JPH0147271B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は溶融金属を連続鋳造する際の鋳型内の
溶融金属の注入流を一様な流速の下降流に保持す
る、特に、薄肉高速連続鋳造の注入方法およびそ
の装置に関するものである。

従来、溶融金属を連続鋳造する際、一般にタン
デイツシユ下部に設けた上ノズルと、円形断面を
有する注入ノズルの組合せで注入作業が行なわ
れ、ストツパーヘツドあるいはスライデイングノ
ズル機構によつて溶融金属の注入量が制御されて
いる。注入ノズルの先端形状はストレートタイプ
と、複数箇の吐出孔を有するタイプとあるが、い
ずれの場合にも、吐出孔からの急激な吐出流によ
つて凝固殻が溶融侵食され、一端、凝固を開始し
た凝固殻が再溶解する。あるいは急激な吐出流に
よつて鋳型内溶融金属表面上のパウダーが巻込ま
れたり、溶融金属中の非金属介在物などの不純物
の浮上の妨げになるなどの欠点を有している。

しかも、薄肉連続鋳造の場合は、生産性を確保
するためにも高速鋳造が不可欠であるが、鋳型内
への溶融金属の供給量を増大する必要があるにも
かかわらず、従来タイプの円形断面を有する注入
ノズルであれば鋳型内寸に制約され、注入ノズル
の内径を大きくすることは不可能である。従つ
て、従来タイプの円形断面を有する注入ノズルは
使用できない欠陥を有している。

本発明者らはかかる欠陥を解決するため、矩形
断面を有する注入ノズルと、同断面の注入孔を有
する３枚プレートによつて構成されるスライデイ
ングノズル機構を組合せることによつて新規な注
入方法とその装置を提案している。しかし、溶融
金属の注入量を制御するスライデイングノズルプ
レートの注入孔が、鋳型断面と類似の矩形断面を
有しているための問題点がある。即ち、注入量を
制御するために矩形断面の長手方向に中ノズルプ
レートを摺動させると溶融金属の注入流が注入ノ
ズルの一端に片寄り鋳型内で一様な下降流が得ら
れない。また、矩形断面の短手方向に中ノズルプ
レートを摺動させると小量の摺動量でも注入孔断
面積の変位量が大きく制御性が悪るい。あるい
は、矩形断面の短辺がさらに狭巾になるため、ス
ライデイングノズルプレート内での溶融金属の凝
固、いわゆるノズルづまりが懸念される。従つ
て、矩形断面を有する注入ノズルと組合せて、鋳
型内へ一様な流速の溶融金属下降流を供給するた
めの、制御性の良いかつ、強度で耐久性のある、
しかもシンプルなスライデイングノズルプレート
の新形状を開発し、薄肉高速連続鋳造における新
規な注入方法およびその装置が求められている。

本発明はかかる従来技術における問題点を解決
し、溶融金属の薄肉高速連続鋳造に際して、注入
ノズルから鋳型への注入流を一様な低速下降流に
保持して鋳造することを目的としてなされたもの
である。

即ち、本発明の要旨は、溶融金属を連続鋳造す
るに際し、タンデイツシユ下部に設けた複数箇の
円形断面の注入孔を有する上、下ノズルプレート
と、該上、下ノズルプレートと同形状で同数の注
入孔を有するとともに実質的に溶融金属流下方向
に垂直な方向に摺動自在に前記上、下ノズルプレ
ート間に挾設された中ノズルプレートとによつて
構成されるスライデイングノズル機構によつて溶
融金属の注入量を制御しつつ、前記スライデイン
グノズル機構に連設される矩形断面を有する注入
ノズル内に溶融金属を前記複数箇の円形断面の注
入孔より同時に流入させて鋳型内へ一様な流速の
溶融金属下降流を供給することを特徴とする連続
鋳造における溶融金属の注入方法、および、タン
デイツシユ下部に、複数箇の円形断面の注入孔を
有する上、下ノズルプレートと、該上、下ノズル
プレートに穿設されていると同形状で同数の注入
孔を同一間隔で有するとともに実質的に溶融金属
流下方向に垂直な方向に摺動自在に前記上、下ノ
ズルプレートに挾設された中ノズルプレートとに
よつて構成されるスライデイングノズル機構を設
けるとともに、その開口先端が鋳型内に臨む如く
矩形断面を有する注入ノズルを上記スライデイン
グノズル機構に連設して連続鋳造における溶融金
属の注入装置である。

以下に、本発明による連続鋳造における溶融金
属の注入方法およびその装置を第１図イ，ロおよ
び第２図イ，ロをもとに詳細に説明する。

第１図イは本発明の注入装置を示す縦断面図
で、注入を停止している態様を示す。また、第１
図ロは同図イに示した矢視Ａ―Ａにおける中ノズ
ルプレート５と下ノズルプレート６の断面図であ
る。第２図イは第１図イに示す断面に垂直な方向
の縦断面図で、かつノズルプレートと注入ノズル
が連通している態様を示す。また、第２図ロは同
図イに示した矢視Ｂ―Ｂにおける中ノズルプレー
ト５の断面図である。

第１図イにおいて、タンデイツシユ下部１に設
けられた上ノズル２は複数箇の円形断面の注入孔
３を有し上ノズル２には上ノズルプレート４、中
ノズルプレート５、下ノズルプレート６の３枚の
ノズルプレートで構成されたスライデイングノズ
ル機構７が取付けられており、注入ノズル８がそ
の下部に連設される。注入ノズル８は矩形断面を
有するフラツト状の形状を有し、しかも、鋳型９
断面よりも小断面形状でありスライデイングノズ
ル機構７に取付けられ、注入ノズル８は鋳型内溶
融金属１０に浸漬された状態で鋳造が行なわれ
る。中ノズルプレート５は、図示しない駆動機
構、たとえば流体圧シリンダーによつて溶融金属
の流下方向に垂直な方向に往復動せしめられる。
鋳造速度調整は前記スライデイングノズル中プレ
ート５の開度調整によつて行なわれる。

スライデイングノズル機構には上ノズルプレー
トと下ノズルプレートの２枚プレートで構成さ
れ、下ノズルプレートの摺動によつて鋳造速度調
整を行なう方式も知られているが、下ノズルプレ
ートとともに、下ノズルプレートに連設された注
入ノズルが同時に摺動するため、薄肉高速鋳造の
場合には鋳型断面短辺巾が狭く、注入ノズルの変
動代は小さく、実用的でない。従つて、注入ノズ
ルを固定し中ノズルプレートの摺動によつて鋳造
速度調整を行なう３枚プレートで構成されたスラ
イデイングノズル機構の使用が不可欠である。

また、薄肉高速鋳造の場合には、注入ノズルの
断面が従来型の円形断面では、鋳型断面形状の制
約から溶融金属を注入するノズル断面が小さくな
り溶融金属の供給量が不足する。従つて、注入ノ
ズル断面を鋳型断面長手方向に長くした矩形断面
にして溶融金属の供給量が確保できるようにす
る。矩形断面を採用することにより注入ノズル断
面積が容易に増大できる利点がある。

スライデイングノズルプレートの注入孔断面形
状を注入ノズルの断面と同一の矩形断面形状にす
ることもすでに知られているが、注入量を制御す
るため中ノズルプレートを矩形断面の長手方向に
摺動させると溶融金属の注入流が注入ノズルの長
手方向一端に片寄り鋳型内で一様な下降流が得ら
れない。また、矩形断面の短手方向に摺動させる
と少しの摺動量でも注入孔断面積の変位量が大き
く制御性が悪るい、矩形断面の短辺がさらに狭巾
にあるためノズルプレート内での溶融金属の凝固
いわゆるノズルづまりが懸念される。本発明で、
上ノズルとノズルプレートに複数箇の円形断面の
注入孔を設けることによつて前記欠点は解決され
る。各ノズルプレートの注入孔の断面は第１図イ
に示すようにスライデイング下ノズルプレート６
と連設せる注入ノズル８の上端矩形断面を注入ノ
ズル先端矩形断面より大きくすることによつて任
意に大きくでき、しかも要求せる鋳造速度によつ
て注入孔を増やして溶融金属の供給量を増やすこ
とができる利点がある。

本発明になる連続鋳造における溶融金属の注入
装置は以上述べたように構成されるが、その作用
を以下に説明する。

連続鋳造を開始するにあたり、タンデイツシユ
より上ノズル、スライデイングノズル機構、注入
ノズルを経て鋳型に溶融金属が供給される。注入
ノズル先端が鋳型内溶融金属に浸漬する位置まで
供給されると、注入ノズル内は溶融金属によつて
充満され、注入ノズル内断面を一様な低速下降流
となつて鋳型内に流入する。また、鋳片の引抜き
が開始されると、注入ノズル先端が鋳型内溶融金
属浴面下に浸漬し、かつ、鋳型内溶融金属浴面が
一定に保持されるようスライデイングノズル機構
の中ノズルプレートの開度調整で供給量制御を行
なう。

次いで、本発明になる連続鋳造における溶融金
属の注入方法の実施例を説明する。

電気炉で溶製した中炭素普通鋼を取鍋に出鋼
し、連続鋳造用タンデイツシユ上に取鍋が設置で
きるよう架台に移す。タンデイツシユにはあらか
じめタンデイツシユ下部に内径40ミリφの注入孔
を２ケ有する上ノズルが取付けられ、さらに内径
40ミリφの２ケの開孔を有する３枚プレートより
成るスライデイングノズルと15ミリ×400ミリの
矩形断面の注入孔を有する注入ノズルが連設せら
れている。次いで、注入ノズルが鋳型内の所定の
位置へ挿入するまでタンデイツシユを下げて固定
する。使用した鋳型は80ミリ×1000ミリの薄肉鋳
片製造用断面形状である。注入作業はスライデイ
ングノズル中プレートを開孔してタンデイツシユ
より注入ノズルを通して鋳型内に溶鋼が注入さ
れ、鋳型内の所定の位置、いわゆる注入ノズルが
鋳型内溶鋼に浸漬するまで注入され、次いで、パ
ウダーを投入し、鋳型をオシレーシヨンさせなが
ら３ｍ／minの引抜速度で鋳造し、溶鋼浴面が一
定にあるように中ノズルプレートの開度調整で注
入量を制御した。注入ノズル内は溶鋼が充満し、
注入ノズルの矩形断面内で一様な低速下降流が得
られ、鋳型内で急激な下降流も撹拌流も生じない
静かな溶鋼流動状態で鋳造が行なわれた。得られ
た鋳片は吐出流による凝固殻の溶融侵食もない均
一凝固した非金属介在物の少ない内質の良好な鋼
片が得られた。

この発明は、以上述べたように構成し、かつ作
用せしめるようにしたことによつて、溶融金属の
連続鋳造に際し、特に、薄肉高速連続鋳造時に、
溶融金属を大量に供給するため注入ノズル断面を
矩形断面にし、複数箇の円形断面の注入孔を有す
る上ノズルとスライデイングノズルプレートを連
設することによつて、鋳造速度調整を容易にし、
注入ノズルからの吐出流を一様な低速下降流に保
持することができ、薄肉高速連続鋳造を可能に
し、スライデイングノズルプレートの耐久性もあ
る工業的に顕著な効果をあげている。

【図面の簡単な説明】

第１図イは本発明の溶融金属の注入装置を示す
縦断面図、同図ロは矢視Ａ―Ａにおけるノズルプ
レートの断面図、第２図イは第１図イに示す断面
に垂直な方向の縦断面図で注入中の態様を示し、
第２図ロは矢視Ｂ―Ｂにおける中ノズルプレート
の断面図である。 １：タンデイツシユ下部、２：上ノズル、３：
上ノズル注入孔、４：上ノズルプレート、５：中
ノズルプレート、６：下ノズルプレート、７：ス
ライデイングノズル機構、８：注入ノズル、９：
鋳型、１０：鋳型内溶融金属。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 溶融金属を連続鋳造するに際し、タンデイツ
   シユ下部に設けた複数箇の円形断面の注入孔を有
   する上、下ノズルプレートと、該上、下ノズルプ
   レートと同形状で同数の注入孔を有するとともに
   実質的に溶融金属流下方向に垂直な方向に摺動自
   在に前記上、下ノズルプレート間に挾設された中
   ノズルプレートとによつて構成されるスライデイ
   ングノズル機構によつて溶融金属の注入量を制御
   しつつ、前記スライデイングノズル機構に連設さ
   れる矩形断面を有する注入ノズル内に溶融金属を
   前記複数箇の円形断面の注入孔より同時に流入さ
   せて鋳型内へ一様な流速の溶融金属下降流を供給
   することを特徴とする連続鋳造における溶融金属
   の注入方法。 ２ タンデイツシユ下部に、複数箇の円形断面の
   注入孔を有する上、下ノズルプレートと、該上、
   下ノズルプレートに穿設されていると同形状で同
   数の注入孔を同一間隔で有するとともに実質的に
   溶融金属流下方向に垂直な方向に摺動自在に前記
   上、下ノズルプレートに挾設された中ノズルプレ
   ートとによつて構成されるスライデイングノズル
   機構を設けるとともに、その開口先端が鋳型内に
   臨む如く矩形断面を有する注入ノズルを上記スラ
   イデイングノズル機構に連設した連続鋳造におけ
   る溶融金属の注入装置。