JPH0112955B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明はスライデイングベーン式のロータリ圧
縮機に関し、特にベーンのチヤタリング発生を防
止したスライデイングベーン式のロータリ圧縮機
に関するものである。

スライデイングベーン式ロータリ圧縮機は、円
筒形の内部空間を有するシリンダと、このシリン
ダの内部に偏心した配置された円筒形ロータと、
該ロータに設けた複数のベーン溝の中を半径方向
に摺動する複数枚のベーンとにより構成される。

該ベーンの後端部とベーン溝の底部との間の空
間には、吐出ガスの圧力を受けて給油通路を介し
て導かれる潤滑油が供給される。該ベーンはこの
給油圧力と回転にともなう遠心力の作用により、
ロータの半径方向に押し出され、その先端部がシ
リンダの内壁面に接触しつゝ回転する。

かくしてシリンダ内壁面、ロータ外周面および
ベーンによつて区割された空間の容積は回転とと
もに変化し、この変化によつてガスの吸入、圧
縮、吐出の各工程が遂行される。

ところがベーンの先端が、シリンダとロータと
の接触部分（以下アキシヤル・シール部と呼ぶ）
に近づいて来ると、ベーンの先端にかゝる圧縮ガ
スの圧力が高くなり、ベーンの後端にかゝる結油
圧力、ベーンに作用する遠心力、およびベーン溝
との間に働らく摩擦力などに打ち勝つて、ベーン
を中心方向に押し込み、ベーンの先端がシリンダ
の内壁面から浮き上ることがある。

ベーンの先端が前記のアキシヤル・シール部を
通過すると、ベーン先端にかゝる圧縮ガスの圧力
は急激に低くなるので、ベーンは外方に向つて飛
び出しシリンダ内壁面に強く衝突して激しい騒音
を発生する。この現象をベーンのチヤタリングと
称している。

このようなベーンのチヤタリングが発生すると
圧縮機の性能を低下させるのみならず、ベーン先
端およびシリンダ内面を損傷し圧縮機の寿命を低
下させる。

従来このベーンのチヤタリングの発生を防止す
るために実施された方法の一つに次のような方法
がある。

すなわちベーンの先端がアキシヤル・シール部
に近づきベーン先端にかゝる圧縮ガスの圧力が高
くなりベーン先端がシリンダ内壁から浮き上がり
始める時期に、ベーンの後端部とベーン溝底部と
の間の空間に通じる給油通路を遮断する。この時
期にはベーンは中心方向に向かう運動をしている
から、ベーンの後端部とベーン溝底部との間の空
間の容積は減少しつゝあり、この空間を満たして
いた潤滑油は押し出されつゝある。従つて給油通
路が遮断されると、該空間を満たしていた潤滑油
は閉じ込められた状態になり、容積の減少にとも
なつて該潤滑油は極く狭少なロータとシリンダ側
壁との間の間隙を通つて押し出されることにな
る。この時該潤滑油の給油圧力よりも高い圧力と
なるので前記のベーンのチヤタリングは確実に防
止することができる。

しかしながらこの方法には下記の２つの欠点が
ある。

第１の欠点は潤滑油の供給量を増加せねばなら
ない点である。油の閉じ込みを行なうことにより
閉じ込まれた油はロータとシリンダ側壁との間の
間隙を通つて失なわれていくのでその分の潤滑油
を絶えず補給する必要がある。この油量は通常圧
縮機の吐出量の数％にも達するもので圧縮機の体
積効率を低下させる。

第２の欠点は摩擦損失が増大する点である。

ベーン後端部とベーン溝底部との間の空間の潤
滑油を閉じ込めることにより、この油の圧力が高
圧になりベーンのチヤタリングを防止する訳であ
るが、この油の圧力はベーンの運動速度、すなわ
ち回転速度が上昇するにともなつて上昇する傾向
を持つ。圧縮機の使用回転数が低速から高速まで
広い範囲にわたるような場合には、低速域でベー
ンのチヤターが生じないような条件設定を行なう
と、高速域では前記の潤滑油閉じ込みの圧力は極
めて高い圧力に達し、ベーン先端の摩擦損失が飛
躍的に大きくなつて、圧縮機の機械効率を低下さ
せる。

本発明は上記の欠点のないスライデイングベー
ン式ロータリ圧縮機を提供せんとするもので、以
下図面とともにその一実施例の構成および作用効
果について説明する。

第１図は本発明のスライデイングベーン式ロー
タリ圧縮機の一実施例の側断面図、第２図は第１
図のＢ〜Ｂ線に沿つて切断し矢印方向から見た正
面断面図、第３図は同じく第１図のＣ〜Ｃ線に沿
つて切断した矢印方向から見た断面図である。な
お第１図は第２図Ａ〜Ａ〜Ａ線に沿つて切断し矢
印方向から見た側断面図である。

回転軸１に固定した円筒形ロータ２は円筒形の
内部空間を有するシリンダ９の内部に偏心して配
置されている。該ロータ２の円筒外周３より中心
方向に向つて設けた複数のベーン溝４の中には該
ベーン溝４の中をロータの半径方向に摺動可能な
複数枚のベーン６が収容されている。

シリンダ９はシリンダ本体１０とシリンダ前側
板１２とシリンダ後側板１３から構成され、ガス
の吸入口１５はシリンダ後側板１３に、またガス
の吐出口１６はシリンダ本体１０に設けられてい
る。該吐出口１６に連通して油分離器１９と、油
溜室２０が設けられている。

ベーン６の後端部８とベーン溝４の底部５との
間の空間に連通するように、シリンダ後側板１３
には、第３図に示すように、円弧状に断続して高
圧油溝２５と中圧油溝２４が設けられている。該
高圧油溝２５は、ベーン６の先端部７が、アキシ
ヤルシール部１４の手前例えば40゜の位置から、
アキシヤルシール部１４を通過し終るまでの期間
にベーン６の後端部８とベーン溝の底部５との間
の空間に該高圧油溝が連通するような位置に配置
されている。

該高圧油溝２５には、リリーフ弁２６を介して
中圧油溝２４に連通する油流通路２７が設けられ
ている。中圧油溝２４には前記油溜室２０から給
油絞り２２を介して潤滑油を供給する給供通路２
８が開口している。

なお回転軸１を支持する軸受１７はシリンダ後
側板１３およびシリンダ前側板１２に取り付けら
れており、また圧縮ガスが外部へ漏洩するのを防
ぐために軸封装置１８が設けられている。

ベーン６は吐出ガスの圧力を受けて油溜室２０
より給油絞り２２を介して給油通路２８から供給
される中圧油溝２４の給油圧力と、ロータ２の回
転にともなう遠心力の作用を受けて、ロータ２の
半径方向に押し出されて、その先端部７がシリン
ダ本体１０の内壁面１１に接触しつゝ回転する。
かくしてシリンダ本体１０の内壁面１１、ロータ
外周面３およびベーン６によつて区割された空間
の容積は回転とともに変化し、この容積変化によ
つて吸入、圧縮、吐出の各工程が遂行される。す
なわち吸入口１５から吸入されたガスは、ロータ
２の矢印３０の方向への回転にともなつて圧縮さ
れ、吐出口１６から吐出弁２９を押し上げて吐出
され、油分離器１９によつて油を分離された後、
吐出配管口２１から圧縮器外部へ送出される。

さて前述の通り従来のスライデイングベーン式
ロータリ圧縮機においては、ベーン６の先端７が
アキシヤルシール部１４に近づいて来ると、ベー
ン先端７にかゝる圧縮ガスの圧力が高くなり、ベ
ーン後端８にかゝる給油圧力、ベーン６に作用す
る遠心力、およびベーン溝４との間に働らく摩擦
力などに打ち勝つて、ベーン６をロータ２の内部
方向に押し込み、ベーン先端７がシリンダの内壁
面１１から浮き上がることがあつた。

本発明の圧縮機においては、このようなベーン
先端７の浮き上がりが発生する以前に、ベーン６
の後端部８とベーン溝の底部５との間の空間が、
中圧油溝２４から分離して形成された高圧油溝２
５に連通するように構成されている。この時期に
おいてベーン６はベーン溝４の中をロータ２の内
部へ向う方向に移動しているので、ベーン後端部
８とベーン溝の底部５との間の空間を満たしてい
た潤滑油は高圧油溝２５へ押し出されつゝある。

高圧油溝２５の中の潤滑油の圧力が或る設定値
を超えて高くなると、リリーフ弁２６が動作し、
高圧油溝２５の中の潤滑油を、中圧油溝２４に連
通する油流通路２７へ排出する。かくして高圧油
溝２５の中の潤滑油の圧力はリリーフ弁２６の特
性によつて規定される限定された圧力範囲内を上
下し、ベーン６の浮上すなわちベーンのチヤタリ
ングを効果的に防止する。

上記のように本発明によれば、高圧油溝２５か
ら排出された潤滑油は、リリーフ弁２６から油流
通路２７を通過して、給油通路２８を経て再び中
圧油溝２４へ供給されるので、従来用いられてい
た給油通路の部分遮断により潤滑油を閉じ込める
方法に比較して、潤滑油の供給量を大巾に少なく
することができ体積効率の向上を図ることができ
る。

また圧縮機の使用回転数が低速から高速まで、
広い範囲にわたるような場合においても、本発明
によれば高圧油溝２５の中の潤滑油の圧力はリリ
ーフ弁２６の特性によつて定まる限度範囲内に止
まるため、高速域においてもベーン先端の摩擦損
失が飛躍的に増大することはない。

さらに本発明の圧縮機においては、高圧油溝２
５によつてベーンのチヤタリングを防止できるの
で、従来に比して中圧油溝２４の給油圧力を低く
設定することが可能となる。この給油圧力の低下
によりベーン先端７とシリンダ内壁面１１との間
の摩擦損失が減少し、機械効率が向上する。

なお第１図において、リリーフ弁２６を図示す
るのにボールと圧縮コイルバネの構造を示してい
るが、これはリリーフ弁の動作を理解し易くする
ための便宜的な表現であり、実用に際してはこの
構造の他に一般の油圧回路に用いられる各種の弁
構造、例えばパイロツト作動のバランスピストン
形リリーフ弁構造等が有効に適用できることはい
うまでもない。

本実施例においては第３図に示すように、高圧
油溝２５と低圧油溝２４とは完全に分離されてい
るが、この分離された部分を連絡する細い溝を設
けることもできる。

第４図は本発明の他の実施例で、楕円形シリン
ダを有するスライデイングベーン式ロータリ圧縮
機の主要部の正面断面図である。

第４図ａにおいて、楕円形内壁面３２を有する
シリンダ本体３１には、２つの吸入口３４と２つ
の吐出口３５が設けられている。ベーン３３の後
端部に潤滑油の給油圧を加えるための２つの中圧
油溝３６と、リリーフ弁に連通する２つの高圧油
溝３７が、第４図ｂに示すように円弧状に断続、
分離して設けられている。

この実施例における作用効果は、先に述べた真
円の内壁面を有するシリンダにおける実施例の場
合と全く同様である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明のロータリ圧縮機の一実施例の
側断面図、第２図は第１図の本発明のロータリ圧
縮機をＢ〜Ｂ線に沿つて切断し矢印方向から見た
正面断面図、第３図は同じく第１図の本発明のロ
ータリ圧縮機をＣ〜Ｃ線に沿つて切断し矢印方向
から見た正面断面図、第４図ａは本発明の他の実
施例におけるロータリー圧縮機の主要部の一部破
断正面図、第４図ｂは同断面図である。 １……回転軸、２……ロータ、４……ベーン
溝、６……ベーン、１０……シリンダ本体、１２
……シリンダ前側板、１３……シリンダ後側板、
１４……アキシヤルシール部、１５……吸入口、
１６……吐出口、２０……油溜室、２２……給油
絞り、２４……中圧油溝、２５……高圧油溝、２
６……リリーフ弁、３１……シリンダ本体、３２
……楕円形シリンダ内壁面、３３……ベーン、３
４……吸入口、３５……吐出口、３６……中圧油
溝、３７……高圧油溝。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 回転軸に固定した円筒形のロータと、該ロー
   タの円筒外周より中心方向に向つて設けた複数の
   ベーン溝の中を中心方向に摺動する複数枚のベー
   ンと、前記ロータおよびベーンを収容しかつ吸入
   口吐出口を有するシリンダと、該吐出口に連通す
   る油分離器および油溜室と、前記ベーンの後端部
   と前記ベーン溝の底部との間の空間に連通するよ
   うに前記シリンダの側壁に円弧状に実質的に断続
   して分離して設けた高圧油溝および中圧油溝とを
   有し、前記高圧油溝は圧縮行程にあるベーン後端
   の空間と連通する位置に形成され、さらに前記油
   溜室から該中圧油溝に給油する給油通路と、前記
   高圧油溝からリリーフ弁を介して前記中圧油溝に
   連通する油流通路とを備えて構成されることを特
   徴とするロータリ圧縮機。