JPH0128972Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ この考案は、正面フライスやカツタ等の切削工
具として用いられるスローアウエイチツプに関す
るものである。

［従来の技術］ 近年、上記スローアウエイチツプのうち、特に
主切刃に沿うすくい面を凸曲面状に形成した各種
のポシテイブスローアウエイチツプが開発されつ
つある。

第１１図ないし第１３図は、従来のこの種のス
ローアウエイチツプに一例を示すもので、全体と
して略方形板状をなすスローアウエイチツプ１の
上面２の各角部には副切刃３…が形成され、また
これら副切刃３…間の辺部には、主切刃４…が形
成されている。また、このスローアウエイチツプ
１の側面には、それぞれ上記主切刃４…および副
切刃３…からこのスローアウエイチツプ１の中心
方向に傾斜して下面５に至る主切刃逃げ面６と副
切刃逃げ面７とが形成されている。そして、上記
主切刃４…のうち一対の対向する主切刃４，４は
その切刃稜線た略円弧状の凸曲線をなすように、
そのすくい面８，８が円柱面状の凸曲面により形
成されている。ここで、このすくい面８は、その
頂部９が切刃先端１０と切刃後端１１との中間位
置１２より切刃先端１０側に長さＡだけ偏つた位
置において上面２と接するように形成されてい
る。なお、図中符号１３は上記すくい面８から上
面２に連続する立上り部である。

しかして、このようなすくい面８が凸曲面によ
り形成されたスローアウエイチツプ１にあつて
は、切刃先端部の刃物角が大きく、刃先強度に優
れるとともに、その特異な切削作用により切削抵
抗や切削熱の発生が低減する等の利点を有するこ
とが知られている。

しかしながら、上記従来のスローアウエイチツ
プ１では、凸曲面状のすくい面８を、その頂部９
が、主切刃４の切刃先後端１０，１１の中間位置
１２より切刃先端１０側に偏つた位置になるよう
にして形成しているので、上面２に対する切刃後
端１１の位置が切刃先端１０よりも低い位置とな
つてしまう。したがつて、上記主切刃４の切刃後
端１１に隣接する辺部は、上記主切刃４と同様の
切刃先端１０を形成すべき箇所が既に上記凸曲面
８を形成する際に削り取られてしまつているた
め、上記辺部に上記主切刃４と同様の凸曲面８を
形成することができず、よつて、対向する２つの
辺部に上記主切刃４，４を形成することができる
のみで、全ての辺部を上記凸曲面８を有する主切
刃４として使用することができないため、その経
済性に劣るという欠点があつた。

そのため、第１４図に示すように、切刃後端１
４から上面１５に向けて立上り壁１６を形成し、
隣接する主切刃１７を凸曲面状に形成するための
切刃先端１８の削り代を確保するスローアウエイ
チツプも提案されている。

ところが、このスローアウエイチツプにあつて
は、主切刃１７の後端側のすくい面１９と、上記
立上り壁１６とにより深いポケツト２０が形成さ
れてしまうため、切屑の排除が極めて悪くなると
いう欠点があつた。

このため、上記欠点を改良するものとして、第
１５図ないし第１７図に示すようなスローアウエ
イチツプ２１も提案されている。

このスローアウエイチツプ２１は、主切刃２２
のすくい面２３を、その頂部２４が切刃先端２５
と切刃後端２６との中央位置２７よりも上記切刃
後端２６側へ長さＡだけ偏つた位置において上面
２８と接するような円柱面上の凸曲面に形成した
ものである。すなわち、このスローアウエイチツ
プ２１では、上面２８に対する切刃後端２６の位
置が、切刃先端２５の位置より高い位置となる。
これにより、上記主切刃２２の後端において、隣
接する主切刃２２のすくい面２３を同様にして凸
曲面に形成するための削り代を確保することがで
きる。したがつて、このスローアウエイチツプ２
１にあつては、その全ての辺部の主切刃２２…の
すくい面２３…を凸曲面に形成することができ
る。

［考案が解決しようとする問題点］ しかしながら、上記従来のスローアウエイチツ
プ２１にあつては、円柱面状の凸曲面をなすすく
い面２３を、その頂部２４が上記中央位置２７よ
り切刃後端２６側へ偏つた位置になるように形成
しているので、切刃先端２５と上面２８とのなす
角度αが、いきおい大きなものとなつてしまう。
したがつて、第１８図および第１９図に示すよう
に、このスローアウエイチツプ２１をカツタ本体
２９に取り付ける場合に、上記カツタ本体２９の
軸線と平行な面Ｏと切刃先端２５における接線と
のなす角βが少なくとも負にならないようにする
ためには、上記第１１図ないし第１４図に示した
ものよりもその傾斜角Ｉを大きくとらなければな
らなくなつてしまう。このため、第１８図および
第１９図に示すように、所定の逃げ角θを得るた
めには、このスローアウエイチツプ２１自体に予
め大きな逃げ角を形成しておかなければならず、
よつて、必然的にこのスローアウエイチツプ２１
の下面の面積が減少して着座剛性や加工精度が低
下するのみならず、切刃先端２５近傍の厚さが薄
くなりその刃先強度が低下するという問題があつ
た。

［考案の目的］ この考案は上記事情に鑑みてなされたもので、
各辺部に形成されたすべての主切刃のすくい面を
凸局面に形成することができて経済性が高く、し
かもその切削性能に優れるとともにその切屑処理
も良好なスローアウエイチツプを提供することを
目的とするものである。

［問題点を解決するための手段］ この考案のスローアウエイチツプは、上下面が
平行な多角形をなし、上記上面の角部に副切刃が
形成されるとともに、これら副切刃の間に位置す
る辺部に、一端が上記副切刃に連なる主切刃が形
成されてなるスローアウエイチツプの上記主切刃
に沿う上記上面を、上記主切刃の一端から他端ま
で延びるとともに頂部が上記主切刃の両端部間の
中央より一端側に偏した位置に存する凸曲面と、
この凸曲面の上記主切刃の他端側に接してこれか
ら上記主切刃の他端側に位置する副切刃の近傍の
上記上面まで延びる凹曲面とから形成し、かつそ
の形状を菱形または平行四辺形状に形成するとと
もに上記主切刃と上記副切刃との間にコーナーノ
ーズ刃を形成したものである。

［実施例］ 第１図〜第６図は、この考案のスローアウエイ
チツプの一例を示すものである。

第１図〜第４図において、このスローアウエイ
チツプ２９は外観菱形板状のもので、上面３０の
角部のうち、鈍角をなす角部には副切刃３１，３
１が、また鋭角をなす角部には副切刃３２，３２
がそれぞれ形成されている。そして、これら副切
刃３１，３２間の辺部には主切刃３３…がそれぞ
れ形成されている。また、鈍角をなす角部の上記
副切刃３１と主切刃３３との間には、コーナーノ
ーズ刃６０が、さらに鋭角をなす角部の上記副切
刃３２と主切刃３３との間には、コーナーノーズ
刃６１がそれぞれ形成されている。そして、この
スローアウエイチツプ２９の各主切刃３３…に沿
つた辺部の上面３４は、各々、上記主切刃３３…
の切刃先端３５から切刃後端３６まで延び、この
主切刃３３…のすくい面を形成する半径Ｒの円柱
面状の凸曲面３７と、この凸曲面３７の切刃後端
３６の位置から、この切刃後端３６側の副切刃３
１，３２の近傍まで延びる凹曲面３８とから形成
されている。

上記凸曲面３７は、その頂部３９が切刃先端３
５と切刃後端３６との間の中央位置４０より上記
切刃先端３５側に長さＡだけ偏つた位置において
上面３０と接するように形成されている。また上
記凹曲面３８は、上記凸曲面３７に切刃後端３６
の位置で接し、これから上記副切刃３１，３２近
傍の上面３０と同じ高さの位置まで延びるような
断面が半径ｒの円弧状の凹曲面に形成されてい
る。なお図中符号４１は、上記凸曲面３７および
凹曲面３８からなる上面３４から上記上面３０へ
向けて円滑に延びる立上り面である。

そして、以上の構成からなる上記スローアウエ
イチツプ２９は、第５図に示すように、カツタ本
体５５にその鈍角の角部のコーナーノーズ刃６０
が切刃として取り付けられることにより平削り形
正面フライスとして、また第６図に示すように、
カツタ本体５６にその鋭角の角部のコーナーノー
ズ刃６１が切刃として取り付けられることにより
直角肩削り形正面フライスとして、それぞれ用途
に応じて適宜使用に供される。

しかして、このようなスローアウエイチツプ２
９にあつては、主切刃３３…に沿う上面３４を凸
曲面３７と凹曲面３８とから形成するとともに、
上記凸曲面３７を、その頂部３９が切刃先端３５
と切刃後端３６との間の中央位置４０より上記切
刃先端３５側へ偏つた位置となるように形成して
あるので、上記切刃先端３５と上面３０とのなす
角度αが、第１４図ないし第１６図に示した従来
のもののように、徒らに大きくなることがない。
このため、第１９図における傾斜角Ｉを大きくと
る必要がなく、よつてその切刃逃げ角を大きくす
る必要がない。したがつて、充分な着座剛性と優
れた切刃強度を得ることができ、加えて切削抵抗
や切削熱の発生が小さい等の優れた切削性能をも
得ることができる。

しかも、上記凸曲面３７の切刃後端３６から、
この切刃後端３６側に隣接する副切刃３１，３２
の近傍の上面３０と同高さ位置までを、上記凹曲
面３８で円滑に立ち上がらせているので、隣接す
る主切刃３３…に沿つて同様の上側の凸曲面３７
と凹曲面３８とを形成してゆくための充分な削り
代を確保することができる。これにより、各辺部
に形成されている全ての主切刃３３…に沿う上面
３４…を、凸曲面３７と凹曲面３８とから形成す
ることができ、よつて経済性の高いものとするこ
とができる。さらに、上記凹曲面３８により切屑
を、この凹曲面３８から立上り面４１を介して円
滑に排除することもできる。

さらに、このスローアウエイチツプ２９にあつ
ては、その形状を鈍角の角部と鋭角を有する菱形
に形成し、かつ上記主切刃３３…と副切刃３１，
３２との間にコーナーノーズ刃６０，６１を設け
てあるので、これらコーナーノーズ刃６０，６１
を適宜使用することにより、第５図および第６図
に示すように、各種の用途に使用することができ
る。

第７図はこの考案のスローアウエイチツプの他
の実施例を示すものである。

このスローアウエイチツプ４２は外観平行四辺
形の板状のもので、上面４３の角部のうち、鈍角
をなす角部には副切刃４４，４４が、また鋭角を
なす角部には副切刃４５，４５がそれぞれ形成さ
れている。そして、これら副切刃４４，４５間の
辺部には主切刃４６…がそれぞれ形成されてい
る。また、鈍角をなす角部の上記副切刃４４と主
切刃４６との間には、コーナーノーズ刃６２が、
さらに鋭角をなす角部の上記副切刃４５と主切刃
４６との間には、コーナーノーズ刃６３がそれぞ
れ形成されている。そして、このスローアウエイ
チツプ４２の各主切刃４６…に沿つた辺部の上面
４７は、各々上記第１の実施例で示したスローア
ウエイチツプ２９と同様に、上記主切刃４６…の
切刃先端４８から切刃後端４９まで延び、この主
切刃４６…のすくい面を形成する円柱面状の凸曲
面５０と、この凸曲面５０の切刃後端４９の位置
から、この切刃後端４９側の副切刃４４，４５の
近傍まで延びる凹曲面５１とから形成されてい
る。

そして、以上の構成からなる上記スローアウエ
イチツプ４２は、第８図に示すように、カツタ本
体５７にその鈍角の角部のコーナーノーズ刃６２
が切刃として取り付けられることにより平削り形
正面フライスとして、また第９図に示すように、
カツタ本体５８にその鋭角の角部のコーナーノー
ズ刃６３が切刃として取り付けられることにより
直角肩削り形正面フライスとして、さらに第１０
図に示すように、バイト５９に取り付けられるこ
とによつて、それぞれ用途に応じて適宜使用に供
される。

しかして、この例のスローアウエイチツプ４２
にあつては、上記第１の実施例で示したスローア
ウエイチツプ２９と同様の作用効果を得ることが
できるとともに、さらに第８図に示すように、コ
ーナー角Ch゜を付した状態においても、その長辺
に形成された主切刃４６を平削り形に用い、短辺
に形成された主切刃４６を肩削り形に用いること
により、平削り形の切り込み方向の刃長を大きく
とることができるといつた利点を得ることができ
る。

「考案の効果」 以上説明したようにこの考案のスローアウエイ
チツプは、上下面が平行な多角形をなし、上記上
面の角部に副切刃が形成されるとともに、これら
副切刃の間に位置する辺部に、一端が上記副切刃
に連なる主切刃が形成されてなるスローアウエイ
チツプの上記主切刃に沿う上記上面を、上記主切
刃の一端から他端まで延びるとともに頂部が上記
主切刃の両端部間の中央より一端側に偏した位置
に存する凸曲面と、この凸曲面の上記主切刃の他
端側に接してこれから上記主切刃の他端側に位置
する副切刃の近傍の上記上面まで延びる凹曲面と
から形成し、かつその形状を菱形または平行四辺
形状に形成するとともに、上記主切刃と上記副切
刃との間にコーナーノーズ刃を形成したものであ
る。よつて、このスローアウエイチツプによれ
ば、各辺部に形成されたすべての主切刃のすくい
面を凸曲面に形成することができるため、すべて
の主切刃について上記凸曲面が有する優れた切削
性能を得ることができて経済的である。しかも、
切屑が上記凹曲面に沿つて円滑に排除されるた
め、その切屑処理にも優れる等の利点を得ること
ができる。さらに、鈍角の角部と鋭角の角部とに
形成された各コーナーノーズ刃を適宜使用するこ
とにより、各種の用途に使用することができる等
の利点も得ることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図〜第６図はこの考案のスローアウエイチ
ツプの一実施例を示すもので、第１図は正面図、
第２図は第１図の−線視図、第３図は第１図
の−線視図、第４図は第１図の−線視断
面図、第５図は平削りカツタ本体に取り付けた状
態を示す正面図、第６図は直角肩削りカツタ本体
に取り付けた状態を示す正面図、第７図〜第１０
図はこの考案の他の実施例を示すもので、第７図
は正面図、第８図は平削りカツタ本体に取り付け
た状態を示す正面図、第９図は直角肩削りカツタ
本体に取り付けた状態を示す正面図、第１０図は
バイトに取り付けた状態を示す正面図、第１１図
〜第１３図は従来のスローアウエイチツプの一例
を示すもので、第１１図は側面図、第１２図は正
面図、第１３図は第１２図のP₁−P₁線視断面図、
第１４図は従来のスローアウエイチツプの他の例
を示す側面図、第１５図〜第１９図は従来のスロ
ーアウエイチツプの他の例を示すもので、第１５
図は側面図、第１６図は正面図、第１７図は第１
６図のP₂−P₂線視断面図、第１８図はカツタ本
体に取り付けた状態を示す正面図、第１９図は第
１８図のP₃−P₃線視図である。 １，２１，２９，４２……スローアウエイチツ
プ、３０，３４，４３，４７……上面、３１，３
２，４４，４５……副切刃、３３，４６……主切
刃、３９……頂部、３５，４８……切刃先端、３
６，４９……切刃後端、４０……中間位置、４１
……立上り面、３７，５０……凸曲面、３８，５
１……凹曲面、５５，５６，５７，５８……カツ
タ本体、５９……バイト、６０，６１，６２，６
３……コーナーノーズ刃。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 上下面が平行な多角形をなし、上記上面の角部
   に副切刃が形成されるとともに、これら副切刃の
   間に位置する辺部に、一端が上記副切刃に連なる
   主切刃が形成されてなるスローアウエイチツプに
   おいて、 上記主切刃に沿う上記上面を、上記主切刃の一
   端から他端まで延びるとともに頂部が上記主切刃
   の両端部間の中央より一端側に偏した位置に存す
   る凸曲面と、この凸曲面の上記主切刃の他端側に
   接してこれから上記主切刃の他端側に位置する副
   切刃の近傍の上記上面まで延びる凹曲面とから形
   成し、かつその形状を菱形または平行四辺形状に
   形成するとともに上記主切刃と上記副切刃との間
   にコーナーノーズ刃を形成したことを特徴とする
   スローアウエイチツプ。