(成形体)
前記成形体は、中空粒子と、発泡粒子との混合粒子を型内成形することにより形成されている。中空粒子は、(メタ)アクリル酸エステル成分とスチレン系成分とを含む複合樹脂を基材樹脂とする外殻層と、外殻層によって取り囲まれた中空部とを有している。外殻層は、中空粒子の外殻を構成しており、基材樹脂から構成された樹脂膜を有している。外殻層は、単一の樹脂膜から構成されていてもよい。また、外殻層内には樹脂膜によって区画された微小な気泡が存在していてもよい。
発泡粒子は、スチレン系樹脂を基材樹脂とし、粒子全体にわたって多数の気泡が比較的均一に形成された構造を有している。なお、中空粒子及び発泡粒子のより詳細な構成については後述する。
[発泡粒子と中空粒子との比率]
前記成形体の断面における前記発泡粒子の面積の合計S2に対する前記中空粒子の面積の合計S1の比S1/S2の平均値は0.1以上3以下であり、かつ、前記比S1/S2の変動係数が20%以下である。前記成形体における前記比S1/S2の平均値及び変動係数を前記特定の範囲とすることにより、発泡粒子に由来する物性と中空粒子に由来する物性とをバランスよく発揮させることができる。
すなわち、前記成形体に圧縮荷重を加えると、圧縮の初期段階においては発泡粒子に由来する物性が発現し、成形体の変形に要する圧縮荷重を適度に高くすることができる。その結果、ひずみ量が比較的小さい場合におけるエネルギー吸収効率を向上させることができる。
また、前記成形体は、低い圧縮永久ひずみを有するため、圧縮が進展し、ひずみ量がある程度大きくなった状態から圧縮荷重を解除した場合に圧縮前の形状に復元しやすい。さらに、前記成形体は、ひずみ量が比較的大きい場合におけるエネルギー吸収効率にも優れている。
これらの成形体の物性は、中空粒子に由来すると考えられる。すなわち、中空粒子は、発泡粒子に比べて変形しやすい一方で、発泡粒子に比べて高い復元性を有している。そのため、成形体がある程度圧縮された状態においては、中空粒子が発泡粒子よりも大きく変形していると考えられる。そして、この状態から圧縮荷重が解除されると、変形した中空粒子の形状が圧縮前の形状に復元しやすいため、成形体全体の形状も復元しやすくなると考えられる。
また、圧縮が進展し、ひずみ量がさらに大きくなる場合にも、中空粒子が発泡粒子よりも大きく変形することにより、成形体の変形に要する圧縮荷重を低減することができると考えられる。以上のように、前記成形体は、中空粒子に由来する物性により、圧縮永久ひずみを低下させるとともに、ひずみ量が比較的大きい場合におけるエネルギー吸収効率を向上させることができると考えられる。
従って、発泡粒子に由来する物性と中空粒子に由来する物性とをバランスよく発揮させることにより、良好な圧縮物性を発現させるとともに、成形体の圧縮永久ひずみを低減することができる。さらに、広い範囲のひずみ量において成形体のエネルギー吸収効率を向上させることができる。
前記比S1/S2の平均値が過度に低い場合には、成形体に含まれる中空粒子の割合が過度に低くなるため、成形体の圧縮永久ひずみの上昇を招くおそれがある。また、この場合には、ひずみ量が比較的大きい場合における成形体の変形に要する圧縮荷重が大きくなり、圧縮物性の低下やエネルギー吸収効率の低下を招くおそれがある。前記比S1/S2の平均値を0.1以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上とすることにより、これらの問題を容易に回避することができる。
一方、前記比S1/S2の平均値が過度に高い場合には、成形体に含まれる中空粒子の割合が過度に高くなるため、ひずみ量が比較的小さい場合における成形体の変形に要する圧縮荷重が低くなるおそれがある。その結果、圧縮の初期段階における圧縮物性の低下やエネルギー吸収効率の低下を招くおそれがある。また、この場合には、成形体の難燃性の悪化を招くおそれもある。前記比S1/S2の平均値を3以下、好ましくは2以下、より好ましくは1以下、さらに好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.6以下とすることにより、これらの問題を容易に回避することができる。
また、前記比の変動係数が過度に高い場合には、成形体の内部における中空粒子の分布の偏りが大きく、中空粒子の割合が比較的多い部分と比較的少ない部分とが形成されやすくなる。そして、中空粒子の分布に偏りが生じることにより、成形体における局所的な物性の変動が大きくなりやすくなるおそれがある。その結果、例えば、圧縮の初期段階において成形体の変形に要する圧縮荷重が低下し、圧縮物性の低下やエネルギー吸収効率の低下を招くおそれがある。前記比S1/S2の変動係数を20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは12%以下、さらに好ましくは10%以下とすることにより、かかる問題を容易に回避することができる。
前述した発泡粒子の面積の合計S2に対する中空粒子の面積の合計S1の比S1/S2の値、その平均値及び変動係数の算出方法は、具体的には以下の通りである。比S1/S2の値を算出するに当たっては、まず、成形体を無作為に切断して切断面を露出させ、スキャナー等を用いて図1に示すような成形体1の切断面の写真を取得する。次に、画像処理ソフト等を用い、切断面の写真上に縦50mm、横50mmの正方形状の測定領域を設定し、測定領域内に占める中空粒子2の面積の合計S1と、発泡粒子3の面積の合計S2とを算出する。なお、成形体1の切断面においては、例えば図2に示すように、粒子同士の境界11(つまり、型内成形前の個々の粒子における外表面)が明瞭に現れているため、粒子同士の境界11によって囲まれた部分を個々の粒子の面積とすればよい。
比S1/S2の平均値および変動係数を算出するに当たっては、まず、成形体を無作為に切断し、複数の切断面を露出させた試験片を作製する。次に、スキャナー等を用いて試験片の各切断面の写真を取得し、各切断面の写真上に測定領域を無作為に設定する。その後、各測定領域において、前述した方法により発泡粒子の面積の合計S2に対する中空粒子の面積の合計S1の比S1/S2の値を算出する。
このようにして得られた複数の比S1/S2の値を算術平均することにより、比S1/S2の平均値を得ることができる。さらに、前述した複数の比S1/S2の値に基づいて比S1/S2の不偏標準偏差を算出し、比S1/S2の不偏標準偏差を比S1/S2の平均値で除することにより比S1/S2の変動係数を算出することができる。
なお、比S1/S2の不偏標準偏差σは、具体的には以下の式(1)により表される。
ただし、上記式(1)におけるnは切断面上に設定した測定領域の総数であり、Siはi番目の測定領域における比S1/S2の値であり、Saveは比S1/S2の平均値である。
比S1/S2の平均値及び変動係数を算出するに当たり、切断面上に設定する測定領域の総数は50か所以上とする。測定領域の数が多いほど正確性の高い平均値及び標準偏差が得られやすくなる。
[中空粒子1個当たりの面積及び中空粒子1個当たりの面積と発泡粒子1個当たりの面積との比率]
成形体の断面における、前記中空粒子1個当たりの面積の平均値は3mm2以上60mm2以下であり、かつ、前記発泡粒子1個当たりの面積の平均値に対する前記中空粒子1個当たりの面積の平均値の比は0.7以上1.4以下であることが好ましい。このように、中空粒子1個当たりの面積の平均値を前記特定の範囲内とした上で、さらに、発泡粒子1個当たりの面積の平均値を中空粒子1個当たりの面積の平均値と比較的近い値とすることにより、成形体中における中空粒子の分布の偏りをより低減し、中空粒子および発泡粒子を成形体中により均一に分布させることができる。その結果、中空粒子に由来する物性と発泡粒子に由来する物性とをより確実に発現させ、良好な圧縮物性を発現させるとともに、圧縮永久ひずみをより容易に低減することができる。さらに、広い範囲のひずみ量において成形体のエネルギー吸収効率をより容易に向上させることができる。
同様の観点から、前記中空粒子1個当たりの面積の平均値は5mm2以上40mm2以下であることがより好ましく、8mm2以上30mm2以下であることがさらに好ましい。また、前記発泡粒子1個当たりの面積の平均値に対する前記中空粒子1個当たりの面積の平均値の比は0.8以上であることが好ましく、0.9以上であることがより好ましく、1.0以上であることがさらに好ましい。
前述した中空粒子1個当たりの面積の平均値の算出方法は、具体的には以下の通りである。まず、成形体を所望の面で切断して切断面を露出させ、スキャナー等を用いて切断面の写真を取得する。次に、画像処理ソフト等を用い、切断面の写真上に中空粒子を含む測定領域を設定し、測定領域内に占める中空粒子の面積の合計S1と、中空粒子の数とを算出する。そして、測定領域内に占める中空粒子の面積の合計S1を中空粒子の数で除した値を、中空粒子1個当たりの面積の平均値とする。
発泡粒子1個当たりの面積の平均値の算出方法は、測定領域内の中空粒子の面積の合計S1及び中空粒子の数に替えて、発泡粒子の面積の合計S2及び発泡粒子の数を用いる以外は、前述した中空粒子1個当たりの面積の平均値の算出方法と同様である。このようにして得られた中空粒子1個当たりの面積の平均値を発泡粒子1個当たりの面積の平均値で除することにより、発泡粒子1個当たりの面積の平均値に対する中空粒子1個当たりの面積の平均値の比を得ることができる。
中空粒子または発泡粒子1個当たりの面積の平均値の算出に当たり、測定領域内に存在する中空粒子または発泡粒子の数は、例えば100個以上であることが好ましい。測定領域内に存在する中空粒子または発泡粒子の数が少ない場合には、切断面の写真上に複数の測定領域を無作為に設定し、これらの測定領域における中空粒子または発泡粒子の面積及び数を合算することも可能である。
[密度]
前記成形体の密度は、20kg/m3以上100kg/m3以下であることが好ましい。前記特定の範囲の密度を有する成形体は、軽量であると共に、良好な機械的強度を有し、圧縮の初期段階において成形体の変形に要する圧縮荷重をより確実に所望の範囲内とすることができる。その結果、ひずみ量が小さい場合における成形体のエネルギー吸収効率をより確実に向上させることができる。かかる効果をより高める観点からは、成形体の密度は、25kg/m3以上であることがより好ましく、30kg/m3以上であることがさらに好ましい。また、成形体の密度は、80kg/m3以下であることがより好ましく、60kg/m3以下であることがさらに好ましく、50kg/m3以下であることが特に好ましい。この場合には、前述した作用効果を得つつ、成形体をより容易に軽量化することができる。
[圧縮応力]
成形体の、23℃における50%変形圧縮応力σ50(単位:kPa)に対する23℃における10%変形圧縮応力σ10(単位:kPa)の比σ10/σ50は0.70以上1.0以下である。成形体のエネルギー吸収特性は、種々のひずみ量における圧縮応力の大きさに基づいて評価することができる。すなわち、あるひずみ量εaにおける成形体のエネルギー吸収効率は、横軸を成形体に加えたひずみ量とし、縦軸をひずみ量に対応する圧縮応力とした応力-ひずみ曲線において、圧縮開始からひずみ量εaまでの応力-ひずみ曲線の形状が矩形に近い形状であるほど高くなる。換言すれば、ひずみ量εaにおける圧縮応力σaと、ひずみ量εaよりも小さいひずみ量εbにおける圧縮応力σbとの差が小さいほど、応力-ひずみ曲線の形状が矩形に近くなり、ひずみ量εaにおける成形体のエネルギー吸収効率が高いといえる。
前記成形体は、中空粒子と発泡粒子との混合粒子を型内成形し、成形体内における中空粒子の分布および発泡粒子の分布の偏りを低減することにより、23℃における50%変形圧縮応力σ50(単位:kPa)に対する23℃における10%変形圧縮応力σ10(単位:kPa)の比σ10/σ50を前記特定の範囲とすることができる。そして、このような特性を有する成形体は、良好な圧縮物性を有するとともに、広い範囲のひずみ量において優れたエネルギー吸収特性を有している。
同様の観点から、成形体の、23℃における75%変形圧縮応力σ75(単位:kPa)に対する23℃における10%変形圧縮応力σ10(単位:kPa)の比σ10/σ75が0.30以上1.0以下であることが好ましく、0.38以上0.70以下であることがより好ましく、0.40以上0.60以下であることがさらに好ましい。
また、成形体の密度に対する10%変形圧縮応力σ10の比は8.0kPa/(kg/m3)以上であることが好ましく、8.5kPa/(kg/m3)以上であることがより好ましい。この場合には、成形体の圧縮物性をより向上させるとともに、広い範囲のひずみ量において成形体のエネルギー吸収特性をより向上させることができる。なお、成形体の密度に対する10%変形圧縮応力σ10の比の上限は、特に限定されることはないが、例えば15kPa/(kg/m3)であってもよく、12kPa/(kg/m3)であってもよい。
[圧縮永久ひずみ]
成形体の圧縮永久ひずみは15%以下であることが好ましく、12%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。かかる特性を有する成形体は、圧縮荷重が加わった場合においても永久ひずみが蓄積されにくく、圧縮前の形状に復元しやすい。それ故、圧縮永久ひずみが前記特定の範囲内である成形体は、圧縮荷重が加わった場合においても成形体の形状が歪みにくく、優れたエネルギー吸収特性をより長期間に亘って維持することができる。なお、成形体の圧縮永久ひずみは、JIS K6767:1999に規定された方法に基づいて測定される。
[中空粒子の外殻層の厚み]
前記成形体における、中空粒子の外殻層の厚みの平均値は50μm以上400μm以下であることが好ましい。この場合には、中空粒子に由来する物性をより確実に発現させ、成形体の圧縮永久ひずみをより容易に低減することができる。また、この場合には、ひずみ量の増大に伴う成形体の変形に要する圧縮荷重の上昇を抑制し、ひずみ量が大きい場合のエネルギー吸収効率をより高めることができる。
成形体における中空粒子の外殻層の厚みの平均値の算出方法は、具体的には以下の通りである。まず、成形体を所望の面で切断して切断面を露出させ、スキャナー等を用いて断面の写真を取得する。次に、画像処理ソフト等を用い、切断面の写真上に中空粒子を含む測定領域を設定し、測定領域内に存在する個々の中空粒子について、中空粒子の面積と中空部の面積とを算出する。
次に、中空粒子の面積及び中空部の面積に基づいて、中空粒子の円相当径(つまり、中空粒子の面積と等しい円の直径)及び中空部の円相当径(つまり、中空部の面積と等しい円の直径)を算出する。そして、中空粒子の円相当径から中空部の円相当径を差し引いた値の1/2を、個々の中空粒子の外殻層の厚みとする。
以上の操作を複数の中空粒子について行った後、得られた複数の中空粒子の外殻層の厚みを算術平均することにより、中空粒子の外殻層の厚みの平均値を得ることができる。中空粒子の外殻層の厚みの平均値の算出に用いる中空粒子の数は、例えば100個以上であることが好ましい。測定領域内に存在する中空粒子の数が少ない場合には、切断面の写真上に複数の測定領域を無作為に設定し、これらの測定領域内における中空粒子を用いることも可能である。また、切断面が複数存在する場合には、複数の切断面のそれぞれに測定領域を設定することも可能である。
[中空粒子の外殻層における樹脂膜の合計厚み]
成形体中の中空粒子の外殻層における樹脂膜の合計厚みの平均値は、40μm以上200μm以下であることが好ましい。この場合には、中空粒子に由来する物性をより確実に発現させ、成形体の圧縮永久ひずみをより容易に低減することができる。また、この場合には、ひずみ量の増大に伴う成形体の変形に要する圧縮荷重の上昇を抑制し、ひずみ量が大きい場合のエネルギー吸収効率をより高めることができる。
中空粒子の外殻層における樹脂膜の合計厚みの平均値の算出方法は、具体的には以下の通りである。まず、成形体を適当な位置で切断し、切断面を露出させる。走査型電子顕微鏡を用い、切断面に現れた中空粒子から、無作為に30個以上の観察対象となる中空粒子を選択する。これらの中空粒子を適当な倍率(例えば、倍率200倍)で観察することにより、各中空粒子の外殻層の拡大写真を取得する。
次いで、各中空粒子の外殻層上に、外殻層の厚み方向に延在する線分を、外殻層の外面(つまり、他の粒子と融着している面)から外殻層の内面(つまり、中空部に面した面)までに亘って引く。この操作を各拡大写真内から無作為に選択した10か所以上の位置において行い、外殻層の厚み方向に延在する線分の長さを測定するとともに、各線分のうち、気泡と重なる部分の長さを算出する。次いで、個々の線分の長さから気泡と重なる部分の長さを差し引くことで、各線分上における外殻層の樹脂膜の厚みの合計値を算出する。各線分における樹脂膜の厚みの合計値を算術平均することにより、各中空粒子における外殻層の樹脂膜の合計厚みを算出する。
そして、30個以上の中空粒子について前述した樹脂膜の合計厚みを算出した後、これらの樹脂膜の合計厚みを算術平均することにより、中空粒子の外殻層における樹脂膜の合計厚みの平均値を得ることができる。
[難燃性]
前記成形体における前記中空粒子及び前記発泡粒子は臭素系難燃剤を含有しており、FMVSS(Federal Motor Vehicle Safety Standards) No.302に基づく燃焼性試験を行った場合に、(1)前記成形体が自己消火性を示す、または、(2)前記成形体の燃焼速度が102mm/分以下であることが好ましい。なお、前記条件(1)の「前記成形体が自己消火性を示す」とは、条件(1a):前記成形体が発火しない、条件(1b):前記成形体の燃焼が、燃焼時間の計測を開始する位置に到達する前に終了する、及び、条件(1c):前記成形体の燃焼が、燃焼時間の計測を開始する位置に到達してから60秒以内に終了し、かつ、燃焼時間の計測を開始する位置から燃焼が終了した位置までの燃焼距離が51mm以内である、という条件(1a)~条件(1c)のうちいずれか一つの条件を満たす場合をいう。前記条件(1)または条件(2)を満たす成形体は、FMVSS No.302規格に適合する優れた難燃性を有しているため、車両用衝撃吸収材として好適に用いることができる。
前記成形体に優れた難燃性をより確実に付与する観点からは、成形体中の臭素系難燃剤の配合量は0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。同様の観点から、成形体における、中空粒子中の臭素系難燃剤の配合量は0.05質量%以上15質量%以下であり、かつ、発泡粒子中の臭素系難燃剤の配合量は0.05質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
また、成形体中に臭素系難燃剤が含まれている場合、難燃性をより確実に高める観点から、成形体中の有機物理発泡剤の含有量は4質量%以下(0質量%を含む)であることが好ましく、3質量%以下(0質量%を含む)であることがより好ましい。なお、成形体中の有機物理発泡剤としては、例えば、炭素数3以上6以下の炭化水素などが挙げられる。成形体中の有機物理発泡剤は、例えば、発泡粒子や中空粒子を製造する過程において用いられる有機物理発泡剤に由来している。このような有機物理発泡剤は、通常、混合粒子の型内成形後においても粒子中に残存し、成形体中に残存する。
[用途]
前記成形体は、前述したように、良好な圧縮物性及び低い圧縮永久ひずみを有しているとともに、広い範囲のひずみ量において優れたエネルギー吸収特性を有している。それ故、前記成形体は、衝撃吸収材として好適である。前記成形体から構成された衝撃吸収材は、例えば、自動車資材、建築資材、物流資材、緩衝材、寝具等に用いられてもよい。特に、自動車等の車両に用いられる衝撃吸収材は、衝突時等に生じる大きな衝撃に対して、適切に衝撃を吸収し、乗員に生じる衝撃加速度を低減する必要がある。本発明の成形体は、広い範囲のひずみ量においてエネルギー吸収効率に優れるため、車両用のフロアスペーサ、ティビアパッド、ドアパッド、バンパー等の車両用衝撃吸収材として優れた適性を有し、特にフロアスペーサ、ティビアパッドとして好適である。
(成形体の製造方法)
前記成形体は、例えば次のようにして製造される。まず、所望する成形体の形状に対応したキャビティを有する成形型内に、前記中空粒子と前記発泡粒子との混合粒子を充填する。成形型内に混合粒子を充填するに当たっては、中空粒子と発泡粒子とを予め混合した後、混合粒子を成形型内に充填してもよい。また、成形型内に、中空粒子と発泡粒子とを同時に供給することにより、成形型内において中空粒子と発泡粒子とを混合しつつ充填してもよい。
成形型内に充填する中空粒子の嵩密度は20kg/m3以上100kg/m3以下であり、発泡粒子の嵩密度に対する中空粒子の嵩密度の比は0.7以上1.4以下であることが好ましい。このように、中空粒子の嵩密度を前記特定の範囲内とした上で、さらに、発泡粒子の嵩密度を中空粒子の嵩密度と比較的近い値とすることにより、中空粒子と発泡粒子とをより均一に混合し、中空粒子および発泡粒子を成形型内により均一に分布させることができる。その結果、型内成形後の成形体が中空粒子に由来する物性と発泡粒子に由来する物性との両方をより発現しやすくなり、良好な圧縮物性を示すとともに、圧縮永久ひずみをより容易に低減することができる。さらに、広い範囲のひずみ量において成形体のエネルギー吸収効率をより容易に向上させることができる。
同様の観点から、成形型内に充填する中空粒子の平均粒子径は2mm以上9mm以下であり、発泡粒子の平均粒子径に対する中空粒子の平均粒子径の比は0.7以上1.4以下であることが好ましい。なお、中空粒子の平均粒子径は、中空粒子の体積基準における粒度分布に基づいて算出される累積63%径(つまり、d63)の値である。中空粒子の体積基準における粒度分布は、粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製「ミリトラック JPA」)などを用いて取得することができる。同様に、発泡粒子の平均粒子径は、発泡粒子の体積基準における粒度分布に基づいて算出される累積63%径(つまり、d63)の値である。発泡粒子の体積基準における粒度分布は、粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製「ミリトラック JPA」)などを用いて取得することができる。
混合粒子を成形型内に充填した後、スチームなどの加熱媒体により成形型内の混合粒子を加熱する。成形型内の中空粒子および発泡粒子は、キャビティ内において加熱されることにより、膨張すると共に、相互に融着する。以上により、キャビティの形状に応じた形状を有し、中空粒子と発泡粒子との混合粒子から構成される成形体が得られる。このようにして得られた成形体は、そのまま衝撃吸収材として使用されてもよい。また、必要に応じて成形体に切削加工等を施し、所望の形状に成形された成形体を衝撃吸収材として使用することもできる。
(中空粒子)
前記成形体の製造に用いられる中空粒子は、外殻層と、外殻層によって取り囲まれた中空部とを有している。本発明の中空粒子は、後述する物理発泡剤を含有する樹脂粒子を発泡させてなる中空粒子である。本発明の中空粒子は、粒子全体にわたって多数の気泡が比較的均一に形成された気泡構造を有する発泡粒子とは異なる構造を有する。型内成形される前の中空粒子は球状であることが好ましい。
中空粒子の中空部は、前記外殻層よりも中空粒子の中心部側に位置している。中空部、つまり、外殻層によって囲まれた領域は、実質的に中空であればよい。ここで、「実質的に中空」とは、中空粒子をその中心部を通る断面で切断した後、透過型電子顕微鏡等を用いて切断面を20倍から1000倍の倍率で観察した場合に、外殻層の構造と中空部の構造とが明確に異なる状態をいう。
例えば、中空部は、外殻層によって中空粒子の外部から隔てられた単一の空間であってもよい。また、中空部には、基材樹脂から構成され、中空部を複数の空間に区画する空間壁が存在していてもよい。この場合、中空部には、中空部の空間壁や、中空部の空間壁と外殻層の内表面とによって区画された数個から数十個程度の空間が形成されていてもよい。所望する物性を発現しやすくする観点から、中空粒子を二等分した際の断面において、中空部が50個以下の空間に区画されていることが好ましく、30個以下の空間に区画されていることがより好ましく、10個以下の空間に区画されていることがさらに好ましく、5個以下の空間に区画されていることが特に好ましい。
前記中空粒子は、外殻層によって囲まれた領域が実質的に中空であれば、型内成形により、所望とする物性を有する成形体を得ることができ、圧縮永久ひずみが小さく、かつ、広いひずみ量の範囲においてエネルギー吸収効率に優れた成形体を製造することができる。なお、前記中空粒子の中空部は、外殻層によって中空粒子の外部から隔てられた単一の空間であることが好ましい。また、型内成形後の成形体における中空粒子の構造や中空部については、成形体の製造に用いられる中空粒子の構造や中空部の説明が適宜参照される。
[平均粒子径]
型内成形される前の前記中空粒子の平均粒子径は2mm以上9mm以下であることが好ましい。前記特定の範囲の平均粒子径を備えた中空粒子を型内成形することにより、所望の特性を備えた成形体をより容易に得ることができる。中空粒子の平均粒子径は、前述した方法により測定することができる。
[嵩密度]
型内成形前の中空粒子の嵩密度は、20kg/m3以上100kg/m3以下であることが好ましい。前述する中空構造を有すると共に、前記特定の範囲の嵩密度を有する中空粒子は、軽量であると共に剛性及び復元性の両方に優れている。それ故、かかる嵩密度を有する中空粒子を発泡粒子とともに型内成形することにより、軽量であり、圧縮永久ひずみが小さく、広いひずみ量の範囲においてエネルギー吸収効率に優れた成形体を容易に得ることができる。中空粒子の剛性及び復元性を高める観点からは、型内成形前の中空粒子の嵩密度は22kg/m3以上であることがより好ましく、25kg/m3以上であることがさらに好ましい。
また、中空粒子の軽量性をより向上させる観点からは、型内成形前の中空粒子の嵩密度は80kg/m3以下であることがより好ましく、60kg/m3以下であることがさらに好ましく、50kg/m3以下であることが特に好ましい。
前述した中空粒子の嵩密度は、以下の方法により算出される値である。まず、測定対象として、任意の量の中空粒子を準備する。この測定対象を相対湿度50%、温度23℃、1atmの条件にて10日放置することにより、測定対象の状態を調整する。この測定対象をメスシリンダー内に自然に堆積させた後、メスシリンダー底面に軽く衝撃を与えてメスシリンダー内の測定対象の充填高さを安定させる。そして、メスシリンダーの目盛が指す、測定対象の嵩体積(単位:L)を読み取る。メスシリンダーに入れた測定対象の質量(単位:g)を嵩体積で除した後、単位を換算する。以上により、中空粒子の嵩密度(単位:kg/m3)を得ることができる。
[外殻層]
中空粒子の外殻層は、基材樹脂により構成されている樹脂膜と、樹脂膜によって区画された複数の気泡とを有している。外殻層は、例えば、中空部に面した中実の下層部と、中空粒子の最表面(つまり、外殻層の外表面)に露出した中実の上層部と、下層部と上層部との間に位置し、複数の気泡を備えた発泡層部とを含む多層構造を有していてもよい。なお、中実とは、樹脂中に実質的に気泡を有しない状態を意味する。
型内成形前の中空粒子における、樹脂膜の合計厚みの平均値は、30μm以上であることが好ましく、35μm以上であることがより好ましく、40μm以上であることがさらに好ましい。このような中空粒子を型内成形することにより、圧縮の初期段階における変形に必要な圧縮荷重が適度に高く、ひずみ量が大きい場合のエネルギー吸収効率が高い成形体をより容易に得ることができる。また、中空粒子における、樹脂膜の合計厚みの平均値は、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、120μm以下であることがさらに好ましい。この場合には、密度が低く、エネルギー吸収効率に優れた成形体をより容易に得ることができる。
型内成形前の中空粒子における、外殻層の平均厚みは50μmを超え350μm以下であることが好ましい。また、型内成形前の中空粒子における、外殻層の平均厚みに対する樹脂膜の合計厚みの平均値の比は0.3以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい。外殻層の構造を、前述した平均厚み及び外殻層の平均厚みに対する樹脂膜の合計厚みの平均値の比によって特定される構造とすることにより、荷重に対する外殻層の耐久性を向上させることができる。これにより、繰り返し荷重に対する前記中空粒子の復元性を高めることができる。
前述した外殻層の平均厚みは、以下の方法により算出される値である。まず、型内成形前の中空粒子を概ね2等分となるように分割し、外殻層の切断面を露出させる。走査型電子顕微鏡を用い、外殻層の切断面を概ね4等分したうちの一つの領域内において、無作為に3箇所以上の観察位置を設定する。これらの観察位置を適当な倍率(例えば、倍率1000倍)で観察することにより、各観察位置における外殻層の切断面の拡大写真を取得する。
得られた拡大写真における外殻層上に、外殻層の厚み方向(つまり、中空粒子の半径方向)に延在する線分を、外殻層の外表面から内表面までに亘って引く。以上の操作を各拡大写真内から無作為に選択した10か所以上の位置において行い、合計30か所以上の位置における線分の長さを測定する。このようにして得られた線分の長さの算術平均値を、個々の中空粒子の外殻層の厚みとする。そして、無作為に選択された5個以上の中空粒子について前述した外殻層の厚みを算出し、これらの外殻層の厚みの算術平均値を外殻層の平均厚みとする。
なお、外殻層の厚みの測定においては、外殻層の内表面付近等に、外殻層の厚み方向における長さが100μm以上となる巨大な気泡が存在している場合がある。このような巨大な気泡は中空部として取り扱うこととする。具体的には、外殻層の内表面付近等に前述した巨大な気泡が存在している場合、中空粒子の外表面から、前述した気泡に到達するまでの前記線分の長さを、外殻層の厚みとすればよい。
型内成形前の中空粒子における外殻層の樹脂膜の合計厚みの平均値を算出するに当たっては、外殻層の平均厚みの算出方法と同様に、外殻層の切断面を概ね4等分したうちの1つの領域について、無作為に3か所以上の観察位置を設定し、各観察位置における外殻層の切断面の拡大写真を取得する。次いで、各拡大写真における外殻層上に、外殻層の厚み方向に延在する線分を、外殻層の外表面から内表面までに亘って引く。
以上の操作を各拡大写真内から無作為に選択した10か所以上の位置において行い、外殻層の厚み方向に延在する線分の長さを測定するとともに、各線分のうち、気泡と重なる部分の長さを算出する。次いで、個々の線分の長さから気泡と重なる部分の長さを差し引き、これらの値を算術平均することにより、各中空粒子の樹脂膜の合計厚みを算出する。そして、無作為に選択された5個以上の中空粒子について前述した樹脂膜の合計厚みを算出し、これらの樹脂膜の合計厚みの算術平均値を樹脂膜の合計厚みの平均値とする。
[基材樹脂]
前記中空粒子における樹脂膜の基材樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分と、スチレン系単量体に由来するスチレン系成分(「スチレン系単量体成分」ということもある)とを含む複合樹脂である。複合樹脂は、後述するように、スチレン系樹脂(スチレン系樹脂核粒子)に(メタ)アクリル酸エステル単量体とスチレン系単量体とを含浸重合してなる複合樹脂であることが好ましい。複合樹脂中の、(メタ)アクリル酸エステル成分の割合と、スチレン系成分の割合との合計は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
複合樹脂中に含まれる(メタ)アクリル酸エステル成分としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリル酸エステル単量体に由来する成分や、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル及びメタクリル酸2-エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル単量体に由来する成分が挙げられる。複合樹脂中には、これらの(メタ)アクリル酸エステル成分から選択される1種の成分が含まれていてもよいし、2種以上の成分が含まれていてもよい。
複合樹脂中には、(メタ)アクリル酸エステル成分として、メタクリル酸メチルに由来する成分が含まれていることが好ましい。この場合、(メタ)アクリル酸エステル成分中のメタクリル酸メチルに由来する成分の含有割合は50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。この場合には、中空粒子の構造や物性をより確実に所望の構造や物性とすることができる。
複合樹脂中に含まれるスチレン系成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、2,4,6-トリブロモスチレン、ジビニルベンゼン、スチレンスルホン酸及びスチレンスルホン酸ナトリウム等のスチレン系単量体に由来する成分や、ゴム変性ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-エチレンプロピレンゴム-スチレン共重合体等のスチレン系単量体と他のモノマーまたはポリマーとの共重合体に由来する成分等が挙げられる。複合樹脂中には、これらのスチレン系成分から選択される1種の成分が含まれていてもよいし、2種以上の成分が含まれていてもよい。
複合樹脂中には、スチレン系成分として、スチレンに由来する成分が含まれていることが好ましい。この場合、スチレン系成分中のスチレンに由来する成分の含有割合は50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。この場合には、中空粒子の構造や物性をより確実に所望の構造や物性とすることができる。
複合樹脂には、(メタ)アクリル酸エステル成分及びスチレン系成分以外の他の成分が含まれていてもよい。かかる成分としては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート等の水酸基を含有するビニル化合物及びアクリロニトリル等のニトリル基を含有するビニル化合物などの炭素-炭素二重結合を有するモノマーに由来する成分が挙げられる。
複合樹脂における、(メタ)アクリル酸エステル成分及びスチレン系成分以外の他の成分は、(メタ)アクリル酸エステル成分と、スチレン系成分との合計100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。この場合には、中空粒子の構造や物性をより確実に所望の構造や物性とすることができる。
複合樹脂は、例えば、スチレン系樹脂核粒子に(メタ)アクリル酸エステル単量体とスチレン系単量体とを含浸重合させることにより得ることができる。スチレン系樹脂核粒子の基材樹脂としては、前述したスチレン系成分から構成されるスチレン系樹脂を用いることができる。より具体的には、スチレン系樹脂核粒子の基材樹脂としては、スチレン系単量体の単独重合体や、スチレン系単量体と他のモノマーまたはポリマーとの共重合体等を用いることができる。スチレン系樹脂核粒子の基材樹脂は、ポリスチレンであることが好ましい。
前記複合樹脂中に含まれる前記(メタ)アクリル酸エステル成分と前記スチレン系成分との質量比は、(メタ)アクリル酸エステル成分:スチレン系成分=70:30~30:70であることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル成分:スチレン系成分=60:40~40:60であることがより好ましい。この場合には、前記特定の構造を有する中空粒子の収率をより高めることができる。
なお、(メタ)アクリル酸エステル成分及び/又はスチレン系成分を含む基材樹脂により構成された核粒子に(メタ)アクリル酸エステル単量体及び/又はスチレン系単量体を含浸重合させることにより複合樹脂を製造する場合、前記複合樹脂中に含まれる前記(メタ)アクリル酸エステル成分と前記スチレン系成分との質量比は、核粒子における各成分の質量と、含浸重合される各単量体の質量との関係等から求めることができる。
[難燃剤]
中空粒子中には、臭素系難燃剤が含まれていてもよい。この場合には、成形体の難燃性をより向上させることができる。粒子間の融着状態を良好にしつつ、成形体の難燃性をより高める観点からは、中空粒子中の臭素系難燃剤の配合量は、0.05質量%以上15質量%以下であることが好ましい。臭素系難燃剤としては、例えば、臭素化ビスフェノール系難燃剤や、臭素化スチレン-ブタジエン系共重合体等を用いることができる。臭素化ビスフェノール系難燃剤としては、ビスフェノールA骨格を有する臭素化物、ビスフェノールF骨格を有する臭素化物及びビスフェノールS骨格を有する臭素化物等が挙げられる。より具体的には、2,2-ビス(4-(2、3-ジブロモ-2-メチルプロポキシ)-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(2,3-ジブロモプロポキシ)-3,5-ジブロモフェニル)プロパン等の臭素化ビスフェノールA系難燃剤や、ビス[3,5-ジブロモ-4-(2,3-ジブロモプロポキシ)フェニル]スルホン等の臭素化ビスフェノールS系難燃剤等を臭素化ビスフェノール系難燃剤として用いることができる。また、臭素化スチレン-ブタジエン系共重合体としては、臭素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体が挙げられる。これらの臭素系難燃剤は、単独で使用されていてもよいし、2種類以上の臭素系難燃剤が併用されていてもよい。
なお、中空粒子への難燃剤の添加方法は特に限定されることはない。例えば、難燃剤の存在下で、スチレン系樹脂を基材樹脂とする核粒子に(メタ)アクリル酸エステル単量体とスチレン系単量体とを含浸重合させることにより難燃剤を含有する複合樹脂粒子を得て、この複合樹脂粒子に発泡剤を含浸させた後、発泡させることにより難燃剤を含む中空粒子を得ることができる。
[添加剤]
前記中空粒子には、前述した作用効果を損なわない範囲で気泡調整剤、触媒中和剤、滑剤、結晶核剤、帯電防止剤等の添加剤が含まれていてもよい。中空粒子中の添加剤の含有量は、例えば、中空粒子の全質量に対して20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
(中空粒子の製造方法)
前記中空粒子の製造方法としては、例えば、前記複合樹脂を基材樹脂とし、有機物理発泡剤を含有する樹脂粒子を準備した後、前記樹脂粒子を発泡させる方法を採用することができる。
樹脂粒子の製造方法としては、例えば、スチレン系樹脂核粒子(以下、適宜「核粒子」という。)に(メタ)アクリル酸エステル単量体とスチレン系単量体とを含浸させ、(メタ)アクリル酸エステル単量体とスチレン系単量体とを重合させるとともに、有機物理発泡剤を含浸させる方法を採用することができる。
より具体的には、樹脂粒子の製造方法は、核粒子を水性媒体中に分散させる分散工程と、
前記水性媒体中に分散した前記核粒子に(メタ)アクリル酸エステル単量体とスチレン系単量体とを含浸させ、(メタ)アクリル酸エステル単量体とスチレン系単量体とを重合させて樹脂粒子を得る改質工程と、
改質工程を行う前、改質工程の途中及び改質工程の完了後のうち少なくとも1回以上のタイミングで、前記核粒子または前記樹脂粒子中に有機物理発泡剤を含浸させる含浸工程と、を有していてもよい。分散工程、改質工程及び含浸工程は、単一の密閉容器内で連続して行ってもよいし、別々の容器を用いて行ってもよい。以下、各工程について詳説する。
[分散工程]
分散工程においては、核粒子を水性媒体中に分散させて懸濁液を作製する。水性媒体としては、例えば、脱イオン水等を使用することができる。水性媒体中には、核粒子に加え、必要に応じて、懸濁剤や界面活性剤等を添加することができる。
分散工程に用いる核粒子の基材樹脂は前述したスチレン系樹脂であることが好ましく、スチレンに由来する成分を50質量%以上含むスチレン系樹脂であることがより好ましく、ポリスチレンであることがさらに好ましい。なお、核粒子には、前述した作用効果を損なわない範囲で、例えば(メタ)アクリル酸エステル単量体の重合体であるアクリル系樹脂等のスチレン系樹脂以外の他の樹脂が含まれていてもよい。また、核粒子には、気泡調整剤、顔料、スリップ剤、帯電防止剤、及び難燃剤等の添加剤が含まれていてもよい。
核粒子の作製方法は特に限定されることはない。例えば、核粒子の作製方法としては、押出機を備える造粒装置を用いる方法が挙げられる。この場合、ストランドカット方式、アンダーウォーターカット方式、ホットカット方式等を採用することができる。また、核粒子は、例えば、水性媒体中でスチレン系単量体等を重合させる懸濁重合法によって作製されていてもよい。
核粒子の平均粒子径は、0.6mm以上2.0mm以下であることが好ましく、0.7mm以上1.5mm以下であることがより好ましい。この場合には、改質工程における重合安定性が高められ、複合樹脂の重量平均分子量を高めやすい。また、平均粒子径が前記特定の範囲内である核粒子を用いて改質工程や含浸工程を行うことにより、最終的に得られる中空粒子の構造をより確実に所望の構造とすることができる。
核粒子の平均粒子径は、核粒子の体積基準における粒度分布に基づいて算出される累積63%径(つまり、d63)の値であり、粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製「ミリトラック JPA」)などを用いて測定することができる。
分散工程において使用される懸濁剤としては、例えば、リン酸三カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ピロリン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第2鉄、水酸化チタン、水酸化マグネシウム、リン酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン及びベントナイト等の無機物の微粒子からなる無機懸濁剤や、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等の有機懸濁剤が挙げられる。これらの懸濁剤は、単独で使用されていてもよいし、2種以上が併用されていてもよい。懸濁剤は、リン酸三カルシウム、ハイドロキシアパタイト及びピロリン酸マグネシウムのうち1種または2種以上であることが好ましい。
界面活性剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。界面活性剤は、アニオン系界面活性剤であることが好ましく、炭素数8以上20以下のアルキルスルホン酸アルカリ金属塩であることがより好ましく、炭素数8以上20以下のアルキルスルホン酸ナトリウムであることがさらに好ましい。これらの界面活性剤を用いることにより、後の改質工程において(メタ)アクリル酸エステル単量体及びスチレン系単量体を添加した際に、水性媒体中に核粒子やモノマー等が懸濁した状態がより維持されやすくなる。
懸濁液には、必要に応じて、例えば塩化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等の無機塩類からなる電解質を添加することができる。
[改質工程]
改質工程においては、懸濁液中に(メタ)アクリル酸エステル単量体とスチレン系単量体とを添加し、核粒子に(メタ)アクリル酸エステル単量体とスチレン系単量体とを含浸させるとともに、これらのモノマーを重合させる。これにより、スチレン系成分と、(メタ)アクリル酸エステル成分とを含む複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂粒子が得られる。
改質工程において添加されるスチレン系単量体中のスチレンの割合は50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。この場合には、中空粒子の構造や物性をより確実に所望の構造や物性とすることができる。同様の観点から、改質工程において添加される(メタ)アクリル酸エステル単量体中のメタクリル酸メチルの割合は50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
改質工程において添加される(メタ)アクリル酸エステル単量体の添加量とスチレン系単量体の添加量との合計は、例えば、核粒子100質量部に対して200質量部以上700質量部以下とすることが好ましく、250質量部以上600質量部以下とすることがより好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体の添加量とスチレン系単量体の添加量との比率は、所望する複合樹脂の組成に応じて適宜設定すればよい。良好な中空粒子を得やすくする観点からは、(メタ)アクリル酸エステル単量体の添加量とスチレン系単量体の添加量との比率は、質量比において、(メタ)アクリル酸エステル単量体:スチレン系単量体=50:50~85:15であることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル単量体:スチレン系単量体=60:40~75:25であることがより好ましい。
改質工程においては、(メタ)アクリル酸エステル単量体とスチレン系単量体とを重合させるために、重合開始剤が用いられる。重合開始剤は、スチレン系単量体の懸濁重合に適用可能な重合開始剤であれば、特に限定されることはない。重合開始剤としては、例えば、ビニルモノマーに可溶であり、10時間半減期温度が50℃以上120℃以下である重合開始剤を用いることができる。かかる重合開始剤としては、例えば、クメンヒドロキシパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、及びラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で使用されていてもよく、2種以上が併用されていてもよい。
重合開始剤は、例えば、溶剤やモノマーに溶解させた状態で水性媒体に添加し、(メタ)アクリル酸エステル単量体及びスチレン系単量体と共に核粒子に含浸させてもよい。この場合、溶剤としては、例えばエチルベンゼン及びトルエン等の芳香族炭化水素、ヘプタン及びオクタン等の脂肪族炭化水素等が用いられる。重合開始剤の添加量は、改質工程において添加する(メタ)アクリル酸エステル単量体とスチレン系単量体との合計100質量部に対して0.01質量部以上3質量部以下であることが好ましい。
改質工程においては、必要に応じて、気泡調整剤、可塑剤、油溶性重合禁止剤、難燃剤、染料等を添加することができる。気泡調整剤は、例えば、モノマー及び/または溶剤に溶解または分散させた状態で水性媒体中に添加される。気泡調整剤としては、例えば、脂肪酸モノアミド、脂肪酸ビスアミド、タルク、シリカ、ポリエチレンワックス、メチレンビスステアリン酸、メタクリル酸メチル系共重合体、及びシリコーンなどが挙げられる。脂肪酸モノアミドとしては、例えばオレイン酸アミド、及びステアリン酸アミド等が挙げられる。脂肪酸ビスアミドとしては、例えばエチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられる。
改質工程における加熱温度や(メタ)アクリル酸エステル単量体及びスチレン系単量体の添加に要する時間は、核粒子のスチレン系樹脂の化学構造や(メタ)アクリル酸エステル単量体及びスチレン系単量体の化学構造、重合開始剤の特性、所望する複合樹脂の重合度などに応じて適宜設定すればよい。
改質工程後に得られる複合樹脂粒子は、樹脂粒子の表層部に(メタ)アクリル酸エステル成分を多く含む一方、樹脂粒子の内部にスチレン系成分を多く含む構造を有していることが好ましい。発泡工程において、(メタ)アクリル酸エステル成分とスチレン系成分とが前述したように分布した樹脂粒子を発泡させることにより、樹脂粒子の内部での発泡を促進させるとともに、樹脂粒子の表層部での発泡の進行を抑制し、外殻層と、中空部とを有する中空粒子の収率をより高めることができる。
[含浸工程]
含浸工程においては、改質工程を行う前、改質工程の途中及び改質工程の完了後のうち少なくとも1回以上のタイミングで核粒子または複合樹脂粒子に前述した有機物理発泡剤を含浸させることにより、樹脂粒子を得る。すなわち、含浸工程は、(メタ)アクリル酸エステル単量体及びスチレン系単量体を含浸させる前の核粒子に対して行ってもよいし、改質工程において(メタ)アクリル酸エステル単量体とスチレン系単量体とが重合している途中の複合樹脂粒子や、(メタ)アクリル酸エステル単量体とスチレン系単量体との重合が完了した後の複合樹脂粒子に対して行ってもよい。また、これらのタイミングのうち、2回以上のタイミングで核粒子または複合樹脂粒子に有機物理発泡剤を含浸させてもよい。有機物理発泡剤を複合樹脂粒子の内部まで十分に含浸させ、中空粒子の構造を所望の構造としやすくする観点からは、含浸工程は、少なくとも改質工程の前に行うことが好ましい。同様の観点から、含浸工程は、改質工程の前に行うとともに、改質工程の途中及び改質工程の完了後のうち少なくとも一方のタイミングで行うことがより好ましい。含浸工程を複数回行う場合、各含浸工程において使用する有機物理発泡剤は、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。有機物理発泡剤としては、例えば、炭素数3以上6以下の炭化水素等の、発泡性スチレン系樹脂粒子に用いられる公知の有機物理発泡剤を使用することができる。
核粒子や複合樹脂粒子に有機物理発泡剤を含浸させるに当たっては、例えば、これらの粒子が収容されている密閉容器内に有機物理発泡剤を供給して密閉容器内の圧力を上昇させればよい。この状態を保持することにより、核粒子や複合樹脂粒子に有機物理発泡剤を含浸させることができる。
核粒子や複合樹脂粒子に有機物理発泡剤を含浸させている間、必要に応じて、密閉容器内を加熱してもよい。密閉容器内を加熱することにより、核粒子または複合樹脂粒子への有機物理発泡剤の含浸をより促進させることができる。なお、有機物理発泡剤を含浸する際の温度と時間は、含浸工程のタイミングに応じて適宜設定すればよい。例えば、改質工程の前に行う含浸工程においては、概ね40℃以上90℃以下の温度を0.5時間以上3時間以下保持することにより有機物理発泡剤を核粒子に含浸させることが好ましい。改質工程の途中及び/又は改質工程の完了後に行う含浸工程においては、概ね80℃以上120℃以下の温度を3時間以上5時間以下保持することにより有機物理発泡剤を核粒子や複合樹脂粒子に含浸させることが好ましい。
含浸工程における有機物理発泡剤の添加量は、例えば、複合樹脂粒子100質量部に対して1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、3質量部以上9質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上8質量部以下であることがさらに好ましい。
前述したように含浸工程を行うことにより、有機物理発泡剤を含有する樹脂粒子を得ることができる。含浸工程を行った後、必要に応じて、得られた樹脂粒子を脱水乾燥させてもよい。脱水乾燥の方法は特に限定されることはないが、例えば、気流乾燥機を用いて、樹脂粒子に熱風を吹き付けることにより樹脂粒子を脱水乾燥させる方法を採用することができる。樹脂粒子を脱水乾燥させることにより、樹脂粒子に含まれる水分量を低減することができると共に、樹脂粒子の発泡性を維持しつつ、樹脂粒子の表層部に含まれる余剰の有機物理発泡剤を逸散させやすくなる。これにより、嵩密度の低い中空粒子であっても、中空粒子に良好な外殻層が形成されやすくなる。気流乾燥機を用いる場合には、例えば、熱風温度を30℃以上60℃以下の範囲内から、乾燥時間を0.5時間以上4時間以下の範囲内から適宜設定することができる。
樹脂粒子の平均粒子径は、1.0mm以上5.0mm以下である。樹脂粒子が前記特定の範囲の平均粒子径を有することにより、最終的に得られる中空粒子の構造をより確実に所望の構造とすることができる。前記特定の構造を有する中空粒子の収率をより高める観点からは、樹脂粒子の平均粒子径は、1.1mm以上4.0mm以下であることが好ましく、1.2mm以上3.0mm以下であることがより好ましい。
樹脂粒子の平均粒子径は、樹脂粒子の体積基準における粒度分布に基づいて算出される累積63%径(つまり、d63)の値であり、粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製「ミリトラック JPA」)などを用いて測定することができる。
被覆工程において用いられる表面被覆剤としては、例えばジンクステアレート、ステアリン酸トリグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、ひまし硬化油などが挙げられる。また、被覆工程における表面被覆剤として、帯電防止剤などを使用することもできる。表面被覆剤の添加量は、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上2質量部以下であることが好ましい。
有機物理発泡剤を含有する樹脂粒子を発泡させることにより、中空粒子を得ることができる。樹脂粒子を発泡させる方法としては、例えば、加熱媒体により樹脂粒子を加熱する方法を採用することができる。具体的には、有機物理発泡剤を含有する樹脂粒子が供給された予備発泡機にスチーム等の加熱媒体を導入することにより、樹脂粒子を発泡させることができる。
有機物理発泡剤を含有する樹脂粒子を発泡させるに当たっては、一段階で樹脂粒子を発泡させてもよいし、複数の段階に分けて樹脂粒子を発泡させてもよい。後者の場合、例えば、樹脂粒子を発泡させて目的の嵩密度よりも大きな嵩密度の一段中空粒子を作製し、一段中空粒子をさらに発泡させることにより、所望の嵩密度の中空粒子とすればよい。
(発泡粒子)
前記成形体の作製に用いられる発泡粒子は、スチレン系樹脂を基材樹脂とし、粒子全体にわたって多数の気泡が比較的均一に形成された構造を有している。発泡粒子に用いられるスチレン系樹脂は、前述したスチレン系樹脂核粒子に用いられるスチレン系樹脂と同様である。発泡粒子の基材樹脂は、スチレンに由来する成分を50質量%以上含むスチレン系樹脂であることが好ましい。
軽量で、圧縮物性等の機械的物性が良好な成形体を安定して得ることができるという観点からは、発泡粒子を構成するスチレン系樹脂は、スチレンに由来する成分を80質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましく、95質量%以上含むことがさらに好ましい。発泡粒子を構成するスチレン系樹脂はポリスチレンであることが特に好ましい。
発泡粒子は、例えば、スチレン系樹脂を基材樹脂とし、有機物理発泡剤を含む発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させることにより得られる。発泡性スチレン系樹脂粒子に用いられる有機物理発泡剤としては、例えば、炭素数3以上6以下の炭化水素などが挙げられる。
発泡性スチレン系樹脂粒子は、例えば懸濁重合等の従来公知の方法によって製造することができる。また、発泡性スチレン系樹脂粒子の発泡方法については、従来公知の方法を採用することができる。例えば、発泡性スチレン系樹脂粒子にスチーム等の加熱媒体を供給し、発泡性スチレン系樹脂粒子を加熱することにより発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させることができる。より具体的には、例えば攪拌装置の付いた円筒形の発泡機を用いて、スチーム等により発泡性スチレン系樹脂粒子を加熱することにより発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させることができる。
[難燃剤]
発泡粒子中には、臭素系難燃剤が含まれていてもよい。この場合には、成形体の難燃性をより向上させることができる。粒子間の融着性を良好にしつつ、成形体の難燃性をより高める観点からは、発泡粒子中の臭素系難燃剤の配合量は、0.05質量%以上15質量%以下であることが好ましい。発泡粒子に用いられる臭素系難燃剤としては、例えば、中空粒子に用いられる臭素系難燃剤として例示した、臭素化ビスフェノール系難燃剤や、臭素化スチレン-ブタジエン系共重合体等が挙げられる。これらの臭素系難燃剤は、単独で使用されていてもよいし、2種類以上の臭素系難燃剤が併用されていてもよい。
なお、発泡粒子への難燃剤の添加方法は特に限定されることはない。例えば、難燃剤の存在下でスチレン系単量体を懸濁重合してなるスチレン系樹脂粒子を得て、この樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性粒子を得た後、この発泡性粒子を発泡させることにより難燃剤を含む発泡粒子を得ることができる。
[その他の添加剤]
また、発泡粒子中には、前述した作用効果を損なわない範囲で、気泡調整剤、顔料、スリップ剤及び帯電防止剤等の添加剤が含まれていてもよい。
[平均粒子径]
型内成形される前の前記発泡粒子の平均粒子径は特に限定されるものではないが、2mm以上9mm以下であることが好ましい。中空粒子と発泡粒子とをより均一に混合する観点からは、発泡粒子の平均粒子径に対する中空粒子の平均粒子径の比が0.7以上1.4以下であることが好ましい。発泡粒子の平均粒子径は、前述した方法により測定することができる。
[嵩密度]
型内成形前の発泡粒子の嵩密度は特に限定されるものではないが、20kg/m3以上100kg/m3以下であることが好ましい。中空粒子と発泡粒子とをより均一に混合する観点からは、発泡粒子の嵩密度に対する中空粒子の嵩密度の比が0.7以上1.4以下であることが好ましい。
なお、発泡粒子の嵩密度の測定方法は、中空粒子に替えて発泡粒子を用いる以外は、前述した中空粒子の嵩密度の測定方法と同様である。
[平均気泡径]
発泡粒子の平均気泡径は、15μm以上150μm以下であることが好ましく、20μm以上120μm以下であることがより好ましく、30μm以上90μm以下であることがさらに好ましい。このような発泡粒子は、優れた型内成形性を有しているため、機械的強度が良好な成形体を安定して得ることができる。
発泡粒子の平均気泡径は、次のように測定される。まず、発泡粒子の中心部を通るように発泡粒子を2分割し、走査型電子顕微鏡にて切断面の拡大写真を撮影する。次に、写真上に発泡粒子の表面から中心付近を通り反対側の表面まで達する直線を引き、直線と交わっている気泡数を数える。直線の長さ(つまり、発泡粒子の切断面における実際の長さ)を気泡数で除した値を個々の発泡粒子の気泡径(単位:μm)とする。この操作を発泡粒子10個について同様に行なうことにより得られる発泡粒子の気泡径の算術平均値を、発泡粒子の平均気泡径(単位:μm)とする。
前記成形体及びその製造方法の具体的な態様について説明する。まず、成形体の作製に用いた中空粒子および発泡粒子について説明する。
(中空粒子)
成形体の作製に用いた中空粒子は、(メタ)アクリル酸エステル成分とスチレン系成分とを含む複合樹脂を基材樹脂とする外殻層と、外殻層によって取り囲まれた中空部とを有している。中空粒子の平均粒子径、嵩密度、外殻層の樹脂膜の合計厚みの平均値及び中空粒子中に含まれる難燃剤は、表1に示す通りである。なお、表1に示す中空粒子A3については、難燃剤が配合されていないため、難燃剤欄に記号「-」を記載した。
中空粒子を作製するに当たっては、まず、懸濁重合法によりスチレン系樹脂核粒子を作製し、次いでこの核粒子を用いて有機物理発泡剤を含有する樹脂粒子を作製する。この樹脂粒子を発泡させることにより、中空粒子を得ることができる。以下、中空粒子の作製方法を詳説する。
[核粒子の作製]
まず、攪拌装置の付いた内容積3Lのオートクレーブに、脱イオン水765g、懸濁剤0.84g及び界面活性剤3.2gを投入した。なお、懸濁剤としては第3リン酸カルシウム(太平化学産業株式会社製)を使用し、界面活性剤としてはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業株式会社製)を使用した。
次いで、オートクレーブの内容物を攪拌しつつ、オートクレーブ内に重合開始剤、可塑剤及びスチレン848gを投入した。重合開始剤としては、2.2gのt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日油株式会社製「パーブチル(登録商標) O」)と、0.44gのt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(日油株式会社製「パーブチル(登録商標) E」)とを併用した。また、可塑剤としては、12.7gのシクロヘキサンと6.2gの硬化牛脂とを併用した。可塑剤は、スチレンに溶解させた状態でオートクレーブ内に投入した。
オートクレーブの内容物を室温下で30分間攪拌した後、オートクレーブ内の温度を1時間半かけて90℃まで上昇させた。オートクレーブ内の温度が90℃に到達した後、さらにオートクレーブ内を加熱し、5時間半かけて100℃までオートクレーブ内の温度を上昇させた。オートクレーブ内の温度が100℃に到達した後、さらにオートクレーブ内を加熱し、1時間半かけて110℃までオートクレーブ内の温度を上昇させた。この温度を2時間保持した後、オートクレーブ内を4時間かけて30℃まで冷却した。以上の操作により、ポリスチレンを基材樹脂とする核粒子を作製した。
冷却が完了した後、オートクレーブ内の核粒子を取り出し、硝酸を用いて核粒子の表面に付着した第3リン酸カルシウムを除去した。遠心分離機を用いて核粒子の脱水及び洗浄を行った後、気流乾燥機を用いて核粒子の表面に付着した水分を除去した。
[有機物理発泡剤を含有する樹脂粒子の作製]
攪拌装置の付いた内容積3Lのオートクレーブ内に、脱イオン水965g及びピロリン酸ナトリウム6.0gを投入した。その後、オートクレーブ内に、粉末状の硝酸マグネシウム6水和物12.9gを投入し、オートクレーブの内容物を40℃で30分間攪拌した。これにより、オートクレーブの内容物を懸濁剤としてのピロリン酸マグネシウムのスラリーとした。
次に、オートクレーブ内に界面活性剤、核粒子200g及び重合開始剤を投入した。なお、界面活性剤としては、ラウリルスルホン酸ナトリウムの1質量%水溶液を使用し、界面活性剤の添加量は、ラウリルスルホン酸ナトリウムとして0.04gとした。また、重合開始剤としては、2.4gのベンゾイルパーオキサイド(日油製「ナイパー(登録商標)BW」)を使用した。
オートクレーブ内を窒素で置換した後、オートクレーブ内に有機物理発泡剤18gを10分かけて添加した。なお、有機物理発泡剤としては、ノルマルブタン約70質量%とイソブタン約30質量%との混合物を使用した。
有機物理発泡剤の添加後、オートクレーブ内の温度を40℃で1時間保持した。次いで、オートクレーブ内の温度を1時間かけて80℃まで上昇させた。この温度を保持した状態で、オートクレーブ内を450rpmの攪拌速度で攪拌しつつ、スチレン200gとメタクリル酸メチル400gと重合開始剤との混合物を6時間かけてオートクレーブ内に添加した。なお、重合開始剤としては、1.2gのt-ブチルパーオキシベンゾエート1.2g(日油株式会社製「パーブチル Z」)を使用した。また、表1に示す中空粒子A1、A2、A4及びA5を作製するに当たっては、80gの難燃剤を前述したスチレン、メタクリル酸メチルおよび重合開始剤の混合物に予め混合し、この混合物をオートクレーブ内に添加した。難燃剤としては、2,2-ビス(4’-(2”,3”-ジブロモ-2”-メチルプロポキシ-3’,5’-ジブロモフェニル)プロパン(第一工業製薬株式会社製「SR-130」)を使用した。
スチレン及びメタクリル酸メチルを添加してから30分後に、有機物理発泡剤としてのペンタン80gを30分かけてオートクレーブ内に添加した。また、ペンタンを添加してから1時間後にオートクレーブ内の温度を1.5時間かけて120℃まで上昇させ、この温度を4時間保持した。その後、オートクレーブ内を約6時間かけて35℃まで冷却した。以上の操作により、スチレンに由来する成分及びメタクリル酸メチルに由来する成分を含む複合樹脂を基材樹脂とし、有機物理発泡剤を含む樹脂粒子を作製した。
冷却が完了した後、オートクレーブ内の樹脂粒子を取り出し、硝酸を用いて樹脂粒子の表面に付着した第3リン酸カルシウムを除去した。遠心分離機を用いて樹脂粒子の脱水及び洗浄を行った後、気流乾燥機を用いて樹脂粒子の表面に付着した水分を除去した。
本例においては、以上により得られた樹脂粒子の表面を表面被覆剤で被覆した。具体的には、樹脂粒子100質量部に対して、0.11質量部のステアリン酸亜鉛、0.053質量部のグリセリンモノステアレート、0.004質量部のタルク及び0.065質量部の帯電防止剤(第一工業製薬株式会社製「レジスタット(登録商標)PE132」)の混合物を添加することにより、これらを含む表面被覆剤で樹脂粒子の表面を被覆した。
また、樹脂粒子の表面を表面被覆剤で被覆した後、さらに、気流乾燥機を用い、樹脂粒子を40℃の温度で1時間加熱して余剰の水分及び有機物理発泡剤を除去する乾燥処理を行った。
[中空粒子の作製]
前述の方法により得られた樹脂粒子を、容積30Lの常圧バッチ発泡機に投入し、発泡機内にスチームを供給した。なお、スチームの温度は105~125℃とし、加熱時間は50~150秒とした。これにより、樹脂粒子を発泡させ、表1に示す平均粒子径、嵩密度及び外殻層の樹脂膜の合計厚みの平均値を有する中空粒子A1~A5を得た。
なお、表1に示す平均粒子径は、体積基準における中空粒子の粒度分布に基づいて算出された累積63%径である。また、嵩密度及び外殻層の樹脂膜の合計厚みの平均値は、それぞれ、前述した方法により測定された値である。
(発泡粒子)
成形体の作製に用いた発泡粒子は、スチレン系樹脂を基材樹脂とし、粒子全体にわたって多数の気泡が比較的均一に形成された構造を有している。発泡粒子の平均粒子径、嵩密度及び発泡粒子中に含まれる難燃剤は、表1に示す通りである。
発泡粒子を作製するに当たっては、まず、懸濁重合法によりスチレン系樹脂を基材樹脂とし、有機物理発泡剤を含有する発泡性スチレン系樹脂粒子を作製する。この発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させることにより、発泡粒子を得ることができる。以下、発泡粒子の作製方法を詳説する。
[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]
まず、攪拌装置の付いた内容積50Lのオートクレーブに、脱イオン水16kg、懸濁剤14.4g、界面活性剤及び電解質24.4gを投入した。なお、懸濁剤としては第3リン酸カルシウム(太平化学産業株式会社製)を使用した。界面活性剤としては、0.6gのα-オレフィンスルホン酸ナトリウムと0.2gのアルキルビフェニルジスルホン酸ジナトリウムとを併用した。電解質としては酢酸ナトリウムを使用した。
次に、16kgのスチレンに、重合開始剤、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、気泡調整剤および重合開始剤を混合して混合物を準備した。この混合物を、オートクレーブの内容物を攪拌しながらオートクレーブ内に投入した。なお、重合開始剤としては、43.2gのt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日油株式会社製「パーブチル(登録商標) O」)と、25.6gのt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(日油株式会社製「パーブチル(登録商標) E」)とを併用した。難燃剤としては、スチレンに対して表1に示す質量比の臭素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体(ケムチュラ・ジャパン株式会社製「Emerald Innovation(登録商標) 3000」)を使用した。難燃助剤としては、51.2gのジクミルパーオキサイド(日油株式会社製「パークミル(登録商標)D」)を使用した。可塑剤としては、12.8gの流動パラフィン(株式会社MORESCO製「モレスコホワイトP-60」)を使用した。気泡調整剤としては、3.2gのポリエチレンワックスパウダー(東洋アドレ株式会社製「ポリエチレンワックス1000」)を使用した。重合禁止剤としては、0.32gの4-t-ブチルカテコール(DIC株式会社製「DIC-TBC」)を使用した。なお、表1においては、難燃剤を「E3000」と省略した。
オートクレーブ内を窒素で置換した後、オートクレーブ内の温度を1時間半かけて90℃まで上昇させた。オートクレーブ内の温度が90℃に到達した後、更にオートクレーブ内を加熱し、6時間半かけてオートクレーブ内の温度を100℃まで昇温させた。この昇温過程において、オートクレーブ内の温度が90℃に到達した時点から5時間30分後にオートクレーブ内への有機物理発泡剤の注入を開始し、注入開始から30分後に有機物理発泡剤の注入を完了した。有機物理発泡剤としては、320gのペンタン(n-ペンタン80%とイソペンタン20%との混合物)と、880gのブタン(n-ブタン70%とイソブタン30%との混合物)とを併用した。
また、オートクレーブ内の温度が100℃に到達した後、更にオートクレーブ内を加熱し、2時間かけてオートクレーブ内の温度を120℃まで昇温させた。この温度を5時間保持した。その後、オートクレーブ内を約6時間かけて30℃まで冷却した。以上の操作により、スチレン系樹脂を基材樹脂とし、有機物理発泡剤を含む発泡性スチレン系樹脂粒子を作製した。
[発泡粒子の作製]
前述の方法により得られた発泡性スチレン系樹脂粒子を、容積30Lの常圧バッチ発泡機に投入し、発泡機内にスチームを供給した。なお、スチームの温度は105~125℃とし、加熱時間は50~150秒とした。これにより、樹脂粒子を発泡させ、表1に示す平均粒子径および嵩密度を有する発泡粒子B1~B6を得た。
なお、表1に示す平均粒子径は、体積基準における発泡粒子の粒度分布に基づいて算出された累積63%径である。また、嵩密度は、前述した方法により測定された値である。
(実施例1~実施例6)
図1及び図2に示すように、実施例1~実施例6にかかる成形体1は、外殻層21と、外殻層21によって取り囲まれた中空部22とを有する中空粒子2と、発泡粒子3との混合粒子を型内成形することにより作製されている。すなわち、実施例1~実施例6の成形体1には、中空粒子2と発泡粒子3とが含まれている。実施例1~実施例6の成形体の作製方法は、具体的には以下の通りである。
[成形体の作製]
型物成形機(笠原工業株式会社製「PEONY-AD/0907」)を用いて、中空粒子と発泡粒子との混合粒子の型内成形を行った。まず、上記のようにして得られた中空粒子および発泡粒子を温度23℃の恒温室内で1日間熟成させた。熟成後の中空粒子と発泡粒子とを、表2に示す組み合わせ及び質量比で混合し、混合粒子を作製した。この混合粒子を成形機に備えられた300mm×300mm×100mmの直方体状のキャビティを有する成形型内に充填した。
混合粒子の充填後、成形型内にゲージ圧で0.07MPa(G)のスチームを導入して中空粒子および発泡粒子を加熱することにより型内成形を行った。得られた成形体を温度40℃の乾燥庫内で1日間乾燥させた後、さらに温度23℃の恒温室内で1日間養生させた。以上により、実施例1~実施例6の成形体を得た。
(比較例1)
表3に示すように、比較例1の成形体は、発泡粒子を含まず、実質的に中空粒子から構成されている。比較例1の成形体の製造方法は、型物成形機に中空粒子のみを充填した以外は、実施例1~実施例6の成形体の製造方法と同様である。
(比較例2)
表3に示すように、比較例2の成形体は、中空粒子を含まず、発泡粒子から構成されている。比較例2の成形体の製造方法は、型物成形機に発泡粒子のみを充填した以外は、実施例1~実施例6の成形体の製造方法と同様である。
(比較例3、比較例4)
比較例3及び比較例4の成形体は、中空粒子と発泡粒子との組み合わせを表3に示すように変更した以外は、実施例1~実施例6の成形体と同様の構成を有している。比較例3及び比較例4の成形体の製造方法は、中空粒子と発泡粒子との組み合わせを表3に示すように変更した以外は、実施例1~実施例6の成形体の製造方法と同様である。
次に、以上により得られた成形体の諸特性の評価方法を以下に説明する。
[成形体の密度]
成形体の質量(単位:kg)を、外形寸法に基づいて算出された体積(単位:m3)で除した値を、成形体の密度(単位:kg/m3)とした。実施例及び比較例の成形体の密度は、表2及び表3に示す通りであった。
[発泡剤量]
成形体から約1gの試料を採取し、温度120℃に設定した熱風乾燥機を用いて4時間加熱することにより、試料中の水分および有機物理発泡剤を蒸発させた。加熱前の質量に対する加熱による質量の減少量の比率を百分率で表した値を、試料中の総揮発分量(単位:質量%)とした。また、総揮発分量の測定とは別に、成形体から約0.3gの試料を採取し、カールフィッシャー水分計を用いて試料中の水分量(単位:質量%)を測定した。
そして、上記のようにして算出した試料中の総揮発分量(単位:質量%)から水分量(単位:質量%)を差し引いた値を、成形体中に残存している有機物理発泡剤の量(単位:質量%)とした。すなわち、成形体中の発泡剤量は、下記の式にて算出することができる。
発泡剤量(質量%)=総揮発分量(質量%)-水分量(質量%)
[中空粒子と発泡粒子との面積比の平均値及び変動係数]
前述した縦300mm、横300mm、厚み100mmの直方体形状を有する成形体を、成形体の表面から厚み方向に20mmの深さの位置で、厚み方向と直交する面に沿って切断し、厚み方向の両面に切断面が露出した切片を作製した。なお、切片の寸法は、具体的には縦300mm、横300mm、厚み60mmである。
スキャナーを用い、切片における各切断面の写真を取得した。次に、画像処理ソフト(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて、各切断面の写真上に縦50mm、横50mmの測定領域を無作為に15か所ずつ、合計30か所設定した。そして、個々の測定領域内における中空粒子の面積の合計S1、発泡粒子の面積の合計S2及び発泡粒子の面積の合計S2に対する中空粒子の面積の合計S1の面積比S1/S2を算出した。なお、測定領域の境界線と交わる粒子の面積については、中空粒子の面積の合計S1及び発泡粒子の面積の合計S2に算入しなかった。
次いで、前述した切片を、いずれかの切断面から見て格子状となるように切断し、20個の小切片を作製した。スキャナーを用い、切断面の重複が生じないようにして、小切片の切断面(具体的には、小切片の切断面のうち、切断前の成形体における縦300mm、横300mmの面と直交する面)の写真を合計31枚取得した。その後、画像処理ソフト(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて、各切断面の写真上に縦50mm、横50mmの測定領域を無作為に設定し、個々の測定領域内における中空粒子の面積の合計S1及び発泡粒子の面積の合計S2を測定した。さらに、これらの値に基づき、発泡粒子の面積の合計S2に対する中空粒子の面積の合計S1の面積比S1/S2を算出した。なお、測定領域の境界線と交わる粒子の面積については、中空粒子の面積の合計S1及び発泡粒子の面積の合計S2に算入しなかった。
以上により得られた合計61か所の測定領域における、発泡粒子の面積の合計S2に対する中空粒子の面積の合計S1の面積比S1/S2を算術平均した値を、成形体の断面における、発泡粒子の面積の合計S2に対する中空粒子の面積の合計S1の面積比S1/S2の平均値とした。また、前述した61か所の測定領域における、発泡粒子の面積の合計S2に対する中空粒子の面積の合計S1の比S1/S2の不偏標準偏差(前記式(1)参照)を面積比S1/S2の平均値で除した値を、成形体の断面における、発泡粒子の面積の合計S2に対する中空粒子の面積の合計S1の面積比S1/S2の変動係数とした。実施例及び比較例の成形体における面積比S1/S2の平均値及び変動係数は、表2及び表3に示した通りであった。
[中空粒子1個当たりの面積の平均値及び発泡粒子1個当たりの面積の平均値]
前述した中空粒子と発泡粒子との面積比の平均値の算出において取得した切断面の写真を用い、前述した方法により測定領域内の中空粒子の面積の合計S1、中空粒子の数、発泡粒子の面積の合計S2および発泡粒子の数を算出した。これらの値を用い、中空粒子1個当たりの面積の平均値及び発泡粒子1個当たりの面積の平均値を算出した。実施例及び比較例の成形体における中空粒子1個当たりの面積の平均値(A)、発泡粒子1個当たりの面積の平均値(B)及び発泡粒子1個当たりの面積の平均値(B)に対する中空粒子1個当たりの面積の平均値(A)の比(A)/(B)は、表2及び表3に示した通りであった。なお、測定領域の境界線と交わる粒子については、中空粒子の数及び発泡粒子の数に算入しなかった。
[外殻層の厚みの平均値、外殻層における樹脂膜の合計厚みの平均値]
前述した方法により中空粒子の外殻層の厚みの平均値及び外殻層における樹脂膜の合計厚みの平均値を算出した。実施例及び比較例の成形体中に存在する中空粒子の、外殻層の厚みの平均値及び外殻層における樹脂膜の合計厚みの平均値は、表2及び表3に示した通りであった。
[圧縮特性]
成形体の中心部から、縦50mm、横50mm、厚み25mmの直方体状の試験片を採取した。JIS K7220:2006に規定された方法に基づいて試験片の圧縮試験を行い、応力-ひずみ曲線を取得した。なお、圧縮試験は23℃の実験室において行った。
応力-ひずみ曲線に基づいて算出された、実施例及び比較例における10%変形圧縮応力σ10(単位:kPa)、25%変形圧縮応力σ25(単位:kPa)、50%変形圧縮応力σ50(単位:kPa)及び75%変形圧縮応力σ75(単位:kPa)は、表2及び表3に示す通りであった。また、表2及び表3の「σ10/密度」欄には10%変形圧縮応力σ10を成形体の密度で除した値を、「σ10/σ50」欄には50%変形圧縮応力σ50に対する10%変形圧縮応力σ10の比を百分率で表した値を、「σ10/σ75」欄には75%変形圧縮応力σ75に対する10%変形圧縮応力σ10の比を百分率で表した値をそれぞれ示した。
また、前述した応力-ひずみ曲線に基づいて、圧縮応力が300kPaとなるひずみ量(C)、圧縮応力が600kPaとなるひずみ量(D)及び圧縮応力が600kPaとなるひずみ量(D)と圧縮応力が300kPaとなるひずみ量(C)との差(D)-(C)の値を算出した。実施例及び比較例の成形体におけるこれらの値は、表2及び表3に示す通りであった。
[エネルギー吸収特性]
図3に、圧縮試験により測定された応力-ひずみ曲線の一例を示す。ひずみ量εaにおけるエネルギー吸収量(単位:J/g)は、応力-ひずみ量曲線におけるひずみ量0%からひずみ量εaまでの部分L1と、応力-ひずみ曲線上におけるひずみ量εaの点を通り、縦軸に平行な直線L2と、横軸とで囲まれた面積Saと等しい。実施例及び比較例の成形体の応力-ひずみ曲線に基づき、ひずみ量50%におけるエネルギー吸収量を算出し、このエネルギー吸収量を試験に用いた成形体の質量で除することにより、質量当たりのエネルギー吸収量を算出した。実施例及び比較例の成形体における質量当たりのエネルギー吸収量は、表2及び表3に示す通りであった。
なお、前述した質量当たりのエネルギー吸収量は、4J/g以上であることが好ましく、5J/g以上であることがより好ましく、6J/g以上であることがさらに好ましい。この場合には、良好なエネルギー吸収性能を確保しつつ、衝撃吸収材の部品重量をより軽くすることができる。また、上記質量当たりのエネルギー吸収量は、10J/g以下であることが好ましく、8J/g以下であることがより好ましい。この場合には、成形体が硬くなりすぎず、適度に衝撃を吸収できると共に、自動車用の衝撃吸収材として用いた際に、衝突時の乗員の安全性を確保しやすくなる。
[圧縮永久ひずみ]
成形体の厚み方向における中央から、スキン面、つまり、型内成形時に成形型の内表面と接していた面が含まれないようにして縦50mm、横50mm、厚み25mmの直方体状の試験片を3つ採取した。JIS K6767:1999に規定された方法に基づいて試験片の圧縮試験を行った。具体的には、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、各試験片を、試験片の厚み方向に25%ひずんだ状態に圧縮し、この状態で22時間放置した。その後、各試験片を圧縮状態から解放し、圧縮終了から24時間後に、各試験片の厚みを測定した。試験前後の試験片の厚みの変化量を、試験前の試験片の厚みで除することで、各試験片の圧縮永久ひずみ(単位:%)を求め、これらの算術平均値を圧縮永久ひずみ(単位:%)とした。実施例及び比較例における圧縮永久ひずみの値は、表2及び表3に示した通りであった。
[難燃性]
FMVSS(Federal Motor Vehicle Safety Standards)No.302の規定に準じた方法により燃焼性試験を行った。具体的には、まず、型物成形機(DAISEN株式会社製「VS-1300」)を用いて、中空粒子と発泡粒子との混合粒子の型内成形を行い、縦585mm、横485mm、厚み100mmの直方体形状を有する成形体を作製した。この成形体を40℃の温度で3日間放置し、さらに室温で1日間放置することにより、成形体を熟成させた。その後、成形体を40℃の温度で3日間放置し、さらに室温で1日間放置することにより、成形体の養生を行った。その後、成形体から縦356mm×横102mm×厚さ13mmの平板状の試験片を5つ切り出した。
次に、FMVSS No.302に準拠した燃焼性試験機(スガ試験機株式会社製「MVSS-2」)の取り付け具に試験片の縦方向の一端を取り付け、試験片を水平に保持した。この試験片の縦方向の他端、つまり、取り付け具により保持されていない端部の下方にバーナーの炎を15秒間あてた後、バーナーの炎を試験片から外した。なお、バーナーの炎の高さは38mmとし、バーナーの先端から試験片の下面までの距離は19mmとした。
そして、試験片から生じた炎が、試験片の開放端(つまり、試験片の縦方向における、取り付け具により保持されていない端部)からの距離が38mmである位置に到達した時点で燃焼時間の計測を開始した。試験片から生じた炎が、試験片の固定端(つまり、試験片の縦方向における、クランプ等により保持されている端部)からの距離が38mmである位置に到達した場合には、炎が当該位置に到達した時点で燃焼時間の計測を完了した。また、試験片の燃焼が、試験片の固定端からの距離が38mmである位置に到達する前に終了した場合には、燃焼が終了した時点で燃焼時間の計測を完了した。なお、試験片の固定端からの距離が38mmである位置に到達する前に試験片の燃焼が終了した場合には、当該試験片の燃焼時間が0秒であるとして取り扱った。
以上の試験を5個の試験片を用いて行い、これらの試験結果に基づいて難燃性の評価を行った。表2及び表3の「難燃性」欄に示した記号の意味は、以下の通りである。
A:(1)5個の試験片全てが自己消火性を示す、または、(2)自己消火性を示さない試験片があるものの、燃焼速度が102mm/分以下である、という条件(1)または条件(2)のうちいずれかに該当した
B:いずれの試験片についても試験片から生じた炎が試験片の表面を伝播せず、燃焼速度が102mm/分を超えた
C:1個以上の試験片について、試験片から生じた炎が試験片の表面を伝播した
上記の評価に用いた燃焼速度は、5個の試験片に対して行った燃焼性試験における試験片の燃焼速度を相加平均した値である。評価に用いる燃焼速度を算出するに当たり、燃焼性試験において自己消火性を示した試験片については、当該試験片の燃焼速度が0mm/分であるとして取り扱った。なお、自己消火性を示さない試験片の燃焼速度は、下記式(I)により算出した。
B=60×D/T (I)
ただし、上記式(I)における記号Bは燃焼速度(単位:mm/分)を意味し、記号Dは炎が進行した距離(単位:mm)を意味し、記号Tは炎がD mm進行するために要した時間(単位:秒)を意味する。
表1及び表2に示すように、実施例1~実施例6の成形体は、中空粒子と発泡粒子との混合粒子から構成されている。また、これらの成形体における、成形体の断面における前記発泡粒子の面積の合計S2に対する前記中空粒子の面積の合計S1の比S1/S2の平均値、前記比S1/S2の変動係数および前記成形体の50%変形圧縮応力σ50に対する10%変形圧縮応力σ10の比σ10/σ50はそれぞれ前記特定の範囲内にある。そのため、これらの成形体は、良好な圧縮物性を示すとともに、低い永久ひずみを有している。さらに、これらの成形体は、圧縮応力が300~600kPaとなるひずみ量の範囲が広く、かつ、広い範囲のひずみ量において優れたエネルギー吸収効率を有している。
比較例1の成形体は、中空粒子から構成されているため、実施例1~実施例6の成形体に比べて10%変形圧縮応力σ10が低く、圧縮の初期段階におけるエネルギー吸収効率に劣る。また、比較例1の成形体は、燃焼性試験において試験片から生じた火炎が表面を伝播し、試験片全体が燃焼した。
比較例2の成形体は、発泡粒子から構成されているため、実施例1~実施例6の成形体に比べて圧縮永久ひずみが大きい。また、比較例2の成形体は、実施例1~実施例6の成形体に比べてひずみ量が大きくなった場合に変形に要する圧縮荷重が高く、ひずみ量が大きい場合のエネルギー吸収効率に劣る。
比較例3及び比較例4の成形体は、成形体の作製に用いた中空粒子と発泡粒子との嵩密度の差が比較的大きいこと等により、中空粒子と発泡粒子とを混合する際に、両者が均一に混ざりにくい。そのため、これらの比較例の成形体においては、中空粒子の分布に偏りが生じ、発泡粒子の面積の合計S2に対する中空粒子の面積の合計S1の比S1/S2の変動係数が前記特定の範囲よりも大きくなった。そして、成形体においては、中空粒子の分布に偏りが生じた結果、10%変形圧縮応力σ10が低下するとともに、圧縮の初期段階におけるエネルギー吸収効率の低下を招いた。また、比較例3及び比較例4の成形体は、燃焼性試験において試験片から生じた火炎が表面を伝播し、試験片全体が燃焼した。
以上、実施例1~実施例6に基づいて本発明に係る成形体の具体的な態様を説明したが、本発明に係る成形体及び衝撃吸収材の具体的な態様は実施例1~実施例6の態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。