JPH0128135Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は油圧シヨベルのフロントを構成するブ
ームに関するものである。

第１図は油圧シヨベルの側面図を示し、油圧シ
ヨベルは大略下部走行体１と、旋回体２とから構
成される。下部走行体１は骨組構造となるトラツ
クフレーム３、履帯４とからなり、旋回体２は本
体５、フロント６とからなる。フロント６はブー
ム６Ａ、アーム６Ｂ、バケツト６Ｃ、ブームシリ
ンダ６Ｄ、アームシリンダ６Ｅ等から構成され
る。

第２図乃至第７図は従来技術によるブームを示
し、ブーム１１は上フランジ１２、下フランジ１
３、左、右のウエブ１４，１５の４枚の部材によ
つて中空状に構成され、ブーム１１は本体５に枢
着されるブームフート部１６、アーム６Ｂを取付
けるアーム取付部１７、ブームシリンダ６Ｄを取
付けるブームシリンダ取付部１８、アームシリン
ダ６Ｅを取付けるアームシリンダ取付部１９等か
ら構成される。２０，２１はブーム１１内に固着
して設けられる隔壁を示し、一方の隔壁２０はブ
ーム１１のねじり強度を向上させるためのもので
あり、他方の隔壁２１はアームシリンダ取付部１
９の取付フランジの補強を兼ねてブーム１１のね
じり強度を向上させるためのものである。２２，
２３は隔壁２０，２１を下フランジ１３と溶接す
る際に使用するためウエブ１４に設けられた孔、
２４は孔２２，２３を塞ぐための当て板である。

このように構成されるブーム１１を組立てるに
は、第３図の如く上フランジ１２、左、右ウエブ
１４，１５によりコ字状のブームを作り、コ字状
内に隔壁２０，２１を挿入し、第４図に示すよう
に隔壁２０，２１を上フランジ１２、左、右ウエ
ブ１４，１５の内周側とイ，ロ，ハの位置で三方
の溶接を行う。次に、第５図に示すように左、右
ウエブ１４，１５に下フランジ１３を取付け、孔
２２，２３から溶接機を挿入し、隔壁２０，２１
を下フランジ１３の内周側とニの位置で溶接す
る。従つて、隔壁２０，２１は上、下フランジ１
２，１３、左、右ウエブ１４，１５に対し全周が
溶接されたことになる。さらに、当て板２４をウ
エブ１４に対しホの位置で溶接し、孔２２，２３
を塞ぐ。

このような、従来技術による油圧シヨベル用ブ
ームにあつては、隔壁２０，２１は溶接位置イ，
ロ，ハ，ニの４箇所で溶接されるため、構造上の
強度低下はない。しかし、第５図及び第６図に示
す如く溶接位置ニを溶接するために孔２２，２３
から溶接機を挿入し、マンホール作業で溶接作業
をしなくてはならず、溶接の信頼性が低下し、し
かも作業性に劣る欠点があつた。また、ウエブ１
４に溶接の際使用するための孔２２，２３を穿設
し、改めて当て板２４で孔２２，２３を塞ぐた
め、当て板２４が必要であるだけ部品点数が増
え、孔２２，２３の穿設作業、溶接位置ニを溶接
するため溶接工数が必要である等により製造コス
トが高くなつてしまう欠点があつた。さらに、溶
接位置ニを溶接する際栓溶接で行う場合もある
が、ブーム自体の強度を著しく低下させてしまう
欠点があつた。

本考案は前述した従来技術の欠点に鑑みなされ
たもので、ブームを２個の中空状ブロツク体に分
割し、各中空状ブロツク体毎に隔壁を全周溶接す
ることにより、該各隔壁の溶接作業を一度に行い
うるようにすると共に溶接の信頼性を高め、かつ
各中空状ブロツク体を接合するとき、上、下のフ
ランジと左、右のウエブの合せ面を異ならしめる
ことにより、溶接作業時に各中空状ブロツク体の
組立性を良好ならしめ、溶接後にも各溶接部位に
作用する荷重を分散し、ブームに作用するせん断
力に対しても十分に対応できるようにした油圧シ
ヨベル用ブームを提供することを目的とする。

上記目的を達成するために、本考案は、上、下
フランジおよび左、右ウエブによつて２個の中空
状ブロツク体を形成し、該各中空状ブロツク体を
接合してなる油圧シヨベル用ブームにおいて、前
記各中空状ブロツク体を接合するとき上、下のフ
ランジと左、右のウエブとの合せ面が異なるよう
に、該各上、下のフランジのうち一方のフランジ
を左、右のウエブの合せ面よりも長くすると共に
他方のフランジを当該合せ面よりも短かくするこ
とにより、左、右のウエブに対して上、下のフラ
ンジを凹凸状に形成し、また前記各中空状ブロツ
ク体にはそれぞれ隔壁を設け、該各隔壁は各中空
状ブロツク体内でそれぞれ全周溶接することによ
り固着し、かつ前記各中空状ブロツク体を上、下
フランジの合せ面、左、右ウエブの合せ面で溶接
することにより、左、右ウエブの溶接位置に対
し、上、下フランジの溶接位置をそれぞれ異なら
しめた状態で一体的に接合する構成としたことに
ある。

上記構成により、２個の中空状ブロツク体に隔
壁をそれぞれ溶接するとき、開口側から一度に全
周溶接することができる。また、左、右ウエブの
合せ面に対して上、下のフランジの一方を長く、
他方を短かくすることにより、該上、下のフラン
ジを凹凸状に形成しているから、これらを組立て
るとき上、下フランジで互いに嵌合することがで
き、組立性が良好となる。さらに、溶接後におい
ても、左、右ウエブと上、下フランジの溶接位置
が異なるから、同一周面または斜めに溶接するも
のに比較し、溶接箇所に上、下方向の荷重が作用
してもこれを分散し、せん断力に対し強い構造と
しうる。

以下、本考案の実施例を第８図乃至第１３図を
参照しつつ詳細に説明する。

第８図において、３１は一方の中空状ブロツク
体を示し、該中空状ブロツク体３１は、上、下フ
ランジ３２，３３、左、右ウエブ３４，３５、隔
壁３６、ブームフート部３７、ブームシリンダ取
付部３８等から構成され、上フランジ３２には
左、右ウエブ３４，３５の合せ面よりも突出した
突出部３２Ａが形成され、下フランジ３３は左、
右ウエブ３４，３５の合せ面よりも短かく形成さ
れている。そして、第９図に示すように隔壁３６
は上、下フランジ３２，３３、左、右ウエブ３
４，３５に対して溶接位置Ａ，Ｂ，Ｃ，Ｄの４箇
所で全周が溶接される。なお、溶接に際しては第
８図の右方側から容易に溶接作業を行うことがで
きる。

次に、第１０図において、４１は他方の中空状
ブロツク体を示し、該中空状ブロツク体４１は
上、下フランジ４２，４３、左、右ウエブ４４，
４５、隔壁４６、アーム取付部４７等から構成さ
れ、上フランジ４２は左、右ウエブ４４，４５の
合せ面よりも短かく形成され、前記した一方の中
空状ブロツク体３１の突出部３２Ａと接合しうる
ようになつている。また、下フランジ４３には
左、右ウエブの合せ面よりも長い突出部４３Ａが
形成され、前記下フランジ４３と接合しうるよう
になつている。そして、第１１図に示すように隔
壁４６は上、下フランジ４２，４３、左、右ウエ
ブ４４，４５に対して溶接位置Ｅ，Ｆ，Ｇ，Ｈの
４箇所で全周が溶接される。

さらに、前述した各中空状ブロツク体３１，４
１は第１２図に示す如く上フランジ３２と４２、
下フランジ３３と４３、左ウエブ３４と４４、右
ウエブ３５と４５がそれぞれ溶接位置Ｊ，Ｋ，Ｌ
の位置で溶接され、一体的に接合される。なお、
この場合の溶接手段としては突合せ溶接が望まし
い。第１２図中４８はアームシリンダ取付部であ
る。

以上のように本実施例の油圧シヨベル用ブーム
は２個の中空状ブロツク体３１，４１を別個に製
作し、各中空状ブロツク体３１，４１にはそれぞ
れ隔壁３６，４６を設け、該各隔壁３６，４６の
全周を溶接手段により固着し、このように形成さ
れた中空状ブロツク体３１，４１を溶接手段によ
り一体的に接合する構成としたから、隔壁３６，
４６の溶接作業を一度に行うことができ、しかも
従来技術の如く隔壁をウエブに溶接の際使用する
孔が不要であると共に、孔を塞ぐ当て板と該当て
板を固着するための溶接作業を不要とすることが
できる。

また、２個の中空状ブロツク体３１，４１を接
合するとき、それぞれの合せ面が異なるように、
一方の中空状ブロツク体３１の上フランジ３２に
は突出部３２Ａを形成すると共に下フランジ３３
は左、右ウエブ３４，３５よりも短かく形成し、
他の中空状ブロツク体４１の下フランジ４３には
突出部４３Ａを形成すると共に上フランジ４２は
左、右ウエブ４４，４５よりも短かく形成し、全
体として凹凸状に構成されている。

この結果、各中空状ブロツク体３１，４１を接
合するに際し、これらは互いに凹凸嵌合すること
になり、上、下フランジ、左、右ウエブの合せ面
が同一面にあるものに比較して組立性が良好とな
り、溶接作業も円滑に行うことができる。

さらに、溶接後においても、上、下フランジ、
左、右ウエブの合せ面が異なつているから、溶接
位置も互いに異なつてくる。即ち、左ウエブ３４
と４４、右ウエブ３５と４５の溶接位置Ｌに対し
て、上フランジ３２と４２の溶接位置Ｊは右側
に、下フランジ３３と４３の溶接位置Ｋは左側に
なつて、互いに反対方向となる。このように各溶
接位置Ｊ，Ｋ，Ｌが異なつているから、油圧シヨ
ベルとして掘削作業を行うとき、ブームに垂直方
向または水平方向の荷重が作用しても、同一周面
上で溶接するものに比較して、溶接箇所に作用す
る荷重を分散でき、せん断力に対しても十分に耐
えることができる。この結果、仮に溶接が不十分
な箇所があつても破損事故をくいとめることがで
き、寿命を延ばすことができる。

次に、第１３図は本考案に係る油圧シヨベル用
ブームの第２実施例を示すもので、第１２図と同
一構成要素には同一符号を付すものとするに、図
中５１は一方の中空状ブロツク体３１に固着され
た他の隔壁を示し、該隔壁５１は上フランジ３
２、左、右ウエブ３４，３５の内面、ブームシリ
ンダ取付部３８周面に対し全周にわたつて溶接さ
れる。

従つて、本実施例のように構成すれば、一方の
中空状ブロツク体３１に隔壁３６と他の隔壁５１
とを設けたから、該他の隔壁５１によつてアーム
シリンダ取付部４８の補強をより確実に行うこと
ができる。その他の構成については変わるところ
がないので省略する。

なお、第１３図に示す第２実施例の場合、中空
状ブロツク体４１側の隔壁は省略されるものとし
て図示したが、該中空状ブロツク体４１に第３の
隔壁を設けてもよいことは勿論である。

本考案の油圧シヨベル用ブームは以上詳細に述
べた如くであつて、下記各項に列挙する幾多の効
果を奏する。

上、下フランジおよび左、右ウエブによつて
２個の中空状ブロツク体を形成し、該中空状ブ
ロツク体内にそれぞれ隔壁を全周溶接するに際
し、各中空状ブロツク体を溶接することによつ
て接合する前に、隔壁を全周溶接しうるように
構成したから、隔壁の溶接作業を一度に行うこ
とができる。

前記項に関連して、溶接作業は従来技術の
如くマンホール作業の必要がなく、良好な条件
で行うことができるから、溶接の信頼性を高め
ることができ、しかも従来技術のように栓溶接
によつて溶接する必要がないから、強度を高め
ることができる。

従来技術の如く、ウエブに隔壁溶接のため孔
を穿設する必要がなく、しかも該孔を塞ぐため
の当て板が不要であるから、孔の穿設作業、当
て板を溶接する作業等を省略することができ、
低廉に製造しうる。

２個の中空状ブロツク体を接合するとき、
上、下のフランジと左、右のウエブとの合せ面
が異なるように、該各上、下のフランジのうち
一方のフランジを左、右のウエブの合せ面より
も長くすると共に他方のフランジを当該合せ面
よりも短かくすることにより、左、右のウエブ
に対して上、下のフランジを凹凸状に形成した
から、一体的に接合するため各中空状ブロツク
体を組立てる際、該各中空状ブロツク体が凹凸
嵌合することになり、組立性を良好ならしめる
ことができる。

前記項に関連して、左、右ウエブの溶接位
置に対し、上、下フランジの溶接位置が互いに
異なつているから、溶接箇所に作用する荷重を
分散できる結果、ブームに作用するせん断力に
対しても十分に耐えることができ、当該ブーム
の寿命を延ばすことができる。

隔壁をブームシリンダ取付部を含んで全周溶
接する構成とすれば、アームシリンダ取付部の
補強をより確実に行うことができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は油圧シヨベルの全体構成を示す側面
図、第２図は従来技術によるブームの正面図、第
３図乃至第７図は第２図に示すブームの製造工程
を示し、第３図は下ウエブを取付ける以前の状態
図、第４図は第３図の−矢示方向断面図、第
５図は下ウエブを取付けた後の状態図、第６図は
第５図の−矢示方向断面図、第７図は当て板
を取付けた後の状態図、第８図乃至第１２図は本
考案の第１の実施例に係るブームの製造工程を示
し、第８図は一方の中空状ブロツク体の正面図、
第９図は第８図の−矢示方向断面図、第１０
図は他方の中空状ブロツク体の正面図、第１１図
は第１０図のXI−XI矢示方向断面図、第１２図は
最終組立状態を示す正面図、第１３図は本考案の
第２実施例を示す正面図である。 ３１，４１……中空状ブロツク体、３２，３
３，４２，４３……フランジ、３４，３５，４
４，４５……ウエブ、３６，４６，５１……隔
壁、３８……ブームシリンダ取付部、Ａ，Ｂ，
Ｃ，Ｄ，Ｅ，Ｆ，Ｇ，Ｈ，Ｊ，Ｋ，Ｌ……溶接位
置。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 上、下フランジおよび左、右ウエブによつて
   ２個の中空状ブロツク体を形成し、該各中空状
   ブロツク体を接合してなる油圧シヨベル用ブー
   ムにおいて、前記各中空状ブロツク体を接合す
   るとき上、下のフランジと左、右のウエブとの
   合せ面が異なるように、該各上、下のフランジ
   のうち一方のフランジを左、右のウエブの合せ
   面よりも長くすると共に他方のフランジを当該
   合せ面よりも短かくすることにより、左、右の
   ウエブに対して上、下のフランジを凹凸状に形
   成し、また前記各中空状ブロツク体にはそれぞ
   れ隔壁を設け、該各隔壁は各中空状ブロツク体
   内でそれぞれ全周溶接することにより固着し、
   かつ前記各中空状ブロツク体を上、下フランジ
   の合せ面、左、右ウエブ合せ面で溶接すること
   により、左、右ウエブの溶接位置に対し、上、
   下フランジの溶接位置をそれぞれ異ならしめた
   状態で一体的に接合してなる油圧シヨベル用ブ
   ーム。 (2) 前記各隔壁は前記各中空状ブロツク体を形成
   する上、下フランジ、左、右ウエブ内面に対し
   全周を溶接することにより固着してなる実用新
   案登録請求の範囲(1)項記載の油圧シヨベル用ブ
   ーム。 (3) 一方の中空状ブロツク体内に設けられる隔壁
   を一の隔壁と他の隔壁とにより構成し、該他の
   隔壁は上フランジ、左、右ウエブおよびブーム
   シリンダ取付部に対し全周を溶接することによ
   り固着してなる実用新案登録請求の範囲(1)項記
   載の油圧シヨベル用ブーム。