施例装置の同じく縦断面図である。第
３図はこの発明装置に用いられる操作盤を示す平
面図である。第４図はこの実施例装置の外観斜視
図を示す。 ２……ルツボ、３……鋳型、４……加熱室、５
……下室、６……固定蓋（上蓋６′と環状蓋６″と
から形成される）、７……筐体、１２……鋳型受
台、１４，１５……ピストンロツド、Ａ……流体
圧シリンダ機構。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 鋳型の上部に一体に形成されたルツボを下端
   開口の加熱室に、鋳型をその加熱室に隣接する下
   室にそれぞれ収容するようにし、前記鋳型を上下
   動可能な鋳型受台上に載置しその鋳型受台を上昇
   させることによつて鋳型を前記加熱室の下端開口
   部に圧接するようにするとともに、前記下室を、
   その下室を形成する固定蓋と上下動可能な筐体と
   で密封するようにして、前記加熱室と下室とをそ
   れぞれ独立的に減圧もしくは加圧するようにした
   高周波溶解加圧鋳造機において、中空のピストン
   ロツド内に、そのピストンロツドの中空部内径よ
   りも小径のピストンロツドを嵌挿し、それら２つ
   のピストンロツドを互いに連動して上下に駆動す
   る流体圧シリンダ機構を設け、前記中空のピスト
   ンロツドの上端部を前記筐体に結合し、前記小径
   のピストンロツドの上端部を前記鋳型受台に結合
   したことを特徴とする高周波溶解加圧鋳造機。