JPS6243144Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は変速機に用いられるボルグワーナー
タイプのシンクロメツシユ機構に関し、詳しくは
クラツチハブの外周にスプライン嵌合されるハブ
スリーブの内歯スプラインに対し、クラツチハブ
外周のキー溝に嵌合されるシフテイングキーがキ
ースプリングによつて押しつけられ、かつ、ハブ
スリーブの一側にのみシンクロナイザリング及び
前進用ギヤが配設され、前進シフト時にはシンク
ロナイザリングへ向けてハブスリーブが移動し、
後退シフト時にはシンクロナイザリングが配設さ
れていない側へハブスリーブが移動する形式のシ
ンクロメツシユ機構に関するものである。

従来、この種、形式のシンクロメツシユ機構
は、前進シフト又は後退シフトされた状態におい
て、シフテイングキーに対するキースプリングの
付勢力が有効に利用されておらず、前進シフト又
は後退シフト時におけるギヤ抜け防止を図るため
に、別部品を設定することで行なわれていた。別
部品の設定によつてギヤ抜け防止を図るものにお
いては、構造が複雑化するばかりでなく、ギヤに
対するデイテント荷重が過大となつたり、時には
シフテイングキーの移動位置も関係してデイテン
ト荷重にバラツキが生じ、シフトフイーリングが
悪化する不具合が生じる。

この考案の目的は、上記の理由に鑑み、シフテ
イングキーに対するキースプリングの付勢力を有
効に利用して、前進シフト又は後退シフト時にギ
ヤ抜け防止を図り得る変速機におけるシンクロメ
ツシユ機構を提供することである。

上記目的を達成すべく、この考案は、ハブスリ
ーブが一方向へ移動する所定のシフト時におい
て、シフテイングキーを中立位置に保持する保持
機構が同キーの他側に配設されるとともに、ハブ
スリーブの内歯スプラインとシフテイングキーと
の対向面には前記所定のシフト時に相互に係合し
てハブスリーブの戻り方向の移動を阻止する係合
部がそれぞれ形成されたことを特徴とするもので
ある。

以下、この考案の一実施例を図面にしたがつて
説明する。

ボルグワーナタイプのシンクロメツシユ機構に
おいて、前進（例えば５速）用ギヤ２を自由回転
可能に有するシヤフト（インプツトシヤフト）１
の軸上には、該シヤフトと一体に回転するクラツ
チハブ３がスプライン嵌合されている。クラツチ
ハブ３の外周軸方向に形成される複数条のキー溝
４には該溝に沿つて移動可能のシフテイングキー
５が嵌合されている。さらにクラツチハブ３の外
周にはハブスリーブ６が軸方向へ移動可能にスプ
ライン嵌合されており、該スリーブ６の内歯スプ
ライン６ａに対しシフテイングキー５が２本のキ
ースプリング７によつて押しつけられている。そ
して、ハブスリーブ６及びシフテイングキー５の
一側（第１図では右側）にのみ、前進用ギヤ２に
設けられるスプライン８のコーン部８に対応する
シンクロナイザリング９が配設されている。

ハブスリーブ６が、第１図中、左方へ移動する
後退シフト時に、シフテイングキー５を中立位置
に保持する保持機構は、キー溝４の一部に形成さ
れるストツパ面４ａを主体として構成される。す
なわち、この実施例において、クラツチハブ３外
周のキー溝４は、第２図に示すように、同ハブの
半径方向外側が溝幅の広い段差断面に形成される
とともに、クラツチハブ３の外周軸方向の一端か
ら他端部（第１図では右端から左端部）へ向け
て、シフテイングキー５より若干長く、かつ、ク
ラツチハブ３の外周軸方向全長よりは所定量短か
く形成されている。そして、キー溝４の閉鎖され
た端末部にはシフテイングキー５の他端面に当接
してシフテイングキー５を中立位置に保持するス
トツパ面４ａが形成されている。一方、シフテイ
ングキー４には、第２図に示すように、キー溝４
の段差面４ｂに係合する鍔部５ａを有してキー溝
４の断面形状に対応して形成されている。

シフテイングキー５に対するハブスリーブ６の
内歯スプライン６ａの中央部にはシフテイングキ
ー５の突起部５ｂが嵌挿される溝部６ｂが凹設さ
れるとともに、該溝部の片側にはＶ突起状の係合
部６ｃが形成されている。一方、シフテイングキ
ー５の突起部５ｂ上には、Ｖ溝状の係合部５ｃが
形成されており、該係合部５ｃは、ハブスリーブ
６が第３図に示すように左方へ移動した後退シフ
ト時にハブスリーブ６の内歯スプライン６ａの係
合部６ｃと係合してハブスリーブ６の戻り方向
（第３図では右方）の移動を阻止するものであ
る。

上記の構成において、シンクロナイザリング９
が配設されている側へハブスリーブ６を移動（前
記シフト）させたときには、周知のように、シフ
テイングキー５とシンクロナイザリング９を主体
として、シヤフト１と前進用ギヤ６との回転同期
作用を果した後、ハブスリーブ６が前進用ギヤ６
と噛み合い、これによつて前進のシフトが得られ
る。

上記とは逆に、シンクロナイザリング８が配設
されていない側へハブスリーブ６を移動（空振り
シフト）させたときには、シフテイングキー５の
左端面がキー溝４のストツパ面４ａに当接してシ
フテイングキー４の同方向の移動が阻止されて、
同キー４が中立位置に保持される。そして、ハブ
スリーブが第３図に示す位置まで移動する後退シ
フト（空振りシフト）時には、キースプリング７
の付勢力によつて、ハブスリーブ６の内歯スプラ
イン６ａの係合部６ｃと、シフテイングキー５の
係合部５ｃとが係合する。このとき、シフテイン
グキー５は、キー溝４のストツパ面４ａとシンク
ロナイザリング９との間において軸方向移動が可
能であるが、このキー５の移動量はわずかで、シ
フテイングキー５はほぼ中立位置に保持される。
このため、上記両係合部５ｃ，６ｃの係合によつ
てハブスリーブ６の戻り方向の移動が阻止され
て、後退ギヤ（図示しない）のギヤ抜けが防止さ
れる。

なお、後退シフト時において、シフテイングキ
ー５の右端面がシンクロナイザーリング９に圧接
して該リング９を押しつける状態となり、伝達効
率及びシンクロナイザーリング９の耐久性に若干
の不具合が生じることが考えられるが、この不具
合は、使用ひん度が少なくかつ回転数が低い後退
シフトを考慮すると全く問題とはならない。

次に、この考案の他の実施例を第４図から第６
図にしたがつて説明すると、この実施例では、後
退シフト時と前進シフト時との双方においてギヤ
抜け防止を行うもので、第５図に示すように、ハ
ブスリーブ６が左方へ移動する後退シフト時にお
いて、ハブスリーブ６の内歯スプライン６ａの一
端面と、該端面に対向するシフテイングキー５の
突起部５ｂ片側面とに相互に係合する係合部５
ｃ，６ｃがそれぞれ形成されている。さらに、第
６図に示すように、ハブスリーブ６が右方へ移動
する前進シフト時において、ハブスリーブ６の内
歯スプライン６ａの他端面と、該端面に対向する
シフテイングキー５の突起部５ｂ他側面とに相互
に係合する係合部５ｄ，６ｄがそれぞれ形成され
るもので、他の部分は前述した実施例とほぼ同様
であるのでその説明は省略する。

以上述べたように、この考案は、クラツチハブ
の外周にスプライン嵌合されるハブスリーブの内
歯スプラインに対しクラツチハブ外周のキー溝に
嵌合されるシフテイングキーがキースプリングに
よつて押しつけられ、かつハブスリーブ及びシフ
テイングキーの一側にのみシンクロナイザリング
及び前進用ギヤが配設され、前進シフト時にはシ
ンクロナイザリングへ向けてハブスリーブが移動
し、後退シフト時にはシンクロナイザリングが配
設されていない側へハブスリーブが移動する形式
のシンクロメツシユ機構であつて、前記ハフスリ
ーブの内歯スプラインと前記シフテイングキーと
の間には前記ハブスリーブの所定のシフト時に相
互に係合してハブスリーブの戻り方向の移動を阻
止する係合部が形成され、しかも前記クラツチハ
ブのキー溝は、該クラツチハブの半径方向外側よ
り内側が溝幅の広い段差断面に形成されるととも
に、同キー溝の溝長さは、前記シフテイングキー
より若干長くかつクラツチハブの全長よりは所定
長さだけ短く形成され、そのキー溝の閉鎖された
端末部が、前記ハブスリーブの後退シフト時にシ
フテイングキーの端面に当接して該シフテイング
キーを中立位置に保持するためのストツパ面とさ
れ、さらに前記シフテイングキーの長手方向略全
長にわたつて前記キー溝の段差面と係合する鍔部
が形成された変速機におけるシンクロメツシユ機
構である。

従つてこの考案によれば、ハブスリーブが一方
向へ移動する所定のシフト時において、シフテイ
ングキーが、キースプリングの付勢力によつてハ
ブスリーブの内歯スプラインに押付けられる。そ
して、ハブスリーブの内歯スプラインの係合部と
シフテイングキーの係合部とをキースプリングの
付勢力によつて係合させて、ハブスリーブの戻り
方向の移動を阻止することで、ヤ抜け防止を図る
ことができる。

従つて、この考案は、従来と異なり、ギヤ抜け
防止を図るための別部品を変速機の所定位置に設
定する必要性を解消することができて、変速機の
構造が簡単になし得る効果がある。

しかも、前記クラツチハブのキー溝の閉鎖され
た端末部をシフテイングキーのストツパ面とする
ことで、ハブスリーブの後退シフト時にシフテイ
ングキーを中立位置に保持することができるた
め、シフテイングキーのための専用のストツパ部
材を配設する必要性がなくなり、この分だけ構造
や組付けが簡単となり、コスト低減を図ることが
できる。

さらに、シフテイングキーの長手方向略全長に
わたつて形成された鍔部が、ハブスリーブのキー
溝の段差面と係合することで、前記ハブスリーブ
が前進シフト位置、あるいは後退位置のいずれに
あつても、前記シフテイングキーの飛び出しを防
止することができるという効果もある。

【図面の簡単な説明】

図面はこの考案の一実施例を示すもので、第１
図はシンクロメツシユ機構を示す断面図、第２図
はクラツチハブのキー溝とシフテイングキーとの
嵌合状態を拡大して示す断面図、第３図は後退シ
フト（ハブスリーブが空振りシフト）された状態
のシンクロメツシユ機構の要部を拡大して示す断
面図、第４図から第６図は他の実施例を示し、第
４図は中立状態にあるシンクロメツシユ機構の要
部を示す断面図、第５図は後退シフト状態にある
シンクロメツシユ機構の要部を示す断面図、第６
図は前進シフト状態にあるシンクロメツシユ機構
の要部を示す断面図である。 １……シヤフト、２……前進用ギヤ、３……ク
ラツチハブ、４……キー溝、４ａ……ストツパ
面、５……シフテイングキー、６……ハブスリー
ブ、６ａ……内歯スプライン、７……キースプリ
ング、９……シンクロナイザリング。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. クラツチハブの外周にスプライン嵌合されるハ
   ブスリーブの内歯スプラインに対しクラツチハブ
   外周のキー溝に嵌合されるシフテイングキーがキ
   ースプリングによつて押しつけられ、かつハブス
   リーブ及びシフテイングキーの一側にのみシンク
   ロナイザリング及び前進用ギヤが配設され、前進
   シフト時にはシンクロナイザリングへ向けてハブ
   スリーブが移動し、後退シフト時にはシンクロナ
   イザリングが配設されていない側へハブスリーブ
   が移動する形式のシンクロメツシユ機構であつ
   て、前記ハブスリーブの内歯スプラインと前記シ
   フテイングキーとの間には前記ハブスリーブの所
   定のシフト時に相互に係合してハブスリーブの戻
   り方向の移動を阻止する係合部が形成され、しか
   も前記クラツチハブのキー溝は、該クラツチハブ
   の半径方向外側より内側が溝幅の広い段差断面に
   形成されるとともに、同キー溝の溝長さは、前記
   シフテイングキーより若干長くかつクラツチハブ
   の全長よりは所定長さだけ短く形成され、そのキ
   ー溝の閉鎖された端末部が、前記ハブスリーブの
   後退シフト時にシフテイングキーの端面に当接し
   て該シフテイングキーを中立位置に保持するため
   のストツパ面とされ、さらに前記シフテイングキ
   ーの長手方向略全長にわたつて前記キー溝の段差
   面と係合する鍔部が形成されていることを特徴と
   する変速機におけるシンクロメツシユ機構。