JPS6146280Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は自動車等の歯車変速機に採用されてい
るシンクロメツシユ機構のうち、特にシフテイン
グキーを用いたボルグ・ワーナタイプのシンクロ
メツシユ機構におけるシフテイングキーの飛び出
し防止装置に関するものである。

この種のシンクロメツシユ機構において、例え
ば第５速用の機構でみられるようにクラツチハブ
およびクラツチハブスリーブの片側にのみシンク
ロナイザリングやスプライン歯が配置されたもの
では、その反対側においてシフテイングキーに対
する軸線方向（クラツチハブの軸線方向）の位置
規制が無く、フリーの状態となつている。このた
め、シフト操作時あるいはシフト完了時において
シフテイングキーの外方面が開放された状態にな
ると、このシフテイングキーが外方へ飛び出すお
それがある。

この対応策として従来から実施されている一般
的な手段は、シンクロメツシユ機構が配設されて
いる軸上にシフテイングキーの飛び出し防止プレ
ートを取りつけることである。この飛び出し防止
プレートを軸に対して固定する手段としては、ナ
ツトやスナツプリングを用いたり、あるいは相手
側に特別な加工を施して防止プレートを圧入する
等があげられる。しかし、これらの手段はナツト
やスナツプリングといつた付属部品を必要とする
ばかりでなく、これらを取りつけるための加工、
取付スペースの確保が必要であり、コストやスペ
ースの面で不利となる。

また、シフテイングキーの飛び出しを防止する
ための別の手段として、このシフテイングキーと
一体関係で回転する部品（例えば歯車）の端面に
シフテイングキーと係合してその飛び出しを防止
する溝を形成する場合がある。しかし、この場合
はシフテイングキーの取りつけ部分の径よりも大
径の部品（歯車等）がシフテイングキーに隣接し
存在することが必要条件であり、その適用範囲が
限られるといつた問題がある。

本考案は単一部品を用いるだけでシフテイング
キーの飛び出しを防止し、また組みつけスペース
も小さくて済み、その取り扱いも手作業で簡単に
組みつけることができるシンクロメツシユ機構に
おけるシフテイングキーの飛び出し防止装置の提
供を、その目的とするものである。

本考案の上記目的は、シンクロナイザリングな
らびにスプライン歯が配設されていない側のクラ
ツチハブ外周に、各シフテイングキーの端面に当
接してその飛び出しを防止し得るストツパーを備
えたリテーナを、その弾性によつて組みつけるこ
とで達成される。

以下、本考案の構成を図面で示す実施例に従つ
て詳細に説明する。

ボルグ・ワーナタイプの第５速用シンクロメツ
シユ機構を表した第１図および第２図において、
シヤフト（カウンタシヤフト）１は変速機ケース
の壁３に対し、ベアリング２によつて回転自在に
支持されている。このシヤフト１の軸上にはブツ
シユ４が回り止めされた状態で取りつけられてお
り、このブツシユ４外周には第５速用の変速歯車
６がローラベアリング５によつて回転可能に配設
されている。この歯車６は、例えばアウトプツト
シヤフト上において一体的に回転する歯車（図示
しない）に対し、常時かみ合つて回転し得るよう
になつている。また、この歯車６にはこれと一体
にスリーブ部６ａが形成されていて、このスリー
ブ部６ａ外周にはクラツチハブ７がセレーシヨン
嵌合等の手段によつて一体的に圧入されている。
さらに、クラツチハブ７の外周にはハブスリーブ
８が変速機のシフト操作によつて第１図の左右方
向へ移動し得るようにスプライン嵌合されてい
る。

上記クラツチハブ７の片側（第１図の右側）に
はスプライン部材１０が、前記シヤフト１に対し
て一体的に回転するようにセレーシヨン嵌合等の
手段によつて圧入されており、このスプライン部
材１０の円錐面１７上にはシンクロナイザリング
１１が配設されている。上記クラツチハブ７とハ
ブスリーブ８との相互のスプライン嵌合部分に
は、円周方向の三個所において周知のシフテイン
グキー９が組みつけられており、これらのキー９
はキースプリング１２によつて常にハブスリーブ
８の内周側に押しつけられる方向の弾発力を受け
ている。

さて、上記のスプライン部材１０ならびにシン
クロナイザリング１１が配設されていない側（第
１図の左側）のクラツチハブ７外周には第３図か
らも明らかなように環状のセツト溝１３が形成さ
れている。なお、クラツチハブ７の外周には上記
の各シフテイングキー９の位置決めをなすキー溝
１８が形成されていて、これらのキー溝１８は前
記のセツト溝１３よりも深く、従つてこのセツト
溝１３の個所においてもこの溝１３と直交する溝
の形を呈している。一方、鋼などの弾性材によつ
て第３図で示すように一部開放の環状に形成され
たキーリテーナ１４は、前記のセツト溝１３に対
し、その弾性に基づく所定の締めしろをもつて組
みつけられように形成されている。そして、この
リテーナ１４には上記の各キー溝１８と対応する
位置において位置決め用の爪１５が一体に形成さ
れており、これらの爪１５のセツト溝１３と直交
する個所のキー溝１８に係合させることで、クラ
ツチハブ７に対するリテーナ１４の回転方向の位
置決めがなされる。さらに、各位置決め用爪１５
の先端は、それぞれ外方に向けて折り曲げられて
ストツパー１６が形成されている。すなわち、こ
れらのストツパー１６は、リテーナ１４がクラツ
チハブ７のセツト溝１３に組みつけられた状態に
おいて前記の各シフテイングキー９端面に対して
当接可能に対向位置するのである（第１図，第２
図参照）。なお、上記のストツパー１６は、その
１つを表した第４図のような形状に代えて、スト
ツパー１６の強度を高めるようにしてもよい。

上記の構成において、第５速へのシフト操作が
なされると、周知のようにシフトフオーク（図示
しない）の動作を通じてハブスリーブ８が第１図
の右方向へ移動する。この結果、シフテイングキ
ー９およびシンクロナイザリング１１などによつ
て、変速歯車６側（クラツチハブ７側）とシヤフ
ト１側（スプライン部材１０側）との回転同期作
用を果した後、第２図で示すようにハブスリーブ
８の内歯８ａがスプライン部材１０の外歯１０ａ
にかみ合つてシフトが完了する。この第５速への
シフト状態において各シフテイングキー９の外方
面は開放された状態となり、シフテイングキー９
が第１図，第２図の左方向へ移動して外方へ飛び
出す可能性が生じる。しかしながら、これらの各
シフテイングキーは、前記キーリテーナ１４のス
トツパー１６により、軸方向（第１図，第２図の
左方向）への移動が規制されており、もつてキー
の飛び出しといつた事態は防止される。

このキーリテーナ１４は、クラツチハブ７のセ
ツト溝１３に対し、このリテーナ１４の弾力によ
つて取りつけられるため、リテーナ１４を固定す
るための部品を全く必要とせず、またその取りつ
けも手作業によつて簡単に行える。

以上のように本考案は、単一部品であるシフテ
イングキーリテーナによつてシフテイングキーの
飛び出しを防止でき、しかもこのリテーナの組み
つけスペースは小さくて済み、かつ組みつけのた
めの固定用部品や相手部材に対する高精度の加工
を不要とし、手作業によつて簡単に組みつけ得る
など、種々の利点を発揮する。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施例を示し、第１図はボル
グ・ワーナタイプのシンクロメツシユ機構を表し
た断面図、第２図はシフト状態を第１図の一部分
と対応させて表した断面図、第３図はクラツチハ
ブとキーリテーナとを表した分解斜視図、第４図
はリテーナのストツパの異なる形状例を表した部
分斜視図である。 １…シヤフト、７…クラツチハブ、８…ハブス
リーブ、９…シフテイングキー、１０…スプライ
ン部材、１０ａ…スプライン歯、１３…セツト
溝、１４…キーリテーナ、１５…位置決め用の
爪、１６…ストツパー。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. クラツチハブとこの外周にスプライン滑合され
   たハブスリーブとの相互間に複数個のシフテイン
   グキーが配設された形式で、かつこのクラツチハ
   ブおよびハブスリーブの片側にのみシンクロナイ
   ザリングならびにハブスリーブの内スプラインと
   かみ合うスプライン歯が配置されたシンクロメツ
   シユ機構において、前記のシンクロナイザリング
   ならびにスプライン歯が配設されていない側のク
   ラツチハブ外周に環状のセツト溝を形成し、この
   溝に対し、弾性素材によつて一部開放の環状に形
   成されたシフテイングキーリテーナを、その弾性
   による締めしろをもつて組みつけ、このリテーナ
   に前記の各シフテイングキーの端面と対向して当
   接し得るストツパーを形成してなるシフテイング
   キーの飛び出し防止装置。