JPS632695Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は車両の歯車変速機の同期噛合機構にお
けるクラツチハブとスリーブとの間の隙間による
ガタ付きを防止するバツクラツシユ除去装置に関
するものである。

〔従来の技術〕

歯車変速機の同期噛合機構は第１図に示すよう
に、入力歯車１２の軸２３の端部に軸穴を設け、
これに軸受２４を介して出力軸１７の端部が回転
可能に支持される。出力軸１７には変速歯車１６
が遊回転可能に支持され、かつリング２５によつ
て軸方向に移動しないように支持される。

入力歯車１２と変速歯車１６の端部には、互い
に対称にドツグ歯１８とコーン１３とがそれぞれ
一体的に構成される。そして、コーン１３に円錐
穴を有するシンクロナイザリング１９がそれぞれ
外挿される。これらの間にスリーブ３が配置さ
れ、この外周に設けた環状溝１４に係合する公知
のシフトフオークによつて軸方向に移動され、変
速段の切換がなされるようになつている。

スリーブ３はクラツチハブ２にスプライン嵌合
さる。クラツチハブ２は出力軸１７にスプライン
１５をもつて嵌合され、かつ段部２１とリング２
６によつて軸方向に移動しないように支持され
る。スリーブ３とクラツチハブ２との間に円周方
向に間隔を存して複数個のキー２２が介装され、
このキー２２はクラツチハブ２の両側に配置した
環状のばね２０によつて径外方へ付勢され、スリ
ーブ３を中立位置に保持するために、前記キーの
中央部に設けた突部がスリーブ３のスプラインの
くぼみに係合されるようになつている。

そして、スリーブ３を左方へ移動すると、キー
２２によりシンクロナイザリング１９がコーン１
３に摩擦係合され、さらにスリーブ３が左方へ移
動すると、スリーブ３のスプラインとシンクロナ
イザリング１９が噛み合い、シンクロナイザリン
グ１９を介してスリーブ３のスプラインとドツグ
歯１８との同期噛合いが達せられ、入力軸２３の
回転力がスリーブ３およびクラツチハブ２を経て
出力軸１７へ伝達される。

逆に、スリーブ３を右方へ移動すると、変速歯
車１６の回転力がスリーブ３およびクラツチハブ
２を経て出力軸１７へ伝達される。

上述のように、シンクロナイザリング１９を入
出力軸のコーン１３へ係合させるためのスリーブ
３は出力軸に支持されたクラツチハブ２にスプラ
イン嵌合されており、このクラツチハブ２のスプ
ライン歯とスリーブ２のスプライン歯との間にバ
ツクラツシユが存在する。

ところが、バツクラツシユがあるためにスリー
ブ３は入力軸および出力軸のトルク変動により振
動して騒音を発生し、運転者に不快感を与えるば
かりでなく、スプライン歯の一方が他方に衝突し
てスプライン歯が破損するという問題がある。こ
のような問題は、実開昭57−174827号公報に開示
されるような同期噛合機構にも生じる。

従来、このような振動を防止するために、第
２，３図に示すように、クラツチハブ２のスプラ
イン歯２ａの中心から円周方向に幾分偏つた部分
に径方向の穴４を設け、この内部にばね５によつ
て付勢されるボール６を収容し、このボール６を
スリーブ３のスプライン歯３ａの歯面に係合させ
ることによつて、クラツチハブ２とスリーブ３と
を互いに反対方向に回転付勢させ、これによつて
スプライン歯２ａとスプライン歯３ａが一方の歯
面で互いに押付けられた状態に維持するようにし
たものが提案されている。

しかし、この場合は穴４を設けたクラツチハブ
２のウエブの強度が低下し、また熱処理によつて
同部分が変形を生じ、クラツチハブ２とスリーブ
３との噛合部の摺動運動に円滑さを欠く恐れがあ
る。

〔考案が解決しようとする問題点〕

本考案の目的はクラツチハブの強度低下をもた
らすことなく、簡単な部材を付加することによ
り、スリーブとクラツチハブとの間の相対回転振
動を防止し得る歯車変速機のバツクラツシユ除去
装置を提供することにある。

〔問題点を解決するための手段〕

上記目的を達成するために、本考案の構成はク
ラツチハブに設けた軸方向の溝に板ばねを配置し
かつ両端部を係止する一方、板ばねの中央部分に
形成した突部をスリーブのスプライン歯に弾性係
合したものである。

〔作 用〕

クラツチハブ２の溝４１，４２に係止した板ば
ね３０の突部３１がスリーブ３のスプライン歯３
ａの歯面に弾性係合され、これによりスリーブ３
とクラツチハブ２との回転差動や噛合部での歯の
衝突が防止されるので、スプライン歯の破損や振
動騒音が解消される。

〔考案の実施例〕

本考案を実施例に基づいて説明すると、第４図
に示すように、クラツチハブ２のスプライン歯２
ａの１つを除去して歯底の部分に平坦面４０を形
成し、これに第６図に示すように、軸線方向に延
びる溝４１を形成するとともに、この溝４１の両
端部においてクラツチハブ２の端壁を削除して溝
４２を形成する。そして、この溝４１，４２に第
４図に示すように板ばね３０を係止し、該板ばね
３０の中央部に一体的に形成した突部３１をクラ
ツチハブ３の１つのスプライン歯３ａの歯面に弾
性係合させたものである。

板ばね３０は第５図に示すように、帯板の両端
部を断面コ字形に折曲げて溝４２に係合する係合
部３２および溝４１に係合する係合部３３を形成
するとともに、板ばね３０の中央部に係合部３３
よりも一段高い平坦面３４を形成し、該平坦面３
４に上方へ突出しかつ円周方向に傾斜する突部３
１を形成したものである。

本考案は上述のように構成することによつて、
板ばね３０の両端部がクラツチハブ２の溝４１，
４２に固く係合され、これによつて板ばね３０が
軸線方向および径方向に移動しないように支持さ
れる。そして、溝４１から浮き上がつている平坦
面３４の弾性力によつて突部３１がスリーブ３の
スプライン歯３ａに係合されるから、これによつ
てスリーブ３とクラツチハブ２との間に互いに反
対向きの回転力が作用し、スプライン歯２ａとス
プライン歯３ａとが第４図に符号２９で示すよう
に、一方側で互いに押付けられることとなり、ト
ルク変動に対してクラツチハブ２とスリーブ３と
の間の相対回転すなわちガタ付きが防止される。

〔考案の効果〕

本考案は上述のように、クラツチハブに設けた
軸方向の溝に板ばねを配置しかつ両端部を係止す
る一方、板ばねの中央部分に形成した突部をスリ
ーブのスプライン歯に弾性係合したから、スプラ
イン歯の噛合部における歯の衝突による折損や振
動騒音が解消される。板ばねはクラツチハブのス
プライン歯を除去した部分に装着されるから、従
来例と比べてもクラツチハブの強度が損われるこ
とがなく、従来例のように熱処理を必要としない
のでコストの面で有利である。

【図面の簡単な説明】

第１図は歯車変速機の同期噛合機構についての
側面断面図、第２図は従来の歯車変速機のバツク
ラツシユ除去装置の正面断面図、第３図は同側面
断面図、第４図は本考案に係る歯車変速機のバツ
クラツシユ除去装置の正面断面図、第５図は同装
置における板ばねの斜視図、第６図はクラツチハ
ブの要部を示す斜視図である。 ２……クラツチハブ、３……スリーブ、３０…
…ばね、３１……突部、３２，３３……係合部、
４０……平坦面、４１，４２……溝。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. クラツチハブに設けた軸方向の溝に板ばねを配
   置しかつ両端部を係止する一方、板ばねの中央部
   分に形成した突部をスリーブのスプライン歯に弾
   性係合したことを特徴とする歯車変速機用同期装
   置のバツクラツシユ除去装置。