JP7842335B2 - モータ制御システム及びモータの制御方法 - Google Patents

モータ制御システム及びモータの制御方法

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Description

本開示は、モータ制御システム及びモータの制御方法に関する。
モータ制御システムでは、モータの回転子位相に基づいてインバータの出力電圧を決定するため、回転子位相の検出又は推定をする必要がある。コスト低減の観点から、エンコーダを用いずにモータ電流・インバータ出力電圧などから回転子位相を推定することが望ましい。このような推定を用いてモータを制御することを「位置センサレス制御」と呼ぶ。
位置センサレス制御の内、モータ停止時を対象として回転子位相を推定する技術については、特許文献1に開示されている。
特許文献1には、高精度に磁極位置を推定する同期電動機の磁極位置推定手段として、同期電動機1と、電流検出器4と、電力変換器7と、磁極位置推定手段8と、軸及び極性判別部16又は極性判別部16aと、を接続した構成、磁極位置推定手段8は、同期電動機1を制御する電動機制御装置の一部を利用すること、起動時の磁極位置推定を行うに、停止状態の起動時(起動開始初期)に、所定周波数を有する正弦波指令である推定用d軸電流指令id1*を電流制御部3aに出力すること、推定用d軸電流指令id1*を印加して発生するq'軸電流iq'を電流検出器4及びdq変換部5aを介して帰還入力し、磁極位置θを推定することが開示されている。
特開2003-143894号公報
特許文献1の磁極位置推定手段においては、モータの突極性すなわちd軸・q軸インダクタンスの差分を利用している。このため、d軸・q軸インダクタンスが等価である場合には、回転子位相を推定することができない。したがって、例えば表面磁石型モータでは、d軸・q軸インダクタンスが同じであるため、特許文献1の技術を用いても回転子位相を推定できない。
また、例えば、ファン等に用いるモータが逆回転してしまうと、ファンとして機能しなくなる。このため、位置センサを用いない場合であっても、モータの逆回転を防止する必要がある。
本開示の目的は、突極性の有無によらず、停止状態にあるモータの回転子位相を推定し、この回転子位相に基づいてインバータ制御を開始することで円滑な加速を実現することにある。
本開示のモータ制御システムは、モータの電流を検出する電流センサと、モータと接続されたインバータと、インバータの出力電圧を制御するインバータ制御部と、モータの回転子位相を推定する位相推定部と、を備え、インバータ制御部は、インバータを制御してモータが停止している状態で出力電圧を印加させ、出力電圧を正負に切り替えることにより、モータを前後に回転させ、この回転によりモータの誘起電圧を発生させ、位相推定部は、誘起電圧によって流れる電流の検出値に基づいて回転子位相を推定し、前記インバータ制御部が、前記誘起電圧によって流れる前記電流のベクトルから前記出力電圧の位相方向と同じ方向に直交する成分である直交成分を算出し、この直交成分の絶対値が所定値以下になるまで前記出力電圧の位相を変更し、前記位相推定部が、位相推定を繰り返すことを特徴とする。
本開示によれば、突極性の有無によらず、停止状態にあるモータの回転子位相を推定し、この回転子位相に基づいてインバータ制御を開始することで円滑な加速を実現することができる。
実施例1のモータ制御システムを示す構成図である。 モータの停止状態における回転子位相θが30degの場合における電圧及び電流の波形を示すグラフである。 モータの停止状態における回転子位相θが0degの場合における電圧及び電流の波形を示すグラフである。 モータの停止状態における回転子位相θが-30degの場合における電圧及び電流の波形を示すグラフである。 磁石磁束・電圧・電流に関するベクトル図である。 位相推定値の更新前におけるd軸の位置と電流の符号との相関を示すグラフである。 位相推定値の更新後におけるd軸の位置と電流の符号との相関を示すグラフである。 dc軸電圧印加時におけるd軸の位置と電流の符号との相関を示すグラフである。 qc軸電圧印加時におけるd軸の位置と電流の符号との相関を示すグラフである。 極性判別における電圧、電流及び位相の経時変化を示すグラフである。 実施例2のモータ制御システムの一部を構成するインバータ制御部を示す構成図である。 実施例3のモータ制御システムの一部を構成するインバータ制御部を示す構成図である。 モータ回転時における三相の誘起電圧及びその位相の経時変化を示すグラフである。 モータ停止時における三相の誘起電圧及びその位相の経時変化を示すグラフである。 実施例4のモータ制御システムを示す構成図である。
本開示は、モータ制御システムにおける回転子位相の推定技術に関する。
以下、図面を用いて実施例について説明する。
図1は、実施例1のモータ制御システムを示す構成図である。
本図においては、モータ1は、インバータ2と接続されている。インバータ2は、直流電圧VDCを受電してU相・V相・W相電圧v、v、vを出力する。これによって、モータ1には、U相・V相・W相電流i、i、iが流れる。これらの電流は、電流センサ3によって検出される。
インバータ制御部4は、i、i、iに従ってインバータ2のU相・V相・W相の上下ゲート信号sup、sun、svp、svn、swp、swnを制御し、その結果としてv、v、vを制御する。
インバータ制御部4は、矩形波電圧演算部4a、二相・三相変換部4b、PWM制御部4c、三相・二相変換部4d及び位相推定部4eを有する。
矩形波電圧演算部4aは、dc軸・qc軸電圧指令vdc 、vqc のいずれかを矩形波に設定する。二相・三相変換部4bは、vdc 、vqc をv 、v 、v に変換する。PWM制御部4cは、v 、v 、v をパルス幅変調に従ってsup、sun、svp、svn、swp、swnに変換する。三相・二相変換部4dは、i、i、iをdc軸・qc軸電流idc、iqcに変換する。位相推定部4eは、idc、iqcに基づいてモータ1の回転子位相θの推定値である回転子位相推定値θdcを出力する。
位相推定部4eは、位相補正量演算部4e1及び遅延要素演算部4e2を有する。
位相補正量演算部4e1は、idc、iqcに基づいてθdcの位相補正量θstepを演算する。遅延要素演算部4e2は、θdcの過去値θdc-oldを出力する。
そして、θdc-oldにθstepを加算することで、θdcを更新し、位相推定部4eの出力値とする。θdcは、二相・三相変換部4b及び三相・二相変換部4dに送信され、座標変換時の基準となる。
位相推定部4e、特に位相補正量演算部4e1を備えることによって、エンコーダなしでθdcを推定することが可能になる。したがって、このような制御を「位置センサレス制御」と呼ぶ。
ここで、位置センサレス制御の課題について説明する。
特許文献1に示されているように、モータのd軸・q軸インダクタンスL、Lに差分がある場合、vdc 、vqc を一定としたままθを変化させると、idc、iqcも変化する。この関係を数式化あるいはテーブル化しておくことで、idc、iqcからθを推定することが可能となる。しかし、この現象は、L、Lに差分がある場合に限られる。静音性を重視してモータを設計する場合、L、Lが等しくなる場合があり、その場合にはθを推定することができない。これが位置センサレス制御の課題である。
特許文献1の方法では、モータのL、Lの位置依存性を利用しているといえる。モータのパラメータとしては、他に、抵抗値R及び誘起電圧係数Keがある。Rは位置依存性がなく、Keは位置依存性がある。停止状態では、モータの回転速度ωがゼロであるため、誘起電圧(ωKe)がゼロとなり、その影響はidc、iqcに表れない。
そこで、本開示では、矩形波電圧演算部4aによってvdc あるいはvqc を正負に切り替え、モータ1を前後に回転させ、その際に発生する誘起電圧に基づいてθを推定する。
以下、この動作原理について説明する。
図2~図4は、θが異なる場合における電圧及び電流の波形をそれぞれ示したものである。
図2は、モータの停止状態における回転子位相θが30degの場合における電圧及び電流の波形を示すグラフである。
図3は、モータの停止状態における回転子位相θが0degの場合における電圧及び電流の波形を示すグラフである。
図4は、モータの停止状態における回転子位相θが-30degの場合における電圧及び電流の波形を示すグラフである。
いずれの図においても、横軸に時間t(s)、縦軸に電圧V(V)及び電流I(A)をとっている。
これらの図においては、qc軸電圧指令vqc を一定とし、dc軸電圧指令vdc を正及び負の矩形波としている。この経時変化に応じて、dc軸・qc軸電流idc、iqcが変化している。
図2~4のいずれの場合も、idcの経時変化は同様であるが、iqcの経時変化は、θが正の場合、0の場合、及び負の場合で異なっている。これらの図においては、iqcの経時変化を示す曲線の極値に対応する時刻をtとして示している。
このようにθに応じてiqcが変化する理由について、次に説明する。
図5は、磁石磁束・電圧・電流に関するベクトル図である。図中、横軸にdc軸、縦軸にqc軸、磁石の向きにd軸をとっている。
本図に示すように、当初、磁石磁束は、ベクトルで表されるΦであり、qc軸成分がΦqcである。
dc軸電圧指令vdc を正に設定すると、d軸はdc軸に引き寄せられ、磁石磁束はΦからΦ’に変化する。このとき、磁石磁束のqc軸成分は、ΦqcからΦqc’に減少する。このため、これを打ち消すようにqc軸電流iqcが正方向に流れる。
一方、dc軸に対してd軸が図5に示す位置とは対称の位置にある場合には、iqcは、同様の原理で負に流れる。
また、dc軸とd軸が一致しいている場合には、iqcはゼロとなる。これがθに応じてiqcが変化する理由である。
図6Aは、上述の内容をまとめたものであり、位相推定値の更新前におけるd軸の位置と電流の符号との相関を示すグラフである。図中、横軸にdc軸、縦軸にqc軸をとっている。第一象限及び第三象限においてはiqc>0であり、第二象限及び第四象限においてはiqc<0である。Δθ’は、dc軸を基準とした場合のd軸の位相を示している。
ここで、vdc あるいはvqc を正及び負に変化させる理由は、正又は負のいずれか一方のみの矩形波とすると、モータの一方向の回転が持続し、図6Aに示すグラフにおいてd軸が他の象限に移動してしまうためである。そのため、vdc あるいはvqc を正及び負に変化させてモータを元の位置に戻すこととしている。
つぎに、iqcの発生原理について、下記式(1)で表されるモータ1の電圧方程式の観点から説明する。
ただし、vはd軸電圧[V]、vはq軸電圧[V]、iはd軸電流[A]、iはq軸電流[A]、pは微分演算子、Rは抵抗値である。
上記式(1)において、モータ1の回転速度が低い場合、R>>ωL、R>>ωLとすると、下記式(2)が成り立つ。
ここで、L≒L、dω/dt≒0として、d-q座標系からdc-qc座標系に座標変換すると、下記式(3)が得られる。
ただし、Δθは、d軸を基準とした場合のdc軸の位相[rad]である。
qc=0であるから、上記式(3)の第2行より下記式(4)が成り立つ。
dc軸とd軸とが直交するときに発生する最大トルクをτとすると、運動方程式より下記式(5)が成り立つ。
ただし、Tはvdc の印加時間[s]、τはモータトルク[Nm]、Jはモータ慣性[kg・m]である。
上記式(4)及び(5)より下記式(6)が成り立つ。
ただし、Δθ’は、dc軸を基準とした場合のd軸位相[rad](Δθ’=-Δθ)である。
上記式(6)のcosΔθ’sinΔθ’に着目すると、iqcの符号が図6Aに示すとおりになることが分かる。
上記式(2)から上記式(3)への変形においてL≒Lを仮定したが、厳密にL=Lである場合にも同じ結論を得る。ゆえに、図6Aに示すiqcの符号は、モータ1に突極性がない場合でも保証される。
位相補正量演算部4e1は、θとθdcとの差がゼロに収束するように、iqcの符号に応じてθstepを演算する。
図6Bは、図6Aに示すようにd軸が第一象限にありiqc>0が正である場合を例として、位相推定値の更新後におけるd軸の位置と電流の符号との相関を示したものである。
図6Bに示すように、θstepも正に設定することで、遅延要素演算部4e2による位相推定値の更新によってdc軸がdc’軸まで進み、d軸に近づく。これに伴い、図6Aのqc軸もqc’軸に移動する。
以上が本開示の動作原理であり、その特徴をまとめると、次のとおりである。
(1)矩形波電圧演算部4aは、モータ1が停止している状態でインバータ2の出力電圧を正負に切り替えることにより、モータ1を前後に回転させ、この回転によりモータ1の誘起電圧を発生させる。
(2)位相推定部4eは、誘起電圧によって流れる電流の検出値に基づいてモータ1の回転子位相を推定する。
つぎに、上記の特徴の付加価値を高めるための手段について説明する。
(1)インバータ制御部4は、誘起電圧によって流れる電流のベクトルから出力電圧の位相方向と同じ方向に直交する成分である直交成分iqcを算出し、この直交成分の絶対値が所定値以下になるまで出力電圧の位相を変更する。
(2)位相推定部4eは、位相推定を繰り返す。
これにより、位相推定精度を高めることができる。位相推定の更新ごとに二相・三相変換部4bで用いられるθdcが変更されるため、インバータ2の出力電圧位相が位相推定ごとに変化することになる。
位相推定の変更(更新)において、θstepは、可変値としてもよく、例えば更新回数が増えるほどθstepを減少させてもよい。また、iqcの符号だけではなく、iqcの絶対値に応じてθstepを変更してもよく、例えばiqcの絶対値の大小に合わせてθstepを増減させてもよい。このように、θstepを可変とすることで、少ない更新回数で高い位相推定精度を得ることができる。
位相推定の更新を繰り返した場合、図6Bのdc’軸は、d軸に収束する。
ここで、仮想的にdc軸を固定しd軸が変化するとした場合の挙動について説明する。
図7Aは、dc軸電圧印加時におけるd軸の位置と電流iqcの符号との相関を示すグラフである。図中、横軸にdc軸、縦軸にqc軸をとっている。第一象限及び第三象限においてはiqc>0であり、第二象限及び第四象限においてはiqc<0である。
例えば、第一象限にd軸があった場合には、d軸は、矢印A1に示す経路に沿ってdc軸に収束する。d軸の収束の方向としては、dc軸の他、-dc軸、qc軸、-qc軸の4方向が考えられる。±qc軸方向に関しては、初期時点でのd軸が±qc軸のどちらかに厳密に一致しない限り、d軸は、矢印A1~A4の経路に沿って±qc軸から離れるため、±qc軸には留まらない。
一方、±dc軸方向に関しては、矢印A1と矢印A4、矢印A2と矢印A3がそれぞれ対向しているため、d軸は、±dc軸のどちらにも停留する可能性がある。ここでは、±dc軸方向に収束した場合のd軸をそれぞれ、d軸、d軸とする。d軸がd軸又はd軸のどちらであるかは、iqcのみでは区別することができない。物理的には、磁石磁束がN極であるか、S極であるかを判別できていない状態であり、これを判別することを「極性判別」と呼ぶ。
位相推定の更新においてiqcの絶対値が所定値以下になった場合には、矩形波電圧演算部4aによって正のvqc を設定する(vdc はゼロ)。そして、idcが正である場合にはdc軸方向がN極と判別し、idcが負である場合にはdc軸方向がS極と判別する。
図7Bは、矩形波電圧演算部4aによる正のvqc の設定の具体例を示すものであり、qc軸電圧印加時におけるd軸の位置と電流idcの符号との相関を示すグラフである。図中、横軸にdc軸、縦軸にqc軸をとっている。第一象限及び第三象限においてはidc>0であり、第二象限及び第四象限においてはidc<0である。
このようにして極性判別できる理由について、次に説明する。
正のvqc を設定すると、d軸及びd軸のいずれもqc軸方向に移動し、図5に示す場合と同様に、磁束変化の影響でidcが流れる。idcの符号は、d軸がd軸、d軸のどちらであるかに依存する。idcが正であるならば、d軸が真のd軸であり、これはdc軸方向がN極方向であることを意味する。idcが負であるならば、逆にdc軸方向はS極方向である。以上では、正のvqc を設定した場合について説明したが、負のvqc を設定した場合でも同様に極性判別が可能である。
極性判別をした後、dc軸方向がS極である場合、位相補正量演算部4e1によってθstepを0~180degの範囲で設定し、θdcをオフセット補正することで、モータ1の逆転を防止する。
つぎに、逆転を防止できる理由について説明する。
極性判別が終了した時点において、d軸は、第二象限すなわち位相範囲90~180degにあり、vqc の方向すなわちqc軸方向に逆回転している。逆回転を止めるために正のトルクを出力するには、vqc の位相をd軸に対して0deg~90deg進めればよい。つまり、vqc の望ましい位相範囲は、90~270degであり、図7Bのvqc の位相90degを基準として0~180degの範囲でオフセット補正することで逆転を防止できる。
つぎに、極性判別及び位相オフセット補正について説明する。
図8は、極性判別における電圧、電流及び位相の経時変化を示すグラフである。図中、横軸に時間、縦軸に電圧、電流及び位相をとっている。電圧については、vdc を実線、vqc を破線で示している。電流については、idcを実線、iqcを破線で示している。位相については、θを実線、θdcを破線で示している。
本図に示すように、時刻tにおいては、θは-180degであり、θdcは0degである。時刻tから極性判別を開始する。時刻tにおいて、vqc を正の所定値に設定する。これに伴い、θは180degとなる。
本図においては、時刻tにおけるidcが点P1で示すように所定値よりも小さくなったことから、極性はS極であると判別される。そして、時刻tにおいて、点P2で示すように、θdcを90degオフセット補正している。これにより、θの逆転(減少)は、点P3で示す時刻に止まり、それ以降は正転している。時刻tから点P3で示す時刻までタイムラグがあるのは、モータ1の慣性による。
なお、本図において、時刻t以降は、モータ1の加速を行っているが、この内容については後述する。
極性判別および位相オフセット補正の特徴は、次のとおりである。
(1)位相推定の更新においてiqcの絶対値が所定値以下になった場合には、矩形波電圧演算部4aによって正または負のvqc を設定する。すなわち、位相推定の更新で用いたvdc と比較して、出力電圧の位相を時計方向又は反時計方向のいずれかに90deg進める。
(2)idcの符号に基づいて極性判別を実施し、判別結果がS極である場合には、位相補正量演算部4e1によってθstepを0~180degの範囲で設定し、θdcをオフセット補正する。
言い換えると、インバータ制御部4は、電流の直交成分iqcが絶対値が所定値以下になった場合には、出力電圧の位相を時計方向又は反時計方向のいずれかに90deg進め、位相推定部4eは、出力電圧の位相変更後の電流検出値に基づいてモータの極性判別を実施し、極性判別の結果がS極である場合には、回転子位相の推定値である回転子位相推定値を0~180degの範囲でオフセット補正する。
以上のように、実施例1によれば、モータ1のLとLとが等しい場合でも、位置センサレス制御を実行することができる。
図9は、実施例2のモータ制御システムの一部を構成するインバータ制御部を示す構成図である。ただし、図1と同じ部分については省略している。すなわち、図9においては、インバータ制御部4の構成のみを示している。
本図においては、インバータ制御部4は、図1と同様に、矩形波電圧演算部4a、二相・三相変換部4b、PWM制御部4c、三相・二相変換部4d及び位相推定部4eを有する。そして、図9においては、インバータ制御部4は、d軸・q軸電流指令i 、i よりvdc 、vqc を演算するモータモデル式演算部4fを有する。矩形波電圧演算部4aと二相・三相変換部4bとの間には、矩形波電圧演算部4aとモータモデル式演算部4fを切り替えるスイッチ4gが設けられている。
また、本図においては、位相推定部4eは、図1と同様に、位相補正量演算部4e1及び遅延要素演算部4e2を有する。そして、図9においては、位相推定部4eは、θとθdcとの差分であるΔθの推定値Δθestを計算する位相差推定部4e3と、PLL型位相補正量演算部4e4と、PLL型位相補正量演算部4e4の出力であるPLL型位相補正量θPLLとθstepとを切り替えるスイッチ4e5と、を有する。ここで、PLLは、Phase Locked Loopの略称であり、「位相同期回路」とも呼ばれるものである。
位相差推定部4e3は、モータ1の誘起電圧に基づくオブザーバであり、誘起電圧が発生している駆動中においては位相差推定部4e3のみで位置センサレス制御を実行できる。一方、停止時においては、誘起電圧がゼロであることから、位相差推定部4e3のみでは位置センサレス制御を実行できない。
PLL型位相補正量演算部4e4においては、例えば、θPLLを下記式(7)により算出する。
ただし、ωはモータ1の速度指令[rad/s]、KPLLはPLLゲイン、Tは遅延要素演算部4e2の遅延時間[s]である。
これらの構成によって、停止状態にあるモータ1を加速させることができる点について、次に説明する。
図8においては、時刻tよりモータ1の加速を開始している。
時刻tにおいてスイッチ4gの入力元を矩形波電圧演算部4aからモータモデル式演算部4fに切り替えること(図9)によって、図8の点P4、P5で示すvqc 、vdc はそれぞれ、i 、i に基づいて算出される。これにより、モータ1の加速に必要な電圧が確保される。また、同じタイミングでスイッチ4e5の入力元をθstepからθPLLに切り替える(図9)。その場合、図9に示すように、θdcに関して下記式(8)が成り立つ。
遅延要素演算部4e2で算出される遅延要素及び上記式(7)を考慮すると、下記式(9)が成り立つ。
上記式(9)を微分すると、下記式(10)が成り立つ。
PLLは正であることから、上記式(10)は、θdcに関して安定な方程式であり、θdcはθに収束する。このようにθdcとθとを同期させることを「PLL制御」と呼ぶ。θdc=θを上記式(10)に代入すると、下記式(11)が成り立つ。
上記式(11)より、モータ1の回転速度はωとなる。このため、図8のθdcおよびθは、その傾きがωになるまで増加する。これがモータ1を加速する原理である。なお、θdcは、点P6で示す時刻t3から、上記式(9)又は(10)に従って増加する。
以上のように、実施例2によれば、モータ1の加速を実行することができる。その特徴は、次のとおりである。
(1)位相補正量演算部4e1による位相推定の完了後、モータモデル式演算部4fによりvdc 、vqc を演算する。
(2)位相補正量演算部4e1による位相推定の完了後、位相差推定部4e3およびPLL型位相補正量演算部4e4によって構成されるPLL制御に従ってθdcを演算する。
言い換えると、インバータ制御部4は、モータ1が停止している状態における回転子位相の推定を完了した後、モータモデルに基づいて出力電圧を算出し、位相推定部4eは、回転子位相と回転子位相推定値との差分に基づくPLL制御によって回転子位相推定値を更新する。
図10は、実施例3のモータ制御システムの一部を構成するインバータ制御部を示す構成図である。ただし、図1と同じ部分については省略している。
図10においては、モータ制御システムは、モータ1の誘起電圧を検出する電圧センサ5と、誘起電圧位相θを算出する誘起電圧位相算出部4e6と、誘起電圧振幅aを算出する誘起電圧振幅算出部4e7と、aに基づいてθdcとθとを切り替えるスイッチ4e8と、を備える。本実施例では、説明のため、スイッチ4e8で選択された位相をθdc’としてθdcと区別する。
これらの構成によって、モータ1が回転している状態であってもθを推定できることについて、次に説明する。
図11Aは、モータ回転時における三相の誘起電圧及びその位相の経時変化を示すグラフである。
図11Bは、モータ停止時における三相の誘起電圧及びその位相の経時変化を示すグラフである。
モータ1が回転している状態においては、図11Aに示すように誘起電圧が発生しており、その位相θはθと同期している。そこで、aが所定値以上である場合には、スイッチ4e8をθの方に切り替えることで、誘起電圧に基づいてθを推定できる。
一方、モータ1が停止している状態においては、図11Bに示すように誘起電圧はゼロであるから、aが所定値未満である場合には、スイッチ4e8をθdcの方に切り替えることで、実施例1に従ってθを推定できる。
まとめると、モータ制御システムは、モータ1の誘起電圧を検出する電圧センサ5を更に備え、位相推定部4eは、誘起電圧の検出値が一定値以上であれば誘起電圧の検出値に基づいて回転子位相を推定し、誘起電圧の検出値が一定値未満であれば電流の検出値に基づいて回転子位相を推定する。
以上のように、実施例3によれば、モータ1の回転・停止を問わず、θを推定できる。
図12は、実施例4のモータ制御システムを示す構成図である。ただし、図1と同じ部分については省略している。
図12においては、モータ1は、ファン6の動力源として構成されている。インバータ制御部4は、ファン6の異常を検知する異常検知部4hと、ゲート信号遮断部4iと、を有する。異常検知部4hは、θdcを変更した際のiqcを判別する。異常検知部4hは、θdcによらずiqcの絶対値が所定値以下である場合には、ファン6がロックしたことを表す異常信号Fを出力する。ゲート信号遮断部4iは、Fが出力された場合には、PWM制御部4cから出力されるゲート信号を遮断する。
まとめると、モータ制御システムは、モータ1を動力源とする機構と、機構の異常を検知する異常検知部4hと、を更に備え、異常検知部4hは、出力電圧の位相によらず、電流の検出値の絶対値が所定値以下である場合には、機構がロックしたことを表す異常信号を出力する。
これらの構成によって、ファン6を安全に駆動することができる。
以下、その理由について説明する。
ファン6に異物が挟まりロックした場合、モータ1の回転速度は、ゼロに固定される。この場合、図5に示すΦの位相変化が発生せず、iqcは、任意のθ、θdcに対してゼロとなる。
ロックしていない場合でも、図6Aに示すように、iqcがゼロとなる可能性はあるが、複数のθdcに対してiqcがゼロとなる場合には、それはロックした場合に限られる。ゆえに、θdcを変更した際のiqcを判別し、θdcによらずiqcの絶対値が所定値以下である場合には、ファン6がロックしたと判定できる。ロックしたままインバータ2の運転を継続すると、ファン6の破損、モータ1の焼損などの問題が発生するおそれがある。
そこで、ロック時には、ゲート信号遮断部4iによりゲート信号を遮断し、インバータ2の運転を停止することで、安全を確保する。
ファン6は、他に、ポンプ、自動車、鉄道車両など、モータ1を駆動源とする機構であれば、本開示の構成を同様に適用できる。そのため、実施例4によれば、モータ1を駆動源とする機構の安全を確保することができる。
本開示に係る制御によれば、エンコーダを用いることなくモータ停止状態における回転子位相を推定し、この回転子位相に基づいてインバータ制御を開始することで円滑な加速を実現することができる。
1:モータ、2:インバータ、3:電流センサ、4:インバータ制御部、4a:矩形波電圧演算部、4b:二相・三相変換部、4c:PWM制御部、4d:三相・二相変換部、4e:位相推定部、4e1:位相補正量演算部、4e2:遅延要素演算部、4e3:位相差推定部、4e4:PLL型位相補正量演算部、4e5:スイッチ、4e6:誘起電圧位相算出部、4e7:誘起電圧振幅算出部、4e8:スイッチ、4f:モータモデル式演算部、4g:スイッチ、4h:異常検知部、4i:ゲート信号遮断部、5:電圧センサ、6:ファン。

Claims (12)

  1. モータの電流を検出する電流センサと、
    前記モータと接続されたインバータと、
    前記インバータの出力電圧を制御するインバータ制御部と、
    前記モータの回転子位相を推定する位相推定部と、を備えるモータ制御システムにおいて、
    前記インバータ制御部は、前記インバータを制御して前記モータが停止している状態で前記出力電圧を印加させ、前記出力電圧を正負に切り替えることにより、前記モータを前後に回転させ、この回転により前記モータの誘起電圧を発生させ、
    前記位相推定部は、前記誘起電圧によって流れる前記電流の検出値に基づいて前記回転子位相を推定し、
    前記インバータ制御部は、前記誘起電圧によって流れる前記電流のベクトルから前記出力電圧の位相方向と同じ方向に直交する成分である直交成分を算出し、この直交成分の絶対値が所定値以下になるまで前記出力電圧の位相を変更し、
    前記位相推定部は、位相推定を繰り返すことを特徴とするモータ制御システム。
  2. 請求項記載のモータ制御システムにおいて、
    前記インバータ制御部は、前記電流の直交成分が絶対値が所定値以下になった場合には、前記出力電圧の位相を時計方向又は反時計方向のいずれかに90deg進め、
    前記位相推定部は、前記出力電圧の位相変更後の前記電流の前記検出値に基づいて前記モータの極性判別を実施し、前記極性判別の結果がS極である場合には、前記回転子位相の推定値である回転子位相推定値を0~180degの範囲でオフセット補正することを特徴とするモータ制御システム。
  3. 請求項記載のモータ制御システムにおいて、
    前記インバータ制御部は、前記モータが停止している状態における前記回転子位相の推定を完了した後、モータモデルに基づいて前記出力電圧を算出し、
    前記位相推定部は、前記回転子位相と前記回転子位相推定値との差分に基づくPLL制御によって前記回転子位相推定値を更新することを特徴とするモータ制御システム。
  4. 請求項1記載のモータ制御システムにおいて、
    前記モータの前記誘起電圧を検出する電圧センサを更に備え、
    前記位相推定部は、前記誘起電圧の検出値が一定値以上であれば前記誘起電圧の前記検出値に基づいて前記回転子位相を推定し、前記誘起電圧の前記検出値が一定値未満であれば前記電流の前記検出値に基づいて前記回転子位相を推定することを特徴とするモータ制御システム。
  5. 請求項記載のモータ制御システムにおいて、
    前記モータを動力源とする機構と、前記機構の異常を検知する異常検知部と、を更に備え、
    前記異常検知部は、前記出力電圧の前記位相によらず、前記電流の前記検出値の絶対値が所定値以下である場合には、前記機構がロックしたことを表す異常信号を出力することを特徴とするモータ制御システム。
  6. モータの電流を検出する電流センサと、前記モータと接続されたインバータと、前記インバータの出力電圧を制御するインバータ制御部と、前記モータの回転子位相を推定する位相推定部と、を用いて前記モータの制御をする方法において、
    前記インバータ制御部が、前記インバータを制御して前記モータが停止している状態で前記出力電圧を印加させ、前記出力電圧を正負に切り替えることにより、前記モータを前後に回転させ、この回転により前記モータの誘起電圧を発生させ、
    前記位相推定部が、前記誘起電圧によって流れる前記電流の検出値に基づいて前記回転子位相を推定し、
    前記インバータ制御部が、前記誘起電圧によって流れる前記電流のベクトルから前記出力電圧の位相方向と同じ方向に直交する成分である直交成分を算出し、この直交成分の絶対値が所定値以下になるまで前記出力電圧の位相を変更し、
    前記位相推定部が、位相推定を繰り返すことを特徴とするモータの制御方法。
  7. 請求項記載のモータの制御方法において、
    前記電流の直交成分が絶対値が所定値以下になった場合には、前記インバータ制御部が、前記出力電圧の位相を時計方向又は反時計方向のいずれかに90deg進め、
    前記位相推定部が、前記出力電圧の位相変更後の前記電流の前記検出値に基づいて前記モータの極性判別を実施し、前記極性判別の結果がS極である場合には、前記回転子位相の推定値である回転子位相推定値を0~180degの範囲でオフセット補正することを特徴とするモータの制御方法。
  8. 請求項記載のモータの制御方法において、
    前記モータが停止している状態における前記回転子位相の推定を完了した後、前記インバータ制御部が、モータモデルに基づいて前記出力電圧を算出し、
    前記位相推定部が、前記回転子位相と前記回転子位相推定値との差分に基づくPLL制御によって前記回転子位相推定値を更新することを特徴とするモータの制御方法。
  9. 請求項記載のモータの制御方法において、
    前記位相推定部が、電圧センサにより検出された前記モータの前記誘起電圧の検出値が一定値以上であれば前記誘起電圧の前記検出値に基づいて前記回転子位相を推定し、前記誘起電圧の前記検出値が一定値未満であれば前記電流の前記検出値に基づいて前記回転子位相を推定することを特徴とするモータの制御方法。
  10. 請求項記載のモータの制御方法において、
    前記モータを動力源とする機構の異常を検知する異常検知部が、前記出力電圧の前記位相によらず、前記電流の前記検出値の絶対値が所定値以下である場合には、前記機構がロックしたことを表す異常信号を出力することを特徴とするモータの制御方法。
  11. モータの電流を検出する電流センサと、
    前記モータの誘起電圧を検出する電圧センサと、
    前記モータと接続されたインバータと、
    前記インバータの出力電圧を制御するインバータ制御部と、
    前記モータの回転子位相を推定する位相推定部と、を備えるモータ制御システムにおいて、
    前記インバータ制御部は、前記インバータを制御して前記モータが停止している状態で前記出力電圧を印加させ、前記出力電圧を正負に切り替えることにより、前記モータを前後に回転させ、この回転により前記モータの前記誘起電圧を発生させ、
    前記位相推定部は、前記誘起電圧の検出値が一定値以上であれば前記誘起電圧の前記検出値に基づいて前記回転子位相を推定し、前記誘起電圧の前記検出値が一定値未満であれば前記誘起電圧によって流れる電流の検出値に基づいて前記回転子位相を推定することを特徴とするモータ制御システム。
  12. モータの電流を検出する電流センサと、前記モータの誘起電圧を検出する電圧センサと、前記モータと接続されたインバータと、前記インバータの出力電圧を制御するインバータ制御部と、前記モータの回転子位相を推定する位相推定部と、を用いて前記モータの制御をする方法において、
    前記インバータ制御部が、前記インバータを制御して前記モータが停止している状態で前記出力電圧を印加させ、前記出力電圧を正負に切り替えることにより、前記モータを前後に回転させ、この回転により前記モータの誘起電圧を発生させ、
    前記位相推定部が、前記電圧センサにより検出された前記モータの前記誘起電圧の検出値が一定値以上であれば前記誘起電圧の前記検出値に基づいて前記回転子位相を推定し、前記誘起電圧の前記検出値が一定値未満であれば前記誘起電圧によって流れる前記電流の前記検出値に基づいて前記回転子位相を推定することを特徴とするモータの制御方法。
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