JPH0114817B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は静電式エアクリーナ、特に空気中の煙
等を除去するに適したエアクリーナに関するもの
である。 従来の一般的静電式エアクリーナは(1)空気中に
混入する塵や煙等の粒子を正極に帯電させる高イ
オン化領域と(2)正極に帯電された粒子を負極に帯
電されたプレート上に付着せしめるコレクター
（捕捉）領域とに分けられている。この高イオン
化領域は相対向する金属板間に配設された金属細
線から構成され、この細線は電圧を印加した時に
多量の自由イオン（＋）を放出する物性を有する
金属かから選択され、一例としてはタングステン
からなつている。また、この細線から分離してこ
れを取囲んでいる金属板は電圧（−）を印加した
時に（＋）イオンを強力に吸引する物性を有する
金属から形成されている。一方、コレクター領域
は一般的にアルミニウム製の一連のプレートから
構成され、これらプレートは「正」「負」交互に
電圧が印加されるようになつている。 この種の静電式エアクリーナの効率はイオン化
領域におけるイオン化の程度、並びにコレクター
領域における吸引力の強さに依存している。この
イオン化の程度は、上記のように多量の自由イオ
ン（＋）を放出する物性を有する細線を用いるこ
とによつて増大させることができるが、より効果
的には印加電圧を増加することである。同様に、
コレクター領域における吸引力の増大は材料の選
択以外に、印加電圧を増加させることによつて著
しく改善せられる。更に、コレクター領域におけ
る金属板の間隔は吸引力に影響をおよぼし、この
間隔を狭めることによつて吸引力が増大する。 上記のような事実から、従来の静電式エアクリ
ーナにおいて印加電圧を増大して効率を上げるこ
とは簡単に行えることのように考えられるかもし
れないが、スパークの発生とか少量でも人体に有
害なオゾンの発生とかいう問題により昇圧には限
界がある。従つて、この印加電圧はコレクター領
域における金属板間のスパーク及びオゾンの生成
を防止するため充分低いものとされなければなら
ない。 現在行われている方法では、イオン化領域にお
いてタングステン細線と金属板との間隔を大きく
取つて高電圧を印加してイオン化を増大させるこ
とであるが、オゾンの発生を防止するために所定
値以上に電圧を昇圧することができないのが現状
である。イオン化が増大されれば、コレクター領
域においてスパークを発生させないような充分に
低い電圧でもコレクト（集塵・除煙）効率を上げ
ることが可能となるのである。 このように従来の静電式エアクリーナではスパ
ーク及びオゾンの発生を防止するために印加電圧
を所定値以下としなければならないという制限の
ため、その効率に限界があつたのである。 上記の効率上の問題以外に、イオン化領域並び
にコレクター領域を構成する電極板を所定期間使
用後洗浄しなければならないと言つた問題があつ
た。これは、これら電極板がアルミニウム等の金
属板から形成されており、使い棄てとするにはあ
まりにも不経済であるからに外ならない。しか
し、この電極板には煙草の煙に含まれるニコチン
やタール等が付着するので、これを通常の洗浄で
除去することは極めて困難であつた。 本願発明は上記のような問題点に着目し、従来
の効率上の限界を打破し、しかも比較的安価にし
て使い棄てできる電極板を使用し得る静電式エア
クリーナを提供するにある。 本願発明者は前記のタイプの従来の静電式エア
クリーナのコレクタープレートの材質について
種々の実験研究を行つた結果、従来の導電性コレ
クタープレートの概念を打破し、種々の非導通性
物質、非金属性物質から形成されたプレートがア
ルミニウム板と同等或いはそれ以上に高い表面電
位を有することを知得し、この知得に基づいて本
発明を完成したのである。 以下本発明の具体的実施例について、添附図面
を参照して説明する。 先づ、本願発明者は第１図に示す方法により＋
7000ボルトに昇圧された端子クリツプ１に30mm×
50mmの試料片２を挾持して、電圧計の＋極プロー
ブ（検出針）Ｐを試料片２の表面から15mmの位置
に近づけて、その試料片２の表面電位を測定した
ところ、次の表Ｉに示すような測定結果を得た。

【表】 導電性を有する。
この表Ｉに示された各種の非導電性及び非金属
シート材において、その表面電位の値が相違する
理由としてはいくつか考えられる。一つの理由と
しては、或るシート材、例えばアスベストのよう
な組成物はそれ自体が自由イオンを放出しやすい
物性を有していることによる。即ち、アスベスト
はマグネシウムとカルシウムとシリカの化合物
で、このマグネシウム及びカルシウムは極めて陽
性（＋イオンを容易に放出する）であることによ
る。また、他の理由としては、硬質化のために高
度に圧縮された物質の場合には、その分子結合の
張力によつて表面電位が増大すると考えられる。
更にはまた、その物質に用いられた接着剤によつ
て分子間の張力に変化が生じ表面電位が増大する
と考えられる。硬質化処理、例えば光沢面を持た
せるための高圧ローリング処理された紙及び比較
的硬質な半透明のトレーシングペーパーは優れた
表面電位を示した。また、例えば靴箱とか包装箱
等に用いられる一般的安価なボール紙と光沢紙と
かトレーシングペーパーでサンドイツチ状に挾ん
だものは、ボール紙或いは光沢紙、トレーシング
ペーパー単体よりもはるかに強い表面電位を示し
たものである。 本発明において使用する電極板はその表面電位
が大きい程良いが、表Ｉにおいて表面電位30ボル
ト以上の値を呈したものはその非導電性のため印
加電圧を昇圧することができるので、本発明の電
極板として使用可能となる。一方、表面電位25ボ
ルト以下のものは電極板というよりはむしろ、絶
縁支持体として使用に適している。 表Ｉの結果から、静電式エアクリーナを製造す
るに当つて金属プレートを使用することが不可欠
ではないということが判明した。このことはスパ
ーク発生の心配無しに、より高電圧を印加するこ
とができるということで、また非導電性シート材
の表面電位はその表面に均一に分布され導電性シ
ート材の場合のように端部とか縁部に集中しない
ので、オゾンの発生が大幅に減少されることにな
る。 次に、従来のタイプの静電式エアフイルターと
上記表Ｉで示した物質を用いて作成した静電式エ
アフイルターとの性能比較テストを行つた。この
テストでは第２図から第４図に示すような静電式
エアフイルターのセルを作つた。第２図に示すセ
ルは従来の静電式エアクリーナのセルでタングス
テン細線３の相対向する側にアルミニウム板から
なる電極板４−４が配設されてイオン化領域５を
形成し、このイオン化領域５に隣接してこれとは
別に一連のアルミニウム板を正極群６と負極群７
とに交互に配置してコレクター領域８を形成して
なる。第３図に示すセルは第２図のセルからタン
グステン細線３を除去して構成され、また第４図
に示すセルは第２図のセルのタングステン細線の
代りに各種のプレート部材９を配設して構成して
なる。このようにして形成した上記セルを半径15
cm高さ15cmの透明な半球ドームの内部に設置して
紙巻きたばこ２cmを燃焼させてドーム内を煙で充
満させた後、ドーム内の小型フアンによつてセル
内に煙を送るようにしてからセルに7000ボルトの
電圧を印加してドーム内の煙が完全に消える迄の
所要時間をストツプウオツチで計測した。この計
測を各セルにつき２回繰返し、性能比較テストの
結果を表に示す。尚、極板群６，７の各極板の
サイズは8.5cm×10cmで枚数は合計17枚各極板間
の間隔は５mmとした。

【表】 上記表のテスト結果から、通常の褐色ボール
紙を光沢紙でサンドウイツチ状に挾んでなるプレ
ート構造は、従来のタングステン等の金属線より
もはるかに自由イオンを放出する性能を有してい
ることがわかる。また、カーボン着色料の故に比
較的導電性を有するカーボン着色料を含有した黒
色ボール紙によるセルは性能が低く、タングステ
ン細線を除去したセルよりも劣下している。この
原因の一つは、カーボン着色料を含有した黒色ボ
ール紙のカーボンが＋イオンのガスを吸着する性
能があることで、これ故黒色ボール紙はコレクタ
ー領域の負極プレートとして理想的なものである
と考えられる。 上記表Ｉ及び表の実験結果から明らかなよう
に、静電式エアクリーナのイオン化領域及びコレ
クター領域において金属部材を使用することは必
要でないばかりでなく、非金属部材を用いること
によつて性能の向上が得られることが明らかとな
つた。 更に、前記実験の結果、非金属部材を用いるこ
とによつて電圧を印加した非金属部材を金属性導
体に近づけてもほとんどスパークは発生せず、事
実これを直接接触させてもほとんど印加電圧の短
絡は生ぜず、ただ金属導体をこの非金属部材にほ
ぼ接触する程度に近づけた時に僅かな小さいスパ
ークが認められた。このことから、非金属部材を
用いた静電式エアクリーナでは従来のものと比較
して印加電圧を増大させることができ、除塵、除
煙等の効果を上昇させることが可能となる。ま
た、このように電圧を増すと、従来の金属製部材
ではその縁部や端部に電荷が集中してこの部分か
らコロナ放電が生じてオゾンを発生させるが、非
金属部材では印加電圧による表面電荷はその全表
面に分散されて電荷の集中が起こらずコロナ放電
は大幅に減少されオゾンの発生も極めて少ないの
である。 また、表Ｉに示した実験の結果、或る非金属物
質、例えばアクリル樹脂とかエポキシ樹脂は高圧
を印加しても表面電位を呈さないことが判明し
た。これらの物質は静電式エアクリーナの電極板
としては使用できないが、これらの絶縁材として
優れており電極板のサポートとはスペーサーとし
て有用である。 以上の知得に基づき、各種の非金属部材を用い
て本発明の静電式エアクリーナを作ることが可能
となる。 先づ、本発明の静電式エアクリーナのセルを構
成する電極板を全て非金属板から形成する例とし
ては、次のような実施例が考えられる。 (A) 一般的な褐色のボール紙でセルの全電極板を
構成する。 (B) 褐色のボール紙を光沢紙で被覆したプレート
でセルの全電極板を構成する。 (C) 黒色カーボン着色料を含有したボール紙と褐
色のボール紙を光沢紙で被覆したプレートとを
交互に配置して電極板を構成する。 第５図には上記の(A)〜(C)の各種電極板の組合せ
によつて形成した本発明に係る静電式エアクリー
ナのセルの一例が示され、本発明のセルでは従来
のようにイオン化領域とコレクター領域とを別々
に形成する必要がなく、正の電圧を印加する極板
群１０と負の電圧を印加する極板群１１とが交互
にスペーサ兼支持絶縁棒１２によつて単に並列さ
れているにすぎない。 また、セルの電極板を全て非金属板から形成す
る前記(C)の実施例の場合には、負極板を黒色カー
ボン着色料を含有したボール紙から構成し、正極
板を褐色のボール紙を光沢紙で被覆したプレート
から構成することである。前にも説明したよう
に、カーボンによつて黒く着色された黒色ボール
紙は正（＋）に帯電された粒子を強く吸着する性
能を有するので、正極板としては適切ではなく負
極板として最適である。これに対し、褐色のボー
ル紙を光沢紙で被覆したプレートは正（＋）の電
圧が印加された時に強い表面電位を呈するので、
正極用プレートとして最適である。また、この褐
色のボール紙を光沢紙で被覆したプレートは負極
用プレートとしても充分に機能するが、前記黒色
ボール紙を負極用プレートとして使用した場合に
比較して若干その機能の低下が認められる。 上記正の極板群１０と負の極板群１１を分離保
持する一例としては、第５図に示すように、絶縁
棒１２をアクリル或いはエポキシ樹脂から形成
し、一方各電極板１０，１１の四隅に相互に合致
する透孔を形成し、この透孔に４本の絶縁棒１２
を貫通して固定することである。 上記アクリル等の棒１２を用いる時は比較的嵩
張る構造であるが、第６図及び第７図に示すよう
に、アクリルまたはエポキシ等の樹脂から薄いプ
ラスチツクフイルム１３を用い、これを正負電極
板間の連結帯として使用することにより折畳み自
在なセルを構成することができる。即ち、第６図
に示すように、セルを折畳んだ状態では連結帯１
３は電極板１０，１１の端縁から外方に突出して
折曲され、また第７図に示すように、両端の電極
板を反対方向に引張つてセルを広げた状態では連
結帯１３が延びて各電極板１０，１１を所定の間
隔に保持する。次いで、このように広げられたセ
ルは予め設けられている取付枠に固定され、各電
極板を所定の間隔に固定的に保持するのである。 以上のように本発明の静電式エアクリーナでは
電極板間にスパークを発生させることなくまたオ
ゾンの発生を極少に抑えて高電圧を印加させるこ
とができ、除塵、除煙効果を増大させることが可
能となる。 また、電極板としてボール紙等の多孔性シート
材を用いた時には、このシート材はその多孔性の
故に或る程度の吸着性を有しており、煙草の臭い
等の臭気がかなりこれに吸着される。特にカーボ
ンを含有したボール紙の場合にはカーボンの脱臭
機能が付加され、その脱臭効果は顕著なものとな
る。 また、本発明では電極板としてボール紙等の極
めて安価な非金属板の使用が可能となつたため、
この静電式エアクリーナのセルを使い棄てとする
ことができる。 更に、表Ｉに示したような強い表面電位を有す
る材質のプレートを使用することにより、初期の
イオン化のためのタングステン細線の使用が不要
となり、セルの構成が極めて安価なものとなる。 以上本発明は好適な実施例について説明した
が、電極板の材質については上記以外に他の種々
のものが考えられ、特にボール紙以外に多くの繊
維紙及びこれを積層したものが考えられる。

【図面の簡単な説明】

第１図は電極板の表面電位の測定方法を示す
図、第２図は従来の静電式エアクリーナのセルの
構成を示す概略図、第３図は第２図のセルからタ
ングステン細線を除去したセルの構成を示す概略
図、第４図は第２図のセルのタングステン細線の
代りに非金属プレートを用いたセルの構成を示す
概略図、第５図は本発明の一例に係るセルの構造
を示す斜視図、第６図及び第７図は本発明の他の
例に係るセルの構造を示す斜視図である。 ３……タングステン細線、４，４……電極板、
５……イオン化領域、６……正極群、７……負極
群、８……コレクター領域、９……プレート部
材、１０……正の極板群、１１……負の極板群、
１２……スペーサー兼支持絶縁棒、１３……絶縁
連結帯。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 正極板と負極板とを交互に所定間隔を置いて
   配設し、該両極板間に高電圧を印加するようにし
   てなる静電式エアクリーナにおいて、各正極板の
   全体を非導電性の非金属材から構成するとともに
   該各正極板は＋7000ボルトの電圧を印加した時に
   表面から15mm離れた位置において30ボルト以上の
   表面電位を有する板体から構成し、各負極板をカ
   ーボンを含有する紙材から構成してなることを特
   徴とする静電式エアクリーナ。 ２ 前記正極板が繊維紙に光沢紙またはトレーシ
   ングペーパーを被覆して形成されてなることを特
   徴とする特許請求の範囲第１項記載の静電式エア
   クリーナ。 ３ 前記正極板がアスベストを含有するベークラ
   イト板から形成されてなることを特徴とする特許
   請求の範囲第１項記載の静電式エアクリーナ。 ４ 前記正極板がセメントシートから形成されて
   なることを特徴とする特許請求の範囲第１項記載
   の静電式エアクリーナ。