JPH0218352Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は車両の歯車変速機の同期装置における
クラツチハブとクラツチスリーブとの間の背隙
（バツクラツシユ）によるガタツキを防止する背
隙除去装置に関するものである。

［従来の技術］ 第１，２図に示すように、歯車変速機の同期装
置は入力歯車１２の入力軸２３の端部に軸穴を設
け、この軸穴に軸受２４を介して出力軸１７の端
部が回転可能に支持される。出力軸１７に変速歯
車１６が遊回転可能に支持され、かつリング２５
により軸方向に移動しないように支持される。

入力歯車１２と変速歯車１６に、互いに対称に
ドツグ歯１８とコーン１３とがそれぞれ一体的に
形成される。各コーン１３に円錐穴を有する同期
リング１９がそれぞれ外挿される。１対の同期リ
ング１９の間に配設したクラツチハブ２にスプラ
イン嵌合するクラツチスリーブ３が、この外周に
設けた環状溝１４に係合する公知のシフトフオー
クにより軸方向に移動され、変速段の切換えがな
される。

クラツチハブ２は出力軸１７にスプライン１５
により嵌合され、かつ段部２１とリング２６によ
り軸方向に移動しないように支持される。クラツ
チスリーブ３とクラツチハブ２との間に円周方向
に間隔を存して複数のキー２２が介装される。キ
ー２２はクラツチハブ２の両端側に配置した環状
のばね２０により径外方へ付勢される。クラツチ
スリーブ３を中立位置に保持するために、キー２
２の中央部に設けた突部が、クラツチスリーブ３
のスプラインのくぼみに係合される。

クラツチスリーブ３を左方へ移動すると、キー
２２に押されて同期リング１９がコーン１３に摩
擦係合され、さらにクラツチスリーブ３を左方へ
移動すると、クラツチスリーブ３のスプラインと
同期リング１９のスプラインが噛み合い、同期リ
ング１９の助けをかりてクラツチスリーブ３のス
プラインとドツグ歯１８との同期噛合いが達せら
れ、入力軸２３の回転力がクラツチスリーブ３、
クラツチハブ２を経て出力軸１７へ伝達される。
逆に、クラツチスリーブ３を右方へ移動すると、
変速歯車１６の回転力がクラツチスリーブ３、ク
ラツチハブ２を経て出力軸１７へ伝達される。こ
のような同期装置は、例えば実開昭57−174827号
公報に開示されている。

上述した歯車変速機の同期装置では、同期リン
グ１９を入・出力軸のコーン１３へ摩擦係合する
ためのクラツチスリーブ３は、出力軸１７に支持
したクラツチハブ２にスプライン嵌合されてお
り、クラツチハブ２のスプライン歯とクラツチス
リーブ３のスプライン歯との間には背隙が存在す
る。

ところが、背隙があると、入力軸２３と出力軸
１７のトルク変動によりクラツチスリーブ３が回
転振動し、騒音を発生するばかりでなく、スプラ
イン歯が互いに衝突して破損するという問題があ
る。

一般的なスプライン嵌合部の背隙を除去するも
のとして、例えば実開昭47−38239号公報に開示
されるように、く字形に湾曲した板ばねの両端部
をスプライン軸の歯車に、中央突部をスプライン
穴の歯面にそれぞれ弾性係合したものがある。こ
の技術を同期装置に適用した場合、相対移動に伴
つてスプライン穴からスプライン軸の一部が抜け
出ると、板ばねも一緒に抜け出し、板ばねの係合
状態が変化し、板ばねのセツト荷重が変化するの
で、クラツチスリーブの円滑な摺動動作が妨げら
れる。また、く字形に湾曲した板ばねでは、湾曲
部の寸法にバラツキが生じやすく、正確なセツト
荷重が得にくい。

［考案が解決しようとする問題点］ 本考案の目的は構成が簡単で、セツト荷重にバ
ラツキのないばね力により、クラツチスリーブと
クラツチハブとの回転振動による騒音やスプライ
ン歯の破損を防止し得る、同期装置の背隙除去装
置を提供することにある。

［問題点を解決するための手段］ 上記目的を達成するために、本考案の構成はク
ラツチスリーブとクラツチハブの内の一方のスプ
ライン歯を１つ削除し、前記削除したスプライン
歯と噛み合うべき１対のスプライン歯の歯先に、
一方の歯先を横切る非対称な溝を設け、該溝に係
合した線ばねからなる切欠環の一部を、前記削除
したスプライン歯の隣のスプライン歯の歯面に弾
性係合してなるものである。

［作用］ 例えばクラツチハブの１対のスプライン歯に跨
つて設けた非対称の溝に、線ばねからなる切欠環
を係合し、切欠環の一部をクラツチスリーブのス
プライン歯の歯面に弾性係合すると、クラツチハ
ブとクラツチスリーブとの間に互いに反対方向の
回転力が作用し、クラツチハブのスプライン歯と
クラツチスリーブとのスプライン歯とが一方の歯
面で密接に噛み合う。したがつて、噛合部の背隙
における回転振動が抑えられ、スプライン歯の衝
突による破損や騒音が防止される。

線ばねからなる切欠環は製作が容易であり、バ
ラツキのないセツト荷重が得られるので、クラツ
チスリーブのスプライン歯とクラツチハブのスプ
ライン歯との間に安定したばね力を及ぼす。

［考案の実施例］ 第３図は本考案による同期装置の背隙除去装置
を示す側面断面図、第４図は同平面図である。ク
ラツチハブ２のスプライン歯２ａの間に、クラツ
チスリーブ３のスプライン歯３ａが噛み合され
る。スプライン歯２ａとスプライン歯３ａとの間
の背隙を除去するために、実施例では、クラツチ
ハブ２の互いに隣接する１対のスプライン歯２ａ
の歯先に、非対称に円形の溝３５が設けられる。
円形の溝３５は極く浅く、スプライン歯２ａの歯
先に分割された状態に形成され、かつ一方の歯先
を横切るので、切欠３５ａが生じる。

円形の溝３５が設けられる１対のスプライン歯
２ａの間に噛み合うべきクラツチスリーブのスプ
ライン歯３ａは削除される。円形の溝３５に線ば
ねからなる切欠環３３が係止され、切欠３５ａか
ら突出する切欠環３３の突部３３ａが、クラツチ
スリーブ３の削除されたスプライン歯の隣接のス
プライン歯３ａの歯面３ｂに弾性的に係合され
る。

なお、第３，４図において、符号２ｄは１対の
スプライン歯２ａの間の歯底を示す。

本考案によれば、切欠環３３により、第３図に
おいてクラツチハブ２に対し、クラツチスリーブ
３が反時計方向へ回転付勢され、スプライン歯２
ａとスプライン歯３ａとが一方の歯面で密接に噛
み合う。つまり、クラツチハブ２の一方の歯面２
ｂに、クラツチスリーブ３の一方の歯面３ｂが押
し付けられ、トルク変動に対してクラツチハブ２
とクラツチスリーブ３との間の相対回転やガタツ
キが抑えられる。

円形の溝３５をクラツチハブ２に設ける代り
に、クラツチスリーブ３の１対のスプライン歯３
ａの歯先に設け、１対のスプライン歯３ａの間に
噛み合うべきクラツチハブ２のスプライン歯２ａ
を削除するようにしてもよい。

第５〜７図に示す実施例では、クラツチハブ２
の相隣接する１対のスプライン歯２ａに跨つて幅
の広い非対称な溝が設けられる。具体的には平坦
部２９で示すように、一方のスプライン歯２ａの
歯先を全面的に削除し、他方のスプライン歯２ａ
を段部２ｃのところから部分的に削除してなり、
平坦部２９に小孔３１が設けられる。実際には小
孔３１はスプライン歯２ａの歯先と歯底の間に跨
る。円形に湾曲した切欠環３３は、クラツチハブ
２のスプライン歯２ａの段部２ｃとクラツチスリ
ーブ３の削除されたスプライン歯の隣のスプライ
ン歯３ａの歯面３ｂとの間に弾性的に係合され、
切欠環３３が外れないように、切欠環３３の両端
部を平行に折り曲げてなる脚３４が、第６図に示
すように小孔３１に係止される。

［考案の効果］ 本考案は上述のように、クラツチスリーブとク
ラツチハブの内の一方のスプライン歯を１つ削除
し、前記削除したスプライン歯と噛み合うべき１
対のスプライン歯の歯先に、一方の歯先を横切る
非対称な溝を設け、該溝に係合した線ばねからな
る切欠環の一部を、前記削除したスプライン歯の
隣のスプライン歯の歯面に弾性係合したから、切
欠環のばね力によりクラツチハブの一方の歯面が
クラツチスリーブの一方の歯面に押し付けられ、
これによりクラツチスリーブとクラツチハブとの
回転方向のガタツキが抑えられ、スプライン歯の
衝突による騒音や折損が防止される。

切欠環は従来のクラツチハブとクラツチスリー
ブに溝加工を付加するだけで簡単に装着でき、加
工部に熱処理を施すなどの必要がないなど、加工
や組立が容易である。

クラツチハブに対しクラツチスリーブが軸方向
に相対摺動し、クラツチハブの一部がクラツチス
リーブから突出することがあつても、切欠環は溝
の所定位置に保持され、外部へ露出することはな
い。したがつて、切欠環のクラツチスリーブとの
係合力が変化しない。

切欠環は線ばねからセツト荷重を高精度に成形
することが容易であり、クラツチスリーブとクラ
ツチハブとの間に及ぼす周方向のばね荷重が安定
したものとなる。

【図面の簡単な説明】

第１図は同期装置の側面断面図、第２図は同装
置の要部を拡大して示す側面断面図、第３図は本
考案の第１実施例に係る同期装置の背隙除去装置
の正面断面図、第４図は同平面断面図、第５図は
本考案の第２実施例に係る同期装置の背隙除去装
置の側面断面図、第６図は同正面断面図、第７図
は同平面断面図である。 ２：クラツチハブ、２ａ，３ａ：スプライン
歯、３：クラツチスリーブ、２９：平坦部、３
１：小孔、３３：切欠環、３４：脚、３５：円形
の溝。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. クラツチスリーブとクラツチハブの内の一方の
   スプライン歯を１つ削除し、前記削除したスプラ
   イン歯と噛み合うべき１対のスプライン歯の歯先
   に、一方の歯先を横切る非対称な溝を設け、該溝
   に係合した線ばねからなる切欠環の一部を、前記
   削除したスプライン歯の隣のスプライン歯の歯面
   に弾性係合した、同期装置の背隙除去装置。