JP7542299B2 - バッテリー用クッション材 - Google Patents

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Description

本発明は、リチウムイオンバッテリー等のバッテリー内部のセル固定用クッション材として使用されるバッテリー用クッション材に関する。
携帯電話、カメラ、ゲーム機器、電子手帳及びパーソナルコンピューター等の電子機器では、発泡体からなる発泡シートがシール材又は衝撃吸収材として広く使用されている。従来、これら用途において使用される発泡シートとしては、熱分解型発泡剤を含む発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを発泡かつ架橋させて得られる架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2014-28925号公報
近年、環境問題及び石油の枯渇問題へ対応するため、電気自動車及びそれに用いるリチウムイオンバッテリー等のバッテリーの開発が盛んに行われている。電気自動車に用いるバッテリーは内部に複数のセルを有しており、充放電時に膨脹及び収縮を繰り返している。よって、複数のセルの間には、当該膨脹及び収縮に追従することができる柔軟なバッテリー用クッション材を配置することが望まれている。また、クッション材は、柔軟性を有するだけでは足りず、セルがバッテリーの筐体内で移動しないように固定する必要がある。しかしながら、これらの要求を満たすクッション材は今のところ開発されていない。
本発明は、上記従来の課題を鑑みてなされたものであり、バッテリー内に配置されたセルの膨脹及び収縮に追従することができ、且つセルがバッテリーの筐体内で移動しないように固定することができるバッテリー用クッション材を提供する。
本発明は下記[1]~[9]を要旨とする。
[1]樹脂発泡層を備えるバッテリー用クッション材であって、
前記樹脂発泡層の剪断方向へ1mm変形時の剪断強度が0.1~5.0MPaである、バッテリー用クッション材。
[2]前記樹脂発泡層を構成する樹脂は、ポリオレフィン系樹脂及びゴム系樹脂からなる群から選ばれる1種以上である、上記[1]に記載のバッテリー用クッション材。
[3]前記樹脂発泡層を構成する樹脂は、ポリオレフィン系樹脂である、上記[1]又は[2]に記載のバッテリー用クッション材。
[4]前記樹脂発泡層の最大剪断強度が1.0~10.0MPaである、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載のバッテリー用クッション材。
[5]前記樹脂発泡層の50%圧縮応力が50~1,000kPaである、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載のバッテリー用クッション材。
[6]前記樹脂発泡層の厚さが1.0~7.0mmである、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載のバッテリー用クッション材。
[7]前記樹脂発泡層における発泡体の発泡倍率が3.0~35.0倍である、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載のバッテリー用クッション材。
[8]前記樹脂発泡層における発泡体の独立気泡率が80%以上である、上記[1]~[7]のいずれか1項に記載のバッテリー用クッション材。
[9]前記樹脂発泡層の表層の少なくとも一部に接着層を備える、上記[1]~[8]のいずれか1項に記載のバッテリー用クッション材。
本発明によれば、バッテリー内に配置されたセルの膨脹及び収縮に追従することができ、且つセルがバッテリーの筐体内で移動しないように固定することができるバッテリー用クッション材を提供することができる。
本発明のバッテリー用クッション材を示す模式的な断面図である。
[バッテリー用クッション材]
本発明のバッテリー用クッション材は、樹脂発泡層を備えるバッテリー用クッション材であって、樹脂発泡層の剪断方向へ1mm変形時の剪断強度が0.1~5.0MPaである。
本発明においては、樹脂発泡層の剪断方向へ1mm変形時の剪断強度が上記範囲内であるバッテリー用クッション材をバッテリーのセルとセルとの間に配置した場合、セルの膨脹及び収縮に追従することができる柔軟性を有し、且つセルの膨脹及び収縮に追従しつつセルのせん断方向への移動を規制できるため、セルを安定して固定することが可能になる。
本発明のバッテリー用クッション材の使用態様の一例について図1を用いて説明する。図1はラミネート型リチウムイオンバッテリー10を示す模式的な断面図である。ラミネート型リチウムイオンバッテリー10は、バッテリー用クッション材11A~11Cと、セル12A及び12Bとが交互に積層された積層体と、これを挟むように積層された2枚の金属板13A及び13Bと、金属板13A及び13Bと筐体10Aとの間に配置された緩衝材14A及び14Bとで構成されている。
本発明のバッテリー用クッション材は、通常、筐体10A内においてセルと交互に積層されている。図1においては、バッテリー用クッション材11A~11Cと、セル12A及び12Bとが交互に合計5層積層されているが、積層数は任意の数とすることができる。本発明のバッテリー用クッション材は発泡樹脂層を一部に有するものであって適度な柔軟性を有しているため、セルとセルとの間に隙間なく配置され、これにより、筐体内でセルが移動しにくくなっている。特に本発明のバッテリー用クッション材は、樹脂発泡層の剪断方向へ1mm変形時の剪断強度が一定範囲内であるバッテリー用クッション材であるため、適度な柔軟性を有しており、バッテリーの充電時にセルが膨脹した場合であっても破断することなく、セルとセルとの間に存在することができる。一方、バッテリーの放電時にセルが収縮した場合であっても、バッテリー用クッション材がセル表面に追従するように密着するため、セルの移動を抑制することができる。
なお、図1のラミネート型リチウムイオンバッテリー10は、筐体10Aと金属板13B及び13Bとの間に緩衝材14A及び14Bを有するものであるが、本発明のバッテリー用クッション材は、緩衝材14A及び14Bとして用いるもことが可能である。
<樹脂発泡層の剪断方向へ1mm変形時の剪断強度>
本発明のバッテリー用クッション材は、樹脂発泡層の剪断方向へ1mm変形時の剪断強度が0.1~5.0MPaである。樹脂発泡層の剪断方向へ1mm変形時の剪断強度が0.1MPa未満である場合は、機械強度が足りないため破断してしまい、また、セルがバッテリーの筐体内で移動しないように固定することができない。樹脂発泡層の剪断方向へ1mm変形時の剪断強度が5.0MPaを超える場合、柔軟性がなくなり、セルの膨脹及び収縮に追従することができない。これらの観点から、樹脂発泡層の剪断方向へ1mm変形時の剪断強度は、0.15~5.0MPaであることが好ましく、0.3~4.9MPaであることがより好ましく、0.5~3.0MPaであることがさらに好ましい。
なお、樹脂発泡層の剪断方向へ1mm変形時の剪断強度は、実施例に記載の方法で測定することができる。
本発明においてはバッテリー用クッション材が、樹脂発泡層の1層のみからなる場合は、樹脂発泡層の剪断方向へ1mm変形時の剪断強度が上記範囲内であればよい。同様に、本発明のバッテリー用クッション材が樹脂発泡層と後述する接着層などを備える積層体である場合も、樹脂発泡層の剪断方向へ1mm変形時の剪断強度が上記範囲内であればよい。ただし、バッテリー用クッション材は、接着層を有する場合も、樹脂発泡層が主に剪断変形するから、実質的には樹脂発泡層の剪断強度と同じになる。
<樹脂発泡層の最大剪断強度>
樹脂発泡層の最大剪断強度は、1.0~10.0MPaであることが好ましく、1.3~7.0MPaであることがより好ましく、1.8~5.0MPaであることがさらに好ましい。樹脂発泡層の最大剪断強度が上記範囲内であると、バッテリー内に配置されたセルの充放電時の膨脹及び収縮に追従した際に、破断することがなく、安定してセルを固定することができる。
なお、樹脂発泡層の最大剪断強度は、実施例に記載の方法で測定することができる。
<樹脂発泡層の50%圧縮応力>
樹脂発泡層の50%圧縮応力は、50~1,000kPaであることが好ましく、60~500kPaであることがより好ましく、70~400kPaであることがさらに好ましい。樹脂発泡層の50%圧縮応力が上記範囲内であると、バッテリー内に配置されたセルの充放電時の膨脹及び収縮に追従しやすくなり、樹脂発泡層とセルとの密着性も向上する。また、バッテリーへの組み付け性が向上する。
なお、50%圧縮応力は実施例に記載の方法により測定することができる。
<樹脂発泡層の厚さ>
樹脂発泡層の厚さは、1.0~7.0mmであることが好ましく、1.2~5.0mmであることがより好ましく、1.4~3.0mmであることがさらに好ましい。厚さが上記範囲内であるとバッテリー内に配置されたセルの充放電時の膨脹及び収縮に追従しやすくなると共に、適度な機械強度を備える樹脂発泡層になる。
<発泡倍率>
樹脂発泡層の発泡倍率は、3.0~35.0倍であることが好ましく、4.0~30.0倍であることがより好ましく、8.0~21.0倍であることがさらに好ましい。発泡倍率を上記下限値以上とすることにより柔軟性を向上させることができ、セルの膨脹及び収縮に追従しやすくなる。一方、発泡倍率を上記上限値以下とすることにより、柔軟性を維持しつつ、剪断強度が高い発泡体を得ることが可能になる。剪断強度が高いと、セル同士が互いに異なる水平方向に移動して発泡体に剪断力が加わった場合でも樹脂発泡層が破壊することなくセルを固定することが可能になる。
なお、発泡倍率は実施例に記載の方法で測定することができる。
<樹脂発泡層の独立気泡率>
樹脂発泡層は、バッテリーを固定する必要があり、反発力が必要という観点から独立気泡であってもよく、その場合の独立気泡率は80%以上であることが好ましい。この観点から、80~100%であることが好ましく、85~100%であることがより好ましく、90~100%であることがさらに好ましい。本発明に用いる樹脂発泡層は、その気泡が全て独立気泡である必要はなく、気泡の一部に連続気泡が含まれていてもよい。
本発明における独立気泡率とは、下記の要領で測定されたものをいう。
まず、樹脂発泡層から一辺が5cmの平面正方形状で且つ一定厚さの試験片を切り出す。そして、試験片の厚さを測定して試験片の見掛け体積Vを算出すると共に、試験片の重量Wを測定する。
次に、気泡の占める体積Vを下記式に基づいて算出する。なお、試験片を構成している樹脂の密度はρg/cmとする。
気泡の占める体積V=V-W/ρ
続いて、試験片を23℃の蒸留水中に水面から100mmの深さに沈めて、試験片に15kPaの圧力を3分間に亘って加える。その後、試験片を蒸留水中から取り出して、試験片の表面に付着した水分を除去して試験片の重量Wを測定し、下記式に基づいて連続気泡率F及び独立気泡率Fを算出する。
連続気泡率F(%)=(W-W)/V×100
独立気泡率F(%)=100-F
<樹脂発泡層の見掛け密度>
樹脂発泡層の見掛け密度は、発泡体の柔軟性を向上させ、セルの膨脹及び収縮に追従しやすくする観点から、15~500kg/mであることが好ましく、25~300kg/mであることがより好ましく、45~150kg/mであることがさらに好ましい。見掛け密度が上記範囲内であると、反発力が高くなりすぎないため、施工性が良好になる。
なお、見掛け密度は実施例に記載の方法で測定することができる。
また、本発明の樹脂発泡層は、架橋されたものであることが好ましい。樹脂発泡層が、架橋されたうえで発泡されることで、径が小さい気泡を有する樹脂発泡層を得ることができる。径が小さい気泡を有する樹脂発泡層は、その表面が平滑となりやすく、セル又は接着層に対する接触面積が大きくなるため、セル又は接着層に対する密着性が向上する。
以下、本発明の樹脂発泡層に用いる各成分について詳細に説明する。
<樹脂発泡層を構成する樹脂>
本発明の樹脂発泡層を構成する樹脂は、ポリオレフィン系樹脂及びゴム系樹脂からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、特に、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。
本発明において樹脂発泡層を構成する樹脂の含有量は、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。樹脂の含有量が、上記範囲内であると柔軟性を有し、且つ機械強度に優れる樹脂発泡層を得ることができる。
〔ポリオレフィン系樹脂〕
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらの中でも、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂から選ばれる1種以上が好ましい。
≪ポリエチレン樹脂≫
ポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂(0.93g/cm以下、LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(0.930g/cmより大きく0.942g/cm未満、MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(0.942g/cm以上、HDPE)が挙げられる。これらの中では低密度ポリエチレン樹脂が好ましい。また、低密度ポリエチレン樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)であってもよい。
≪ポリプロピレン樹脂≫
ポリプロピレン樹脂としては、プロピレンの単独重合体であるホモポリプロピレンでもよいし、プロピレンを主成分(全モノマーの好ましくは75質量%以上、より好ましくは90質量%以上)とした、プロピレンと少量のエチレン及びプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体等が挙げられる。
プロピレンと、エチレン及びプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、ランダムブロック共重合体等が挙げられるが、これらの中でも、ランダム共重合体(すなわち、ランダムポリプロピレン)が好ましい。
プロピレン以外のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン等の炭素数4~10程度のα-オレフィン等が挙げられるが、これらの中でも、成形性及び耐熱性の観点から、エチレンが好ましい。なお、共重合体において、これらのα-オレフィンは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ポリプロピレン樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
≪エチレン-酢酸ビニル共重合体≫
ポリオレフィン系樹脂として使用するエチレン-酢酸ビニル共重合体は、例えば、エチレン由来の構成単位を50質量%以上含有するエチレン-酢酸ビニル共重合体が挙げられる。エチレン-酢酸ビニル共重合体の密度は、0.92g/cm以上であることが好ましく、0.93g/cm以上であることがより好ましく、0.94g/cm以上であることがさらに好ましい。また、エチレン-酢酸ビニル共重合体の密度は、0.97g/cm以下であることが好ましく、0.96g/cm以下であることが好ましい。エチレン-酢酸ビニル共重合体の密度をこれら範囲内とすることで、樹脂発泡層の柔軟性を損なうことなく、圧縮強度等を低くしやすくなる。
本発明においては、チーグラー・ナッタ化合物、メタロセン化合物、酸化クロム化合物等の重合触媒で重合されたポリエチレン樹脂、又はポリプロピレン樹脂のいずれを用いてもよい。メタロセン化合物の重合触媒により得られた、ポリエチレン樹脂、特に直鎖状低密度ポリエチレンを用いることにより、柔軟性が高く、高い衝撃吸収性を有する樹脂発泡層を得やすくなる。
〔ゴム系樹脂〕
ゴム系樹脂としては、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン-イソプレンブロック共重合体及び水素添加スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体等が挙げられる。また、ゴム系樹脂は、これらゴム系樹脂を1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
〔添加剤〕
本発明における樹脂発泡層は、上記樹脂と、発泡剤とを含む発泡性組成物を発泡することで得られる。発泡剤としては、熱分解型発泡剤が好ましい。
熱分解型発泡剤としては、有機発泡剤及び無機発泡剤が使用可能である。
有機発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸金属塩(アゾジカルボン酸バリウム等)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、ヒドラゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体、トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物等が挙げられる。
無機発泡剤としては、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等が挙げられる。
これらの中では、微細な気泡を得る観点、及び経済性、安全面の観点から、アゾ化合物が好ましく、アゾジカルボンアミドがより好ましい。
熱分解型発泡剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
発泡性樹脂組成物における発泡剤の配合量は、樹脂100質量部に対して、1~20質量部が好ましく、1.5~15質量部がより好ましく、3~10質量部がさらに好ましい。発泡剤の配合量を1質量部以上にすることで、適度な柔軟性と衝撃吸収性を樹脂発泡層に付与することが可能になる。また、発泡剤の配合量を20質量部以下にすることで、樹脂発泡層が必要以上に発泡することが防止され、樹脂発泡層の機械強度等を良好にすることができる。
発泡性樹脂組成物には、酸化防止剤が配合されていてもよい。酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤は、例えば樹脂100質量部に対して0.01~5質量部配合される。
発泡性樹脂組成物には、潤滑剤が配合されていてもよい。潤滑剤は、溶融物の流体力学的性質を調整し、混合物を押出機から押し出す際の事前発泡を防ぐことができるものである。潤滑剤としては、具体的には、ステアリン酸亜鉛などの脂肪酸金属塩、グリコールモノステアレートなどのエステル系化合物、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミドなどの脂肪酸アミド化合物、低分子量ワックス、フッ素化重合体等が挙げられる。潤滑剤は、例えば樹脂100質量部に対して0.5~5質量部配合される。これらのなかでは、ステアリン酸亜鉛が好ましい。
発泡性樹脂組成物には、発泡助剤が配合されていてもよい。発泡助剤は、熱分解型発泡剤の分解温度を低くしたり、分解速度を速めたり調節するものとして配合されるものである。発泡助剤としては、具体的には、酸化亜鉛、尿素等が挙げられる。発泡助剤は、樹脂発泡層の表面状態等を調整するために、例えば樹脂100質量部に対して0.01~5質量部配合される。
発泡性樹脂組成物には、着色剤が配合されていてもよい。着色剤は、樹脂発泡層の色を調整するものとして配合されるものである。着色剤としては、具体的には、顔料、染料等が挙げられる。着色剤は、例えば樹脂100質量部に対して0.5~5質量部配合される。
発泡性樹脂組成物は、必要に応じて、上記以外にも、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、充填材等の発泡体に一般的に使用する添加剤を含有していてもよい。
<樹脂発泡層のその他の構成>
本発明のバッテリー用クッション材は、樹脂発泡層の1層のみからなってもよく、また、樹脂発泡層と、接着層との積層体であってもよい。接着層は、バッテリー用クッション材をセルなどの他の部材に接着させるための層であり、樹脂発泡層の表層の少なくとも一部に設けられればよい。接着層は、好ましくは感圧接着性を有する。接着層としては、粘着剤層、両面粘着テープ、及び密着層の少なくともいずれかであるとよい。接着層は、樹脂発泡層の少なくとも一方の面に設けられるとよいが、両面に設けられることが好ましい。両面に設けられることで、バッテリー用クッション材がセルとセルの間に配置された際に、両方のセルに接着層を介して接着できる。
以下、本発明に用いる粘着剤層、両面粘着テープ、及び密着層について説明する。
〔粘着剤層〕
粘着剤層は、樹脂発泡層の表層の全面に設けられてもよいし、樹脂発泡層の表層の少なくとも一部に設けられていればよい。粘着剤層は、樹脂発泡層の表層の両面に設けられていてもよいし、樹脂発泡層の表層の一方の面に設けられていてもよいが、両面に設けられることが好ましい。
粘着剤層の厚さは、5~200μmであることが好ましく、7~150μmであることがより好ましく、10~100μmであることがさらに好ましい。粘着剤層の厚さが上記範囲内であると、バッテリー用クッション材の厚さを薄くできる。
粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に制限はなく、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。
樹脂発泡層の表層の少なくとも一部に粘着剤を塗布して粘着剤層を形成する方法としては、例えば、樹脂発泡層の表層の少なくとも一部にコーター等の塗工機を用いて粘着剤を塗布する方法、樹脂発泡層の表層の少なくとも一部にスプレーを用いて粘着剤を噴霧、塗布する方法、樹脂発泡層の表層の少なくとも一部に刷毛を用いて粘着剤を塗布する方法等が挙げられる。
〔両面粘着テープ〕
両面粘着テープは、基材と、基材の両面に設けられた粘着剤層とを備えるものであり、一方の粘着剤層が樹脂発泡層の表層に貼着されるとともに、他方の粘着剤層がセル等の他の部材に接着されるものである。両面粘着テープに設けられる基材は、樹脂フィルム、紙基材、不織布等の従来両面粘着テープに設けられる各種基材を使用可能である。また、両面粘着テープの粘着剤層に使用される粘着剤は、上記した粘着剤が使用される。なお、両面粘着テープの厚さは、上記した粘着剤層の厚さと同様の厚さを有していればよい。
〔密着層〕
密着層は、樹脂発泡層の表層の全面に設けられてもよいし、樹脂発泡層の表層の少なくとも一部に設けられていればよい。密着層は、樹脂発泡層の表層の両面に設けられていてもよいし、樹脂発泡層の表層の一方の面に設けられていてもよい。
密着層の厚さは、0.01~2.0mmであることが好ましく、0.03~1.0mmであることがより好ましく、0.05~0.5mmであることがさらに好ましい。密着層の厚さが上記範囲内であると、十分な機械強度及び密着性を備えた密着層が得られる。
密着層を構成する成分としては、特に制限はなく、ゴム成分及び石油樹脂系粘着付与剤を含むものを使用できる。ゴム成分及び石油樹脂系粘着付与剤を併用することにより密着層の粘着力を所望の範囲内に調整しやすくなる。密着層は、ゴム成分及び石油樹脂系粘着付与剤以外にも適宜添加剤を含有してもよい。
≪ゴム成分≫
ゴム成分は、ブチルゴム及びエチレン-プロピレン-ジエンゴムの合計含有量が80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることがよりさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましくい。ブチルゴム及びエチレン-プロピレン-ジエンゴムの合計含有量が上記範囲であると、密着層とセルとの密着性が向上し、密着層(バッテリー用クッション材)がセルの充放電時の膨脹及び収縮に追従しやすくなる。
ゴム成分は、ブチルゴム及びエチレン-プロピレン-ジエンゴム以外のゴムを含有していてもよい。その他のゴムとしては、室温(25℃)でゴム弾性(rubber elasticity)を有するものであれば特に制限はなく、例えば、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム、スチレン-ブタジエン共重合ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ウレタンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、及びシリコーンゴム等が挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
≪石油樹脂系粘着付与剤≫
密着層には、バッテリー用クッション材とセルとの密着性を向上させることを目的として、石油樹脂系粘着付与剤を用いることが好ましい。本発明において、石油樹脂系粘着付与剤とは、石油ナフサ等の熱分解により得られる不飽和炭化水素を含む留分をカチオン重合した粘着付与剤をいう。
石油樹脂系粘着付与剤としては、C5系石油樹脂粘着付与剤、C9系石油樹脂粘着付与剤、C5-C9共重合系石油樹脂粘着付与剤、クマロン樹脂粘着付与剤、クマロン-インデン系樹脂粘着付与剤、ピュアモノマー樹脂粘着付与剤、ジシクロペンダジエン系石油樹脂粘着付与剤、及びこれらの水素化物からなる粘着付与剤が挙げられる。
これらの中でも、バッテリー用クッション材とセルとの密着性を向上させる観点、及びゴム成分との相溶性の観点から、C5系石油樹脂粘着付与剤、C9系石油樹脂粘着付与剤、C5-C9共重合系石油樹脂粘着付与剤が好ましく、C5系石油樹脂粘着付与剤がより好ましい。
ゴム成分100質量部に対する石油樹脂系粘着付与剤の含有量は、バッテリー用クッション材のセルとの密着性を向上させる観点から、0.5~20質量部であることが好ましく、1.5~15質量部であることがより好ましく、3~12質量部であることがさらに好ましい。ゴム成分100質量部に対する石油樹脂系粘着付与剤の含有量が、上記下限値以上であると、セルを固定するのに十分な密着性を得ることができ、上記上限値以下であると押出成形性が向上する。
樹脂発泡層の表層の少なくとも一部に密着層を形成する方法としては、例えば、ゴム成分、石油樹脂系粘着付与剤及び添加剤を押出機にて溶融混練した後、押出成形、カレンダー成形、インフレーション成形、又は樹脂を溶液状に溶かした後に蒸発させ樹脂だけを抽出する溶液キャスト成形を行うことにより得ることができる。密着層の成形方法としては、生産性等の観点から、押出成形が好ましい。
<樹脂発泡層の製造方法>
以下、本発明に用いる樹脂発泡層の製造方法について説明する。樹脂発泡層の製造方法としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂及びゴム系樹脂から選ばれる1種以上の樹脂と発泡剤とを含有する発泡性樹脂シートに電離性放射線を照射して発泡性樹脂シートを架橋した後、架橋された発泡性樹脂シートを加熱して発泡剤を発泡させることにより製造する方法が挙げられる。ただし、樹脂発泡層の製造方法は、以上の方法に限定されず、例えば架橋が省略されてもよい。
〔発泡性樹脂シートの製造方法〕
発泡性樹脂シートの製造方法としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂及びゴム系樹脂から選ばれる1種以上の樹脂、発泡剤及び任意成分を、バンバリーミキサー、加圧ニーダ等の混練り機を用いて混練した後、押出機、カレンダー、コンベアベルトキャスティング等により連続的に混練する方法が挙げられる。
〔発泡性樹脂シートの架橋方法〕
発泡性樹脂シートを架橋する方法としては、電離性放射線による架橋が好ましい。電離性放射線により架橋処理することにより均一に架橋された発泡性樹脂シートが得られ、この均一に架橋された発泡性樹脂シートを発泡させることにより径が小さく均一な気泡を有する樹脂発泡層を得ることができる。径が小さく均一な気泡を有する樹脂発泡層は、その表面が平滑であって、粘着剤層及び密着層に対する接触面積が大きくなるため、樹脂発泡層と粘着剤層及び密着層との密着性が向上する。
電離性放射線の発泡性樹脂シートへの照射量は、ゴム系樹脂の特性によって適宜調整すればよいが、0.5~10Mradが好ましく、0.7~5.0Mradがより好ましい。
〔発泡性樹脂シートの発泡方法〕
発泡性樹脂シートを発泡させる方法としては、オーブンのようなバッチ方式、及び発泡性樹脂シートを長尺のシート状として連続的に加熱炉内を通す連続発泡方式を挙げることができる。
発泡性樹脂シートを発泡させる際の温度は、使用する発泡剤の種類にもよるが、200~300℃であることが好ましく、220~260℃であることがより好ましい。
<バッテリー用クッション材の製造方法>
本発明のバッテリー用クッション材が、ポリオレフィン系樹脂及びゴム系樹脂から選ばれる1種以上の樹脂と発泡剤とを含有する発泡性樹脂シートを発泡させてなる樹脂発泡層の1層のみからなる場合の製造方法は、上記樹脂発泡層の製造方法と同じである。
一方、本発明のバッテリー用クッション材が樹脂発泡層と、接着層との積層体である場合は、例えば、上記方法により製造した樹脂発泡層と、粘着剤層、密着層、両面粘着テープなどの少なくともいずれかを樹脂発泡層の表層に、上記方法によって設けることにより製造することができる。
本発明のバッテリー用クッション材は、適度な柔軟性を有することで、バッテリー内のセルが充放電時に膨脹及び収縮した場合であっても、密着した状態で追従することができる。また、本発明のバッテリー用クッション材は、樹脂発泡層が上記したせん断強度を有することでセルが筐体内で移動しないように規制することができるので、バッテリー内に積層された複数のセル間に配置されるクッション材として好適である。よって、本発明のバッテリー用クッション材は、このような構成を採用するラミネート型リチウムイオンバッテリーに特に好適に用いることができる。
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例で使用した材料は以下のとおりである。
<樹脂発泡層の材料>
・ポリオレフィン系樹脂
日本ポリエチレン株式会社製「LE520H」、低密度ポリエチレン樹脂
・発泡剤(ADCA;アゾジカルボンアミド)
大塚化学株式会社製「ユニホームSO-L」
・酸化防止剤
株式会社ADEKA製「アデカスタブ328S」
・潤滑剤
堺化学工業株式会社製「SZ-2000」、ステアリン酸亜鉛
・発泡助剤
堺化学工業株式会社製「ZNO」、酸化亜鉛
・着色剤(顔料)
堺化学工業株式会社製「SR-1」
実施例1
<バッテリー用クッション材(樹脂発泡層)の製造>
ポリオレフィン系樹脂を100質量部、ADCA(アゾジカルボンアミド)を5.0質量部、酸化防止剤を0.2質量部、潤滑剤を2.0質量部、発泡助剤を0.2質量部、着色剤(顔料)を1.0質量部とした材料を用意した。用意した材料を押出機にて供給し溶融混練しながら、押出機から押出速度50kg/時間にて押出すことにより発泡性樹脂シートを製造した。
続いて、発泡性樹脂シートの両面に加圧電圧500keVにて電離性放射線にて3.6Mrad照射することにより、発泡性樹脂シートを架橋した状態とした。
そして、架橋した状態の発泡性樹脂シートを発泡炉中に供給し240℃にて加熱することにより、発泡性樹脂シート中の発泡剤を発泡して、見掛け密度99kg/m、独立気泡率96%、厚さ2.0mmのバッテリー用クッション材(樹脂発泡層)を得た。
実施例2~5及び比較例1~3
表1に記載の配合とし、表1に記載の樹脂発泡層の発泡倍率及び見掛け密度となるようにしたこと以外は、実施例1と同様の方法によりバッテリー用クッション材(樹脂発泡層)を得た。
[測定方法]
本実施例における各物性の測定方法は、次の通りである。
<発泡倍率>
発泡倍率は、発泡前の発泡性シートの密度を、発泡後の発泡体の密度(見掛け密度)で除することで算出した。
<見掛け密度>
発泡体の見掛け密度は、JIS K7222:2005に準拠して測定した。
<独立気泡率>
明細書に上述した方法により測定した。
<剪断方向へ1mm変形時の剪断強度>
実施例及び比較例で得られたバッテリー用クッション材(樹脂発泡層)を幅30mm、長さ30mmにカットして試験片を作製した。この試験片を試料よりも大きな面積のポリエステル板に接着剤で貼り合わせて放置した。1時間後試験片を元の厚さの50%まで圧縮させながら、万能材料試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、テンシロン万能材料試験機、RTF-1310)で把持し、引張り速度50.0±0.2mm/分で引張り試験機を動かして、測定を開始し、測定を開始後、剪断方向に1mm移動したときの剪断強度を測定した。
<最大剪断強度>
実施例及び比較例で得られたバッテリー用クッション材(樹脂発泡層)を幅30mm、長さ30mmにカットして試験片を作製した。この試験片を試料よりも大きな面積のポリエステル板に接着剤で貼り合わせて放置した。1時間後試験片を元の厚さの50%まで圧縮させながら、万能材料試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、テンシロン万能材料試験機、RTF-1310)で把持し、引張り速度50.0±0.2mm/分で引張り試験機を動かして、バッテリー用クッション材(樹脂発泡層)を破断させ、その際の最大剪断強度を測定した。
<50%圧縮応力>
実施例及び比較例で得られたバッテリー用クッション材(樹脂発泡層)を長さ50mm、幅50mmに切断して試験片を作製し、この試験片を厚さ25mmの直方体にするために積層して試料を作製した。23℃の温度下で10mm/分の速度で試料を圧縮させ12.5mm(もとの厚さの50%分に圧縮)になったときの応力(歪み)を万能材料試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、テンシロン万能材料試験機、RTF-1310)にて測定した。
実施例及び比較例で得られたバッテリー用クッション材(樹脂発泡層)について、剪断耐久性評価及び柔軟性評価を以下のとおり行った。
<剪断耐久性評価>
実施例及び比較例で得られたバッテリー用クッション材(樹脂発泡層)を幅30mm、長さ30mmにカットして試験片を作製した。この試験片を試料よりも大きな面積のポリエステル板で試料を挟み、貼り合わせて放置した。1時間後試験片を元の厚さの50%まで圧縮させながら、万能材料試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、テンシロン万能材料試験機、RTF-1310)で把持し、50.0±0.2mm/分で圧縮、引張りを10往復繰り返した後、水平な台の上にのせて剪断方向のズレを確認し、以下の基準で評価した。
A:剪断方向のズレが2.0mm未満
B:剪断方向のズレが2.0mm以上
<柔軟性評価>
実施例及び比較例で得られたバッテリー用クッション材(樹脂発泡層)の50%圧縮応力により、以下の評価基準で柔軟性を評価した。
A:50%圧縮応力が1000kPa以下
B:50%圧縮応力が1000kPa超
表1に示す結果から明らかなように、本実施例によれば、柔軟でありながらも、適度に剪断方向の移動を規制できるバッテリー用クッション材を得ることができた。
10 ラミネート型リチウムイオンバッテリー
10A 筐体
11A,11B,11C バッテリー用クッション材
12A,12B セル
13A,13B 金属板
14A,14B 緩衝材

Claims (5)

  1. 樹脂発泡層を備えるバッテリー用クッション材であって、
    前記樹脂発泡層の剪断方向へ1mm変形時の剪断強度が0.1~5.0MPaであり、
    前記樹脂発泡層を構成する樹脂は、ポリオレフィン系樹脂であり、
    前記樹脂発泡層における発泡体の独立気泡率が80%以上であり、
    前記樹脂発泡層の見掛け密度が34~300kg/mである、バッテリー用クッション材。
  2. 前記樹脂発泡層の最大剪断強度が1.0~10.0MPaである、請求項1に記載のバッテリー用クッション材。
  3. 前記樹脂発泡層の50%圧縮応力が50~1,000kPaである、請求項1又は2に記載のバッテリー用クッション材。
  4. 前記樹脂発泡層における発泡体の発泡倍率が8.021.0倍である、請求項1又は2に記載のバッテリー用クッション材。
  5. 前記樹脂発泡層の表層の少なくとも一部に接着層を備える、請求項1又は2に記載のバッテリー用クッション材。
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