JPH0221090B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は、しや断性能の向上を図つた回路し
や断器に関するものである。従来閉成時に、導体
を流れる電流が、同一方向でかつ直線方向になる
ように配置された回路しや断器においては、電流
による磁気力が強くないため、アークの駆動ある
いはアークの伸長が不充分であつた。この発明
は、固定電極に簡単な工夫をこらすことにより、
アークに働く駆動力を強めて、アークの伸長およ
びアークの駆動を増大させて、しや断性能を向上
させるものである。

図によつて従来例を説明する。

第１図は従来の回路しや断器の一例を示すもの
である。

同図において、１は絶縁物により構成された包
囲体、２は固定導体、３は固定導体２とで固定電
気接触子２０を構成する固定接点、４は可動接
点、５は可動接点４とで可動電気接触子４０を構
成する可動導体、６は可動導体５を動作させる操
作機構部である。７は接点３，４に生じたアー
ク、８はアーク７を消弧させる消弧板である。

つぎに、動作を説明する。

回路しや断器に事故電流が流れると、操作機構
部６が動作し、可動導体５を開極させる。この動
作とともに接点３，４間にアーク７が発生する。
アーク７は、可動導体５を流れる電流の磁気力と
消弧板８の吸引力によつて駆動され、消弧板８方
向に移動して消弧板８に接触する。アーク７は消
弧板８に接触することにより、さらに磁気的な吸
引力を受けて伸長され、冷却されることによつて
消弧される。従来の回路しや断器は概略、上記の
ような動作を行なうのである。ここで、この発明
の説明に先だつて、導体を流れる電流の及ぼす磁
気力について若干説明を加える。第２図は、第１
図の接点近傍を示したものである。固定導体２を
図面上右から左へ電流I₁が流れており、可動導体
５には、同様に電流I₂が流れている。

さて、接点３，４間に生じたアーク７には、可
動導体５からFbなる電磁反発力が働いている。
この力の方向は、図中矢印にて示した通り、可動
導体５から遠ざかる方向であり、その強さは可動
接点４の近くで大きく、固定導体２に近づくに従
つて小さくなる。一方、固定導体２からはFaな
る電磁反発力が働いており、その力の方向および
強さは、上述したのと全く逆の特性を示してい
る。

したがつてアーク７は、可動接点４側では、可
動導体５の先端方向へ、固定接点３側では、可動
導体５側へそれぞれ駆動力を受ける。このよう
に、逆方向の力を受けたアーク７は、その陽光柱
部が伸長しないばかりか、第１図にて示した、消
弧板８の方向へも移動しにくく、したがつて消弧
板８の冷却効果を充分には受けていなかつた。

そこで、アーク７を消弧板８方向へ伸長した
り、あるいは、アーク７を駆動したりするために
は、固定導体２からアーク７に及ぼす力を小さく
する必要がある。すなわち、第２図のFaの力を
小さくすればよいのである。

第３図には固定導体２のみを示している。固定
導体２を流れる電流を、導体幅方向中央部を流れ
るのをIc、幅方向両端部を流れるのをIsと示して
いる。さて、接点３が固定導体２の中心線上にあ
る以上、接点３に生じたアーク７に働く電磁力の
うち、最も大きい電磁力を与えるのは、上記導体
中央部を流れるIcである。すなわち、電流Icが、
アーク７を可動導体５側に抑え込むことに対して
大きな寄与をしているのである。したがつて、固
定導体２の中央部に流れる電流Icを少なくすれ
ば、電磁力も大きく減少し可動導体５の及ぼす電
磁力が相対的に大きくなり、アーク７は第１図に
おいて、消弧板８側に迅速に駆動されたり、ある
いは、伸長されたりするようになる。

このため、第４図に示すように、固定導体２に
おける幅方向中央部に位置して、接点３の固着位
置よりも前方位置から後方側へ延びる貫通溝１０
０を、上記固定導体２に形成することにより、中
央部を流れる電流Icを少なくさせて、アーク７を
矢印Ｐ方向、つまり後方の消弧板８側へ移動し易
くさせたものがある。

しかるに、上記構成では接点３より前方へ流れ
る電流（図面の大線部分）が可動導体５を流れる
電流に対して逆方向となるため、可動導体５の閉
成状態を保持するのに大きな力が必要になるとい
う欠点があつた。

そこで、この発明者は、まず、第５図Ａ，Ｂに
示す回路しや断器を同日付で、出願している。第
５図において、固定導体２の幅方向中央部に設け
た貫通溝１０の前縁１０ａを、固定接点３の後縁
３ａにほぼ合致させることにより、固定接点３の
側方からのみ固定接点３へ電流Isが流れるように
して、固定導体２と可動導体５との間で電磁反発
力が生じることなく、小さな力で閉成状態を保つ
ことができ、しかも、貫通溝１０の内部に位置す
るアーク走行路１１の前端部１１ａを貫通溝１０
の前壁１０ｂで支持して、上記前端部１１ａでの
みアーク走行路１１を固定導体２に接続させるこ
とにより、アークを移動し易くして、しや断性能
の向上が図られている。

しかるに、この種の構造では、つぎのような欠
点があつた。

しや断動作時に生じたアーク７は接点３，４か
ら移動し、アーク走行路１１に移動するが、分流
電流が流れている電路２ａ，２ａにアーク７が移
り、しや断性能が低下することがある。

この間の事情を第６図Ａ〜Ｃで説明する。同図
Ａにおける走行路Ｐ部と分路部Ｑ部にアーク７が
生じた時をそれぞれ、同図Ｂ，Ｃの側面図に示し
ている。同図Ｂのようにアーク７が走行路Ｐ部に
生じている場合は、この走行路Ｐ部を流れる電流
Ｉは、アーク７をさらに駆動する力を及ぼすが、
同図Ｃのように、分路部Ｑにアーク７が生じた時
は、アーク７は駆動方向とは逆の抑え込みの力を
受けることになる。したがつて、アーク７が分路
部Ｑに生じると、消弧板８の方向へ駆動される力
が減少し、迅速なる冷却が行なわれず、しや断性
能の向上は望めなくなる。

この発明は、上記の欠点を除去するためになさ
れたもので、上記第５図Ａ，Ｂで示した構成に加
えて、固定導体の少なくとも分流電路の導体表面
を絶縁物あるいは高抵抗金属からなる被覆体で被
うことにより、アークのアーク走行路側への移動
を早めさせ、もつてしや断性能の向上を図り得る
回路しや断器を提供することを目的としている。

第７図は、この発明の一実施例を示すもので、
第１図〜第６図と同一部所には同一符号を付して
説明を省略する。同図において、１２は貫通溝１
０の両側に位置する分流電路２ａの表面を覆う被
覆体で、この被覆体１２は絶縁物あるいは、接点
３や固定導体２より著しく高い抵抗率を有する高
抵抗金属にて構成されている。

上記のような構成にすれば、アーク７は必ずア
ーク走行路１１に存在し、消弧板８方向に駆動さ
れるから、信頼性のある高いしや断性能を得るこ
とができる。被覆体１２は、絶縁物としては、有
機、無機あるいは表面処理をした金属物などがあ
り、金属高抵抗物質としては、ニクロム、カンタ
ルなどが適当である。

この場合、アーク走行路１１については、第６
図に示すように、他の部材を取り付けてもよい
し、あるいは、Ｕ字状の溝を設けて導体２に一体
形成したものであつてもよい。

第８図は、この発明の他の実施例を示すもので
ある。同図において、接点３の周囲をも絶縁物の
被覆体１２にて覆つて、アーク走行路１１とアー
ク走行路１１に面する側の接点３の周囲の一部の
みを露出している。このようにすると、接点３に
生じたアーク７は、電流が増大するに従つて、そ
の足の表面積も増大しようとする。この時、接点
３の周囲が絶縁物１２にて覆われているため、ア
ーク走行路１１側にその足の一部が進入する。す
なわちアーク７はアーク走行路１１側に移動する
のを余儀なくされるのである。したがつて、前述
したこの発明のアーク走行路１１の効果と相まつ
て、従来と比較し非常に短時間でアーク走行路１
１に移動することになる。

以上のように、この発明によれば、両導体間に
電磁反発力を生じることもなく、小さな力で閉成
状態を保持し得るとともに、アークが確実かつ迅
速にアーク走行路に導かれるので、しや断性能に
優れた回路しや断器を提供できる。

【図面の簡単な説明】

第１図Ａは従来の回路しや断器の一例を示す平
面断面図、同図Ｂは同図ＡのＢ−Ｂ線断面図、第
２図はアークに働く力の説明図、第３図Ａ，Ｂは
固定導体を流れる電流の説明図、第４図は溝を設
けた固定導体と可動導体を示す斜視図、第５図Ａ
はこの発明に含まれない固定導体の一例を示す平
面図、同図ｂは同図ＡのＢ−Ｂ線断面図、第６図
Ａ〜Ｃはアークに働く力の説明図、第７図Ａはこ
の発明の固定導体の一例を示す一部破断平面図、
同図Ｂは同図ＡのＢ−Ｂ線断面図、第８図はこの
発明の固定導体の他の実施例を示す一部破断平面
図である。 ２……固定導体、２ａ……分流電路、３……固
定接点、３ａ……後縁、４……可動接点、５……
可動導体、１０……貫通溝、１０ａ……前縁、１
０ｂ……前壁、１１……アーク走行路、１１ａ…
…前端部、１２……被覆体、２０……固定電気接
触子、４０……可動電気接触子。なお、図中同一
符号は同一もしくは相当部分を示す。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 導体とこの導体に固着された接点とを有する
   可動電気接触子および固定電気接触子を、その閉
   成状態での各導体を流れる電流の向きが同一で、
   かつ、ほぼ直線状になるように設置し、上記固定
   電気接触子における固定導体の幅方向中央部に固
   定接点を固着した回路しや断器において、上記固
   定導体の幅方向中央部に設けられて、その前縁が
   上記固定接点の後縁にほぼ合致している貫通溝
   と、この貫通溝の内部に位置し、その前端部が上
   記貫通溝の前壁に支持されて上記前端部でのみ上
   記固定導体に接続されているアーク走行路と、上
   記固定導体における少なくとも上記貫通溝の両側
   に位置する電路の表面を覆い、絶縁物または上記
   導体よりも高抵抗の金属からなる被覆体とを有す
   ることを特徴とする回路しや断器。 ２ 上記貫通溝が平面略Ｕ字状に形成され、この
   略Ｕ字状の貫通溝内の導体部をアーク走行路とし
   た特許請求の範囲第１項記載の回路しや断器。 ３ 上記被覆体の被覆領域が、アーク走行路およ
   び固定接点の電気的接触面を残した導体の表面で
   ある特許請求の範囲第１項または第２項記載の回
   路しや断器。