JPH0138278Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は、シリンダボアの周囲に冷却水が流
れるウオータジヤケツトを備えたシリンダブロツ
クの構造に関するものである。

最近、複数のシリンダボアを備えたシリンダブ
ロツクの軽量化およびコンパクト化が指向されて
おり、そのために、シリンダボア相互の間隔を小
さくすること、すなわち、ボア間壁を薄くするこ
とが試みられ、その結果、ボア間壁の冷却が悪く
なる。他方、この種のシリンダブロツクには、シ
リンダボアの周囲にウオータジヤケツトが形成さ
れるとともに、冷却水をこのウオータジヤケツト
からシリンダヘツドへ導出するための縦孔が、上
記シリンダブロツクの上壁部分、すなわち、トツ
プデツキに形成されている。

周知のように、シリンダブロツクの鋳造時にウ
オータジヤケツトを形成するためには、冷却水通
路に相当する砂中子を使用することが必要であ
る。しかし、ボア間壁の冷却性を上げるべく、ボ
ア間壁自体を短かくし、つまり、砂中子の端部を
くさび形状にのばして冷却空間を増すようにする
と、砂中子が薄くなつてその取り扱いに多大な注
意を要するばかりでなく、鋳込み時に中子砂が鋳
肌に焼き付き、鋳込み後の砂出し作業が困難にな
るという問題がある。

この考案は上記欠点を改善するためになされた
もので、ウオータジヤケツトの縦孔との接続部を
中子砂を使用して形成させるものでありながら、
この中子砂の取り扱いが容易となり、しかも、中
子砂が鋳肌に焼き付かずに所望の形状に確実に形
成でき、さらに、十分な冷却面積を確保したシリ
ンダブロツク構造を提供することを目的とする。

以下、この考案の実施例を図面にしたがつて説
明する。

第１図および第２図に示されたシリンダブロツ
ク１において、隣り合うシリンダボア２，２を仕
切るボア間壁６に１対の縦孔７，７が設けられて
いる。また、シリンダボア２，２の周囲には、ウ
オータジヤケツト５が形成されており、このウオ
ータジヤケツト５の上記縦孔７，７との接続部
に、中子砂焼付防止用の金属板製砂保護部材８が
鋳ぐるまれている。この砂保護部材８は、ボア間
壁６の両端にて左右に対向する部材片８Ａ，８Ｂ
同志を一体的に形成してなるものである。

すなわち、上記接続部を構成している砂保護部
材８は、第３図および第４図に示されているよう
に、中央部にＨ字形（第４図）の凹部９ａを有す
るとともに、両端部にＶ字形（第３図）の折曲部
９ｂ，９ｂを有するように成形された１対の金属
板９，９を略対称な形状となるように配置して、
それらの凹部９ａ，９ａ同志をスポツト溶接など
によつて固着してなる。したがつて、この砂保護
部材８には、上記凹部９ａ，９ａによつて仕切ら
れた左右一対の内部空間１０，１０が形成されて
いる。そして、これらの内部空間１０，１０は、
砂保護部材８の両端部において上下方向に貫通さ
れているとともに、第６図によく示されているよ
うに砂保護部材８の中央方向、すなわちボア間壁
６の中央方向Ａに袋状にのびている。なお、第５
図に示すように、この砂保護部材８の両端部下端
には、ウオータジヤケツト５（第２図）と上記内
部空間１０との連通路を拡げるための切欠き１
１，１１が開設されている。

このような砂保護部材８が上記のようにボア間
壁６に鋳ぐるまれているため、その内部空間１
０，１０を介してウオータジヤケツト５が縦孔
７，７に連通されている。上記縦孔７，７は図示
しないシリンダヘツドの冷却水通路に連通してい
る。

以上の構成によれば、砂保護部材８の内部空間
１０，１０が、上下方向に貫通するのみでなく、
ボア間壁６の中央方向Ａにのびる袋状に形成され
ているので、それだけ、内部を流れる冷却水との
接触面積、すなわち、冷却面積が大きくなる。ま
た、砂保護部材８が、１対の金属板９，９の凹部
９ａ，９ａ同志を固着することによつて構成され
ているので、それ自体の強度が大きく、このこと
が、ボア間壁６の強度を向上させるのに役立つて
いる。

つぎに、上記のようなシリンダブロツク１の製
造方法を説明すると、第３図の内部空間１０，１
０に中子砂を装填した砂保護部材８を、鋳造の際
に鋳ぐるみ、この鋳ぐるみと同時にウオータジヤ
ケツト５を形成させる。砂保護部材８を鋳ぐるん
だ後、砂出しを行ない、つぎに、シリンダブロツ
ク１の上壁部分、つまり、トツプデツキに縦孔
７，７を穿設する。

このようにして砂保護部材８を鋳ぐるむ場合、
砂保護部材８には熱負荷がかかるが、上記したよ
うに砂保護部材８は強度的に優れており、しか
も、第３図の内部空間１０，１０に中子砂が装填
されて補強されているので、熱変形が起こらな
い。また、壊れ易い中子砂は砂保護部材８に装填
されており、中子砂単体で取り扱われることがな
いから、その取り扱いが容易である。さらに、中
子砂は鋳湯で形成される第１図のボア間壁６には
直接接触しないから、鋳肌との焼き付きが生じな
い。しかも、砂保護部材８はボア間壁６の両端に
て対向する部材片８Ａ，８Ｂ同志が一体化されて
いるから、左右別体とする場合と比べて、取扱い
が容易で部品点数が減るうえに、砂保護部材８が
ボア間壁６を左右方向に貫ぬく形となるので、ボ
ア間壁６の強度を向上させる。

以上述べたような本考案は、次のような種々の
効果を奏する。

ボア間壁６が薄くても、ボア間壁６の中央方
向Ａに向かつて袋状に伸びる空間１０によつて
冷却面積が十分に確保されるばかりでなく、こ
の空間１０には上下方向に冷却水が通過して流
れるので、冷却効果も高いものとなる。

上記空間１０は、当該空間１０があらかじめ
形成された金属製の砂保護部材８を鋳ぐるむこ
とによつて構成されるので、ボア間壁６部分に
おいて中子砂が焼付くことがなく、この中子砂
の排出を容易かつ確実に行なうことができる。

砂保護部材１０の空間１０内には鋳ぐるみ時
にあらかじめ中子砂が充填されることになる
が、これによつて鋳ぐるみ時の熱変形を防止し
て、当該空間１０を正確に形成することができ
る。また同時に、砂保護部材８によつてウオー
タジヤケツト５形成用の中子が補強され、特に
第１図、第２図の左右方向に中子が広がつてし
まうような事態を確実に防止して、ウオータジ
ヤケツト５をシリンダブロツク１の所望の位置
に正確に形成することができる。すなわち、砂
保護部材８の空間１０内に充填される中子砂は
ウオータジヤケツト５形成用の中子砂と連続し
たものとなつて、砂保護部材８とウオータジヤ
ケツト５形成用中子との結合強度が強くなり、
これに加えて砂保護部材の両端形状によつてウ
オータジヤケツト５形成用中子が第１図、第２
図の左右方向に広がるのを規制することにな
る。

砂保護部材８の存在によつてボア間壁６の強
度が向上される。

砂保護部材８は、所定形状とされた一対の金
属板同士９を固着することにより構成するよう
にしてあるので、その製造も極めて容易とな
る。

砂保護部材８を構成する一対の金属板９は、
その中央部に形成された薄いＨ字形の凹部９ａ
部分によつてに互いに固着されるので、ボア間
壁６のもつとも薄くなる部分に対応しつつこの
固着を容易に行なえる一方、このＨ字形の凹部
９ａ内に溶湯が進入して砂保護部材８とシリン
ダブロツク１との結合強度も高いものとなる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案の実施例によるシリンダブロ
ツク構造を示す平面図、第２図は第１図の−
線に沿う断面矢視図、第３図は砂保護部材の平面
図、第４図は同正面図、第５図は同側面図、第６
図は第４図の−線に沿う拡大断面矢視図であ
る。 １……シリンダブロツク、２……シリンダボ
ア、５……ウオータジヤケツト、６……ボア間
壁、７……縦孔、８……砂保護部材、８Ａ，８Ｂ
……部材片、９……金属板、１０……内部空間、
Ａ……中央方向、９ａ……凹部、９ｂ……折曲
部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 隣り合うシリンダボアを仕切るボア間壁の両端
   位置に、ウオータジヤケツトに連通する縦孔が設
   けられたシリンダブロツクにおいて、ウオータジ
   ヤケツトの上記縦孔との接続部が、上下方向に貫
   通し、かつ、ボア間壁の中央方向にのびる袋状の
   空間を有する中子砂焼付防止用の金属板製砂保護
   部材をボア間壁内に鋳ぐるんで形成され、この砂
   保護部材は、中央部にＨ字形の凹部を有し両端に
   略Ｖ字形の折曲部を有する一対の金属板をほぼ対
   称に配置して凹部どうしを固着することにより構
   成されていることを特徴とするシリンダブロツク
   構造。