JPH0241376Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［考案の技術分野］ 本考案は変速機の同期装置に係り、特に同期作
用を達成するスリーブとキー部材の誤動作を防止
できる構造簡単な変速機の同期装置に関する。

［考案の技術的背景とその問題点］ 一般に変速機の同期装置は、メインシヤフトの
軸方向に相対向させて配設された変速歯車間に位
置されている。そしてシフトフオークによりスリ
ーブとシンクロナイザーキー（以下キー部材とい
う）とが択一的にいずれか一方の変速歯車側へ移
動され、該変速歯車側に設けられたシンクロナイ
ザリングと連関して同期作用を施すように構成さ
れている。

ところで変速歯車の前進変速段が奇数段であつ
たり、変速歯車のレイアウトによつては、第１図
に示すように同期装置１が変速歯車２間には位置
されず、スリーブ３とキー部材４とは一方向にの
み移動されれば足りる場合がある。

このような場合、単に部品共通化のためスリー
ブ３とキー部材４とを変速歯車２のない方向へも
移動可能に放置すると、狭隘なミツシヨンケーシ
ング内で他の部品と干渉する虞れがあつた。

これに対し、スリーブ３とキー部材４の移動を
規制するためにメインシヤフト６に円板様の制止
部材７を設けることが考えられるが、この制止部
材７の介在により、同期装置１を高速回転するメ
インシヤフト６に固定するためのエンドナツト８
が緩み易くなり好ましくなかつた。なお、関連技
術として片側一方に配置された変速歯車に対して
クラツチハブ、スリーブ（ハブスリーブ）、シン
クロナイザーキー（シフテイングキー）から主に
同期装置を構成し、そして中立位置から変速歯車
と反対側へのスリーブ移動を阻止すると同時に、
クラツチハブに対してシンクロナイザーキーの移
動を阻止するように構成した「変速機におけるシ
ンクロメツシユ装置」（実開昭59−274342号）、
「同期装置」（特開昭55−100428号）が知られてい
る。

しかし、前者は本考案の問題として指摘してい
るナツトの緩みについてその解消が可能になつた
ものの、中立位置から変速歯車と反対側へのシン
クロナイザーキーの移動を所定の位置で阻止する
ためのストツパ面を形成する構成であるためスリ
ーブを特別に形成する必要があると共に、結果的
にスリーブの軸長が増大してしまう問題がある。
また、周知のシンクロナイザーキーを中立位置に
保持しておく係合部の端部（変速歯車側の端部）
より変速歯車側を段状に下げて形成してその係合
部の端部と段部との間に半径方向内方へ突出させ
たＶ字状の係合部を形成する一方、上記中立位置
より変速歯車と反対側に所定距離移動された際に
上記係合部を係合させてスリーブの移動を規制す
るための係合部を上記シンクロナイザーキーの外
周面に形成している。しかし、これら係合部がＶ
字状に形成され、基本的にシンクロナイザーキー
がキースプリングで弾性力を付勢されるものであ
ることを考慮すると、スリーブに過大なまたは衝
撃的な操作力が与えられた場合に発生する分力に
よつて係合部相互の係止が解除されてその係止位
置からさらに変速歯車と反対側へ瞬間的に移動さ
れてしまう虞れがある。

一方、後者は板材を折曲げて上記シンクロナイ
ザーキーと同様な機能を持つようにキー部材を形
成する一方で、このキー部材にこれを半径方向外
方へ付勢するための断面Ｌ字状の板材から形成さ
れたキースプリングを一体的に取付け、そしてキ
ー部材の変速歯車と反対側に、スリーブの離脱
（中立）位置において、スリーブの端面と当接し
ギヤと反対側への移動を阻止するための直角な折
曲げ部を形成している。しかし、この提案の突出
部の形状は円弧状であり、これを係合するための
スリーブの係合部の形状を円弧の外面に接する三
角形状であるため、ハブスリーブに加速的な操作
力又は衝撃的な操作力が加えられた場合に、円弧
状に作用する分力によつてキースプリングが半径
方向内方へ撓んだ状態のままハブスリーブが瞬間
的に折曲げ部を乗越えて移動されてしまう虞があ
る。

［考案の目的］ 本考案は上述したような問題点に鑑みて創案さ
れたものであり、その目的はスリーブとキー部材
双方の誤作動を防止できる構造簡単な変速機の同
期装置を提供するにある。

［考案の概要］ 上記目的は、本考案によれば次のような構成に
より達成される。

すなわち、片側一方のみに変速歯車を配置され
たクラツチハブと、該クラツチハブにスプライン
嵌合されたスリーブとの間にシンクロナイザーキ
ーを配設し、上記変速歯車と反対方向へのシンク
ロナイザーキーの移動を規制すべくこのシンクロ
ナイザーキーの変速歯車側を円周方向に段状に突
出させて第１のストツパ部を形成し、上記クラツ
チハブの変速歯車側に上記第１のストツパ部を係
合させて中立位置から変速歯車と反対側へのシン
クロナイザーキーの移動を制止するための溝部を
形成し、上記シンクロナイザーキーと対向される
上記スリーブの内面を半径方向外方へ陥没させて
係合溝を形成すると共にそのシンクロナイザーキ
ーの外周面にこれに付勢される弾発力により上記
係合溝と係合される係合段部を隆起させて形成
し、上記係合段部が上記係合溝に係合された中立
位置から上記変速歯車と反対方向へのスリーブの
移動を規制すべく、上記係合段部の上記変速歯車
側端面を、軸に沿つた断面でみて、半径方向にほ
ぼ沿う垂直面に形成すると共に他端面を半径方向
に対して上記変速歯車側端部と反対側へ傾倒され
た斜面で形成し、上記係合溝を上記係合段部と同
形状に成形したものである。

このように構成することにより、スリーブが変
速歯車の離脱方向へ動作されてクラツチハブの溝
部にシンクロナイザーキーの第１のストツパ部が
完全に係合された中立位置では、係合段部に形成
された垂直面に対してスリーブに形成された係合
溝の垂直面が当接してその移動を停止させるよう
になる。この時、垂直面相互に作用するスリーブ
の操作力の力の方向はスリーブの軸方向に沿う方
向となり、シンクロナイザーキーを押し下げる方
向の分力の発生がない。従つて弾性力に抗してシ
ンクロナイザリングが半径方向内方へ移動され、
係合溝から係合段部が離脱することがなく、スリ
ーブに過大な離脱方向の操作力が付勢された場合
にあつても、スリーブ及びシンクロナイザーキー
が中立位置から歯車と反対側への移動は完全に阻
止される。

［考案の実施例］ 以下に本考案の好適一実施例を添付図面に従つ
て詳述する。

第２図に示すように６は従動側に連結されるメ
インシヤフトであり、このメインシヤフト６には
円盤状のクラツチハブ９が圧入嵌合される。クラ
ツチハブ９は、更にメインシヤフト６の軸端に螺
着されたエンドナツト８で固定される。このクラ
ツチハブ９の外周部には、リング状のスリーブ３
が設けられる。このスリーブ３はクラツチハブ９
にスプライン嵌合され、片側のみに設けられた変
速歯車２側にメインシヤフト６の軸方向へ移動自
在に構成される。またクラツチハブ９の外周部に
は、その周方向に沿つて所定ピツチでスリーブ３
側に開放されたキー溝１０が形成され、このキー
溝１０内にはスリーブ３と共にメインシヤフト６
の軸方向に移動自在にキー部材４が設けられる。

このキー部材４には、スリーブ３側へ隆起され
て係合段部１１が形成される。またスリーブ３に
は、そのキー部材４に臨む内周面に係合段部１１
に係合される係合溝１２が形成される。これら係
合段部１１と係合溝１２とは、一端がメインシヤ
フト６の軸方向に沿つて隣接する変速歯車２側に
向つて滑らかな斜面１３で係合され、変速歯車２
方向への相互離脱を許容するように構成される。

またこのキー部材４には、そのクラツチハブ側
裏面にキー部材４をハブ９の径方向外方へ弾発す
る環状のスプリング１４，１５が当接される。こ
れらスプリング１４，１５はクラツチハブ９の周
方向に沿つて設けられ、その弾発力でキー部材４
をスリーブ３に係合させて一体的に移動させるよ
うに構成される。またこのクラツチハブ側裏面に
は、スプリング１４，１５から所定の間隔を隔て
て形成され、スプリング１４，１５の離脱を規制
するための鍔部１６が設けられる。更にスプリン
グ１４と鍔部１６との間隙は、キー部材４の変速
歯車２側への移動を許容するものである。

ところで本考案の特長とするところは、スリー
ブ３とキー部材４夫々がシフトフオークによつて
移動されないときの中立位置から変速歯車２側と
反対方向へ移動されるのを規制するための第１の
ストツパ部と第２のストツパ部とを設けたことに
ある。そしてこれら第１のストツパ部と第２のス
トツパ部とを組立部位と関連のない箇所に同期装
置の信頼性良好に備えたことにある。

即ち組付部位にエンドナツト８によつて取付け
たり、スプリング１５等に干渉することのない箇
所にこれらストツパ部が設けられて同期装置の作
動に支承がないように構成される。

第２図〜第４図に示すように、キー部材４に
は、これが設けられるクラツチハブ９の変速歯車
２側部分に、第１のストツパ部１７が設けられる
と共に、クラツチハブ９のスプライン部９ａには
第１のストツパ部１７を係合する溝部９ｂが形成
される。

この第１のストツパ部１７は、クラツチハブの
スプライン部９ａの周方向に沿つてキー部材４の
側部が巾方向に段違いに拡大されて段付状に形成
され、クラツチハブのスプライン部９ａの溝部９
ｂに係合されてキー部材４が中立位置から変速歯
車２側と反対方向へ相対移動されるのを規制する
ように構成される。またこの第１のストツパ部１
７は鍔部１６よりもクラツチハブ９側に近接させ
た部分に形成されるので、クラツチハブ９と鍔部
１６との間に形成される所定間隔を維持させて、
係合状態でスプリング１５等他の構成部品に損傷
を与えることがなく同期装置の信頼性を確保でき
る。

このように変速歯車２が配置されない側への移
動が制止されたキー部材４の係合段部１１には、
斜面１３と反対側の端部に変速歯車２側と反対側
からスリーブ３の係合溝１２に臨ませて第２のス
トツパ部１８が設けられる。この第２のストツパ
部１８は、係合段部１１の他端が斜面１３で成る
一端と異なり垂直面で形成されて構成される。ま
たこの垂直面に相対向するスリーブ３の係合溝１
２の端部も互いに係合する垂直面で形成される。
そして第２のストツパ部１８は係合溝１２に係合
されてスリーブ３が中立位置から変速歯車２側と
反対方向へ相対移動されるのを規制するように構
成される。

このように構成すればシフトフオークの移動力
が中立位置から変速歯車２側と反対方向に作用し
たり、ハブ９のスプラインやキー溝１０内でスリ
ーブ３やキー部材４が移動しようとしても適切に
変速歯車２の配設されない側への移動を規制して
誤動作を防止でき、ミツシヨンケース内での他部
品等との干渉を防止できる。またこれら第１のス
トツパ部１７及び第２のストツパ部１８は、共に
所定トルクで締結される等の組立部位に設けられ
るものでなく、変速機の作動に対して緩みを与え
たり、その他の組付部位に悪影響を及ぼすことも
なく同期装置の信頼性を維持することができる。
更に本実施例の第２のストツパ部１８及び第１の
ストツパ部１７は、単に加工形状、加工位置を変
更するのみで形成でき、極めて簡単且つ容易に採
用することができる。

［考案の効果］ 以上要するに本考案によれば、次のような優れ
た効果を発揮する。

(1) 変速歯車の配置されない側へ移動しようとす
るキー部材を第１のストツパ部で規制し、更に
移動が規制されたキー部材に対して相対移動し
ようとするスリーブを係合段部と係合溝の半径
方向に沿う垂直面相互の当接で規制することが
できるので、これらスリーブ、キー部材の誤動
作を防止できる。

(2) これら第１のストツパ部及び係合段部と係合
溝の半径方向に沿う垂直面相互を組立部位と関
わりない個所に備えたので、組立構造に制止部
材等を付加することによる悪影響を防止でき
る。

(3) 構造が簡単で容易に採用できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来例を示す側断面図、第２図は本考
案の好適一実施例を示す側断面図、第３図は本考
案に採用されるキー部材４を示す斜視図、第４図
は本考案に採用されるクラツチハブを示す側面図
である。 図中、２は変速歯車、３はスリーブ、４はキー
部材、９はクラツチハブ、９ｂは溝部、１１は係
合段部、１２は係合溝、１７は第１のストツパ
部、１８は第２のストツパ部である。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 片側一方のみに変速歯車を配置されたクラツチ
   ハブと、該クラツチハブにスプライン嵌合された
   スリーブとの間にシンクロナイザーキーを配設
   し、上記変速歯車と反対方向へのシンクロナイザ
   ーキーの移動を規制すべくこのシンクロナイザー
   キーの変速歯車側を円周方向に段状に突出させて
   第１のストツパ部を形成し、上記クラツチハブの
   変速歯車側に上記第１のストツパ部を係合させて
   中立位置から変速歯車と反対側へのシンクロナイ
   ザーキーの移動を制止するための溝部を形成し、
   上記シンクロナイザーキーと対向される上記スリ
   ーブの内面を半径方向外方へ陥没させて係合溝を
   形成すると共にそのシンクロナイザーキーの外周
   面にこれに付勢される弾発力により上記係合溝と
   係合される係合段部を隆起させて形成し、上記係
   合段部が上記係合溝に係合された中立位置から上
   記変速歯車と反対方向へのスリーブの移動を規制
   すべく、上記係合段部の上記変速歯車側端面を、
   軸に沿つた断面でみて、半径方向にほぼ沿う垂直
   面に形成すると共に他端面を半径方向に対して上
   記変速歯車側端面と反対側へ傾倒された斜面で形
   成し、上記係合溝を上記係合段部と同形状に成形
   したことを特徴とする変速機の同期装置。