JP7533812B1 - 熱可塑性樹脂組成物、成形品及び複合構造体並びにそれらの製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物、成形品及び複合構造体並びにそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

接合強度と耐冷熱衝撃性に優れる接合部材用熱可塑性樹脂成形品、当該成形品を提供可能な接合部材用熱可塑性樹脂組成物及びそれらの製造方法を提供すること。さらに詳しくは、熱可塑性樹脂と酸化グラフェンを配合した樹脂組成物であって、前記酸化グラフェンの配合量が熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1~15質量部である接合部材用熱可塑性樹脂組成物、成形品及び複合構造体並びにその製造方法。【選択図】 なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物、成形品及び複合構造体並びにそれらの製造方法に関する。
近年、材料や製品の高機能化需要に対して、各部品や部位の要求特性に合わせて樹脂や金属といった異種材料を接合し、一体化することで新たな複合部品を製造するマルチマテリアル化は、非常に有効な手法として浸透しつつある。当初はボルトやかしめ等による機械的な接合が一般的であったが、近年は部品数や工数の削減及び部品の軽量化を目的として、インサート成形や各種溶着手法等を用いた直接的な接合方法の検討が盛んである。このような直接的接合においては、機械的な接合に比べて接合強度が低いことや、また、材料間の熱膨張率差や収縮率の異方性によって、実使用環境下の温度変化による接合界面劣化や、それに起因する界面剥離や気密性低下を生じやすいことから、高い接合強度と耐冷熱衝撃性が求められている。
材料を接合した際の界面は、アンカー効果による物理的結合や、水素結合等による化学的結合が形成される。よって、高い接合強度を得る方法としては、例えば、接合面の表面積を大きくする方法や、反応性官能基を有する樹脂や添加剤を配合した樹脂組成物を用いる方法、接合前の部品を表面改質する方法等によってこれらの結合を多くする手法が一般的である。また、耐冷熱衝撃性を向上させる方法としては、例えば、温度変化の影響を受けづらい接合形状を用いる方法がある。
例えば、無機充填剤を含有し、該無機充填剤が露出された溝が形成されている溝付き樹脂成形品が開示されている(特許文献1等)。また、酸素含有被膜を有する金属基材に接合される、酸素含有皮膜と反応する官能基を有する添加剤化合物を含有する熱可塑性樹脂が開示されている(特許文献2等)。また、樹脂部材同士の接着強度を上げるために、接着面を真空紫外光を照射する方法が開示されている(特許文献3等)。また、低温時の融着部の剥離を抑制するために、突出部と接合部との間に基部から垂直に立ち上がる界面を形成する方法が開示されている(特許文献4等)。しかしながら、得られる接合強度は十分ではなく、また、高い接合強度を得られたとしても耐冷熱衝撃性が不十分であったり、組成制御による接合部材の限定や表面粗化条件の制御による煩雑な工程を必要としたりするため、生産性が悪いという課題があり、更なる改善が求められていた。
特開2015-91642号公報 国際公開2014/157289号パンフレット 特開2009-173894号公報 特開2018-14908号公報
そこで本発明が解決しようとする課題は、生産性に影響を与えることなく接合強度にすぐれ、かつ、良好な耐冷熱衝撃性を有する接合部材用熱可塑性樹脂成形品、当該成形品を提供可能な接合部材用熱可塑性樹脂組成物及びそれらの製造方法を提供することにある。
本願発明者らは種々の検討を行った結果、熱可塑性樹脂に特定量の酸化グラフェンを配合することで、接合強度に優れ、かつ、良好な耐冷熱衝撃性を有する接合部材用成形品を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本開示は、熱可塑性樹脂と酸化グラフェンを必須成分として配合した樹脂組成物であって、
前記酸化グラフェンの配合量が熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1~15質量部である接合部材用熱可塑性樹脂組成物に関する。
また、本開示は、熱可塑性樹脂と酸化グラフェンを必須成分として配合し、熱可塑性樹脂が加熱により軟化流動した状態になる温度以上の温度で溶融混練する工程を有する樹脂組成物の製造方法であって、
前記酸化グラフェンの配合量が熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1~15質量部である接合部材用熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。
なお、本開示において耐冷熱衝撃性に優れるとは、低温及び高温環境下に繰り返し暴露した後の接合界面の劣化が抑制されることを示すものである。
本発明によれば、接合強度と耐冷熱衝撃性に優れる接合部材用熱可塑性樹脂成形品、当該成形品を提供可能な接合部材用熱可塑性樹脂組成物及びそれらの製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はここで説明する一実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができる。また、特定のパラメーターについて、複数の上限値及び下限値が記載されている場合、これらの上限値及び下限値の内、任意の上限値と下限値とを組合せて好適な数値範囲とすることができる。
<樹脂組成物の製造方法>
本開示の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と酸化グラフェンを配合した樹脂組成物であって、前記酸化グラフェンの配合量が熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1~15質量部である。以下、詳述する。
<熱可塑性樹脂>
本実施形態において、熱可塑性樹脂は、特に制限されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリ(1-ブテン)等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリアミド-6(ナイロン-6)、ポリアミド-11(ナイロン-11)、ポリアミド-12(ナイロン-12)、ポリアミド-46(ナイロン-46)、ポリアミド-66(ナイロン-66)、ポリアミド-610(ナイロン-610)、ポリアミド-6T(ナイロン-6T)、ポリアミド-6I(ナイロン-6I)、ポリアミド-9T(ナイロン-9T)、ポリアミド-M5T(ナイロン-M5T)、ポリメタキシレンアジパミド(ナイロン-MXD6)等のポリアミド系樹脂;エチレン・ビニルエステル共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体等のエチレン・不飽和エステル系共重合体;エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体又はそのアイオノマー樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂等のポリ(メタ)アクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル等のフッ素系樹脂;シンジオタクチックポリスチレン等のポリスチレン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン等のポリエーテル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリフェニレンスルフィド樹脂に代表されるポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂等のポリフェニレン系樹脂;ポリ酢酸ビニル樹脂;ポリアクリロニトリル樹脂;液晶ポリマー(LCP)等が挙げられる。また、これらの熱可塑性樹脂のうちから選択される1種を単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてよい。中でも接合体の機械的性質や耐熱性、耐薬品性等の観点から、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド-6T(ナイロン-6T)、ポリアリーレンスルフィド樹脂(以下、PASと略称する)が好ましく、特にPAS樹脂が好ましい。
<PAS樹脂>
本実施形態に適用できるPAS樹脂としては、芳香族環と硫黄原子とが結合した構造を繰り返し単位とする樹脂構造を有するものであり、具体的には、下記一般式(1)
Figure 0007533812000001
(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~4の範囲のアルキル基、ニトロ基、アミノ基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基を表す。)で表される構造部位と、必要に応じてさらに下記一般式(2)
Figure 0007533812000002
で表される3官能性の構造部位と、を繰り返し単位とする樹脂である。式(2)で表される3官能性の構造部位は、他の構造部位との合計モル数に対して0.001~3モル%の範囲が好ましく、特に0.01~1モル%の範囲であることが好ましい。
ここで、前記一般式(1)で表される構造部位は、特に該式中のR及びRは、前記PAS樹脂の機械的強度の点から水素原子であることが好ましく、その場合、下記式(3)で表されるパラ位で結合するもの、及び下記式(4)で表されるメタ位で結合するものが挙げられる。
Figure 0007533812000003
これらの中でも、特に繰り返し単位中の芳香族環に対する硫黄原子の結合は前記一般式(3)で表されるパラ位で結合した構造であることが前記PAS樹脂の耐熱性や結晶性の面で好ましい。
また、前記PAS樹脂は、前記一般式(1)や(2)で表される構造部位のみならず、下記の構造式(5)~(8)
Figure 0007533812000004
で表される構造部位を、前記一般式(1)と一般式(2)で表される構造部位との合計の30モル%以下で含んでいてもよい。特に本発明では上記一般式(5)~(8)で表される構造部位は10モル%以下であることが、PAS樹脂の耐熱性、機械的強度の点から好ましい。前記PAS樹脂中に、上記一般式(5)~(8)で表される構造部位を含む場合、それらの結合様式としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体の何れであってもよい。
また、前記PAS樹脂は、その分子構造中に、ナフチルスルフィド結合などを有していてもよいが、他の構造部位との合計モル数に対して、3モル%以下が好ましく、特に1モル%以下であることが好ましい。
また、PAS樹脂の物性は、本発明の効果を損ねない限り特に限定されないが、以下の通りである。
(溶融粘度)
本実施形態に用いるPAS樹脂の溶融粘度は特に限定されないが、流動性及び機械的強度のバランスが良好となることから、300℃で測定した溶融粘度(V6)が、好ましくは1Pa・s以上の範囲であり、そして、好ましくは1000Pa・s以下の範囲、より好ましくは500Pa・s以下の範囲であり、さらに好ましくは200Pa・s以下の範囲である。ただし、溶融粘度(V6)の測定は、PAS樹脂を島津製作所製フローテスター、CFT-500Dを用いて行い、300℃、荷重:1.96×10Pa、L/D=10(mm)/1(mm)にて、6分間保持した後に測定した溶融粘度の測定値とする。
(非ニュートン指数)
本実施形態に用いるPAS樹脂の非ニュートン指数は特に限定されないが、0.90以上から2.00以下の範囲以下の範囲であることが好ましい。ただし、本開示において非ニュートン指数(N値)は、キャピログラフを用いて融点+20℃、オリフィス長(L)とオリフィス径(D)の比、L/D=40の条件下で、剪断速度(SR)及び剪断応力(SS)を測定し、下記式を用いて算出した値である。非ニュートン指数(N値)が1に近いほど線状に近い構造であり、非ニュートン指数(N値)が高いほど分岐が進んだ構造であることを示す。
Figure 0007533812000005
[ただし、SRは剪断速度(秒-1)、SSは剪断応力(ダイン/cm)、そしてKは定数を示す。]
(末端カルボキシ基量)
本実施形態に用いるPAS樹脂の末端カルボキシ基量は特に限定されないが、好ましくは10μmol/g以上の範囲であり、より好ましくは20μmol/g以上の範囲であり、そして、好ましくは180μmol/g以下の範囲、より好ましくは160μmol/g以下の範囲である。かかる範囲において、得られる複合構造体が耐冷熱衝撃性に優れるため好ましい。なお、本開示において、PAS樹脂の末端カルボキシ基量は、フーリエ変換赤外分光装置で測定した赤外吸収スペクトルのうち630.6cm-1の吸光度に対する1705cm-1の吸光度の相対強度から求めた値である。
(製造方法)
PAS樹脂の製造方法としては特に限定されないが、例えば(製造法1)硫黄と炭酸ソーダの存在下でジハロゲノ芳香族化合物を、必要ならばポリハロゲノ芳香族化合物ないしその他の共重合成分を加えて、重合させる方法、(製造法2)極性溶媒中でスルフィド化剤等の存在下にジハロゲノ芳香族化合物を、必要ならばポリハロゲノ芳香族化合物ないしその他の共重合成分を加えて、重合させる方法、(製造法3)p-クロルチオフェノールを、必要ならばその他の共重合成分を加えて、自己縮合させる方法、(製造法4)ジヨード芳香族化合物と単体硫黄を、カルボキシ基やアミノ基等の官能基を有していてもよい重合禁止剤の存在下、減圧させながら溶融重合させる方法、等が挙げられる。これらの方法のなかでも、(製造法2)の方法が汎用的であり好ましい。反応の際に、重合度を調節するためにカルボン酸やスルホン酸のアルカリ金属塩や、水酸化アルカリを添加しても良い。上記(製造法2)方法のなかでも、加熱した有機極性溶媒とジハロゲノ芳香族化合物とを含む混合物に含水スルフィド化剤を水が反応混合物から除去され得る速度で導入し、有機極性溶媒中でジハロゲノ芳香族化合物とスルフィド化剤とを、必要に応じてポリハロゲノ芳香族化合物と加え、反応させること、及び反応系内の水分量を該有機極性溶媒1モルに対して0.02~0.5モルの範囲にコントロールすることによりPAS樹脂を製造する方法(特開平07-228699号公報参照。)や、固形のアルカリ金属硫化物及び非プロトン性極性有機溶媒の存在下でジハロゲノ芳香族化合物と必要ならばポリハロゲノ芳香族化合物ないしその他の共重合成分を加え、アルカリ金属水硫化物及び有機酸アルカリ金属塩を、硫黄源1モルに対して0.01~0.9モルの範囲の有機酸アルカリ金属塩及び反応系内の水分量を非プロトン性極性有機溶媒1モルに対して0.02モル以下の範囲にコントロールしながら反応させる方法(WO2010/058713号パンフレット参照。)で得られるものが特に好ましい。ジハロゲノ芳香族化合物の具体的な例としては、p-ジハロベンゼン、m-ジハロベンゼン、o-ジハロベンゼン、2,5-ジハロトルエン、1,4-ジハロナフタレン、1-メトキシ-2,5-ジハロベンゼン、4,4’-ジハロビフェニル、3,5-ジハロ安息香酸、2,4-ジハロ安息香酸、2,5-ジハロニトロベンゼン、2,4-ジハロニトロベンゼン、2,4-ジハロアニソール、p,p’-ジハロジフェニルエーテル、4,4’-ジハロベンゾフェノン、4,4’-ジハロジフェニルスルホン、4,4’-ジハロジフェニルスルホキシド、4,4’-ジハロジフェニルスルフィド、及び、上記各化合物の芳香環に炭素原子数1~18の範囲のアルキル基を有する化合物が挙げられ、ポリハロゲノ芳香族化合物としては1,2,3-トリハロベンゼン、1,2,4-トリハロベンゼン、1,3,5-トリハロベンゼン、1,2,3,5-テトラハロベンゼン、1,2,4,5-テトラハロベンゼン、1,4,6-トリハロナフタレンなどが挙げられる。また、上記各化合物中に含まれるハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子であることが望ましい。
重合工程により得られたPAS樹脂を含む反応混合物の後処理方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、(後処理1)重合反応終了後、先ず反応混合物をそのまま、あるいは酸又は塩基を加えた後、減圧下又は常圧下で溶媒を留去し、次いで溶媒留去後の固形物を水、反応溶媒(又は低分子ポリマーに対して同等の溶解度を有する有機溶媒)、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類などの溶媒で1回又は2回以上洗浄し、更に中和、水洗、濾過及び乾燥する方法、或いは、(後処理2)重合反応終了後、反応混合物に水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素などの溶媒(使用した重合溶媒に可溶であり、かつ少なくともPAS樹脂に対しては貧溶媒である溶媒)を沈降剤として添加して、PAS樹脂や無機塩等の固体状生成物を沈降させ、これらを濾別、水洗、乾燥する方法、或いは、(後処理3)重合反応終了後、反応混合物に反応溶媒(又は低分子ポリマーに対して同等の溶解度を有する有機溶媒)を加えて撹拌した後、濾過して低分子量重合体を除いた後、水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類などの溶媒で1回又は2回以上洗浄し、その後中和、水洗、濾過及び乾燥をする方法、(後処理4)重合反応終了後、反応混合物に水を加えて水洗浄、濾過、必要に応じて水洗浄の時に酸又は塩基を加えて処理し、乾燥をする方法、(後処理5)重合反応終了後、反応混合物を濾過し、必要に応じ、反応溶媒で1回又は2回以上洗浄し、更に水洗浄、濾過及び乾燥する方法、等が挙げられる。
なお、上記(後処理1)~(後処理5)に例示したような後処理方法において、PAS樹脂の乾燥は真空中で行なってもよいし、空気中あるいは窒素のような不活性ガス雰囲気中で行なってもよい。
また、本実施形態に用いる熱可塑性樹脂としては、リサイクルされた熱可塑性樹脂でもよい。本実施形態に用いる熱可塑性樹脂が該リサイクル材料を含む場合、当該樹脂中の当該リサイクル材料の割合は特に限定されないが、例えば、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。熱可塑性樹脂成形品のリサイクル材料への加工(リサイクル処理)は、公知の方法によって実施することができる。例えば、裁断又は粉砕等によって、成形品をチップ状もしくはペレット状等に細分化する方法や、細分化された成形品を溶媒に溶解させてから固液分離することで充填剤等を除去する方法、細分化された成形品と溶媒を接触させて熱可塑性樹脂以外の成分を抽出除去する方法等が挙げられる。リサイクル処理は、消費者から提供される熱可塑性樹脂成形品の回収品や、成形品製造者から提供される熱可塑性樹脂成形品のスペックアウト品や成形時に生じるロス(射出成形におけるランナー等)等をもとに行われることが多い。リサイクルされた熱可塑性樹脂を用いることによって、樹脂や成形品の廃棄処理量を減らして、環境負荷を低減できる。
<酸化グラフェン>
本実施形態に用いる酸化グラフェンは、グラフェンシート(グラファイトの単分子層)が、熱処理等の物理的または化学的処理により、部分的に酸化されて、水酸基、エポキシ基、カルボニル基、カルボキシル基等の酸素を含有する反応性官能基を構造中に有する材料を指す。
酸化グラフェンは、酸化条件によって、単層の酸化グラフェン、単層の酸化グラフェンが複数積層した複層酸化グラフェンおよび内部に酸化されていない層が存在する複層酸化グラフェンの混合物となる。本実施形態に適用できる酸化グラフェンの層数は、本発明の効果を損ねない限り特に限定されないが、例えば、1~20層である。なお、酸化グラフェンの層数は、たとえば、原子間力顕微鏡、透過型電子顕微鏡、ラマンスペクトルなどで評価することができる。
本実施形態に適用できる酸化グラフェンの炭素原子数と酸素原子数の比率(C/O)比率は、1.5以上が好ましく、2.0以上がより好ましく、5.0以下が好ましく、4.0以下がより好ましい。かかる範囲を超える場合、反応性官能基の量が少ないために、接合強度が乏しくなる。また、かかる範囲に満たない場合、熱安定性が著しく低下する可能性があり、また、耐冷熱衝撃性に乏しくなる。なお、本開示において、酸化グラフェンのC/O比率とは、酸化グラフェン中の炭素原子数と酸素原子数の比をいうものとする。酸化グラフェン中のC/O比率は、X線光電子分光法により求めることができる。
酸化グラフェンの配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1~15質量部であり、0.5質量部以上が好ましく、10質量部以下が好ましい。酸化グラフェンの含有量が少なすぎると、樹脂組成物中の反応性官能基の量が少なくなるため、優れた接合特性を呈することが難しい。一方、酸化グラフェンの含有量が多すぎると材料コストが増加し、また、樹脂組成物中の酸化グラフェンと樹脂の界面増加に伴う粘度上昇や、物性低下が生じる場合がある。
なお、本実施形態に適応できる酸化グラフェンの形態は、単体の粉体のみではなく、例えば、熱可塑性樹脂をマトリックスとして酸化グラフェンが分散した状態の複合体(マスターバッチ等)や、溶媒に酸化グラフェンが分散した状態の分散液等の公知の形態であれば特に限定されず用いることができる。
本実施形態に係る樹脂組成物は、必要に応じて、充填剤を任意成分として配合することができる。これら充填剤としては本発明の効果を損なうものでなければ公知慣用の材料を用いることもでき、粒状や板状、繊維状のものなど、さまざまな形状の充填剤等が挙げられる。例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、硫酸バリウム、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、セリサイト、マイカ、タルク、アタパルジャイト、フェライト、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ゼオライト、ミルドファイバー、硫酸カルシウム等の充填剤も使用できる。
本実施形態に係る樹脂組成物は、接合強度をさらに高める観点から、必要に応じて、シランカップリング剤を任意成分として配合することができる。シランカップリング剤としては、本発明の効果を損ねなければ特に限定されないが、カルボキシ基と反応する官能基、例えば、エポキシ基、イソシアナト基、アミノ基又は水酸基を有するシランカップリング剤が好ましいものとして挙げられる。このようなシランカップリング剤としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルトリクロロシラン等のイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシラン化合物、γ-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン等の水酸基含有アルコキシシラン化合物が挙げられる。
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記成分に加えて、さらに耐冷熱衝撃性や耐衝撃性を向上させる目的で、熱可塑性エラストマーを任意成分として配合することができる。当該熱可塑性エラストマーとしては、ポリオレフィン系エラストマー、弗素系エラストマーまたはシリコーン系エラストマーが挙げられ、このうちポリオレフィン系エラストマーが好ましいものとして挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーの配合量は、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下までの範囲である。かかる範囲において、成形性および機械的特性、特に、耐衝撃性に優れた成形品が得られる。
例えば、前記ポリオレフィン系エラストマーとしては、α-オレフィンの単独重合体、又は2以上のα-オレフィンの共重合体、1又は2以上のα-オレフィンと、官能基を有するビニル重合性化合物との共重合体が挙げられ、この際、前記α-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン等の炭素原子数が2以上から8以下までの範囲のα-オレフィンが挙げられる。また、前記官能基としては、カルボキシ基、酸無水物基(-C(=O)OC(=O)-)、エポキシ基、アミノ基、水酸基、メルカプト基、イソシアネート基、オキサゾリン基等が挙げられる。そして、前記官能基を有するビニル重合性化合物としては、酢酸ビニル;(メタ)アクリル酸等のα,β-不飽和カルボン酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のα,β-不飽和カルボン酸のアルキルエステル;アイオノマー等のα,β-不飽和カルボン酸の金属塩(金属としてはナトリウムなどのアルカリ金属、カルシウムなどのアルカリ土類金属、亜鉛等);グリシジルメタクリレート等のα,β-不飽和カルボン酸のグリシジルエステル等;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のα,β-不飽和ジカルボン酸;前記α,β-不飽和ジカルボン酸の誘導体(モノエステル、ジエステル、酸無水物)等の1種又は2種以上が挙げられる。上述の熱可塑性エラストマーは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記成分に加えて、さらに用途に応じて、適宜、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリフェニレンスルフィドスルホン樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリアリーレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ四フッ化エチレン樹脂、ポリ二フッ化エチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、液晶ポリマー等の合成樹脂(以下、単に合成樹脂という)を任意成分として配合することができる。
本実施形態に係る樹脂組成物は、その他にも着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、発泡剤、難燃剤、難燃助剤、防錆剤、及び離型剤(ステアリン酸やモンタン酸を含む炭素原子数18~30の脂肪酸の金属塩やエステル、ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックスなど)等の公知慣用の添加剤を必要に応じ、任意成分として配合することができる。これらの添加剤は必須成分ではなく、例えば、PAS樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上の範囲であり、そして、好ましくは1000質量部以下、より好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下の範囲で、本発明の効果を損なわないよう目的や用途に応じて適宜調整して用いればよい。
樹脂組成物の製造方法は、熱可塑性樹脂と、酸化グラフェンとを必須成分として配合し、熱可塑性樹脂が加熱により軟化流動した状態になる温度(結晶性樹脂の場合には融点、ないし、非結晶性樹脂の場合にはガラス転移点であってよい。以下、単に「軟化流動温度」と称する)以上の温度範囲で溶融混錬する工程を有する。
樹脂組成物は、各必須成分及び必要に応じてその他の任意成分を配合してなる。樹脂組成物を製造する方法としては、特に限定されないが、必須成分と必要に応じて任意成分を配合して、溶融混錬する方法、より詳しくは、必要に応じてタンブラー又はヘンシェルミキサー等で均一に乾式混合し、次いで、二軸押出機に投入して溶融混練する方法が挙げられる。
溶融混錬は、樹脂温度が熱可塑性樹脂の軟化流動温度以上となる温度範囲、好ましくは該軟化流動温度+10℃以上となる温度範囲、より好ましくは該軟化流動温度+20℃以上から、好ましくは該軟化流動温度+100℃以下、より好ましくは該軟化流動温度+50℃以下までの範囲の温度に加熱して行うことができる。例えば、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは150℃以上の範囲から、また、好ましくは400℃以下、より好ましくは380℃以下、更に好ましくは350℃以下までの範囲で、マトリックス樹脂である熱可塑性樹脂の軟化流動のし易さに応じて決定することができる。
樹脂組成物は、該溶融混練後に、公知の方法、例えば、溶融状態の樹脂組成物をストランド状に押出成形した後、ペレット、チップ、顆粒、粉末などの形態に加工してから、必要に応じて予備乾燥を施すことが好ましい。
<成形品、成形品の製造方法>
本開示の成形品は樹脂組成物を溶融成形してなる。また、本開示の成形品の製造方法は、前記樹脂組成物を溶融成形する工程を有する。このため、本開示の成形品は、前記熱可塑性樹脂が連続相を形成し、酸化グラフェンや任意成分が分散されたモルフォロジーを有する。樹脂組成物が、かかるモルフォロジーを有することにより、機械的特性及び加工性に優れた成形品が得られる。
本開示の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、圧縮成形、コンポジット、シート、パイプなどの押出成形、引抜成形、ブロー成形、トランスファー成形、予め繊維基材に含侵させた熱可塑性繊維強化基材を用いたプレス成形など各種成形に供することが可能であるが、特に射出成形用途に適している。射出成形にて成形する場合、各種成形条件は特に限定されず、通常一般的な方法にて成形することができる。例えば、射出成形機内で、樹脂温度が熱可塑性樹脂の融点以上の温度範囲、好ましくは該融点+10℃以上の温度範囲、より好ましくは融点+10℃~融点+100℃の温度範囲、さらに好ましくは融点+20℃~融点+50℃の温度範囲で前記熱可塑性樹脂組成物を溶融する工程を経た後、樹脂吐出口より金型内に注入して成形すればよい。その際、金型温度も公知の温度範囲、例えば、室温(23℃)~300℃、好ましくは130~190℃に設定すればよい。
本開示の成形品の製造方法は、前記成形品にアニール処理する工程を有してもよい。アニール処理は、成形品の用途あるいは形状等により最適な条件が選ばれるが、アニール温度は熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上の温度範囲、好ましくは該ガラス転移温度+10℃以上の温度範囲であり、より好ましくは該ガラス転移温度+30℃以上の温度範囲である。一方、260℃以下の範囲であることが好ましく、240℃以下の範囲であることがより好ましい。アニール時間は特に限定されないが、0.5時間以上の範囲であることが好ましく、1時間以上の範囲であることがより好ましい。一方、10時間以下の範囲であることが好ましく、8時間以下の範囲であることがより好ましい。かかる範囲において、得られる成形品のひずみが低減し、かつ、樹脂の結晶性が向上するため好ましい。アニール処理は空気中で行ってもよいが、窒素ガス等の不活性ガス中で行うことが好ましい。
上記のPAS樹脂と酸化グラフェンを必須成分とする本開示の樹脂組成物及び成形品は、異種材料との接合強度に優れる。このような効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のメカニズムによるものと推測される。すなわち、豊富に極性基を有する酸化グラフェンがPAS樹脂中に分子レベルで分散された結果、相手材との接合界面において強い分子間力が発生することで接合強度に優れる効果が得られる。ゆえに極性基の基数が多く、良好な分散性を有している程、接合強度に優れた効果が得られる。なお、上記メカニズムはあくまで推測のものであり、他の理由により本発明の効果が奏される場合であっても本発明の技術的範囲に含まれる。
<複合構造体、複合構造体の製造方法>
本開示の複合構造体は、本開示の成形品からなる樹脂部材と金属部材を含む複合構造体である。また、他の実施形態の一つとしては、本開示の成形品からなる樹脂部材と他の熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂部材を含む複合構造体である。また、他の実施形態の一つとしては、本開示の成形品からなる樹脂部材と熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂部材を含む複合構造体である。
また、本開示の複合構造体の製造方法は、前記記載の製造方法で成形品を製造する工程、得られた成形品を金属部材と接合する工程を有する複合構造体の製造方法である。また、他の実施形態の一つとしては、前記記載の製造方法で成形品を製造する工程、得られた成形品を他の熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂部材と接合する工程を有する複合構造体の製造方法である。さらに、他の実施形態の一つとしては、前記記載の製造方法で成形品を製造する工程、得られた成形品を熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂部材と接合する工程を有する複合構造体の製造方法である。以下、本開示の成形品と接合する金属部材及び樹脂部材並びにそれらを形成する金属及び樹脂を、「相手材」と総称することがある。
本実施形態に適用できる金属部材は、本発明の効果を損ねない限り特に限定されず、公知の金属部材を用いることができる。例えば、アルミニウム、銅、ステンレス、マグネシウム、鉄、チタンまたはそれらを含有する合金が挙げられる。より具体的には、鉄や、例えば、ステンレス、鋼材など、鉄を主成分、すなわち20質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは80質量%の割合とし、他に炭素、ケイ素、マンガン、クロム、タングステン、モリブデン、ホスホル、チタン、バナジウム、ニッケル、ジルコニウム、ボロン等を含む合金(以下、鉄合金)や、アルミニウムや、アルミニウムを主成分として、他に銅、マンガン、ケイ素、マグネシウム、亜鉛、ニッケルを含む合金(以下、アルミニウム合金)や、マグネシウムや、マグネシウムを主成分として、他に亜鉛、アルミニウム、ジルコニウムなどを含む合金(以下、マグネシウム合金)や、銅や、銅を主成分として、他に亜鉛、スズ、リン、ニッケル、マグネシウム、ケイ素、クロムを含む合金(以下、銅合金)や、チタンや、チタンを主成分として、他に銅、マンガン、ケイ素、マグネシウム、亜鉛、ニッケルを含む合金(以下、チタン合金)が挙げられる。これらのうち、より好ましくは鉄、鉄合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、銅合金、チタン合金が挙げられ、さらに好ましくは鉄合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金が挙げられる。金属部材の形状は特に限定されず、プレス等による塑性加工、打ち抜き加工、切削、研磨、放電加工等の除肉加工によって、例えば平板状、曲板状、棒状、筒状、塊状等に加工されたものが挙げられる。その他、金属箔のようなフィルム状物であってもよい。
また、前記金属部材は表面を粗化処理したものでもよい。表面粗化の方法としては公知のものを用いることができ、例えば、(1)侵食性水溶液または侵食性懸濁液による浸漬法、(2)陽極酸化法、(3)ブラスト加工やレーザー加工による機械的切削、が挙げられる。これらのうち、(1)侵食性水溶液または侵食性懸濁液による浸漬法か(2)陽極酸化法が金属部材の表面粗化の方法として特に好ましい。前記金属部材を表面処理する場合は、上述した微細凹凸面を形成する前に、上記金属部材を切断、プレスなどによる塑性加工、打ち抜き加工、切削、研削、放電加工などの除肉加工によって所定の形状に加工することが好ましい。
なお、金属の表面処理がなされた金属部材の表面にはプライマー層を形成させてもよい。プライマー層を構成する材料は特に限定されないが、通常は樹脂成分を含むプライマー樹脂材料からなる。プライマー樹脂材料は特に限定されず、公知のものを用いることができる。具体的には、公知のポリオレフィン系プライマー、エポキシ系プライマー、ウレタン系プライマーなどを挙げることができる。プライマー層の形成方法は特に限定されないが、例えば、上記のプライマー樹脂材料の溶液や、上記のプライマー樹脂材料のエマルションを、上記表面処理を行った金属部材に塗工して形成することができる。溶液とする際に用いる溶媒としては、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルフォスフォルアミド(DMF)などが挙げられる。エマルション用の媒体としては、脂肪族炭化水素媒体や、水などが挙げられる。
本実施形態に適用できる熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂部材に用いる熱可塑性樹脂は、本発明の効果を損ねない限り特に限定されず、公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ四フッ化エチレン樹脂、ポリ二フッ化エチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、液晶ポリマー等が挙げられ、これらは単独でも複数用いても良い。また、任意成分として、上記記載の熱可塑性エラストマー、シランカップリング剤、充填剤、添加剤等を配合することができる。
本実施形態に適用できる熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂部材に用いる熱硬化性樹脂は、本発明の効果を損ねない限り特に限定されず、公知の熱硬化性樹脂を用いることができる。例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリアリーレンエーテル構造を有するエポキシ樹脂、繰り返し単位中に脂環式構造と芳香族構造とを有するエポキシ樹脂等のエポキシ樹脂;縮合型シリコーン樹脂、付加型シリコーン樹脂等のシリコーン樹脂;ノボラック型フェノール樹脂、ビスフェノール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂等が挙げられ、これらは単独でも複数用いても良い。また、任意成分として、上記記載の充填剤、硬化剤(例えば、アミン型硬化剤、フェノール樹脂型硬化剤、酸無水物型硬化剤、潜在性硬化剤等)、硬化促進剤(例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等)、各種添加剤等を配合することができる。
熱硬化性樹脂組成物は、本開示の樹脂成形品と接触させてから硬化反応させて接合することもできるし、あらかじめ硬化反応させたものを用いて接合することもできる。本発明において熱硬化性樹脂を硬化させるための硬化剤としては、一般に熱硬化性樹脂の硬化剤として用いられるものであれば特に制限されるものではないが、例えば、アミン型硬化剤、フェノール樹脂型硬化剤、酸無水物型硬化剤、潜在性硬化剤等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。また、本発明の効果を損なわない範囲において、硬化促進剤を適宜併用して用いることも可能である。
本開示の樹脂成形品と相手材との接合方法は、本発明の効果を損ねない限り特に限定されず、公知の方法や装置を用いることができる。例えば、相手材に、本開示の樹脂組成物を溶融成形することにより接合する方法や、本開示の樹脂組成物が流動する温度で、相手材と本開示の成形品とを接合する方法、本開示の成形品に、相手材を溶融成形することにより接合する方法等が挙げられる。
相手材に、本開示の樹脂組成物を溶融成形することにより接合する方法としては、相手材を射出成形機の金型にインサートし、続いて、相手材に対して、本開示の樹脂組成物を用いて射出成形する工程を経る、いわゆるインサート成形法を行う方法が挙げられる。また、相手材として本開示の樹脂成形品よりも融点が低い熱可塑性樹脂組成物を用いる場合には、例えば、本開示の樹脂成形品を射出成形機の金型にインサートして、熱可塑性樹脂組成物を射出成形することもできる。インサート成形法における装置ならびに製造方法は、特に制限はなく、市販の装置を使用することもできるし、常法に従って行うこともできる。
本開示の樹脂組成物が溶融する温度で、相手材と本開示の成形品とを接合する方法としては、相手材と本開示の成形品とを接した上で加熱して接合するか、または加熱してから接触させた上で接合してから、冷却する。具体的には、熱板溶着法、振動溶着法、赤外線溶着法、赤外線振動溶着法、超音波溶着法、高周波溶着法、誘導加熱溶着法、回転溶着法、レーザー溶着法、ホットプレス法、ホットエンボス法、摩擦攪拌接合法などの方法が挙げられ、これらの接合方法に用いる装置ならびに製造方法は、市販の装置を使用することもできるし、常法に従って行うこともできる。
また、本開示の接合部材は、本開示の成形品にめっき処理をすることによって金属部材と接合する様態も含む。例えば、本開示の成形品の表面に電解めっき法、無電解めっき法又はこれらの組み合わせにより金属めっき層を形成することができる。
前記無電解めっき法は、例えば、本開示の成形品の表面に、無電解めっき液を接触させることで、無電解めっき液中に含まれる銅等の金属を析出させ金属皮膜からなる無電解めっき層(皮膜)を形成する方法である。また、前記電解めっき法は、例えば、前記無電解めっき処理によって形成された無電解めっき層(皮膜)の表面に、電解めっき液を接触した状態で通電することにより、前記電解めっき液中に含まれる銅等の金属を、カソードに設置した前記無電解処理によって形成された無電解めっき層(皮膜)の表面に析出させ、電解めっき層(金属皮膜)を形成する方法である。
また、本開示の接合部材の製造方法は、本開示の成形品及び相手材を粗化処理する工程を有することができる。例えば、樹脂部材を粗化処理する方法としては、強酸溶液等を用いる化学エッチング法や、サンドブラスト処理や液体ホーニング処理等の物理エッチング法が挙げられ、金属部材を粗化処理する方法としては、上記記載の粗化処理が挙げられる。
<用途>
本開示の熱可塑性樹脂組成物、成形品及び複合構造体の用途としては、特に限定されるものではなく各種製品として用いることが可能である。本開示の樹脂組成物及び成形品は他の材料と接合して複合化した際の接合強度と複合体の耐冷熱衝撃性に優れることを特徴としたものであるから、複合構造体用として、特に異種材料の複合化を要する部品、例えば、軽量化の要求が大きい分野である車載用部材や気密性が求められる電気電子部材等に好適に用いることができる。また、本開示の樹脂成形品や複合構造体は、その他にも、以下のような通常の樹脂成形品や複合構造体とすることもできる。例えば箱型の電気・電子部品集積モジュール用保護・支持部材・複数の個別半導体又はモジュール、センサ、LEDランプ、コネクタ、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサ、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナ、スピーカ、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、端子台、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダ、パラボラアンテナ、コンピュータ関連部品等に代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤ、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザディスク・コンパクトディスク・DVDディスク・ブルーレイディスク等の音声・映像機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライタ部品、ワードプロセッサ部品、あるいは給湯機や風呂の湯量、温度センサなどの水回り機器部品等に代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピュータ関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライタ、タイプライタなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等に代表される光学機器、精密機械関連部品;バスバー部材、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクタ、ブラシホルダー、スリップリング、ICレギュレータ、ライトディマ用ポテンシオメーターベース、リレーブロック、インヒビタースイッチ、排気ガスバルブ等の各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディ、キャブレタースペーサ、排気ガスセンサ、冷却水センサ、油温センサ、ブレーキパットウェアーセンサ、スロットルポジションセンサ、クランクシャフトポジションセンサ、温度センサ、エアーフローメータ、ブレーキパッド摩耗センサ、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダ、ウォーターポンプインペラ、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュータ、スタータースイッチ、イグニッションコイル及びそのボビン、モーターインシュレータ、モーターロータ、モーターコア、スターターリレ、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクタ、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターロータ、ランプソケット、ランプリフレクタ、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルタ、点火装置ケース等の自動車・車両関連部品が挙げられ、その他各種用途にも適用可能である。
以下、実施例、比較例を用いて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下、特に断りが無い場合「%」や「部」は質量基準とする。
(製造例1) 金属部材の製造
アルミニウムダイキャスト(ADC12)の板から、長さ×幅×厚み=45mm×10mm×1.5mmの大きさに金属部材を切り出し、:55%フッ化水素酸=9:1の体積比で混合した侵食性水溶液に20秒間浸漬させて金属部材を得た。
(製造例2) 酸化グラフェンが分散されたPPSマスターバッチ(c-1)の製造
圧力計、温度計が付帯された撹拌翼付き1000mLオートクレーブへPPS樹脂(a-1;リニア型、溶融粘度(V6)106Pa・s、末端カルボキシ基量33μmol/g、非ニュートン指数1.07)230g、粉末状酸化グラフェン(b-1;LayerOne社製酸化グラフェン、平均粒形5μm、C/O比率2.4-2.6)20g、NMP600gを仕込み、窒素置換した後、密閉し、マントルヒーターを用いて3時間かけて240℃まで昇温し、240℃300rpmで1時間攪拌した。その後、液温を5℃/分で150℃まで冷却し、攪拌回転数を100rpmに下げて5℃/分で更に40℃まで冷却させた。得られた黒色ケーキ状の混合物に70℃の温水を500g添加して得られたリスラリーを10分間攪拌した。混合物を吸引ろ過しながら、200gの70℃温水を3回に分けて注いでケーキ洗浄した。この温水によるリスラリーとケーキ洗浄の操作を計3回実施し、得られたケーキを120℃で4時間かけて乾燥する事で、酸化グラフェン含有率8%のPPSマスターバッチ(c-1)を得た。
(製造例3) 酸化グラフェンが分散されたPPSマスターバッチ(c-2)の製造
圧力計、温度計、滴下ロート、蒸留塔が付帯された撹拌翼付き1000mLオートクレーブへPPS樹脂(a-1;リニア型、溶融粘度(V6)106Pa・s)230g、NMP500gを仕込み、窒素置換した後、マントルヒーターを用いて1.5時間かけて120℃まで昇温した。次いで、窒素フロー下、滴下ロートを用いて酸化グラフェン水分散体(b-2;NSC株式会社製酸化グラフェン0.5wt%水分散体、平均粒形6.1μm、C/O比率2.2)4000gをオートクレーブ中に滴下しつつ、蒸留塔を用いて水を留出させた。水の留出が完了後、2時間かけて240℃まで昇温し、240℃300rpmで1時間攪拌した。その後、液温を5℃/分で150℃まで冷却し、攪拌回転数を100rpmに下げて5℃/分で更に40℃まで冷却させた。得られた黒色ケーキ状の混合物に70℃の温水を500g添加して得られたリスラリーを10分間攪拌した。混合物を吸引ろ過しながら、200gの70℃温水を3回に分けて注いでケーキ洗浄した。この温水によるリスラリーとケーキ洗浄の操作を計3回実施し、得られたケーキを120℃で4時間かけて乾燥する事で、酸化グラフェン含有率8%のPPSマスターバッチ(c-2)を得た。
<実施例1~10及び比較例1~2>
表1及び2に記載する組成成分及び配合量にしたがい、各材料を配合した。その後、株式会社日本製鋼所製ベント付2軸押出機「TEX-30α」にこれら配合材料を投入し、樹脂成分吐出量30kg/hr、スクリュー回転数200rpm、設定樹脂温度320℃で溶融混練して樹脂組成物のペレットを得た。得られた樹脂組成物のペレットは140℃ギヤオーブンで2時間乾燥した。
続いて、複合構造体は射出成形機(住友重機械工業、SV-50M)を用いて、インサート成形により作成した。すなわち、上記の製造例1で得た金属部材をホットプレート上で200℃に予熱した後、射出成形機に設置した金型(金型温度150℃)内に挿入し、各実施例及び比較例の樹脂組成物のペレットをスクリュー温度320℃で溶融後に金型に射出することで、金属試験片とPPS樹脂組成物が一体化した複合構造体(ISO19095に準拠したType-B型)を得た。得られた接合構造体を24時間室温で放置した後、各種評価に用いた。
<評価>
(1)引張剪断強さの評価
作製した各複合構造体の引張剪断強さは、材料試験器(株式会社島津製作所製「AG-IS」)を用いて引張速度5mm/minでせん断引張測定をおこなった。測定は23℃で行い、複合構造体の破断に至るまでの応力の最大値の平均値(n=5)を接合強度(MPa)とした。結果を表1~3に示す。
(2)冷熱衝撃試験後の引張剪断強さ保持率の評価
作製した各複合構造体(ISO19095に準拠したType-B型)は冷熱衝撃試験装置(エスペック株式会社製「TSA-103EL」)を用いて、低温側条件-40℃で30分、高温側条件160℃で30分を1サイクルとして100サイクル行った。冷熱衝撃試験後の複合構造体を上記(1)に従って引張剪断強さの評価を行い、耐久試験後の引張剪断強さを試験前の引張剪断強さで除した保持率(%)を算出した。結果を表1~3に示す。
Figure 0007533812000006
Figure 0007533812000007
Figure 0007533812000008
なお、表1~3中の配合成分の配合比率は下記のものを用いた。
・熱可塑性樹脂
a-1:PPS樹脂、直鎖型、溶融粘度(V6)106Pa・s、末端カルボキシ基量33μmol/g、非ニュートン指数1.07
a-2:PPS樹脂、直鎖型、溶融粘度(V6)56Pa・s、末端カルボキシ基量36μmol/g、非ニュートン指数1.07
a-3:PPS樹脂、直鎖型、溶融粘度(V6)15Pa・s、末端カルボキシ基量39μmol/g、非ニュートン指数1.06
a-4:ポリアミド-66樹脂、溶融粘度(V6)112Pa・s
a-5:ポリブチレンテレフタレート樹脂、溶融粘度(V6)93Pa・s
・酸化グラフェン
b-1:LayerOne社製「粉末状酸化グラフェン#18000」、平均粒形5μm、C/O比率2.4~2.6
・繊維強化材
d-1:日本電気硝子株式会社製 「CS03T-717H」、平均繊維長3.5mm、平均繊維径10μm
d-2:炭素繊維(チョップドストランド、繊維径6μm)
・シランカップリング剤
e-1:ダウ・ケミカル社製 「XIAMETER(登録商標) OFS-6040」
・熱可塑性エラストマー
f-1:住友化学株式会社製 「ボンドファースト7L」
・熱硬化性樹脂
g-1:DIC株式会社製 「フェノライトTD-2090」
・無機充填剤
h-1:三共製粉株式会社製「炭酸カルシウム一級」
・グラフェン
i-1:XG Sciences社製 「xGnP(登録商標)M5」、平均粒形5μm
表1~3から、実施例と比較例の複合構造体を比較すると、酸化グラフェンの添加によってより高い引張剪断強さを呈することから、接合強度に優れることが示された。さらに、実施例の複合構造体が冷熱衝撃試験後に高い保持率を示したことから、接合部の劣化を抑制することが示唆された。

Claims (11)

  1. 熱可塑性樹脂と酸化グラフェンを必須成分として配合した樹脂組成物であって、
    前記熱可塑性樹脂がポリアリーレンスルフィド樹脂であり、かつ、末端カルボキシ基量が10~180μmol/gの範囲である、
    前記酸化グラフェンの配合量が熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1~15質量部である接合部材用熱可塑性樹脂組成物。
  2. 請求項1記載の樹脂組成物を溶融成形してなる接合部材用樹脂成形品。
  3. 請求項記載の成形品からなる樹脂部材と金属部材を接合してなる複合構造体。
  4. 請求項記載の成形品からなる樹脂部材と他の熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂部材を接合してなる複合構造体。
  5. 請求項記載の成形品からなる樹脂部材と熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂部材を接合してなる複合構造体。
  6. 熱可塑性樹脂と酸化グラフェンを必須成分として配合し、熱可塑性樹脂が加熱により軟化流動した状態になる温度以上で溶融混練する工程を有する樹脂組成物の製造方法であって、
    前記熱可塑性樹脂がポリアリーレンスルフィド樹脂であり、かつ、末端カルボキシ基量が10~180μmol/gの範囲であり、
    前記酸化グラフェンの配合量が熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1~15質量部である接合部材用熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  7. 請求項記載の製造方法で樹脂組成物を製造する工程、得られた樹脂組成物を溶融成形する工程を有する、接合部材用成形品の製造方法。
  8. 請求項記載の製造方法で成形品を製造する工程、得られた成形品を金属と接合する工程を有する複合構造体の製造方法。
  9. 請求項記載の製造方法で成形品を製造する工程、得られた成形品を他の熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂部材と接合する工程を有する複合構造体の製造方法。
  10. 請求項記載の製造方法で成形品を製造する工程、得られた成形品を熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂部材と接合する工程を有する複合構造体の製造方法。
  11. 請求項記載の成形品を接合部材として用いる方法。
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